8-32 ナンバーワンを決める戦い5
更新予定時刻に更新できず申し訳ございません。
(注)次回は7月6日の12時頃に更新の予定です。
「【未来の女神 スクルド】、顕現せよ!」
スクルドを顕現。
「俺の出番はここまでだ。後は頼んだぜ、スクルド!」
「任せて」
長いブロンドの髪をかき上げ、スクルドが戦場に降臨。
「神である私が来たからには、あなたの好きにはさせないわ。キュアコンディション!」
キュアコンはメマリーに命中。メマリーの毒は解除された。
「神……ヒーラーの守護霊か。今更ヒーラー1柱増えたところで何もできぬ。戦いは既に我がコントロールしている!」
ルシファーは禍々しい魔剣を振り回し再びフェーリッツを襲う。
フェーリッツは器用に全てかわしているが、1撃でももらえば大ダメージは免れない。
防戦一方の展開は継続中だ。
「あら、残念。私のパートナーはそうは思っていないみたいよ」
「何ぃ……」
スクルドの挑発にルシファーの眉がピクリと動く。
「当たり前だろ」
この状況を打開する布石は全部打ってある。
ルシファー、いや、ルシファーを生んだ運営さえも想定していない方法で、防戦一方の展開を覆す!
「フェーリッツ以外は自陣に戻れ!」
俺の合図でヒナツ、メマリーが一斉にアリスのいる自陣に向かって走る。俺も急いで戻った。
準備は完了だ。
「スクルド! フェーリッツ以外の全員にヒートオブハートだ!」
「OK~。ヒートオブハート!」
スクルドはまずメマリーにヒートオブハートを使用。
ピンクゴールドに輝くハートマークがメマリーの頭上に浮かぶ。
「即死級ダメージに対抗するには、1撃で死なないくらいHPを上げればいい」
即死級のダメージをしかけてくる相手には、防御を固めなければ死んでしまう。防御に回れば、ルシファーがかさにかかって攻めてくる。そうなれば、こちらはさらに防御を固めなければならない。
この悪循環を断ち切らない限り、戦いはルシファーに支配されたままだ。
そこで、ヒトハの効果で最大HPを上昇させることにした。
ルシファーの攻撃を耐えられるようになれば、防御に余裕ができる。
防御に余裕ができれば、落ち着いてゲームメイクもできる。
「無駄だ。少々HPを上げた程度で――」
「すごいよ! 最大HPが3万超えちゃってる!」
「3万だと……!?」
メマリーの言った数字に驚くルシファー。
メマリーのMaxHPが16,600から36,852に上昇した。つまり2.22倍だ。
「ふふん、これがテスト用守護霊――神の力よ」
テスト用守護霊は、エキストラスキルとそのレアリティを自由に調整できる。
このヒトハはUランクに設定した。
ヒトハはラグナエンドと同じ星5スキル。札束を惜しげもなく溶かす廃プレイヤーでも到達不能なランクだ。
こんなチートじみた芸当、テスト用守護霊にしかできねーよ。
フェーリッツとスクルド以外のPTメンバー全員にヒトハが行き渡った。これでもう簡単にはやられない。
そのタイミングでフェーリッツのプロボックの効果が切れる。
「そこの守護霊よ。貴様、自分のことを神と言ったな?」
不愉快そうに睨むルシファーに対して、
「そうね。自分は神だと思い込んでいるだけのどこかの誰かさんと違って、正真正銘この世界の神よ」
スクルドは自信たっぷりにルシファーを挑発する。
「思い込んでいるのではない。我は神だ」
ルシファーはフェーリッツを無視し、こちらに向かって飛び出した。
狙いはもちろんスクルド。
回復スキルはヘイトを大きく上昇させる。
6回も使っていれば、タゲがスクルドに向くのは当然だ。
そんなことぐらい、もちろん想定済み。
「メマリーちゃん、まずは私がタゲをかかえるわ」
スクルドが前に出る。
メマリーが心配そうにスクルドに尋ねる。
「大丈夫なの?」
ヒーラーはタンクよりも脆い。
これはJAOの常識。
スクルドが不敵な笑みを浮かべる。
「問題ないわ」
「じゃあ、任せるよ!」
スクルドがメマリーとチェンジ。
そのタイミングでルシファーがスクルドに斬りかかる。
「神の一撃を受けろ。ポイズンアタック!」
ポイズンアタックはメマリーを瀕死に追い込んだ一撃。仮に耐えたとしても毒による追撃が待っている。恐ろしいスキルだ。
「偽物の神なんかに――」
ポイズンアタックが決まった。
HPバーが削れていく。
HPバーの色は、MaxHPの半分を下回れば黄色に、2割を下回れば赤色になる。
緑色のHPバーは――――
「本物の神は殺せない」
緑色のままだった。
「ば、馬鹿なっ!?」
渾身のポイズンアタックがたった7826ダメージ。
ルシファーがショックを受けるのも当然だ。
「私は神。人特化武器の攻撃なんて効かないわ」
JAOのボスは大種族「人」に対する特化武器を持っていることがほとんどだ。
ルシファーのダーインスレイヴのATKも、大種族「神」であるスクルド相手では半減されているはずだ。
しかも、俺はスクルドの特性防御を物理に設定しておいた。
物理攻撃の剣撃はダメージが÷1.5される。
「それにね、現在の最大HPは65,990。簡単に殺せる『人』とは違うのよ」
「……」
スクルドの話に呆然としているルシファー。
「それもこれも、そこのレイ君が私をちゃんとエスコートしてくれたからよ」
そう言ってスクルドは俺に投げキッスを飛ばす。
そういうのは余計だって言ってるだろ。
「でも、よかったじゃない。毒をかけることはできているわ。えらいえらい。はい、キュアコンディション」
スクルドはあっさり毒を解除した。
「ふぅ……」
ルシファーは軽い溜息をつくと、黒い羽を羽ばたかせ宙に浮き上がる。
「守護霊を殺す必要は別にないのだが――」
ルシファーが魔剣ダーインスレイヴをスクルドの方に突きつけ、宣言する。
「貴様ら――いや、貴様だけは絶対に殺してくれる! 守護霊スクルド!」
「あら、口説かれちゃった。でも、あなたみたいな不自由な男じゃ無理だと思うけど」
「くっ……! 我の力はこんなものではないというのに……!!」
スクルドに馬鹿にされても、ルシファーはエクスカリバーを抜くことすらできない。
「それに、約束したじゃない――」
スクルドも仕込み杖を抜き、宣言する。
「アリア(あなた)のことを見守る。――だから、私たちは倒れない」
アリアは今も苦しんでいる。
そんな彼女と一緒に俺たちは未来を掴む。ルシファーを倒すことで。
『ナンバーワンを決める戦い』は全11回、8週間にわたって連載します。
次回は7月6日の12時頃に更新の予定です。
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