9-34 1stボス戦(タイランパート)
この話は3人称タイラン視点で進みます。
時は少しさかのぼり、まだレイたちが1stステージを攻略している頃。タイラン率いる特選騎士団たちも1stステージのボスと戦っていた。
『僕たちが勝つ確率――100%』
機械音が流れた後、王洪、オセロメー、シルヴェストロの3人のボスに、バフのエフェクトが発生する。
(どうせ永続バフだって分かってるんだからさぁ~、これ見よがしにエフェクトなんか出すなよ。はぁ~~、うざ~)
このステージでは【0%】と【100%】のギミックが3分ごとに交互に繰り返される。
【0%】はボスたちに対して状態異常回復を行い、プレイヤーに対して永続各種低下と永続封印と強制ディスペル(バフ解除)をかける。
【100%】はボスたちに対して状態異常回復、永続の各種バフと永続のスキルリチャージを行い、プレイヤーに対して強制ディスペルをかける。
特に【0%】の永続封印は凶悪だ。
res無視なので、封印耐性100%の守護霊以外全員が封印にかかってしまう。
立て直すには守護霊の力を借りるしかない。
(今月の1stボス攻略は守護霊ごり押し安定。だから、チートスキルでDRAを気にせず守護霊顕現できるレイ=サウス有利なんだよねぇ~。はぁ~~、うざ~)
タイランも歴戦の勇者だ。頭は良い。
そうでなければ、特選騎士団を率いて毎月のレイドを攻略できるわけがない。
正しい分析ができている。
「タイラン様、王洪に攻低をかけました」
「いちいち報告しなくてもさぁー、そんなことくらい敵のステータス見たら分かるでしょ!」
「ささいなことでも報告しろと、いつもタイラン様が……」
「シャラァ~~ッップ! チミぃ! うるさいくらい報告しろとは私は言ってない!」
正しい報告をした部下にうるさく当たり散らすタイラン。
部下は慌てて逃げだした。
(戦線も安定してきたし、レイ=サウスの配信でもチェックするかー)
いくら守護霊使い放題とはいえ、彼らは通常武器しか使えない。どうしても戦力は劣る。
(王洪の矛は超ATKだから、タンクが1人か2人死んでたら笑えるのになぁ~)
そう思いながら、タイランはレイ=サウスの配信を視聴する。
(1人も死んでいないじゃん。つっまんないなぁ~)
守護霊を好きなだけ顕現できるレイ=サウスがいれば、戦局は安定する。
分かり切った結果にタイランは落胆した。
(――ちょっと待て)
予想外の展開にタイランは愕然とする。
(まだレイド開始から33分しか経っていないんだぞ。何で王洪がやられているんだあああああ!)
冒険者たちは1stボスの王洪を既に撃破していた。サブボスのシルヴェストロもそのうち撃破されるだろう。
対するタイランたちは、まだ王洪のHPバーを1本も折れていない。当然サブボス2人はまだ手付かずのままだ。
(早い早い早い早い早い、早いっってえええ~~!! 守護霊ぶっぱでもこれは早すぎでしょ~~!!)
タイランは知らなかった。
1stダンジョンの攻略時間で差がついたのだ。
タイランたちが23分かかったダンジョンを、冒険者たちはたったの9分で抜けてみせた。
それに、冒険者たちの快進撃にはもう1つの理由がある。
敵の総指揮アリスが信じられないことを言い出した。
『そろそろ【0%】の時間です。スキル一斉攻撃でシルヴェストロを仕留めましょう』
(あ~っひゃっひゃぁぁ~~っ! こいつ馬鹿かぁ~。アタッカーのほとんどが封印かかってんのに、スキルなんて撃てるわけないし!)
今回の1stボス戦で何が厄介かというと、【0%】のギミックによる永続封印だ。それさえなければ、タイランたちだって10分もあれば王洪を倒せている。
(面白いから、スキル失敗するまでレッツ視聴ターイム)
シルヴェストロとオセロメーを冒険者たちが包囲。
このタイミングで【0%】のギミックが発動する。
『君たちが勝つ確率は――』
「今だ!」
「フェイタルスラッシュ!」
「ダブルカッティング!」
「マジックアタック!」
レイ=サウスの号令で冒険者たちは次々スキルを発動させた。
「マイティビート!」
サエラの攻撃でシルヴェストロは砕け散った。
「なななななななななななななななぁぁぁっっっ!」
「何だって」とさえ言えないほどにタイランは仰天した。
口を開きすぎて、顎が外れて落ちそうだ。
『馬鹿な! 確率は0%のはずだ! こんなこと……100%あり得ないぃぃ!』
モニターの中のクリフトンが半狂乱になって叫ぶ。
それはタイラン(こっち)の台詞だ。
封印中なのにアクティブスキルを発動できるなんて、100%あり得ない。
(こんなのはチートだ! レイ=サウスはチーターだあああああ!!)
タイランの非難は的外れ。
レイ=サウスはチートスキル【移動工房】と【移動武器屋】を持つが、それ以外のチートスキルは持ち合わせていない。
だがレイ=サウスは、仕様を見抜く観察眼と、アッと驚くようなアイデアを思いつく発想力を備えている。
レイ=サウスがいたから、仕様の穴を突いたスキル一斉攻撃ができたのだ。
(そんなバカな……。これは悪夢だ。そうでなければ……)
「タイラン! 聞いているのか、タイラン!」
特選騎士団4番隊隊長バファルガーの声で、タイランは我に返った。
「王子が勝手に王洪に突撃をしてやられそうだ。なぜ貴様ら第2PTは動かない!」
「あ、あぁ……。そうかい、じゃあ……」
タイランが指示を出そうとした時、前線で叫び声が上がった。
「守護霊アレクシアがやられたぞ!!」
守護霊アレクシアは守りの要。特に1stボス戦では必須の戦力。
タイランの悪夢はまだ始まったばかり。
次回は5月10日の12時頃に更新の予定です。
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