9-26 オールメンバー、オールバトル２
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アメニアは第１ＰＴのタンクの叫びを聞いていた。
自分たちのような普通の冒険者ではドレイクみたいな化け物には敵わないと。
彼は攻略隊が７月レイド１ｓｔステージに挑むことを最後まで反対していた。
裏切り者とグルになっていたからではない。
彼はＰＴメンバーの命を預かるタンクとして反対していたのだ。
（やっぱり、私たちだけで挑むのは無謀でしたか……）
アメニアの脳裏に一瞬後悔がよぎる。
その時、第１ＰＴのレイ＝サウスと目が合った。
力強い眼力はリーダーにふさわしい。
第１ＰＴは再びボスに向かって行った。
弱気になってはいけない。
子ウサギのように臆病なクウィちゃんだって勇敢にボスに向かっているのだ。
自分が諦めるなんてできない。
（それに、ギルマスが諦めていては、私を慕ってくれている攻略隊メンバーに示しがつきませんの……）
Ｕダンジョン攻略隊の前身はアメニアとクウィの２人ギルドだった。
名前は『華の乙女会』。
ダンジョンで出会った美少女冒険者（？）クウィちゃんと、アクセサリーとお洋服の話で盛り上がり、結成したギルドだった。
昔はクウィのことを女子だと思っていたのはいい思い出だ。今も男扱いしていないのだが。
２人で色々なマップを冒険した。
冒険禁止区域ではないマップなら大体踏破した。
未知の景色に心奪われながら、他愛もない話に花を咲かせるのが好きだった。
レイ＝サウスが優良な武器とダンジョンの攻略法を広めてからは、２人はレイ＝サウスの話を何度も聞きに行った。
彼の話は自分たちトップ冒険者でも目から鱗のことばかりだった。
２人はレイ＝サウスから得た知見を、伸び悩んでいる他の冒険者に惜しげもなく広めた。面倒見のいいアメニアは冒険者の相談にも乗った。
そんな２人の周りには多くの中堅冒険者が集まった。
中堅冒険者主体のギルドを立ち上げてほしいという話がアメニアにいくのは当然だった。
彼らは普通の冒険者。
冒険者なのに、冒険が面白いと思っていた人はほとんどいなかった。
アメニアはギルド立ち上げにあたって誓った。
自分が得た知識や技術だけでなく、冒険の面白さを伝えたい。
そして、クウィちゃんの隣が心地良かったように、他の冒険者にとっても居るだけで素敵な場所を造ろうと。
こうして、華の乙女会は解散し、Ｕダンジョン攻略隊が結成された。
昔を思い出し、アメニアは悟った。
（そうですわ……。勝つか、負けるか。それも大事なことですけど、私の使命は『普通の冒険者に冒険の面白さを伝えること』。まずは――）
アメニアは武器を仕込み杖に変更する。
そして納刀したまま、
「サイコバレット！」
水の弾丸が飛竜の翼を撃ち抜いた。
第２ＰＴのヒーラーたちがアメニアに猛抗議をする。
「俺たちはヒーラーでしょ！ どうしてわざわざボスのヘイトを上げるような行動を取るんです！？」
「そうよ。ボスのヘイトが上がったら、次襲われるのはあたしたちだよ！」
「じゃあ～、このまま第３ＰＴが殺されるのを黙って見ているのが正解なんでしょうか～？」
「そっ、それは……」
「タンクやアタッカーだけに怖い思いをさせられませんわ。――私たちヒーラーも一緒にボスを追い詰めましょう～」
「でも……、アタッカーがコーナーに追い詰め、追い込んだらタンクがコーナーにボスを固定する。それがセオリーなんじゃ……」
「一人一人の力は弱くても、それを束ね合わせて戦うのが攻略隊のスタイル――ではありませんか？」
アメニアは笑った。
それこそが攻略隊。
誰が何と馬鹿にしようとも、一番大切で自慢のギルドだ。
「ギルドメンバー３１人全員が全力で戦う。私たちはいつだって、そうやって戦ってきたじゃないですか」
アメニアの放った魔法を嫌がって、ドレイクが後退する。
「さぁ～、一緒にドレイクを追い詰めましょう～。一番追い詰めた人はクウィちゃんと一日甘々デートなんてどうでしょうか～」
「よーし、じゃああたしやるわ！ クウィちゃんに何着せちゃおう～」
「デ……デート……。じゃなかった。俺は男に興味ないけど、ドレイクを追い詰めるのはやるからなっ！」
ヒーラーが次々に魔法を放ち、ドレイクに追い込みをかける。
ドレイクはだんだんコーナーに追い込まれていく。
ドレイクを追い込んでいくたびに、第２ＰＴに笑顔が戻っていった。
次回は３月１日の１２時頃に更新の予定です。
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【防御は最大の攻撃】です！～ＶＲＭＭＯ初心者プレイヤーが最弱武器『デュエリングシールド』で最強ボスを倒したら『盾の聖女』って呼ばれるようになったんです～
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