9-39 Finalステージ突入前
前回は評価をいただきました。ありがとうございます!
リアルが多忙なので休載することもありますが、まだまだ移動工房は続きます。
半年以上分のストックもありますので、お待たせしすぎないように発表いたします。
週1まったりペースの更新ですが、これからも変わらず応援よろしくお願いします。
「ふう……。やっと終わったか」
研ぎを続けること30分強。
ようやく全員分の武器を研ぎ終えた。
「ありがとうレイ君。これでFinalステージも戦えるね。はい、差し入れだよ~」
「サンキュ」
サエラからジュースとクッキーを受け取る。
「こっからが本番だ。DRAが無けりゃ長期戦は乗り切れねえからな」
「それじゃあFinalステージに備えて最後の休憩だねー」
「後30分休ませてくれ。さすがにFP88は溜まりすぎだ」
FPとは、fatigue pointの略で、疲労値を表すステータスだ。
FPが最大値になると行動不能になる。
ちなみに俺のFP最大値は100。
俺も休憩に入ろうとした時、特選騎士団の動画を見ていた一団からドッと声が上がる。
「特選騎士団が2ndステージをクリアしたぞ!」
やっぱ課金武器は強ぇな。
レイド特効がある分、通常武器とは火力が桁違い。
高HP高DEFの相手こそ、その真価を発揮する。
とはいえ、俺たちのほうが有利なのは間違いない。
早くクリアできたのは俺たちだ。
トゥルルン……トゥルルン……
通信の着信音が鳴った。
相手は――タイランだと!
急いで通信を繋ぐ。
『何だぁ、どうしたぁ!?』
『声がデカいよ……レイ=サウス。そんなことより、配信用のライブカメラに映ってくれない? 主役が居ないと視聴者も喜ばないよー』
タイランに言われてライブカメラに映り込む。
『で、何か用か?』
『コングラチュレーション!! 2ndステージクリアおめでとう! 運勝負に持ち込まれちゃ、さすがの私たちでもどうしようもないね』
『はぁ? 運ゲー?』
俺は運ゲーなんかでクリアした覚えはねえぞ。全部計算づくだ。
『でも、Finalステージは難しいよ。運だけじゃノンノン』
『んなこと、言われなくても分かってるつーの』
カメラ目線でタイランが盛り上げる。
『これからの勝負に運なんて不要。圧倒的実力で移動工房を叩きのめすところを見せてあげるよ! そ・こ・で、ハンデをあげまーーーすっ!』
長くてうっとおしい長髪をかき上げタイランが宣言する。
『1時間! 1時間後に特選騎士団は出発します!』
後30分俺たちも休めば、俺たちの休憩も1時間。
同じ1時間なら条件は同じか。
悪くねえ。
そんなことを考えていたら、タイランがとんでもないことを言ってきた。
『君たちにすぐ出発されたら、さすがの我々も追いつけないかもしれないね』
『はぁ!?』
『レイ=サウス、君たちにとってこれはビッッッグチャーーーンス!――1時間のビハインド。圧倒的なリードをつけるには十分すぎる時間じゃない?』
タイランの狙いは明らかだ。
これはパフォーマンス。逆転劇を演出しているのだ。
パフォーマンス重視のタイランらしい作戦だ。
それに、タイランだってFP回復のための休憩が必要だ。
タイムロスを盛り上げに変える。
演出テクニックに関しては相変わらず上手ぇな。
「これってチャンス……? でもレイ君のFPが……」
サエラが不安そうな顔で俺に話しかけてきた。
予定よりも30分早く出発することのメリットとデメリットを考える。
手堅くFPを回復するか。
30分を有効活用しリードを広げるか……。
よしっ、俺の腹は決まった。
「ジデ、メマリー、ザディウェック、ナルレ、FPを申告しろ」
彼らは各PTのメインタンク。
メインタンクが機能しなけりゃ戦闘は継続できない。
「ギヒ、36だ!」
「大丈夫、38」
「んあー、47だあー」
「31」
「問題ねえ! すぐ行くでいいよな、アリス?」
「私もレイさんと同じ意見です。行きましょう」
メマリーが俺に質問する。
「わたしはいいけど、お兄ちゃん……大丈夫……?」
「俺か」
そう言って、インベントリからクリームバナナを取り出してかぶりつく。FP回復アイテム、クリームバナナの効果でFPが3回復した。
「問題ねえ」
視聴者が見てるんだ。
売られた喧嘩は買わなきゃ、配信者じゃねえ!
アリスがさらにフォローを入れる。
「レイさん以外は30分休憩しています。レイさんが動けない分は、他のメンバー23人がその分動けばいいんです。レイドクエストは力を合わせてクリアするものですから」
『いやぁ~~~いいこと言うねぇ~~! その通りさ! 23人が力を合わせることができたなら、どんな困難なステージだって乗り切れるだろうね! 君たち23人の大活躍、私も配信を見ながら応援してるよ! フレー、フレー、移動工房!』
珍しくタイランが俺たちを応援しまくる。
明らかに嘘だろ。目が邪悪そのものだし。
「準備は完了です。案内してください」
アリスがレイドPTを代表して、進行役のNPCである有崎先人に話しかける。
「クリフトンをけしかけリパを洗脳した黒幕、【クタマ】を止められるのは、主人公しかいない」
先人がそう言うと視界が暗転した。
俺たちはいよいよFinalステージに突入する。
次回は5月31日の12時頃に更新の予定です。
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今回のレイドダンジョンは拙作『将来魔王になって夢の国でハーレムを目指す』とのコラボです。
こちらも読んでいただいたら嬉しいです。
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参考までにURLも張っておきます。 https://ncode.syosetu.com/n2551dl/




