8-23 アークゴブリンキング登場
『魔神の胎動(3rdアニバーサリーver)』の攻略は順調に進んだ。いや、順調どころか快進撃といってもいい。
昨日は1日かけてオーク軍とコボルド軍を撃破。
今日の目標はゴブリン軍の撃破と悪魔軍の下見だ。
現在ゴブリン軍を攻略中。
とはいっても、辺りに雑魚ゴブリンの姿は無い。
既にゴブリン軍の雑魚は殲滅してやった。
「いよいよ、ゴブリン軍のボスだよー。れっつごー!」
メマリーを先頭に、誰もいない荒野を進む。
クエストラインに沿って進むとゴブリン軍の本陣が見えてきた。
「ギャギャギャッ!」
本陣から1匹のゴブリンが出てきた。
背丈は人間と変わらない。やや大柄なゴブリンといったところだ。
だが、その頭には王冠が乗っている。
王冠はボスの印。さぁ、ボス戦の始まりだ。
戦う前にボスがしゃべりだした。
「ギャハハッ! 俺様はアークゴブリンキング(リチャード)! ルシファー様の力を得てパワーアップしたぜぇ!」
リチャードはもともとSSランクの雑魚ボス。
だが、現在のレベルは110。HUランクだ。
レベルだけなら真ECのボスよりも高い。
アークオークキングもアークコボルトキングも結構強かった。
さぁ、こいつはどんなバトルを見せてくれるんだ!
「ギャハハッ! 弱っちい、人間共よ! これを見ろ!」
ボスが鞘から剣を抜いた。
その剣身は黄金でできており、その中心に真っ赤で大きなルビーが填められている。
天使の翼をモチーフにした水晶のガードはデカすぎて、持つのに邪魔になるだろう。
常識的に考えて、とてもじゃないが実戦で使えなさそうなフォルム。ド派手で悪趣味なだけの剣。
見間違えるわけがねえ。リチャードの武器は――
JAOの最強武器【エクスカリバー】だ。
「な、何でだよ……!?」
フェーリッツがかすれ声をあげる。
驚いているのはフェーリッツだけじゃない。サエラもヒナツも目を見張っている。
知らないのも無理はねえ。
彼らは異世界人。【課金武器】が存在しない世界に生きている。
JAOには武器は全125種類あるが、そのうちの100種類が【通常武器】だ。
俺が製造できる武器はもちろん、通常武器のみ。
他25種類は【課金武器】というカテゴリーの武器だ。
課金武器は有償ガチャもしくは武器確定ガチャを回すことでしか手に入らない。当然鍛冶スキルでは製造不可能だ。
その分、課金武器の性能は通常武器よりも高い。
特にエクスカリバーは課金武器の看板アイテム。
バランスぶっ壊れまくりの超反則チート武器。
アリスが俺に質問する。
「……どうします? U魔石を外付けしますか?」
アークオークキング戦とアークコボルトキング戦ではU魔石を温存してきた。
しかし、エクスカリバー相手に温存すべきではない。
そうアリスは考えたのだろう。
「まだだ。アークゴブリンキングくらいでU魔石を使っていたら、それこそ破産だ」
ラストバトルはあくまでルシファー。
そこまではなるべく力を溜める。
「ギギッ、いっくぜぇ!」
アークゴブリンキングは自信たっぷりに笑うと、エクスカリバーを脇に構えた。
この構えは!
「全員、ハイド!!」
とっさに叫んで指示を出す。
同時に指を素早く動かし、武器をモルゲンステインからロングソードに変更する。
0コンマ1秒も無駄にできない。
「ギャギャギャギャアアア!」
アークゴブリンキングが大きく剣を横に薙ぐ。
その一閃は空間をも断ち斬る。
「DD!」
DDとは前方20mの広範囲DEF無視斬撃。
エクスカリバーのATKで撃たれたら、間違いなく全員即死。
「「「ハイディング!」」」
「「「クローキング!」」」
タイミングがそろった!
全員の隠密スキルが一斉に発動。
シャキン!
空間が真っ二つにされ、ずれるエフェクト。
しかし、その攻撃は文字通り空を切っただけに終わった。
ボスの動きが止まった。
DDには5秒程度の非常に大きなWDLがある。この間は動けない。
メマリーがハイディングを解除して姿を現した。
「タゲは私が取るよ! ナイトフォース!」
走り込むメマリー。そして、1撃。
リチャードはまだ動けない。
「えいっ!」
メマリーのマンプルがさらにボスの体を突く。
「攻めすぎだ。いったん退――」
俺が言葉を言い終わらないうちに、王が笑った。
「イーグルスマッシュ!」
メマリーの脇にエクスカリバーが叩きつけられる。
「きゃあああ!」
噴き出す赤い閃光。
ダメージは6652。HPの4割が削れた。
大ダメージにメマリーの足がわずかにぐらつく。
この隙を見逃すボスじゃねえ。
このままじゃ一気に押し込まれるぞ。
装備をモルゲンステインに戻し、ボスに向かって走り出す。
リチャードはエクスカリバーを下段に構えた。
「ゲッギャア! スカイインパクト!」
スカイインパクトは空中コンボを決めるスキル。
1度打ち上げられたら何発も攻撃が入る。
そうなったら死だ。
エクスカリバーがメマリーの腹を突き上げる――直前!
「マイティビィィィト!」
エクスカリバーとモルゲンステインが激しくぶつかった。
相手のATKもstrもまだ全然分からない。
自分が打ち上げられる可能性もある。
それでも、ここは止めるしかねえ!
「はああああっ!」
「ギャッギャッギャッッ!」
武器が火花を散らす。力と力のせめぎ合い。
その結果は――。
「ギャアアアア!」
リチャードの体勢が大きく崩れた。
「俺の勝ちだっ!」
すぐにリチャードが反撃に出る。
「いい気になるな!」
リチャードが目線に合わせて剣を突き出した。
魔法使用のモーションだ。
すぐに逃げねえと。
「プロボック!」
挑発スキルでフェーリッツがタゲをとってくれた。
「ありがとよ!」
フェーリッツに礼を言って、ポジションを交代する。
「マジックガトリングゥゥ!」
リチャードの魔法攻撃がフェーリッツを襲う。
「エイムは下手くそだなぁ!」
フェーリッツはこれを華麗にかわす。
その隙にメマリーもポーションを飲みHPを全快。
立て直しに成功し、俺はいったん自陣に戻った。
次回は5月11日の12時頃に更新の予定です。
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