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2-10 価格設定2

(注意)本日は2話投稿しています。前回の話を読んでいない方は戻って確認をお願いします。

「武器の値段について何か意見はねえのかよ」


「う~ん、私は難しい話は苦手なの……」


 サエラは少し首をかしげて考える。


「値段が安かったらダメなの? タイラン商会と同じ値段で売れば、みんな買ってくれるよ」


 サエラの意見にコプアさんと俺は渋い顔をする。


「それはあんまり良くないよね……」


「論外だな」


「がんばって考えたのに……」


 サエラはがっくりと肩を落とした。



「何でダメなの?」


 サエラの質問には答えず、俺の目的を説明する。


「一昨日お前に、俺の武器を褒められ、俺の武器が活躍するところを見たいって言われて、すげえ嬉しかった。冒険者がタイラン製の雑魚武器で満足している現状を、俺は変えたい」


 1テラを貯めてプラチナムストリート1番地を買い取るという目標も、もちろん忘れてはいない。忘れるわけがねえ。

 だが、それは最終目標だ。その前に、この世界にはびこっているタイラン製の粗悪品を駆逐し、まともな武器を使ってもらう。そしたら、俺たちの可能性はもっと広がる。この世界を遊び尽くすことができる。

 1Tはそれからでも遅くねえ。


「だったら、なおさら……」


「でも、それは俺一人が儲かったところで、達成できねえんだ」


 まだ熱いコーヒーを一口飲んで話す。


「俺の武器が売れて、俺が作った武器がブランド化したとしようか。欲しいってやつは後を絶たないだろう。でも、作るのは俺一人しかいない。製造できる数には限度がある。多くの人はまともな武器を使うことはできねえ。タイラン商会の武器を使うしかないだろうな。それじゃあ、今までとほとんど何も変わんねえよ」


「なるほどー。レイ君の言う通りだね」


 サエラは俺の説明を素直に受け入れてくれた。



「それにね、サエラちゃん。武器屋はね、遊びじゃないよ。商売なの」


 コプアさんがフレンチトーストを焼きながらサエラに話しかける。

 利益を上げることは大事。タイラン商会の店長も言っていた。あのときはむきになって否定したが、紛れもない現実なのだ。


「武器屋がみんな冒険者とは限らないよ。大金を簡単に稼ぐことができる冒険者と違って、一般人は武器を作って稼がなきゃいけない。賛同してくれた武器屋が一般人だったら、その人が武器屋で食べていけるようにしていかなきゃいけない」


「そうなのか?」


 JAOでは当然武器屋はみなプレイヤー、つまり冒険者だ。違うのか?


 サエラがコプアさんの話を補足する。


「うん。冒険者じゃない武器屋さんのほうが多いんじゃないかな」



「それとね、安売りって、お客さんは嬉しいけど、商売をしている立場からすれば、めちゃくちゃキツイよ」


「そうなんだ、コプアさん。でも、その分お客さんがくるからいいんじゃないの?」


 サエラの質問にコプアさんは首を横に振る。


「お客さんの数を増やすのって難しいよ。安売りしたからって、ご新規さんが増えるとは限らない。でも安売りすれば、間違いなく1人当たりの利益はガクッと落ちるの」


 そういや、俺がバイトしていたコンビニも安売りはただの一度もしなかったな。


「向こうの世界で定期的に安売りしていたら、安売りしているときじゃないと客が来なくなった店もあったな。しまいには安売りやめたけど」


「それにね、こっちが低価格で販売したら、タイラン商会は値下げ合戦を仕掛けてくる。そうなったら、潤沢な資金を持ってるタイラン商会が絶対勝つよ」


「それは俺も思った」


「タイランの資産は10T超えているっていう噂もあるくらいだから、少々損を出しても痛くもかゆくもないはず。そんな戦いに乗るだけ損だよ」



「2人の説明で、安い値段で売るのはまずいって、よく分かったよ。あ、ココア冷めちゃった」


 サエラにも納得してもらえたようだ。


「俺たちは良いものを、それにふさわしい値段で売る。これが移動工房の基本方針だ」

本日は2-9と2-10を投稿しています。


次回は2月2日の12時頃に更新の予定です。




この作品を面白い、もっと続きが読みたいという方がおられましたら、最新話にある評価をしていただければ、非常に励みとなります。

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