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2-38 メマリーのマザートマト攻略4

 チュートリアルを一通り受けて、メマリーはどんどん上手くなっていった。

 3日目にはマザートマトの最上階、3階に早くも到達。教えた俺も正直驚いている。


 そして、マザートマト攻略5日目の午後3時頃。現在獲得トマトは1483個。目標のトマト1500個まで、後17個。普通に考えれば、あと10分も狩りを続ければ終わるだろう。

 だが、メマリーはマザートマト攻略で最大のピンチを迎えていた。



 乱れ飛ぶ光線の嵐。その全てがメマリーに命中し爆ぜた。

 メマリーのHPバーが削れていく。爆発の衝撃から体勢を立て直したメマリーが目を開ける。目に飛び込んできた光景を見てメマリーは驚いた表情を浮かべた。


 キラトマ、ことキラートマトが8匹、メマリーから2mほど離れたところに浮いている。

 さらに後方には、さっきまで戦闘していたグレムリン。グレムリンはメマリーと目が合うと、ふふっと悪戯っぽい笑みを浮かべた。ちなみにグレムリンは身長50cmほどの美少女悪魔だ。


 この状況に陥る前、メマリーは1匹のグレムリンと戦闘していた。メマリーは運悪くグレムリンのスリープをくらってしまい睡眠状態になってしまった。


 グレムリン1匹だけなら、ここからでもどうにかなる。睡眠状態は体を揺らせば解除されるし、そもそもグレムリンの貧弱な爪じゃメマリーのHPを削りきることは不可能だ。

 だが、グレムリンは殴ってメマリーを起こさなかった。近くにいたキラトマの集団がメマリーの近くにやってくるのを待っていたのだ。



 外付けを変更しようとして装備ウインドウを開いたとき、メマリーは「あっ!」と小さく悲鳴を上げた。


『デバフされてるー!』


 その悲鳴を聞いて、グレムリンが空を飛びながら手を叩き、ケラケラと笑う。


 グレムリンもキラトマが来るまで何もしていなかったわけではない。デバフ魔法、つまり状態異常魔法をメマリーにかけていた。結果、メマリーは、攻撃低下、防御低下、回避低下の状態異常にかかってしまったのだ。グレムリンのバフの成功率がたいして高いとは思えないが、メマリーの運が悪い。


 そのことに気を取られた瞬間、急にメマリーのHPバーが削れた。削れたHPは400から500ほどか。


 オートで動いている配信用のカメラが、その原因を捉えていた。オニババがメマリーの背中を脇差で斬ったのだ。オニババは隠密状態で移動するスキル、クローキングを使っていた。攻撃前に一瞬姿を現すとはいえ、あの状況では気づくのは難しい。



「判断、迷うところだね」


 真剣な表情でじっとモニターを見つめるサエラ。


「ああ」


 キラトマの魔法連打とオニババの奇襲でメマリーのHPは6割程度まで減ってしまった。グレムリンとの交戦の前にHPを回復させなかったのが悔やまれる。


 ポーションを飲んでHPを回復させたいところだが、大量のキラトマ軍団がそうはさせてくれないだろう。

 強気で攻めに行くには攻低も邪魔。防低も解除したい。

 さあ、どうする?



 メマリーはインベントリウインドウを操作してポーションを取り出した。だが、それをすぐには飲まず、外付けを変更にかかる。

 外付け変更の途中にキラトマが魔法を次々と発射。


 魔法がメマリーに着弾する直前、


『ジャンプ!』


 メマリーは高く跳び上がった。対象を見失った魔法はそのまま地面に着弾。


「よしっ!」

「かわした!」


 俺とサエラが思わず歓声を上げた。

 どうやら間一髪で外付けが間に合ったみたいだな。


 ここは攻撃に邪魔されず確実にポーションを飲み切りたい局面だ。しかし魔法は緩いホーミングがついており、避けることは難しい。

 そこで、メマリーがとった選択は「ジャンプ」だった。アクティブスキル「ジャンプ」を使えば数m跳躍できる。引き付けてからのジャンプをすれば、魔法だって回避可能だ。


 メマリーは着地した後ポーションを飲み干した。しばらくHPは大丈夫だろう。



 すぐに武器を変更。変更後の武器はロッド。杖カテゴリーの武器だ。ゲームで見るような魔法の杖と違い伸縮式の警棒となっている。


 オニババの攻撃をかわしながら魔石をいくつか填めると、自分に杖を向けてキュアコンディションを使用。

 キュアコンディションは状態異常を解除する魔法だ。これで全ての状態異常が解除された。



 さらにメマリーは魔石を填める。


「魔石の填めるタイミング、上手くなったね」


 サエラが感慨深げに画面を見つめている。

 現在の状況を把握し行動の優先順位を考えたうえで、外付けを何個まで行うのかを決める。それができれば、いっぱしのJAOプレーヤーだ。


「へっ、まだまだだよ」


 テーブルの上に所狭しと並べられているクッキーに手を伸ばしながら、サエラの言葉に答えた。



 オニババが脇差を持って突撃する。だがさっきまでと違って、メマリーはよけるそぶりを見せない。

 オニババの脇差がメマリーの腹を突いた。ダメージエフェクトの数字は、たった32。もちろん最低ダメージだ。


 オニババは顔を引きつらせ、とっさに脇差からジャンビーヤに持ち替える。

 さっきの攻撃で脇差のDRAとSDRAが大きく損傷したのだろう。ジャンビーヤは魔法短剣だ。魔法攻撃ならDRAを大きく損なわない。賢明な判断だといえる。

 だが、魔法の火力はキラトマ以下。もはやオニババは居ないも同然の存在になってしまった。



 外付け魔石をいくつか変更し、ロッドをシュッと一振りし折り畳み部分を伸ばした。

 それを見てサエラが感想を述べる。


「このままロッドで殴る気みたいだね」


 ロッドは物理攻撃も及第点だ。棍よりも火力が高い。


「デバフをかけられたら、キュアコンするつもりなんだろ。それか、防御HRがもったいないとかな」


「だね」


 ロッドを手にしてキラトマの集団へ向かうメマリー。

 それを見たグレムリンがデバフ魔法をかける。メマリーは避けきれず被弾。だが、状態異常にかかったことを示すエフェクトは発生しなかった。

 モニターにグレムリンの顔が映し出された。頬には冷や汗が流れ、青い顔をして魔法を撃っている。だが、何度やっても結果は変わらない。

 さっきまでのデバフ成功率が上振れしすぎていたんだ。このランク帯の雑魚Mobのデバフなんてこんなもんだろ。



 キラトマ8匹とオニババ1体をロッドで殴り倒し、最後残るはグレムリンだけ。

 メマリーが近づくと、グレムリンはハイスピードボルテージで移動速度を上昇させた。

 グレムリンがびゅんびゅんと逃げ回る。メマリーが苦戦したドゥームズフライと同じスピード。5日前のメマリーなら、当てるのは大変だっただろう。


 メマリーはロッドを振り回して無理に攻撃を当てようとは、もはやしない。

 じっとグレムリンを観察する。そして、ロッドを構えながらじわりじわりと歩を進めていく。


 グレムリンが手にしたワンドを振り上げた。スリープのリキャストタイムが解除されたのだ。Mobが魔法を撃つときは、魔法発射までに詠唱がある。

 その隙をメマリーは見逃さなかった。


『チャンス!』


 地面を蹴って飛び出し、ロッドをグレムリンに叩きつける。


『きゃぁぁ~』


 甘ったるい悲鳴を上げて、グレムリンはポリゴンの欠片と化した。

次回は2月26日の12時頃に更新の予定です。




この作品を面白い、もっと続きが読みたいという方がおられましたら、最新話にある評価をしていただければ、非常に励みとなります。

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