3-4 サエラvsアラビアータ1
レッドサンに到着。外観はおしゃれなレストランといった感じだ。
店の前には看板があり、『1度食べたら病みつきに! アラビアータ・レッドサンスペシャル 2580マネ』と書かれている。
俺たちが中に入ろうとしたとき、ドアが開いた。にんにくの香ばしい匂いとともに、数名の女性客が出てきた。どいつも満面の笑みを浮かべている。
「ここのアラビアータは最高っ!」
「ここのアラビアータって、他のお店と同じ味じゃないもんね!」
JAOの料理の味は外部提供データを用いているので、誰が作っても基本的には同じ味になる。しかし、デフォルトのレシピ以外の方法で作ると味が変化する。この店もそうなのだろう。
女性客が去った後、サエラに話しかける。
「さっきのやつらが言ったの、聞いたか?」
「あ~。うん」
「ここのアラビアータはうめぇんだよ。レッドサンに行ったら、アラビアータ食えってな」
実際はアラビアータがどんなスパゲティか知らねーけど。
「へ~、そうなんだ~」
顔はにこにこしているものの、サエラからは俺に話を合わせているような雰囲気を感じた。でも、さっきの会話を聞いてテンションが上がったということもあり、それ以上追及しなかった。
店内は唐辛子とにんにくの良い香りで充満していた。少し荒っぽい香りが俺の空腹を刺激する。ん~、早くメシ食いてぇ~。
客も多く、カウンター席からテーブル席までほとんど埋まっている。
すぐに店員が早足で俺たちの元へやって来た。
「いらっしゃいませ。2名様ですか?」
「ああ」
「2名様でしたら、相席で宜しければ、すぐご案内できますが」
「じゃあ、あいせ――」
サエラの言葉を遮り、店員に質問する。
「カウンター席ならどれぐらいかかる?」
「なるべくすぐご用意させていただきますが、10分程かかるかと……」
「じゃあ、カウンターで」
「かしこまりました」
そう言って、店員はまた早足で店の奥へと消えていった。
「今日はレイ君どうしちゃったの? いつもだったら、『待ってる時間がもったいねえ』とか言うのに」
「うるせぇ。今日はカウンター席って気分なんだよ」
本当は腹が減っていたからすぐにでも座りたかった。だが、コプアさんの教えを守ることにした。
10分ほどして俺たちはカウンター席に案内された。フォーリーブズ同様、コックが調理するところが見える。
置いてあったメニューを開く。アラビアータの名前がついている料理は2種類、『アラビアータ』と『アラビアータ・レッドサンスペシャル』だ。当然だが、スペシャルのほうが高い。高い分きっとうまいんだろう。スペシャルを頼むか。
しばらくすると店員が注文を取りにやって来た。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
「俺は、パンとサラダ、アラビアータのスペシャル。ドリンクはコーヒー」
「コーヒーはホットに致しますか? アイスにいた――」
「ホット」
「かしこまりました」
「私はねー、シーザーサラダ、マルゲリータ、食後にコーヒーとジェラートを持ってきてください。ジェラートはストロベリー、コーヒーはホットでお願いしますー」
「おい、アラビアータ食わねえのかよ?」
「ん~、アラビアータは別にいい~」
サエラはなぜか苦笑している。
「何でだよ、さっきの女の話聞いてただろ? ここのアラビアータめちゃうまいんだって」
「そうです。当店のウリはアラビアータでございます。一口食べたら忘れられない体験をお楽しみできますよ。是非、お試しください」
俺と一緒になって店員もアラビアータを猛プッシュ。ものすごいアラビアータ推しだ。
俺たちの推しを聞いて、サエラはますます困った顔になる。
「私……、もう、忘れられない体験済みなんです……」
えっ…………!?
次回は3月16日の12時頃に更新の予定です。
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