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2-44 かがり火定点狩り

2-42から2-50までは3人称メマリー視点で話が進みます。

 クエストを受諾した後、メマリーはビニーブ峡谷に到着した。


 メマリーは今、たいまつを左手に持ちシャムシールを右手に持っている。正直戦いにくい。

 ワーデン山道にもアクティブMobはいたが、弱いのでなんとかなった。だが、ここビニーブでは上手くいかないだろう。



 ブブブブブ――。

 夜の静寂を、けたたましい羽音が切り裂いた。ドゥームズフライだ。


 メマリーはたいまつの火を消して地面に置いた。剣を振るうには体のバランスが大切だ。たいまつを持ったままだとバランスが大きく崩れてしまう。猛スピードで飛び回るドゥームズフライを相手に、そんな状態で戦うことは厳しい。


 ウインドウを操作して魔石を外付けする。わずかではあるが、各種ウインドウは光が出る。魔石の付け替えくらいは可能だ。

 火の魔石を填めるとシャムシールの刀身が赤く燃える。剣の付近はこれで明るくなったが、それでもドゥームズフライの姿はとらえられない。



 だが、メマリーには秘策があった。メマリーがインベントリウインドウを操作すると、大きなかがり火台が出現する。

 火の魔石を入れ、薪を数本くべると、一気にメマリーの周囲半径4m分の視界が明るくなった。

 メマリーの秘策とは、このかがり火台だ。


 昼間よりも視界が制限されているとはいえ、普通に戦う分には問題ない。

 光の空間と闇の空間をドゥームズフライが出入りする。さっきまでは音はすれども姿は全く見えなかったのだが、今はドゥームズフライが飛ぶ軌道がちゃんと分かる。これなら大丈夫。

 メマリーはドゥームズフライを難なく倒すことができた。



 ドロップした魔石を拾おうと屈んだとき、自分の影が伸びて悪魔の形になったのが見えた。ローグシャドウだ。

 ローグシャドウは影に擬態しながら動くため、容易に発見できない。昼間でも難しいのだから、灯りが無い闇の中では尚更だ。今発見できたのも、かがり火のおかげである。



 それほど苦労せずにドゥームズフライとローグシャドウを倒した。この事実に、メマリーは感動していた。

 かがり火台を買うのに銀行の預金をほとんど使い果たしたが、それだけの価値はあった。しばらく、おやつは食べられそうにもないが、仕方ない。

 かがり火台があれば戦える。課題達成に向けて頑張ることができる。


「よ~し、がんばるよ~。お~」


 気合十分。メマリーは誰もいないフィールドマップで気炎を揚げた。




 狩りをして40数分が経過。かがり火を使った狩りのデメリットも分かってきた。


 かがり火台は動かないので、Mobを探しに行くことができない。付近にMobがいればいいのだが、そう上手くはいかない。ぼうっと突っ立っているだけでは効率が全く出ない。


 戦いが終わるごとにかがり火台を動かすことも、もちろんやってみた。台をインベントリに収納すると火が消えてしまうので火の魔石と薪が無駄になる。収納せずに持ち運ぶには砂利道は歩きにくい。



 そこで、メマリーはかがり火台を置いたまま、その周辺を歩き回ってMobを集める方法を思いついた。

 手順は以下の通りだ。メマリーはたいまつを持って周囲を歩き回る。その途中で出くわしたMobはメマリーを攻撃対象に定め、メマリーを追いかけてくる。何体か引き連れたところで、かがり火台に戻りまとめてMobを倒す。レイの世界ではトレイン狩りと呼ばれている狩り方だ。


 経験値がまずいオチムシャゾンビは足が遅い。走って引き離してしまえば、オチムシャゾンビとの交戦に時間をとられなくて済む。

 ただし、ヒカゲカズラにチェーンホールドされてしまうと、動けないまま大勢のMobに襲われることとなる。その点は注意してメマリーもMobを集めた。




 しばらくかがり火定点狩りを続けていたら、薪が無くなりそうになった。そこで、メマリーはいったん帰還することを決定。

 稼いだ経験値は11095。普段の半分くらいの効率だ。


(でも、やらなきゃ始まらない。狩り方も分かってきたから、次はもっと効率が出るよ。それに――)


 メマリーは足元に引かれている黄色い線を見た。


 この線はクエストラインという。今はかがり火の光が届く範囲までしか見えないが、クエストラインは現在受注中のクエストの目的地まで続いている。この線をたどって行けば、クエストを進めることができる。


 いったん家に戻りFP回復と物資補充を行う。再びビニーブに戻り次第、クエスト「オチムシャゾンビの大将を討て」を開始する。


 メマリーはシャムシールを固く握りながら、じっと黄色い線を見つめていた。

次回は3月4日の12時頃に更新の予定です。




この作品を面白い、もっと続きが読みたいという方がおられましたら、最新話にある評価をしていただければ、非常に励みとなります。

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