2-33 俺流JAOチュートリアル6
(注意)本日は2話投稿しています。前回の話を読んでいない方は戻って確認をお願いします。
ゲームシステムの説明が多い話です。苦手な方は流し読みしてください。後書きに簡単なまとめを記載しておきます。
「次は斬だね。剣とかの刃で斬る攻撃?」
「正解だ、メマリー。斬は4つの特性の中でも断然ATKが高い」
「すごーい。斬って最強なんだね!」
「俺もそう思ってるけど、そんな単純な話じゃねーよ」
他の3つの特性と違って、斬の話はややこしい。説明が長くなりそうだ。
「斬には問題点が2つあってな。1つは、動作が難しいことだ。慣れてないやつが斬攻撃をしようとしても、叩攻撃になってしまう」
メマリーのような初心者が斬をいきなり使いこなすのは厳しい。JAOでも多くの初心者が苦労するポイントだ。
「どうして?」
「叩も突も得物を押し付ける動きなんだが、斬は違う。刃を引いて初めて斬になる」
素人は剣の刃を押し当てれば斬ることができると思っている。だが、斬るというのは引く動作。JAOではシステムアシストがついているとはいえ、押している限り斬はできない。
「へー。引くんだ。何だか、難しそうだね」
「引くっていうのを意識しなくても大丈夫~。楕円を描くような軌道で振るのがポイントだよー」
「サエラはそうやるんだな。俺は振るっつーか、回すだなー」
肩を中心とした円運動で遠心力をつけたほうが、鋭い剣撃になると思っている。
まぁ、メマリーにとっては、どっちでもいい。斬と判定されたらそれでいいのだ。
「講義が終わったら、さっそく練習しよっと!」
斬攻撃をするのは難しい。しかし、絶対にマスターしておきたい。メマリーに練習しろって言うつもりだったが、練習すると自分から言い出すとはな。
やる気に燃えるメマリーを見てサエラが1つアドバイス。
「練習するんだったら、さっきビニーブで借りたシャムシールがあるでしょ。あれで練習してみたら」
シャムシールは中近東の曲刀だ。西洋での別名はシミター。刀身が湾曲しており斬るのに適している。
「斬は刀身が反っている形状の武器のほうが出やすいよ。まずはシャムシールで斬のコツをつかんでから、他の武器で斬の練習をすればいいんじゃないかなー」
本来、西洋の剣のような刀身が真っ直ぐな武器は、引くことで斬ることは想定されていない。しかしJAOでは引く動作で攻撃をすることで斬攻撃ができる。武器の形状的に少し難しいが、システムアシストがついているので可能だ。
「斬のもう1つの問題点はSDRAの影響を強く受けることだ」
「DRAの話ででてきたステータスだね」
「そうだ。SDRAは切れ味を表すステータスだ。もう1つのDRAだと思えばいい」
「もしかして、SDRAが0になったら武器が消滅するの!?」
「そういうことだ」
「がーん!」
メマリーが口を大きく開けて驚く。まだまだSDRAの恐ろしさはこんなもんじゃねーぞ。
「DRAは減っても、スキルの使用回数が減るだけで、特に問題はなかっただろ」
「うん、なかったね。はっ、まさかSDRAが減ったら、何か悪いことが起るの!?」
「CATとSATが減少する。特にCATはSDRAの影響を強く受ける」
SDRAは切れ味を表すステータス。刃こぼれした刃物で斬るのは難しい。それを再現している。
「だから、初めこそ斬は高威力だが、SDRAが下がってしまうと威力が激減する。そうなってしまうと、叩にも負ける。その見極めが大事だな」
「さらに困ったことにね、SDRAはDRAに比べて下がりやすいんだよ」
引きつった笑顔で話すサエラ。どこか自虐的で乾いた口調にサエラの苦労が見て取れる。ピーハイには耐久の魔石が内蔵されていないからな……。すぐSDRAが減少するんだろう。
「耐久を内蔵してもあんまり上がらないのにー」
おっ、どうやらメマリーはさっきの話を覚えてくれていたようだ。耐久の魔石を内蔵しても、SDRAはDRAの半分しか上昇しない。
「SDRAの減少量が大きいのは次の2つだ。与ダメと相手のDEFの差が大きい場合、装備武器のDRAが減少している場合だ」
DRAが減少していればしているほど、SDRAの減少も大きくなる。つまり、ボロボロになった武器は刃こぼれもしやすくなるというわけだ。
「あとね、斬のアクティブスキルはDRAだけじゃなくて、SDRAも消費するから気をつけてね」
「斬って大変なんだねぇ……」
メマリーがしんみりした顔で感想を言う。それを見てサエラがメマリーを励ました。
「でも、それ以上に高火力が出るのが魅力だよ。斬の練習頑張ってね~」
◇今回のJAOのシステム説明まとめ
斬攻撃は威力が高いが、SDRAの影響を受けやすい。
SDRAが0になると武器が消滅する。
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