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8-17 vsイザナミ2

「生者よ。わしを怒らせたことを後悔するがよい」


 イザナミの爪が伸びた。

 爪はフェイズ2でも使用していた武装だ。

 とはいえ、ATKもHITも高い。

 俺にとっては危険な武器だ。


「お、殴り合いがお望みか。いいねぇ」


 予定変更。

 武器をワンドからロングソードにチェンジ。


「スクルド、俺がタゲを取る。まだ手を出すな」


「分かったわ」


 スクルドはあくまでサポート。

 主役は俺だ。



「舐めるな、小童こわっぱぁっ!」


 雷をまとった爪を振り上げ、迫りくるイザナミ。

 対する俺は、装備ウインドウをタップ。

 外付魔石を変更する。


 パシャア!

 ロングソードの刀身が流水をまとう。

 水の魔石を外付けして、ロングソードに水属性を付与したのだ。


「死にくされぇ!」


 空気を引き裂くようなイザナミの一撃。

 かすりでもしたら、黄泉の国に一直線だ。


「死ぬかぁっ!」


 手首をぐっと返し、爪を剣の刀身でブロック。


「はぁぁっ!」


 腕に力を込め、イザナミをはじき返した。


「ぬおぉぉ」


 よろけるイザナミ。

 今が攻撃のチャンス!


「ストライク!」


 イザナミの腰をスキルで強打。

 ダメージは30,922。

 低いな。下振れしたか。

 でも、水属性の軽減はなさそうだ。

 それが分かれば十分。



 イザナミと打ち合いながら、スクルドをちらりと横目で見る。

 俺とスクルドの目が合った。

 何かを訴えかけるような熱い視線。

 おあずけをくらったその気持ち。俺にも分かるぜ。


 もう十分ヘイトを稼いだだろ。頃合いだな。


「ストライク!」


 イザナミの右足を思いっきり叩く。

 骨むき出しの細い脚がぐらついた。


「スクルド!」


 俺の合図でスクルドが飛び出す。

 スクルドが仕込み杖を高速抜刀。そして――、


「遅いわ」


 目にも止まらぬ攻撃。そして、巻き起こる砂嵐。

 仕込み杖には土の魔石が外付けされている。

 ダメージは59,731か。悪くねえ。

 どうやら土属性攻撃の軽減もなさそうだ。



 攻撃を受けたイザナミがかっかっかと笑う。


「火属性攻撃ならともかく、土や水属性の攻撃など大して痛くないわ」


 イザナミの弱点属性は火属性。

 そんなこと、とっくに判明しているっつーの。

 実際、さっきまでずっと火属性で攻めていたしな。

 それに、HPバーが削れないんじゃ、火属性で大ダメージを与えたところで何の意味もねえだろうがよぉ。


「土属性や水属性が痛くないねぇ……。ま、ダメージが低いことは認めるよ」


 ダメージなんてどうでもいい。

 俺の狙いは別にある。




 俺たちだけになってから約4分が経過。

 イザナミはアマテラス・スサノヲ・ツクヨミという雑魚Mobを召喚した。

 アマテラスとスサノヲは日本神話の神様をモチーフにしているだけあって、普通のMobよりもずっと手ごわい。


 だが、本物の神の前では敵わない。


「カッティング!」


 最後に残ったスサノヲがスクルドに斬られたことで、再びイザナミは1人に戻った。


「よくやった、スクルド!」


 スクルドが雑魚Mobをまとめて相手してくれたことで、俺はイザナミに専念できた。

 スクルドは余裕たっぷりに髪をかきあげる。


「なかなか楽しかったわ。お代わりを頂けるかしら」


「お、おのれぇぇぇ……!」


 イザナミのやつ、ずいぶん悔しそうじゃねーか。

 再召喚にはまだ2分以上かかるからな。

 スクルドの挑発に乗ることさえできない。


 でも、こんなもんじゃねーぞ。

 お前にはもっと悔しい思いをさせてやるからな。



「こうなったら……貴様らを呪い殺してくれるわ……!」


 イザナミが爪を引っ込めた。

 魔法陣がイザナミの足元に発生する。

 それを見て、俺は再びワンドにチェンジ。


 チビキ岩を確認。

 残りは2割弱ってとこか。

 そろそろケリつけるか。


「さぁ、撃ってこいやぁ!」


「貴様の息の根、止めてやる。フリーズ!」


 雪の結晶がついた魔法弾をイザナミが発射。

 狙いは当然俺だ。


 フリーズとは、相手を凍結させるデバフ魔法だ。

 凍結した相手は、凍結が解除されるまで行動不能になる。


 イザナミのやつ、俺の動きを止めるつもりらしい。

 俺が止まれば、イザナミとスクルドは1対1になる。

 スクルドのHPバーは黄色。つまり、現在HPは最大HPの半分を切っている。

 今ならスクルドを殺れると考えたんだろうな。




 だが、止まるのは俺じゃない。

 イザナミ、お前ぇだ。




「リフレクトミラー!」


 鏡のエフェクトが出現。

 リフレクトミラーは魔法を反射するスキルだ。


 フリーズが鏡に当たった。そして、反射。

 その軌道の先には――。


「しまったぁっっ――!」


 イザナミに魔法弾が直撃。

 そのままイザナミは氷漬けになった。



 イザナミは、相手を石化させる魔法「ピュトリフィケーション」と、相手を凍結させる魔法「フリーズ」を使用する。

 石化も凍結も効果は同じ。

 解除されるまで行動不能になる。


 この戦いは短期決戦。行動不能になったら致命的だ。

 だが、それはボスにとっても同じ。

 そこで、リフレクトミラーでピュトリフィケーションかフリーズを反射し、イザナミを行動不能にする作戦を立てた。


 ところが、石化は土属性倍率、凍結は水属性倍率の影響を受けてしまう。

 つまり、イザナミの属性倍率の値によっては石化や凍結がかからないこともある。


 そこで属性倍率を調べるために、水属性の武器と土属性の武器でイザナミを殴った。

 結果、イザナミのresのことを考えても、62%で凍結が決まると判明。

 反射作戦を実行に移したのだった。



「イザナミ、お前ぇは98秒の間、凍結――何もできねーな」


 氷の中のイザナミは何も言わない。言えない。


「俺たちはそろそろチビキ岩を押すのを手伝ってくるわ。もし凍結が解けたら、向こうの世界で遊ぼうぜ。そのときは死の世界にでも何でもしていいぞ」


 氷の中のイザナミは眉一つ動かない。動かせない。


「鬼ごっこ、なかなか楽しかったぜ」


 JAOでは石化中でも凍結中でも五感は働く。

 俺たちの声は聞こえているし、何が起こっているのかも見えている。


 氷の中のイザナミは、今どんな気持ちで俺たちを見送っているんだろうか。


「じゃあな」


 98秒もあればチビキ岩の封印も完成するだろうな。

 俺たちは手を振って、死の世界を後にした。

次回は3月23日の12時頃に更新の予定です。




この作品を面白い、もっと続きが読みたいという方がおられましたら、下にある★★★★★のところを押して評価していただければ、非常に励みとなります。




こちらも読んでいただいたら嬉しいです。


【防御は最大の攻撃】です!~VRMMO初心者プレイヤーが最弱武器『デュエリングシールド』で最強ボスを倒したら『盾の聖女』って呼ばれるようになったんです~


本作の目次上部にあるJewel&Arms Onlineシリーズという文字をクリックしていただければ、飛ぶことができます。

参考までにURLも張っておきます。 https://ncode.syosetu.com/n6829g

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