2-47 ミツナリを解析せよ
(注意)難解な考察がある話です。苦手な方は流し読みしてください。
2-42から2-50までは3人称メマリー視点で話が進みます。
メマリーはレイの講義の内容を思い出した。
取り巻きをたくさん召喚するボスを攻略するときは、取り巻きに潰されないように動かなければならない。
敵はミツナリだけでない。オチムシャゾンビも数体いる。
野良のオチムシャゾンビと違って統率がとれているとメマリーは感じた。安定して戦うためにも、まずはオチムシャゾンビを全滅させないといけない。
前方からミツナリが太刀を上段に構えて近づいてくる。メマリーがいる場所は、瓦礫やら太い柱があって狭い。
(こんな場所じゃ戦えないよね……。うん、脱出しよう)
サーチングアイを使用して周囲を確認。クローキングしているオチムシャゾンビはいない。大丈夫だということを確認し、メマリーは右に回った。
ところが、柱の陰から
「ハァァァ~……!」
オチムシャゾンビがぬっと出てきた。太い柱の裏に隠れていたのだ。
「うっそぉぉぉ!」
サーチングアイは隠密状態を視認できるスキルであって、物陰に隠れている敵を発見するスキルではない。
不意を突かれたメマリーはオチムシャゾンビに胸を斬られてしまった。
「きゃぁぁぁぁぁ!!」
強い痛みとともに、赤い光線のエフェクトが斬られたところから通常よりも激しく吹き出す。クリティカルだ。心臓を斬られたのだ。
クリティカルはDEFが半減し、ダメージが1.5倍される。致命的な一撃になりうる。
強い痛みに、メマリーの目に涙が浮かぶ。だが、歯を食いしばってこれを耐えた。
(こんな攻撃なんかに負けないもん!)
メマリーは剣をオチムシャゾンビに突き立てた。オチムシャゾンビはあっさり消滅。メマリーは壁伝いに走り、流し場を通り抜け、土間を脱出した。
一通り家の中を探したが、オチムシャゾンビは見当たらなかった。どうやら2体だけだったようだ。居間で再びミツナリと対峙する。
ボスを倒すには情報が必要だ。だが、ミツナリに関する情報は教えてもらえなかった。
(ミツナリのデータは分からない。でも、それはわたしが調べなきゃダメなんだ)
データの集め方は以前レイにレクチャーしてもらったことがある。
メマリーは頭をフル回転させてレイの話を思い出す。
まずすべきことは小種族の判定だ。
Mobには大種族と小種族というものが設定されている。大種族は大まかな分類で、小種族は細かな分類だ。
タイラントゾンビ(ミツナリ)というくらいだ、大種族は不死、小種族はゾンビに違いない。
小種族が分かれば大まかな特徴が分かる。
メマリーはレイから小種族の特徴を教えてもらっている。小種族【ゾンビ】の特徴は、以下のようになっていた。
vit以外の基礎ステータスは低いものが多い。
HPは高い。
移動速度は遅い。
火に弱い。
DEFが低いものが多い。
アクティブスキルを使用しないものが多い。
リンクのAIをもつものいる。
マップの出現数が多いものもいる。
状態異常を与えるものもいる。
ミツナリについて、どの程度当てはまるのかを検討。
掴まれてもわりとすぐに引きはがすことができた。strはそれほど高くないと思われる。オチムシャゾンビよりも低いかもしれない。後の基礎ステータスは不明。
HPはオチムシャゾンビ同様高いかもしれない。後で調べる必要がある。
移動速度はオチムシャゾンビと同程度、つまり遅い。
ダメージ量から判断すると、十中八九火属性に弱いと思われる。光源のこともあるから、火の魔石の外付けは絶やしてはいけない。
ダメージは十分通っている。DEFは全く問題にならない。オチムシャゾンビと同程度だ。
今までミツナリはアクティブスキルを使用していないが、オチムシャゾンビ同様クローキングを使用すると思ったほうがいい。こちらのサーチングアイのリキャストタイム時は注意したほうがいいだろう。
ボスなので、リンクでもなければ、生息数が多いこともない。
状態異常はやっかいだ。なるべく状態異常攻撃をもらわないように動かなければならない。
(ミツナリの特徴はレイさんが教えてくれたゾンビの特徴にかなり近いね。分からないこともあるから、次はミツナリのステータスの数値を調べよう)
現在のメマリーのステータスは以下のようになっている。
レベル:79
最大HP:15,800
vit:99 str:43 dex:12 agi:12 int:11 res:12
武器:SSシャムシール
火属性攻撃
現在DRA/最大DRA:2167/3000
現在SDRA/最大SDRA:2957/3100
BAT(叩ATK):6241
CAT(斬ATK):7672
SAT(突ATK):6577
HIT:4440
DOG:2290
DEF:2290
外付け魔石
耐久の魔石R×6
火の魔石R×1
防御は最大の攻撃とレイから教えられた通り、まずはATKとHITを調べる。
ミツナリの得物は脇差だ。脇差は斬の火力が出やすい武器だということを、かつてレイに教えてもらったことがある。事実、脇差を持ったMob、オニババのATKは高かった。
外付け魔石は、耐久の魔石Rを全て防御の魔石Rに変更。防御を固めないと死ぬかもしれない。
ミツナリの攻撃をわざと20%エリアで受けてみる。攻撃が何度も命中するようならば、こちらのDOGが足りないということだ。
攻撃を4回受けても全て回避。運悪く1回だけ上腕(50%エリア)に当たってしまったが、結果は変わらない。
つまり、こちらのDOGは十分。
今度はわざと必中エリアで受けてみる。3回受けて、ダメージの平均は110くらい。間違いなく最低ダメージだ。最低ダメージの10倍がATKの目安になる。ということは、ATKは1100程度だと思われる。
メマリーは驚いた。
(オチムシャゾンビのATKだって4000近くあるんだよ。いくらなんでも低すぎ! これなら楽勝かも!)
油断が顔を出しそうになったところで、メマリーは首を横にぶんぶん振って自分を戒める。
(ミツナリだって立派なボスだもん。ATKが低いんだったら、他のステータスが高いかもしれないよ。ちゃんと調べなきゃ)
次はDEFとDOGだ。
本来ならば威力の魔石などでATKを上げた状態で攻撃をするのだが、今回は威力の魔石を外付けする必要はない。
さっきの攻撃でも十分ダメージが通った。DEFを計算する必要はない。
一応、DOGは調べることにした。とりあえず防御の魔石Rを耐久の魔石Rに変更し、攻撃してデータをとってみる。20%エリアへの攻撃が5回全て命中していた。
ミツナリのDOGも大したことはない。
特性も調べてみる。
叩攻撃だと18000程度のダメージが出るが、突攻撃だと11676しか出なかった。叩が弱点だ。
ミツナリの攻撃をかわしながら、メマリーは考える。
(ATKも弱い。DEFも弱い。HITやDOGも弱い。ミツナリって、いいところが何もないよね。わたしといっしょでダメダメなのかなぁ……?)
そう思いかけたところで、メマリーは思い直した。
(そんなことない! ダメダメなわたしでも、レイさんとサエラちゃんは褒めてくれるんだ。ミツナリにだって、いいところが必ずあるはずだよ。もっと考えなきゃ……)
どんなステータスがあるのかを検討すべく、自分のステータスウインドウを開いてみた。HP、DRA、SDRAについてはまだ未検討。
(きっとミツナリはHPとDRAが高いんだ。敵のDRAは調べられないから、最後にHPを調べて完成だね)
一撃で平均18000くらいのダメージ。10回攻撃してHPバーの2割弱を減らすことができた。
1万8千×10÷2割弱≒100万
HPバーを1本折るのに必要なダメージは100万程度。
ミツナリのHPバーは2本ある。つまり、倍の200万だ。
「ミツナリのデータ、分かったよ!」
メマリーが想定したミツナリのデータは以下の通り。
名前:タイラントゾンビ(ミツナリ)
レベル:63(HSランク クエストボス)
大種族:不死 小種族:ゾンビ
HP:200万程度
vit:? str:ボーナス2未満 dex:? agi:? int:? res:?
特性防御:斬
属性倍率:火属性 2倍?
移動速度:遅い
AI:アクティブ
武器:脇差(ランク?)
DRA:非常に高い
SDRA:非常に高い
BAT(叩ATK):非常に低い
CAT(斬ATK):1100程度
SAT(突ATK):1000以下
HIT:2000以下
DOG:3600以下
DEF:200程度?
スキル:なし
レイの教えのおかげで、ミツナリのデータが解明できた。
レイのシャムシールがあれば、ATK、HIT、DOG、DEF、そして自慢のHPでさえも大したことはない。楽勝だ。
「すごいよ……、レイさん。このシャムシール、ボスも倒せる武器だったなんて……!」
シャムシールを強く握り、メマリーは上段に剣を構えた。
全てを飲み込む闇の中、赤き炎をまとったシャムシールが燦然と輝く。そのまばゆさにミツナリが顔をしかめている。
「あとは――、ミツナリを倒すだけ!」
メマリーは床を強く蹴り、ミツナリに向かって一直線に飛び出した。
次回は3月7日の12時頃に更新の予定です。
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