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2-5 負のスパイラル1

 コプアさんの茶々にキレていると、「メッセージが届きました」のウインドウが出現。何だ? この世界にサエラ以外、知り合いなんていないはず。疑問に思いながら、「今すぐ読む」の文字をタップ。


 メッセージの送り主はオークションハウスだった。そういや、この世界で最初に製造したSロングソードをオークションにかけたんだったっけ。


 タイラン製Sロングソードの相場は大体420キロから480Kくらいだった(Kというのは1000を表す単位)。

 だが、タイラン製の武器は内蔵魔石のレアリティがしょぼいうえに数も少ない。対する俺のSロングソードは、S武器の内蔵魔石としては最も高いレアリティであるHRランクの魔石を12個フルで内蔵している。同じSロングソードでも性能は比べものにならない。

 値段も文字通り桁違いになるはずだ。最低落札価格は450Kにしておいたが、果たして落札価格はいくらになっているのだろうか。ステータスの上昇値からしたら……2.5メガか(Mというのは100万を表す単位)? 3Mか? 元の世界と物価が違い過ぎるからな。笑いが止まんねえ。ぼろ儲けだな。



 期待に胸をふくらませながらメッセージを開く。落札価格を目にして思わず叫んでしまった。


「ふっ……ざけんじゃねえええ!!」


「ど、どうしたの、レイ君!?」


「俺の力作のSロンソが、たった、520Kだとぉ!!」


「え、ど、どういうこと? 落ち着いて、ね、落ち着いて」


「これが落ち着いてられるかぁ! あんなゴミと、まともな武器が100Kぐらいしか変わんねえだとぉ!」


「ごめんなさい。まだ他のお客さんもいるし、もう少し静かにしてもらえるかな……」


 荒ぶる俺をコプアさんが優しくなだめた。店内には俺たちの他に客が3人いる。サエラが贔屓にしている店に迷惑をかけるわけにはいかない。


「コプアさん、水くれ!」


 俺の注文を聞いてコプアさんがお冷を追加する。お冷を氷ごと口に放り込み、バリバリと氷を噛み砕く。



「あのね、レイ君……。S武器って、高くは売れないと思うよ」


 サエラの当たり前すぎる指摘に溜息をつく。


「んなことくらい知ってらぁ。いくらHRフルとはいってもS武器だからな」


「そうじゃなくてね、S武器を高い値段で買ってくれる人はいないよ。みんな性能なんてほとんど気にしていないと思うよ」


「どういうことだ?」



「えっとね、この世界の冒険者は3つのレベル帯に分かれているの」


 向こうの世界では強い武器が行き渡っていたので、ほとんどのプレーヤーはレベル99、つまりカンストしていた。


「まずは、高レベルのマップで積極的に冒険をしていた、いわゆる【トップ冒険者】。レベルは90代。主なパーティー狩場はHSランクだよ」


 トップ冒険者とはいえ、強い武器が普及している向こうの世界と違って、雑魚ばっかりだな。

 JAOでは、HSランクの狩場はレベル56~70のPT狩場として設定されている。

 狩場のレベルは、本来の適正レベル-30といったところか。


「それから、お金は欲しいけど命は惜しい、いわゆる【中堅冒険者】。レベルはまちまちだと思うけど50代から80代前半。80代後半まで上げるのはちょっと大変だと思う。主なパーティー狩場はHRランクからSランクのマップだよ」


 JAOでは、HRランクの狩場はレベル36~45、Sランクの狩場はレベル46~55のPT狩場として設定されている。

 狩場のレベルは、本来の適正レベル-15~-30といったところか。

 幅があるのはちょっと分かりにくいかもしれない。JAOでは狩場のレベルが上がると、レベル相応の武器を持っていったとしても攻略難易度は上がっていく。武器がダメなら、なおさら難しくなる。安全を重視するのなら、だんだん適正レベルとの差が大きくなるのも当然だ。


「最後は、この世界の冒険者の大部分を占める層、いわゆる【一般冒険者】。中堅冒険者やトップ冒険者からは【底辺】とも呼ばれてるよ。全冒険者の7割弱はいると思う。レベルは60代前半が多いと思うけど、詳しくは分かんない。普通、狩りはソロでするの。狩場はミズナール水源、タランバ平原、タランバ丘陵、タランバ・ハニカムの4つだけ」


「マ、マジかよ……」


 俺はレベルの低さに絶句した。いや、レベルだけは高ぇのか。マジでそいつら底辺だよ。

 タランバ・ハニカムが20台後半のダンジョンで、あとは20台のフィールドマップだ。こんな低いランクの狩場で適正レベル-35ってどうなってるんだ? ソロとはいえ、こんな低レベルのマップに行く必要なんて全くねえよ。

 ハニカムは金銭効率がこのレベル帯にしてはめちゃくちゃうまいから、まだ分かる。ハニカム以外はただのフィールドマップ。何の特徴もないマップのはずだ。なぜそんな所で狩りをするんだ。訳分かんねえ……。


「60代でハニカムなら、そりゃあタイラン製のS武器で十分すぎるよなぁ……」


「うん……」


次回は1月29日の12時頃に更新の予定です。




この作品を面白い、もっと続きが読みたいという方がおられましたら、最新話にある評価をしていただければ、非常に励みとなります。

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