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8-37 ナンバーワンを決める戦い10

20件以上のいいねをいただきました。

私たちの小説を面白いと評価していただいて、本当に嬉しいです!


長かったルシファー戦もいよいよ大詰め。

感想、評価、ブクマ、いいね、何でも大歓迎です。

これからも皆様に喜んでいただけるような物語を紡いでいきますので、どうか応援よろしくお願いします。

 この戦いの視聴者に向けてメッセージを送る。


「さぁ、おしゃべりは終わりだ。ここからは計算づくの展開を楽しんでくれ!」


 外付魔石を入れ替え、ルシファーの元へ走る。


「くっ……」


 ルシファーが片翼を懸命に動かし飛び上がろうとする。

 だが、1枚の翼では満足に跳べない。

 俺はルシファーの懐に潜り込んだ。


「バックスタブ!」


 ルシファーが背後に回り込んだ。

 機動力に自信がなくても、背後に回り込めば安全かつ確実に攻撃できる。その判断は正しい。

 だが――、


「それも計算づくだぁっ!」


 腰を大きく捻って刺突攻撃をモーション避け。

 そのままルシファーの側面に回り込む。

 手首と肘を掴み、合気道の要領でルシファーをぐるっと投げた。


「ぐっ!」


 再びルシファーの顔が地面に激突。

 ルシファーの腕を抑えたまま、クリスを振り上げる。


「アーマーブレイク!」


 ルシファーの頭上に防御低下のアイコンが浮かんだ。

 俺の予想ではルシファーのDEFは40326。

 防低がかかれば26884まで減少する。

 一気に勝負を決めるのなら、絶対に防低をかける必要がある。


「我の特性防御は物理。防低をかけられても、単発の物理攻げ――ゲボァ!」


 ルシファーの頭を踏んづけて立ち上がる。

 こんな負け惜しみに付き合うほど暇じゃねえ。


「知ってるっつーの」


 ルシファーモードの特性防御は物理。物理攻撃には圧倒的に強い。

 これまで、特にフェイズ2では苦しめられた。



「ダッシュ!」


 全速力で走り、ルシファーとの距離を取る。

 外付魔石を変更した後、クリスをルシファーに向けた。

 光る『+』とそれを中心とする大小二つのサークルが現れる。これは魔法の照準サイトだ。

 サイトをルシファーに素早く合わせたタイミングで、魔法を発射。


「行くぜぇ!」


 エナジードレイン、マジックアタック、フォトンアロー、ホーミングバブル。

 ルシファーに体勢を立て直す猶予も与えることなく、ひたすら魔法を撃ち込み続ける。



「くっ……。魔法のくせに、なぜこんなにも痛い!」


 ルシファーが驚くのは無理もねえ。

 JAOでは物理攻撃と魔法攻撃なら、DPS(秒間ダメージ)が高いのは圧倒的に物理攻撃だ。

 つまり、大ダメージを与えるには物理攻撃。魔法攻撃は補助火力。

 これはJAOの常識。


 だが、そんなJAOの常識は、この神殺しのクリスには当てはまらねえ。




 クリスのレシピはこうだ。


 武器:HUクリス(ランカー武器 製造者:レイ=サウス)

 DRA:10400

 SDRA:8400

 BBAT(受ATK):64803(str99)

 CAT(斬ATK):124636

 SAT(突ATK):65858

 MAT(魔ATK):49911(int1)

 HIT:11890(dex:99)

 DOG:10(agi)

 DEF:10(res1)


 内蔵魔石:威力の魔石U×6

 耐久の魔石U×1

 命中の魔石U×1

 スキルディレイ減少の魔石U×2

 ウエポンディレイ減少の魔石U×1

 リフレクトミラーの魔石HS×1


 外付魔石:威力の魔石U×3

 命中の魔石U×1

 攻撃魔法スキル枠×2

 自由枠×1



 俺が予想したエクスカリバーのレシピは圧倒的な超火力構成。ATK6万超えとか、耐種族の魔石無しで受けきれるわけがねえ。

 そこで、離れた位置から攻撃することでエクスカリバーに一切仕事をさせず、俺のペースに持ち込み一気にケリをつける戦略を採ることにした。



 そのうえで絶対にやらなくちゃいけないことは3つ。

 ミートチョッパーで翼を切り、アーマーブレイクで防低をかけ、魔法攻撃の連打でHPを削る。


 この戦略が可能な武器はクリス、ジャンビーヤ、仕込み杖の3種類。

 仕込み杖は、魔法を使用するときに納刀しなければならないので論外。ジャンビーヤは魔法の威力が低い。

 よって、武器はクリスを選択。



 超短期決戦をするために、威力の魔石を多く組み入れてDPSを高めることにした。

 MATはほぼ5万。ここまで威力が高ければ、魔法といえども、ルシファーの高DEFの上から大ダメージを与えることができる。


 だが、魔法はスキルディレイが大きく、連射するには向いていない。

 そこで、スキルディレイの減少の魔石やウエポンディレイ減少の魔石を組み入れることで、スムーズに魔法を使用できるようにした。

 こうすれば、威力の魔石だけを組み入れるよりもDPSは高くなる。同時に、弾幕でルシファーの動きを止められる。




「くっ! ジャンプ!」


 俺の外付魔石を交換したタイミングを見計らって、ルシファーが飛んだ。

 一気に近づき再び近接戦に持ち込む気だな。


 しかし、それも計算の内だ。

 外付魔石をさらに変更。

 逆に、俺からルシファーの懐に飛び込んで――


「ヴァーティカルムーン!」


 対空カウンターを決めてやった。


「オラオラオラオラオラァァァァァ!!」


 打ち上げられたルシファーに対して、空中コンボを決める。

 CATは12万あるからなぁ。さすがのルシファーも痛ぇだろ。


「見ろ! これが俺の新技だぁっ!」


 ルシファーの体が最高点に達したところで、スキル発動。


「マジックアタックッッ!!」


 クリスの刃がルシファーの腹を貫いたと同時に、攻撃した部分が爆発。

 ルシファーは150,617の大ダメージをうけ、3度目の墜落。


 今決めたのは重ね当てという技だ。

 重ね当てとは、攻撃と同時に魔法を叩き込み大ダメージを与える攻撃だ。

 重ね当てをするには、わずか0.001秒にも満たない間に2回の攻撃を同時に叩き込まなければならない。

 非常に難しいテクニックなので、狙って決められるのはツフユぐらいしかいなかった。

 今頃、配信を見ているツフユはめちゃくちゃ悔しがっているだろうなー。


 大事な本番で決めることができて、マジで嬉しい。

 練習しておいてよかったー。



 だが、喜ぶのはまだ先だ。

 ルシファーのHPバーを確認。

 残りHPは4分の3くらいか。

 ってことは、ルシファーモードが始まって1割ぐらい削ったってところだな。

 ここまでは順調。



 さぁ、こっからはさらに攻勢をかけるぜ!


「サエラ、メマリー、カタログを配れ。移動工房特売セールの時間だぁ!」


 俺のチートスキル【移動武器屋】を使えば、武器屋をどこでも開設できる。

 武器を購入するには、カタログに載っている商品を選び、店員に話しかけ、代金を支払えばいい。

 カタログを配り、代金決済を行うことができる店員はここにいる。

 サエラとメマリーは移動工房の信頼できる店員だ。


「セール対象は対アビゲイル用武器のみだ! 全員買えよ!」


 対アビゲイル用武器とは匕首あいくちのことだ。

 匕首を装備すると、アサシネイトを使用できる。

 アサシネイトとは、隠密状態で移動し、そのまま高威力、クリティカル補正大、バリア貫通の攻撃をするスキルだ。


 1人でちまちま殴ってもルシファーは倒れない。

 アサシネイトを何発も叩き込むことで、一気にルシファーのHPを削る。



「お前らぁ、一斉に攻め上がれ!」


 俺の合図でPTメンバーがルシファーに向かって走る。

 しかし、このままではアサシネイトは発動しない。


 アサシネイトは暗殺攻撃をイメージしたスキルだ。

 スキル発動から攻撃モーションの開始まで隠密状態になるが、その間にサーチングアイの効果で隠密状態が見破られると、攻撃が失敗に終わってしまう。


 現在、ルシファーにはサーチングアイがかかっている。

 これを何とかしない限り、アサシネイトはできない。


「くらぇ! ディスペル」


 俺が魔法を発射すると、


「ディスペル」

「ディスペル」


 サエラとアリスがディスペルを俺に合わせて発射。


 翼の折れたルシファーじゃ、全てかわすことは不可能。

 ディスペルはバフ効果を解除するスキルだ。

 ルシファーのサーチングアイの効果が消えた。


「くっ、サーチ――」


 既に5人全員がルシファーに迫っている。

 サーチングアイをかけ直そうとしても、もう遅ぇ。

 俺以外の全員の姿が一斉に消えた。


「アサシネイト!」

「アサシネイト!」

「アサシネイト!」

「アサシネイト!」


 サエラ、フェーリッツ、メマリー、アリス。次々繰り出されるアサシネイト。

 不測の事態にルシファーは避けることすらできない。


「グワアアアアアッッッ!!」


 ルシファーの絶叫がこだまする。

 一撃平均20万越えの超ダメージ。

 ルシファーのHPバーがみるみるうちに削れていく。



「よーしっ、全員自陣に戻れ」


 ルシファーから5m程離れた位置から指示を飛ばした後、


「アサシネイト!」


 ヒナツのアサシネイトが決まった。

 上振れしているから、ルシファーにとっても痛いにちがいない。


 ルシファーが顔を上げた。

 その目は鋭く、自信に満ちあふれている。

 ルシファーの野郎、まだ勝利を狙っているな。


「フハハハハハッ! 調子に乗って攻めすぎだ!」


 ルシファーの大喝にヒナツの動きが一瞬止まる。


「しまっ……!」


 俺たちが調子に乗ってラインを押し上げた時点で自分の勝利が決まった。

 ルシファーはそう確信しているはずだ。


 来るぞ。

 ルシファーが仕掛ける起死回生の王手――



「マナァァァストリイイイイイムッッッ!」



 ルシファーを中心に激しい光の爆発が発生。

 半径10m以内の全ての対象に威力2倍のダメージを与える、超高火力範囲魔法。それがマナストリームだ。

 エクスカリバーのMAT39198のマナストはメマリーでさえ耐えられない。

 PTは全滅――。


「残念だったな」


 マナストは届かなかった。

 光のドームが俺たちPTを守っている。

 光のドームはJAO最強の対魔法障壁――【サンクチュアリ】だ。

 俺がスキルウインドウを操作して、サンクをマニュアル発動させたのだ。


「ば、馬鹿な……っ!」


 ルシファーが驚くのも無理はねえ。

 ヒナツとルシファーとの距離は50cmくらいだ。そのわずかな隙間を光の壁が隔てている。

 しかも、ルシファーと壁との距離はたった10cm程。


「たまた――」


 ルシファーの言葉を遮る。


「計算づくだ」


 サンクチュアリはドーム外からの魔法を防ぐ防御魔法。中からの攻撃を防ぐことはできない。

 PT全員を守るには、PTメンバー全員が半径3m以内になるように、かつルシファーが範囲外になるような位置でサンクを発動させなければいけなかった。

 あとほんの少し発動場所がずれていたら、少なくともヒナツは死んでいた。

 だから、俺は攻めに参加せず、タイミングとポイントの調整に専念していたのだ。



「計算づく……ということは、マナストリームの使用を読んでいたということか!?」


「違う。俺はマナスト発動のタイミングを読んだんじゃねえ。俺がお前にマナストを()()()()んだよ」


「は……!?」


 ルシファーは何が何だか分からないという顔をしている。

 きっと混乱しているはずだ。

 自分の意志で撃ったのであって、俺に撃たされたはずがないのだと。


 この戦いには大勢の視聴者がいる。

 きっと画面の向こうでルシファーと同じように、混乱しているはず。

 その疑問に答えていくのも配信者の仕事だ。



「そもそも、俺がどうして、最初わざわざタイマンしていたと思う?」


 1人で戦うのはリスクがあまりにも大きすぎるし、DPSも低くなる。

 ボス戦は大勢のプレイヤーと協力するゲームだ。

 タイマン張る必要なんてない。


「……」


「正解はマナストを吐き出させるためだ」


 マナストは、ボスが使用するスキルの中で最も警戒しなければならない攻撃魔法だ。

 詠唱時間はなんとゼロ。

 突然マナストを撃たれて全滅、なんてことはよくあるボス戦の光景だ。


「いつくるか分からねえマナストにぶるって、DPSが低くなってもダメ。DPSを上げることにやっきになって、マナストに対して無警戒になってもダメ。――だったら、俺の都合のいいタイミングでマナストを使わせたら、安心してDPSを上げられる」


 突然放たれる無詠唱のマナストに対処するなんて不可能。

 だが、撃ってくると分かっているなら話は別だ。

 見え見えのマナストを撃たせることで、防御を可能にした。


「都合のいいタイミングだと……?」


「俺がソロで戦っているのに、マナストは撃てないだろ?」


 ルシファーの立場になって考えれば、マナストで俺1人殺ったところで、残りの5人に負けてしまえば意味がない。

 マナストは切り札。温存するのがセオリー。


「タイマン張って俺が十分ヘイトを稼いだら、一斉アサシネイト。アサシネイトをくらったら、5人に対するヘイトが上がるわな」


 ヘイト値は大ダメージを受けることでも上昇する。

 アサシネイトは1発20万越えの大ダメージ。

 たった1発でヘイト値は急上昇する。


「こうして全員に対するヘイトが上がれば――お前はマナストを撃つ。違うか?」


「…………っ!」


 JAOのMobは、ヘイト値が高いプレイヤーが複数いると範囲攻撃を使うことが多い。

 もちろんルシファーだって例外じゃない。



「さて、次のモードチェンジまで3分ちょいってとこか」


 ルシファーは5分ごとにサタンモードとルシファーモードのモードチェンジを繰り返す。


「おしゃべりの時間はここまでだぁ! 守護霊を全解放しろ!」


 守護霊の魔石を外付けしていないフェーリッツを除いた全員が、守護霊を顕現させる。


「【王国の誉 ブレンダン】顕現せよ!

「【予言の聖女 エリノーラ】顕現せよ」

「【包み込む慈愛 セーラ】顕現せよ!」

「【力を奪う者 マーク】顕現せよ!」


 そして、


「【未来の女神 スクルド】、顕現せよ!」


「アリア。本物の神の力、よく見てなさい」


 ふわりとしたブロンドの髪をなびかせて、スクルドが優雅に登場。


「おのれぇぇぇぇぇ! 神はこの我なのだぁぁぁぁぁ!!」


 激闘で乱れた髪をさらに振り乱し、ルシファーがブチ切れる。

 だが、もうルシファーは片翼を失っている。

 怒声が空しく響くだけ。



「残りHP6割強、一気に決めるぞ!」


 モードチェンジまでの時間はあと3分。

 相手は手負い。こちらは11人もいる。

 大丈夫だ。


 俺たちは最後の総攻撃を仕掛けた。

『ナンバーワンを決める戦い』は全11回、8週間にわたって連載します。

次回は7月27日の12時頃に更新の予定です。




この作品を面白い、もっと続きが読みたいという方がおられましたら、下にある★★★★★のところを押して評価していただければ、非常に励みとなります。




こちらも読んでいただいたら嬉しいです。


【防御は最大の攻撃】です!~VRMMO初心者プレイヤーが最弱武器『デュエリングシールド』で最強ボスを倒したら『盾の聖女』って呼ばれるようになったんです~


本作の目次上部にあるJewel&Arms Onlineシリーズという文字をクリックしていただければ、飛ぶことができます。

参考までにURLも張っておきます。 https://ncode.syosetu.com/n6829g

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