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9-25 オールメンバー、オールバトル1

 暁光チームが7月レイド1stステージに挑んでからの3日間、攻略隊は会議に会議を重ね攻略検討を行った。


 暁光チームの戦いを徹底的に分析することで、Mobのデータを推定し、暁光チームの良かった点悪かった点を洗い出した。

 次に、自分たちはどう戦うべきなのかについて、攻略隊メンバー31人はアイデアを出し合い、形にしていった。


 そうして作り上げた7月レイド1stステージ攻略プラン。

 これなら暁光チームに勝てる。

 胸を張って言える仕上がりになった。


 ――それでも本番が上手くいくとは限らない。




「グワーッッ!」


 唸り声を上げ迫る飛竜。


「うわあああああ~~!!」


 散り散りになって攻略隊メンバーが逃げ惑う。

 彼らはアタッカーPT。

 ボスの攻撃を正面切って受けることが仕事ではない。

 しかも、高範囲魔法をくらった直後なのでHPはほとんど残っていない。

 一撃でももらったら終わりだ。


「やみくもに逃げないでくださいまし~、タンクがタゲを取りに行けませんわ~!」


 アメニアがPTメンバーに落ち着くよう呼びかける。

 しかし、パニックになったメンバーは誰もアメニアの言葉に耳をかさない。



「今助けに行くよーっ!」


 クウィの号令で彼と共に俺たち第1PTが飛竜に近づく。

 第1PTはタンク隊。タゲ取りが仕事。


「ボスに攻撃!」


 クウィの号令で第1PTがボスを攻撃する。

 攻撃をすることでヘイト値が溜まりタゲを奪い返せる。

 しかし――、


「グウォッ! グウォッ!」


 ボスは第1PTを無視し、アタッカーPTメンバーを追い回し続けていた。




 現在は7月レイド1stステージのボス、ドレイクとの戦闘中だ。

 ドレイクのデータは以下の通り。



 名前:ドレイク(3rdアニバーサリー)

 レベル:102(HUランク 1stボス)

 大種族:龍 小種族:ワイバーン

 HP:4億超

 vit:35 str:103 dex:14 agi:98 int:89 res:63


 サイズ:巨大

 特性防御:物

 属性倍率:火属性 無効、水属性 1.5倍?、風属性 無効、土属性 1.2倍?

 AI:アクティブ

    ヘイト変動が大きい

  フェイズ3:火牙2・尾針・風牙・火炎で戦う

 状態異常耐性:毒100%・スタン±0%?・麻痺100%・回低100%・速低100%


 WP:牙攻撃時はDOGが5千減少する

 SP:風牙・尾針のWDL減少


 武器1:風牙

 省略


 武器2:火炎

 火属性攻撃

 前方広い範囲を攻撃

 ATK:2500程度?

 HIT:?

 DOG:6千超

 DEF:3千強

 アクティブスキル:サーチングアイ


 武器3:火牙1

 省略


 武器4:尾針

 尾針BAT:1万1千程度

 尾針SAT:2万5千超

 尾BAT:1万3千前後

 HIT:1500以下

 DOG:1万弱

 DEF:8千前後

 パッシブスキル:毒攻撃(尾針のみ)

 アクティブスキル:エレガントステップ

          ペネトレイション


 武器5:火牙2

 火属性攻撃

 CAT:5万5千程度?

 MAT:3万5千程度?

 HIT:1500以下

 通常時DOG:1万弱

 牙攻撃時DOG:5千弱

 DEF:8千前後

 アクティブスキル:ドラゴンブレス

          ダブルカッティング

          ホーミングバブル

          エネルギーエクスプロージョン

          ファイアブレス

          テンペスト

          ファイティングオーラ

          ドッジアップ



 フェイズ2まではボス相手でも戦えていた。

 だがフェイズ3に入ってからは、抑えることができなくなった。



「グガァッ!!」


 ドレイクが第1PTの方に向き直る。

 なんとかタゲ取りが上手くいったのだ。

 だが、安心するのはまだ早い。


「ゴアアア……」


 飛竜の口の周りに火のエフェクトが発生する。

 これは火炎攻撃のモーションだ。


 これを見た第1PTのタンクが肩を落とす。


「ここでまた火炎かぁ……」


 ゴオオオオオ……

 火炎が第1PTに向かって吹かれた。

 全く熱くない。ダメージも大したことはない。

 しかし――、


 ドレイクは第1PTを無視し、再びアタッカーPTを追い回す。

 タゲが火炎のせいで外れてしまったのだ。



 これが苦戦の原因の1つ、火炎によるヘイト減少だ。



 火炎のATKは非常に低く2500程度しかない。

 一方、こちらのDEFは2万以上。

 JAOではタンクが被ダメージを抑えすぎるのは禁物だ。

 Mobの攻撃が低ダメージに終わると、ヘイト値が大きく下がりタゲが外れてしまうからだ。


 だからといって、こちらのDEFを下げるのは悪手。

 DEFを下げた状態で高ATKの火牙の魔法を受ければタンクでも死ぬ。

 ドレイクは火炎と火牙の2択を迫る。



 第1PTのサブリーダーが地団駄を踏む。


「くそっ、リフレクトミラーが割れていなかったら、ヘイトを保てるのに!」


 攻略隊は火炎対策を考えた。

 リフレクトミラーというスキルは魔法を反射するスキルだ。

 魔法を反射してしまえばダメージを受けない。

 つまり、火炎でヘイトが下がることはない。


 しかし、フェイズ3になると強力な範囲魔法の種類が増えたために、リフレクトミラーが割られたり、リフレクトミラーのリキャストタイム中に火炎を撃たれたりすることが多くなった。




「俺たちを無視するな、ウォークライ!」


 ウォークライは強制的にタゲを取る挑発スキル。

 ドレイクが第1PTのサブリーダーを追ってボス部屋の隅に移動した。


「ドレイクが|4角≪よんかく≫に行った!」


 4角というのはボス部屋入口からみて右手奥のコーナーのことだ。

 指示が通りやすいように攻略検討会議で呼び名を決めておいたのだ。


「チャンスっ! このまま4角に押し込めるよっ! 第1PTタンクと第3PTはドレイクを追い込んでください! 追い込んだら、第1PTアタッカーが攻撃してくださいっ!」


 クウィの指示が飛ぶ。

 俺は武器をモルゲンステインから仕込み杖に持ち替える。

 アタックの準備は万端だ。


 しかし、他のアタッカーたちの動きが鈍い。

 彼らが躊躇している間に挑発の効果時間が切れてしまった。


 遅れてアタッカーたちが突撃するが、逃げる準備を整えていたドレイクは、攻撃の合間をするりと抜けた。

 逃げるドレイクを俺は懸命に追いかけたが、一人では追い詰められるわけがない。

 ドレイクはまたボス部屋の中央に陣取ってしまった。



 これがもう1つの苦戦の原因、アタッカーたちによるプレッシャー不足だ。



 暁光チームもドレイクには手こずっていた。

 ドレイクが器用にボス部屋を高速で飛び回るため、有効打を与えられなかったからだ。


 そこで攻略隊はドレイクをボス部屋のコーナーに追い込む作戦を立てた。

 コーナーに追い込むことができたら、逃げ場がないドレイクに弱点の攻撃魔法やデバフ魔法を当てることができる。

 ドレイクはこちらが手を出し続ける限り簡単に逃げられない。


 ところが、フェイズ3になるとなかなか追い込めなくなった。

 ドレイクはフェイズ3から超火力の火牙2を使用する。火牙2のCATは推定5万5千。無対策だと余裕で即死する火力だ。

 これにアタッカーがビビってしまった。

 アタッカーがビビったら、敵にプレッシャーをかけることはできない。




 またしても第1PTはドレイクの引きつけに失敗した。

 ドレイクはアタッカーたちを、さらに追い回す。

 戦線は完全に崩壊した。



 そんな状況にイラついたのか、第1PTのタンクの一人が叫んだ。


「ちくしょうっ! だから、俺はレイド対決なんて反対だったんだ。()()()冒険者がこんな化け物に勝てるわけないだろ!」


 俺とクウィ以外の第1PTメンバーの顔が曇る。

 なすすべもなくタゲ取りが失敗したばかり。

 そんなみじめな状況でマイナスの言葉は心に刺さる。

 他のPTがボスに手一杯で聞こえていないことが、不幸中の幸いかもしれない。


「おい、今そんなことを言っても……」


 サブリーダーの制止を振り切り、タンクは俺に食って掛かる。


「それでも、レイ=サウスさん。()()()冒険者じゃないあんたなら、この状況をひっくり返せるはずだ。あんたがタンクをやってくれ!!」


「ダメだ」


「ジャッジだからか!?」


「そうだ」


「そんなことを言ってられない状況だろ!」


「違うな」


 第1PTリーダー、クウィの目を見る。

 その眼に宿っている光は――


「指揮官はまだ戦う気だぜ」


 消えちゃいない。



「ごめんなさい。ボクの指揮が不甲斐ないばっかりに怖い思いをさせて……」


 クウィがタンクの手を優しく握る。


「それでも、攻略隊メンバーを信じてほしいの。普通の冒険者でも力を合わせれば、普通でない力が出せるんだって」


 攻略隊は普通の冒険者の集まり。

 だけど、数は正義。

 大勢のメンバーが全力を出せれば、普通どころか最強にもなれる。



「そのためにも立て直しの作戦を考えなきゃいけないんですけど~……、まだ思いつかなくてぇ~……」


「クウィちゃん、それは動きながら考えようよ」

「行こう。我々に立ち止まっている暇はない」


 他のメンバーもクウィとタンクを励ます。

 一人一人は普通でも、それを支え合い補強することができるのは攻略隊の強みだ。


 武器を握りなおしたタンクの肩を叩く。


「お前、普通にタンク上手ぇからな。――期待してるぜ」


 お世辞でも何でもない。

 こいつがしっかり動けばタゲを奪い返せる。

 俺はそう評価している。



 現在の戦況を確認したとき、第2PTのリーダー兼攻略隊マスター、アメニアと目が合った。


 アメニアとクウィ。

 攻略隊をまとめる2人がメンバーを引っ張れば、必ず逆転できる。

次回は2月22日の12時頃に更新の予定です。




この作品を面白い、もっと続きが読みたいという方がおられましたら、下にある★★★★★のところを押して評価していただければ、非常に励みとなります。




こちらも読んでいただいたら嬉しいです。


【防御は最大の攻撃】です!~VRMMO初心者プレイヤーが最弱武器『デュエリングシールド』で最強ボスを倒したら『盾の聖女』って呼ばれるようになったんです~


本作の目次上部にあるJewel&Arms Onlineシリーズという文字をクリックしていただければ、飛ぶことができます。

参考までにURLも張っておきます。 https://ncode.syosetu.com/n6829g

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