2-22 基礎ステータス1
評価を昨日に引き続きいただきました!
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ゲームシステムの説明が多い話です。苦手な方は流し読みしてください。後書きに簡単なまとめを記載しておきます。
「メマリー、まずは基礎ステータスを教えてくれ」
基礎ステータスとは次の6つのステータスのことだ。
生命力を表すvitality。vitと略されることが多い。
筋力を表すstrength。strと略されることが多い(他にいくつか読み方あり)。
器用度を表すdexterity。dexと略されることが多い。
敏捷性を表すagility。agiと略されることが多い。
知力を表すintelligence。intと略されることが多い。
抵抗力を表すresistance。resと略されることが多い。
メマリーはサエラと交換したリンゴのタルトを頬張りながら答えた。
「えっほぉ――、vit12、str12、dex12、agi12、int11、resも12だよ」
「はぁぁぁぁぁ!! おまっ、どんっっな、ステ振りしてんだよぉ!!」
JAOの定石から外れているメマリーの基礎ステータスに、今日一番の大声が出てしまった。
「お客様」
後ろにコプアさんが営業スマイルで立っていた。
「はい……」
「店内で騒がないでいただけますか」
なぜか敬語のコプアさん。言い知れぬ迫力に圧倒されてしまう。
「悪ぃ……ケーキ頼むから、許してくれ……」
溜息をついてメマリーをジト目で睨む。
「お前ぇのせいで、コプアさんに怒られちまったじゃねーか」
「ごめんなさい……」
俺に怒られてメマリーが謝った。
「次からステ振り気をつけようね」
サエラはメマリーの頭をテーブル越しに撫でて慰める。頭を撫でられてメマリーは気持ちよさそうにしている。
「で、メマリー、本題に戻すぞ。そもそも基礎ステについて、どこまで理解しているんだ?」
俺の質問にメマリーは胸を張って答える。
「全然分かってません!」
「よくそれで冒険者をやろうと思ったな。そういうことは、始める前にちゃんと調べておけ」
「ううっ……。考えるより先に行動するの、わたしの悪い癖……」
いるよな、説明書もろくに見ないでゲームを始めるやつ。
「まぁまぁ、レイ君もメマリーちゃんをいじめちゃだめだよ」
「うっせぇ」
「誰か教えてくれなかったの?」
サエラがメマリーに尋ねる。
「うん。酒場や狩場で聞いたんだけど、みんな馬鹿にするだけで教えてくれなかったの」
ま、あの底辺どもにそんなことを期待するだけ無駄だろうな。
「だから、いっぱい教えてくださいね!」
期待に満ちた目でメマリーは俺たちを見つめる。
「よし、俺が基礎ステータスについて講義してやる。基礎ステはレベルアップによって上昇させることができる、っていうのは知っているな」
「うん」
メマリーはこくんとうなずいた。
「一度上昇させてしまうと、やり直しはもうできないから、ステータス上昇は計画的に慎重に行わなけりゃならねぇ」
JAOでは課金アイテムであるヴァリュアブルストーン(通称『石』)40個、つまり約4000円でステータスリセットができた。もちろん、石が存在しないこの世界ではステータスはリセットできない。
「各種基礎ステの効果を教えておく。まずはvit」
「メマリーちゃん、覚えておいてね。vitは最重要基礎ステだよ」
JAOでもvit型は人気があった。「HP0=死」のこの世界ではもっと重要だろう。
「そうだ。vitの値によって、最大HPと上限FP、ポーション回復量が変動する。ATKがものすごく高いMobもいるから、最大HPが高いに越したことはねえ」
サエラと俺のvitは低い。HPは5000にも満たないくらいだ。しかし、レベルカンストしたvit99のキャラクターはHP16,600になる。vitの有無で3倍以上も違うのだ。
「それと、上限FPの増加も重要だ。FPが最大値に達すると行動不可になるからな。上限FPが高いほど長く行動できるので、お得だ」
上限FPもvit1だと100だが、vit99だと145になる。この差はでかい。
「今から頑張ってトップ冒険者に追いつくためにも、vitを上げて上限FPを増やし、行動時間を延ばす必要があるともいえるな」
「分かったぁ、これからはvitに全振りすればいいんだね!」
「基礎ステは99までしか上がんねえぞ。というか、他の基礎ステも検討しろよ」
「うん、分かりました!」
「次はstrな」
「strも大事だよ」
サエラも同意する。
「strは物理攻撃のATKと所持量、そして文字通り、力の強さに関係する」
「力の強さって?」
「文字通りの意味だ。右肘をテーブルにつけろ。何があっても手の甲をテーブルにつけるなよ」
俺が肘をテーブルにつけると、メマリーも同じように肘をつける。メマリーの手を右手で握り、一気に腕をテーブルに倒した。腕相撲ってやつだ。
「すごい、すごーい。レイさん力持ちー。巨人と腕相撲しても勝てそうー」
メマリーが手をさすりながら感心している。っていうか、さすがに巨人相手に力比べは厳しいから。
「俺のstrは99あるから、力が強い。力の強さは押し合いやノックバックに関係している。戦闘は、どれだけ相手に邪魔されずに攻撃を繰り出せるかが肝だからな」
「ノックバック?」
「攻撃を受けたときに、吹き飛ばされたり、のけぞったりすることだ」
「何といっても、strは所持量増加が一番大事だよ」
サエラの言う通り。str1だと所持量は5600だが、str99だと所持量は15000にもなる。
「どうして大事なの?」
「はぁ!? 所持量5600でどういう狩りをするつもりなんだよ。タランバ・ハニカムみたいな低ラン狩場と違って、高レベルの狩場での狩り、ましてボス攻略をするつもりなら、武器は1本じゃ話にならねえ」
「狩場に何本も武器を持っていくんだね。わたしなんてクラブ1本しか持っていないのに」
「そんなのいくらでも作ってやるよ」
「わーい、やったぁ~」
「金を払ったらな」
「お金が貯まったらお願いします……」
「strがなきゃ、外付け魔石もろくに持てねえ。魔石はWEIが10もあるからな」
WEIというのは重さを表すステータスだ。所持量5600あれば、魔石は560個持てるということになる。
「最後に、武器によってはWEIが5000を超えているものもある」
「5000! わたしが使ってるクラブ3本分よりも重いんだぁ」
メマリーが手を上げて仰天している。ちなみに、クラブのWEIは1400。
「ツヴァイハンダーや長巻なんかがそうだな。WEIは高いが、その分強力だ。所持量が高けりゃ、武器の選択肢が増える。覚えとけ」
次回は2月13日の12時頃に更新の予定です。
◇今回のJAOのシステム説明まとめ1
vitが上昇するとHPが上昇する。
◇今回のJAOのシステム説明まとめ2
strが上昇すると、力の強さ・所持量が上昇する。
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