9-45 レイドボス、クタマ戦1
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全PTの合流後クエストが進行した。
ゴール地点では、進行役NPC【有崎先人】の友人【佐藤雪華】が、この事件の黒幕【クタマ】と戦っていた。
夢の世界の魔王になるには、先人たちは不適格である。
そう考えたクタマは、先人の友人【西園寺貴美】の体を乗っ取った。そして、先人のライバル【クリフトン】たちをけしかけ、先人の友人【リパルシャント】を洗脳し、先人たちを実力で排除しようとしていたのだった。
クタマとの戦いで傷ついた雪華は、西園寺貴美の肉体からクタマを除霊することに専念する。彼女の代わりにクタマを弱らせるために、俺たち冒険者が戦うことになった。
これが今回のレイドクエストのストーリーだ。
プレイヤー、完全に巻き込まれ損じゃねーか。
クタマとの戦いは進み、現在フェイズ2終了間近。
狐少女クタマは空中に浮いている。
「スリープ」
クタマがロッドを振るうと、雲のような魔法弾が地上に向かって打ち出された。
「当たらな――っ……」
魔法弾をかわそうとしていたメマリーの足が突然止まる。
身体が勝手に動いてしまう状態異常、憑依の効果だ。
スリープをくらったメマリーはそのまま眠ってしまった。
「ディフェンスダウン」
眠っているメマリーに別の魔法弾が命中。
メマリーは防御低下の状態異常にかかった。
メマリーと同じ第2PTのヒーラーが、苦虫を噛みつぶしたような顔になる。
「うっそぉー。またデバフ解除しなきゃいけないのー!」
そう嘆くヒーラー自身も回避低下と防御低下にかかっている。
クタマの恐ろしい点は異常な成功率のデバフだ。
resボーナス9あるメマリーでさえもキツい。
仕掛けてくるデバフの種類は、睡眠、憑依、防御低下、回避低下の4種類もある。フェイズが上がると、さらに増えるのだろう。
フェーリッツからPT通話が届く。
『154242、西門開門したっす! ここからじゃ数は分かんないっす』
それを聞いた総指揮のアリスが、西門付近にいる第4PTリーダーのヒナツと通話を開始する。
『ヒナツさん、西門の追加ゾンビの数は? ――そうですか。――ごめんなさい。増援は出せません。何とか殲滅してください』
このステージには特殊なギミックが備わっている。
俺たちが戦っている場所は巨大な壁に囲まれている。
その壁の東西南北には巨大な門があり、そこから3~5分おきに10数体のゾンビが出現するのだ。
門から出現するゾンビを放置すると、ボス戦に数十体のゾンビが乱入することになる。
そうならないように、フェーリッツには開門場所、開門時間、ゾンビの数、ゾンビの動向の調査を、第4PTにはゾンビの殲滅を任せている。
強烈なデバフと、無限に増え続けるゾンビ。
これらが今回のレイドボス、クタマの特長だ。
だからといって、勝てない相手じゃねえ。
「キュアコンディション!」
アリスのキュアコンでメマリーの睡眠と憑依が解除された。
「クタマの残りHPはあとわずかです。次の一斉攻撃で2本目のHPバーを叩き折って、フェイズ3に移行しましょう」
クタマの弱点その1。耐久力が低い。
JAOでは原則HP≒ボスの強さとなっている。
クタマはHPが低い。
DOGとDEFは高めだが、低下が効くので何とかなる。
しかも、特性防御は魔防御。武器による物理攻撃のダメージは1.5倍される。水属性も有効であり、ダメージはさらに1.5倍される。
現にわずか開始15分弱でフェイズ3に移行寸前だ。
アリスが矢継ぎ早に指示を飛ばす。
ゾンビ対応にボス戦のコントロール。
今回の指揮は大変だ。
アリスの指示通り、各人準備完了。
今回俺は自陣で待機だ。ちくしょう。
「行くよーー!」
メマリーの号令で一気に飛ぶタンクたち。
事前にかけていたエアフロートの効果で、空中の相手でも追い詰めることができる。
「ホーミングバブル!」
クタマの振るったスタッフから、いくつもの光る泡が発射される。
メマリーや他のタンクたちに命中したが、
「効かないもん!」
ほとんどダメージはくらわなかった。
メマリーたちは歩みを止めず、クタマを追い込んだ。
クタマの弱点その2。火力が低い。
現在のクタマのATKはおそらく1万前後。雑魚敵のゾンビとそれほど変わらない。この程度のATKなら、武器によってはタンク用武器でなくても最低ダメージに抑えられる。
どれだけいやらしい攻撃をしかけてきても、HPを削れなければプレッシャーを与えることはできない。
もちろんフェイズ3以降がどうなるかまでは断言できないが、現時点の印象はレイドボスとしては弱い。
「今だよっ!」
メマリーの号令で、鎌槍を持ったアタッカーが前に出る。
そして――、
「バーティカルムーン!」
アタッカーがクタマを斬り上げた。空中コンボ炸裂。
天高く打ち上がったクタマはただ斬られるばかり。
そのまま地上に激突。
そこに、起き上がる時間すら与えず他のアタッカーたちが追撃する。
「「「マイティビート!」」」
高火力スキルの嵐の前に、さすがのボスもひとたまりもない。あっという間にクタマの2本目のHPバーが折れた。
「服が汚れてしまったのだ」
クタマが起き上がり、尻尾で塵を払う。
そして、心底不快そうに呟く。
「調子に乗るな。グズども」
ゴゴゴゴゴ……
地面が揺れ、クタマの足元がせり上がる。
そこから身長10mはある巨大ゾンビが出現した。
「貴様らに圧勝し、私こそが魔王にふさわしい実力の持ち主だと見せつけてやる!」
クタマが巨大ゾンビの頭の上から吠えた。
クタマの言葉を聞いて、電流のような緊張感が全身を巡る。
「ここからが本番ってことか……!」
さぁ、フェイズ3の始まりだ。
次回は8月2日の12時頃に更新の予定です。
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今回のレイドダンジョンは拙作『将来魔王になって夢の国でハーレムを目指す』とのコラボです。
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作者ページから飛ぶことができます。
参考までにURLも張っておきます。 https://ncode.syosetu.com/n2551dl/




