2-27 俺流JAOチュートリアル2
(注意)本日は2話投稿しています。前回の話を読んでいない方は戻って確認をお願いします。
ゲームシステムの説明が多い話です。苦手な方は流し読みしてください。
「次、攻撃な。攻撃は防御の次に大事なことだ」
「攻撃を当てなきゃ、倒せないもんね」
さすがのメマリーでもそれくらいは分かるか。
「与ダメを上げるにはATKを上げればいい。ATKは威力の魔石で上がる。ただし、ATKだけは威力の魔石の数値がそのまま上がらねえ。威力の魔石を外付けするときは注意しろ」
「あれ、分かりづらいよね……」
サエラが困った顔で溜息をつく。計算式を知っている俺も同意見。
「どういうこと?」
メマリーが質問する。
「回避や防御の魔石は数値分だけステータスが上昇するだろ」
Sランクの基本魔石の効果は500だ。防御の魔石Sを内蔵したり外付けしたりすると、DEFはそのまま500上昇する。
「ところがATKは、武器ごとに上昇量が違うんだ」
例えば、Nメイスに威力の魔石Sを内蔵したり外付けしたりすると、ATKは500ではなく662増加する。ところが、Nクラブに同じ魔石を填めても400しか増加しない。
「難しいなぁ~」
メマリーが頭を抱えている。
「武器屋やるならともかく、考えすぎても仕方ねーよ。その辺は臨機応変にやればいい。余裕があれば外付けしたときに、ステータスウインドウか装備ウインドウでATKがどれくらいになったかを確認したらいい」
「1つ質問いいかな?」
サエラが手を上げた。
「何だ?」
「もしかして、ダメージの下限と上限も計算できるの?」
「ああできる。計算式も知ってる」
「さっすが、レイ君!」
サエラが手を叩いて褒めた。
「でも、その前にメマリーに説明をしないとな」
メマリーはサエラの質問に目をきょとんとさせていた。当然知らない話だろうな。
「同じ武器で同じ相手を殴っても、ダメージは一定じゃないだろ」
「そういえば、そうだねー」
ダメージは、乱数の影響を受けているので一定にはならない。サエラが聞いているのは、乱数の幅だ。DEFやHIT、DOGなどにはない。
「最低の乱数は、(÷1.300)。最高の乱数は、(×1.300)だ。つまり、ダメージの下限と上限とでは1.69倍違う」
「そんなにも違ってたんだ~。1.5倍くらいだと思ってたよ~」
俺の話にサエラが感想を言った。
「お前ら、1.3倍の法則って知ってるか?」
俺の質問に2人は首を振った。
「なんでも、1.3倍違えばかなり差があると感じるらしい。1.3を2回かけると、ものすごく差が大きく感じられるそうだ」
「じゃあ、同じATKでも、最低の攻撃と最高の攻撃だったら、全然違うってことなんだ~」
「その通りだ。だから戦略を立てるときは、味方の攻撃は(÷1.3)で、敵の攻撃は(×1.3)で考えるのが鉄則だ。覚えておけ」
この考えで計算しないと、攻撃したときにいきなり武器が折れたり、今まで平気に受けていたはずの敵の攻撃で即死したりという想定外の事態が起きてしまう。
「いきなり細かい話が続いたな。話を変えるぞ。どうしてカキで狩りができて、ビニーブで狩りができなかったか分かるか?」
メマリーに質問。
「う~ん」
「お前がドゥームを倒せなかったからだ」
「はぅっ! そうだったぁ!」
「雑魚Mobっていうのは、本来簡単に倒せるんだ。いや、倒さなきゃいけない。簡単に雑魚Mobを倒すことができたら、相手からの反撃を受けずに済む。攻撃は最大の防御ってやつだ」
「昨日のカキは、離れたところから攻撃したから、安全に狩りをすることができたんだよ」
俺の言葉をサエラが補足してくれた。メマリーも俺たちの言葉を一生懸命メモしている。
「簡単に倒すことができたら、効率的に狩りをすることができる。1匹あたりの戦闘時間が短くなったら、その浮いた時間で別のMobを探しに行くことができる」
「さっきのドゥームも簡単に倒せたら、昨日のカキ養殖みたいにたくさん倒すことができたよ」
「そうだね。簡単に倒せるようにがんばる!」
メマリーは笑顔で答えた。
こいつはへたれだが、前向きだ。悪い意味でも前向きだけど、今はいい意味で前向きになっている。早くチュートリアルの成果が出てほしい。
「一番簡単に雑魚を倒すには、『やられる前にやれ』だ」
あくまでこれはソロの話。でも、PTでも大事なことだ。理解はしてほしい。
「なんか、かっこいい!」
俺の言葉にメマリーが目を輝かせる。
「だろ」
守備的な戦い方も、それはそれで悪くはねえ。でも、やっぱりこっちのほうが俺も好きだ。
「そのためには『1確必中』にこだわれ」
「1確必中?」
メマリーが間の抜けた声で言う。当然、支援センターなんかじゃ教えてくれないことだ。
「1確必中って、レイ君好きだよね」
「好きとか嫌いとかいう問題じゃねえよ、サエラ。これは雑魚戦での基本方針だ。1確必中っていうのはな、必ず相手に命中させるだけのHITと、ミニマムまで下振れしても1撃で倒せるだけのATKを確保することだ」
「どうして1確必中にこだわるの?」
「覚えておけ、メマリー。1確必中に調整した状態で戦えば、楽に戦闘をすることができる。そして、1確必中のラインを意識すれば、ATKやHITの無駄も判明する。その無駄な魔石を別の魔石に変えれば、より強くなれる」
「なるほど~、ここまで考えたことなかったな~。強い人は違うな……」
メマリーが感心している。その様子を見てサエラはにっこりほほ笑んだ。
「私もなかったよ」
「えっ……! そうなんだ! 十五勇者のサエラちゃんでも!」
「うん。それだけね、レイ君は一生懸命なんだ。だから、レイ君は私よりも強いんだ」
「そ、そうなんだ……」
「私もレイ君みたいにすごい冒険者になりたい。メマリーちゃんも、レイ君みたいにすご冒険者になろうね」
「うん!」
気合十分。メマリーが俺の域まで達するのは難しいかもしれない。でも、その一歩はもう合格だ。
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