2-13 貼り紙システム
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すでに時間は18時をとっくにまわっている。陽が落ちて人通りがまばらになっている大通りを、風を切って歩く。
俺の後ろをついてくるサエラが俺に質問する。
「ねえ、そんなに急いでどこに行くの?」
「武器を売りに行く」
「まだ武器を作ってないけど、いいの?」
「武器を作るのは客が来てからでいい」
「ど、どういうこと~?」
サエラが間の抜けた声を上げる。
「武器を予め作っておくと、在庫ができるだろ。今日のコプアさんみたいに」
「うん。大変そうだったね」
「店を持つまでは、武器は客が来てから作ることにする」
「売り物も無いのに何を売るの?」
「簡単だ。商品は客に決めさせればいい。当面は受注生産でいく」
「受注生産?」
「こういうことをしたいと客の希望を聞いて、それに見合った武器を作るんだ。もちろん、作る武器は最大レアリティの魔石12個フルだ」
簡単な話だ。この世界のことが分からないのなら、客に聞けばいい。色々な話を聞くことで、俺はこの世界のニーズを知ることができる。客にとっても自分の希望を叶えることができる。
武器屋にとっても客にとっても悪くない話だ。
「それに、受注生産だから在庫は絶対に出ねえ」
「それはいい考えだよ~。武器はクリームチーズみたいに食べられないもんね」
「それで、完全受注生産の宣伝を『貼り紙』でする」
JAOでは宣伝システムとして、貼り紙システムというものがある。
貼り紙とは、冒険者の酒場や魔石屋、メテオジャム前の高札など、至る所に張られている掲示物だ。掲示物といっても、貼り紙に近づけばデータをダウンロードでき、簡単に見ることができる。
貼り紙屋のNPCに依頼すれば、貼り紙を使って宣伝してもらうことができる。
公序良俗に反しているものや過度にリアルに関わるもの以外なら、内容は何でも構わない。JAO内で行うコンサートの告知とか、動画配信の告知とか、クエストの手伝いの呼びかけとか、果ては人探しなんていうものまでも見かけられる。
「こっちの世界では貼り紙って使われているのか?」
前の世界では、生産プレイヤーのセールの宣伝、高額アイテムの買い取り募集、ギルドメンバーの募集などは、主に貼り紙で行われていた。
だが、ここは異世界。同じ状況だとは限らない。
「人気あるよ。お得な情報が多いから、結構みんな利用してる」
「それじゃあ、大丈夫だな」
サエラの言葉を聞いて、自然に歩くスピードが遅くなる。
「うん。大丈夫だよ。早くレイ君のこと、みんなに知ってもらいたいなぁ~」
サエラが俺の隣に並ぶ。オレンジ色の街の灯りに照らされたサエラの笑顔を見ていると、不思議と心が温かくなる。今日が昨日までよりも温かいだけかもしれねえけど。
「くそっ、今日は冷えるな。とっと行くぞ」
ズボンのポケットに手を突っ込み、再び足早に歩き出す。
「そうかなぁ? 今日は暖かいとおもうけど~……。って、待ってよぉ~」
その後、貼り紙屋に宣伝を依頼。この世界の人たちは夜にあまり活動しない。今日はここまでだな。
次回は2月4日の12時頃に更新の予定です。
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