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9-43 Finalステージ攻略(第2PTパート)2

9-42から今回(9-43)までは3人称メマリー視点で話が進みます。

 ドンッ! ドドンッッ!



 突然、扉を強く叩く音。

 仲間が助けに来たにしては乱暴すぎる。


 メンバーの一人が窓から外の様子をうかがった。


「囲まれているぞ……!」


 メマリーも窓をのぞきこむ。

 ゾンビの集団だ。

 数はさっきよりも多い。20後半、いや30体以上いるかもしれない。



 再び重苦しい空気がこの場を支配してしまった。

 PTリーダーのガンザスが声をかける。


「みんな落ち着こう」


「けど……」


 それでもアディナの不安は消えなかった。


 メマリーが提案する。

 ここに逃げ込む前から思っていたことだ。


「外に出て戦おう!――やっぱり、こんな狭い場所に居ても何も変わらないよ」


「それは危険すぎる」


 ガンザスが首を横に振る。

 そして、説明を続ける。


「これから扉を少しの間だけ開けるよ。中に入ってきた少数のゾンビを各個撃破する。撃破後再度扉を開けてゾンビを誘い込む。これで行こう」


 そう言って、ガンザスは武器を装備した。

 ローマ時代の大剣ファルクスだ。


 メマリーがガンザスに質問する。


「そのファルクス……HIT足りてるんですか?」


「この部屋の中だと眉尖刀はRAN制限に引っかかるんだ。これでいくしかないよ」


 狭い部屋の中では、一定の長さ以上の武器が使えない。

 この仕様をRAN制限という。


 ガンザスの言葉を聞いて、アディナの顔にさらに恐怖の色が増した。

 湧き上がる感情は恐怖ではないが、メマリーも思う。

 メインアタッカーがHIT不足で戦えるのか?



 けれども、不安に思う時間なんてない。

 支援を開始して迎撃準備を整える。


「開けるよ」


 ガンザスがそう言った時、メマリーは強烈な肩の痛みを感じた。


「痛ぁっ!! ――って、ええっ!?」


 メマリーの肩は紫色の手に掴まれていた。

 少し離れた場所に、いつの間にか紫色の小さな水溜まりのようなものが発生しているではないか。そこから4本の腕が伸びている。

 名前は【泥の手(しょうまお)】――メマリーが出会ったことがないMobだ。


「「「うわあああああっ!!」」」


 まだドアは開けていない。

 居なかったはずのMobに他のメンバーにも衝撃が走る。


「メマリーさん! ――しまっ!!」


 ガンザスの気が逸れた隙にゾンビたちが一斉になだれ込んでしまった。室内は一転してパニックになる。



 さっきの1撃でHPバーが黄色になっている。

 ATKは3万あると思っていい。自分とガンザス以外は即死する火力だ。


(みんなゾンビと戦っている。わたしが倒さないと!)


 外付魔石を変更。襲い来る腕をひらりひらりとかわし、メマリーは泥の手に向かっていく。


「ドレインスティング!」


 水溜まりにマンプルの刀身を突き立てた。

 ドレインスティングには回復効果がついている。メマリーのHPは全快した。


 ドレインスティングで泥の手のHPを4割程削ることができた。あと2回攻撃すれば倒すことができる。


「えいっ!」


 メマリーの攻撃が命中。

 泥の手のHPバーが赤くなった。


「これでとどめっ!」


 メマリーは泥の手目掛けて一直線に刃を突き立て――。


「嘘ぉっ!?」


 メマリーが突き刺したのはゾンビの足だった。

 シフトチェンジという魔法で泥の手がゾンビと入れ替わったのだ。



 ゾンビがメマリーにそのまま覆いかぶさろうとする。

 メマリーは慌てて身を起こし、これをかわした。


(泥の手はどこ……? 居たぁ!)


 泥の手はアディナの背後に回り込んでいた。

 気味が悪いくらい長すぎる腕を伸ばし、アディナの肩を掴もうとしている。


「危ない!!」


 メマリーは自分を襲っていたゾンビを背負い投げし、泥の手の腕に当てる。

 アディナへの攻撃を阻止できた。


 アディナが振り向いた。


「いやあああ!!」


「アディナさん! 魔法攻撃!」


 メマリーが呼びかけても、アディナは固まっている。

 予想不能の状況が立て続けに起きてパニックになってしまっているのだろう。


 泥の手は投げられたゾンビを振り払い、再びアディナを襲う。

 メマリーはアディナに向かって走る。


「殺させないもん!」



 泥の手への攻撃はかわされたが、腕を2本掴むことには成功した。

 メマリーはアディナに呼びかける。


「早く撃って!」


「でも、ウチなんかじゃ……」


 構えたステッキが震えている。

 元中堅という劣等感と非常時に対する恐怖感、自分が命中させなければメマリーが死ぬというプレッシャーで、いっぱいいっぱいなのだろう。


「だいじょうぶ」


 メマリーは優しく微笑んだ。


「戦えるよ――」


 劣等感、恐怖心、プレッシャー。

 メマリーにだって気持ちは分かる。

 それでも、そんなものに囚われていては何も変わらない。何もできない。

 大切なのは踏み出すこと。


(うっ!)


 背中に強い痛みが走る。

 きっと残った腕で泥の手に攻撃されたのだろう。


 それでも、変わらぬ微笑みをアディナに向け続ける。

 自分が攻撃されることでアディナへの負担が減るのなら、こんな痛みどうってことはない!



「ウチだって――」


 アディナが右足を半歩前に踏み出す。

 弱々しく震えていたステッキが止まった。


「ウチだってやれる! フォトンアロー!」


 3本の光の矢が放たれた。

 それらは泥の手の腕に見事命中。

 泥の手は消滅した。



 メマリーはアディナに声をかける。


「乗り越えられたね、弱い自分に」


「うん!」


 メマリーは信じていた。

 だってアディナは、お兄ちゃん(レイ=サウス)が選んだ24人の1人なんだから。




 ゾンビ2体がこちらに向かってきた。

 メマリーはタックルでいったん引きはがす。


「縮こまってもダメだってこと、今度はみんなにも伝えなきゃ」


 メマリーは外付魔石を変更する。

 ルシファーがドロップした貴重な魔石を1個填めた。


「ついてきてね」


 メマリーは扉を見据え、マンプルを装備した右手を突き出す。


「あ゛ぁ~~~。あ゛ぁ~~~」


 3体のゾンビがメマリーの行く手に立ち塞がる。

 だが、メマリーは止まらない。



「クルセイダーズラッシュッッ!!」



 次々とゾンビたちが立ち塞がったが、クルセイダーズラッシュを使用したメマリーは止まらない。ゾンビたちをなぎ倒し、メマリーは扉に向かって突進する。メマリーが進んだ跡になぎ倒されたゾンビたちの道ができた。


 メマリーは外に出た。やはり外にもゾンビがいる。


「ウォークライ!」


 ウォークライは周囲のMobを挑発するスキル。

 一斉にMobがメマリーを襲い、メマリーは揉みくちゃにされた。


「ムーンエッジ! ムーンエッジ!」


 目の前のゾンビたちが煌めく塵に変わり、メマリーの視界が開けた。



「大丈夫かい」


 手を差し伸べてくれたのはガンザスだった。

 ガンザスの得物は眉尖刀に変わっていた。


「ガンザスさん、外で戦う気になってくれたんですね」


「ああ。アディナさんが外に出てくれたからね」


「ま、そういうこと」


 アディナが照れくさそうに帽子を深く下げ笑う。

 白い歯が光って見えた。


「籠城していても中に入ってこられたら、僕たちがかえって不利になることも分かった」


 きっと泥の手はテレポーテーションを使って入ってきたのだろう。


「それじゃあ、みんなを探しに行こうー!」






 その後、フェーリッツが第2PTのもとにやって来た。

 マップデータをもらいゴール地点を教えてもらったので、第2PTは無事他のPTと合流しゴール地点にたどり着くことができた。

次回は7月19日の12時頃に更新の予定です。




この作品を面白い、もっと続きが読みたいという方がおられましたら、下にある★★★★★のところを押して評価していただければ、非常に励みとなります。






今回のレイドダンジョンは拙作『将来魔王になって夢の国でハーレムを目指す』とのコラボです。

こちらも読んでいただいたら嬉しいです。

作者ページから飛ぶことができます。

参考までにURLも張っておきます。 https://ncode.syosetu.com/n2551dl/

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