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8-4 自由すぎる守護霊

「まずは守護霊システムについての仕様を確認しておかないとね」


 どうやらスクルドは守護霊システムについて教える気まんまんらしい。


 守護霊システムについての仕様は、他のプレイヤーから聞いて知っている。

 だが、自分で守護霊を使ったことはない。

 頭で知ったつもりになっているのと、実際に使って理解するのは全然違う。

 そこで、スクルドと一緒に守護霊の使い勝手を確かめることにした。



 スクルドの説明が始まる。


「まずは守護霊登録ね」


 守護霊を使うには、最初に守護霊登録を行わなければならない。

 守護霊の魔石を持っているだけでは、守護霊の魔石を使用できないのだ。


「と言っても、レイ君はもう守護霊登録を済ませたから、説明いらないかしら」


「一応やってくれ」


「分かったわ。守護霊登録では、パートナー守護霊と、その守護霊の魔石を外付けしておく武器を登録するの」


 パートナー守護霊というのは、現在使用可能な守護霊のことだ。


「現在の設定は――『パートナー守護霊:テスト用守護霊』『登録武器:HUロングソード』ってなっているな」



「守護霊は登録武器1本しか使用できないわ。守護霊に合った武器を登録するのが大切よ」


 現在スクルドの登録武器はHUロングソードだ。

 ロングソードを装備しても魔法を使用することはできない。

 スクルドに魔法を使用させたかったら、登録武器を別の武器に変更する必要がある。


 守護霊が活躍できる場面はどんな状況なのか。そして、守護霊を使ってどう戦うのか。

 事前に組み立てた戦略が、登録武器を選択するポイントになる。




「次は『現界』の説明を頼む」


「現界というのは、守護霊を出現させることよ。当たり前だけど、現界した守護霊は受肉しているわ。ほら、触ってみて」


 そう言って、スクルドが俺に体を寄せようとする。


「そんなこと言われなくても、分かってるっての!」


「ふふ……焦っちゃって、可愛いわね」


 ゲームの頃だったら、セクハラでGMコールしてやるのに、くそぅ。


「現界中はパートナーとして会話を楽しむことができるわ。甘い会話で、楽しいひと時を過ごしましょう……」


「コミュ障の俺にとっちゃ、会話する必要なんてねえ!」




 店を出て大雪渓に到着。


「ここからが本番。いよいよ戦闘のテストをするぞ」


 守護霊システムの本領は戦闘だ。

 イチャイチャトークなんかじゃ、断じてねえ!



 目の前にたちふさがっている物を見上げて、スクルドが歓声を上げた。


「すごいわ! なんて大きな雪だるまなの!」


 山道の真ん中に鎮座しているのは、高さ8m程の巨大な雪だるま。


「ただの雪だるまじゃねえ。こいつはジャンボスノーマン。HPが24万と超高ぇ。火力も高いし、凍結攻撃も仕掛けてくる。大雪渓で1番の難敵だ」


「なるほどねぇ……」


 曲げた人差し指を口元に当て、スクルドはクスリと笑った。



「じゃあ、まずは憑依のテストね。私を憑依してちょうだい」


「テスト用守護霊、憑依せよ!」


 スクルドの姿がすっと消え、俺の体が虹色に光る。


 このタイミングでジャンボスノーマンが詠唱開始。

 範囲凍結魔法、ワイドフリーズだ。

 状態異常成功率と状態異常持続時間はres依存。

 res1の俺では、凍結すれば死が見える。


 範囲外に逃げようとした時、スクルドの声がした。


『よけなくても大丈夫』


「はっ! 早速UUランクの力、見せてもらおうじゃねえか!」


 ジャンボスノーマンのWフリーズが発動。

 普段なら132.98%の確率で凍結する――。


 だがWフリーズをくらっても、俺は凍結しなかった。


『基礎ステータスを確認してみて』


 スクルドに言われてウインドウを開く。


「ははっ……。化け物かよ!」


 俺のresは66だった。

 上がっていた基礎ステはそれだけじゃない。vitが51になっている。

 つまり、スクルドを憑依することで、vitが50、res65上がったということだ。

 すごい上昇量。さすがはUUランク。


『憑依中は守護霊の基礎ステータスの半分が、パートナーの基礎ステータスに加算される。守護霊を上手く憑依させれば、パートナーの弱点を補うことも、強味を活かすこともできるわ』


 vitを上げれば、今まで耐えられなかった攻撃に耐えられる。

 strを上げれば、力強くなる。

 dexを上げれば、ブレイクの成功確率などが上がる。

 agiを上げれば、長時間の隠密行動が可能になる。

 intを上げれば、ヒーラーができる。

 resを上げれば、状態異常に強くなる。


 守護霊を憑依させることで、今までできなかったスーパープレイができるようになる。

 戦略の幅が無限に広がるのだ。




「さぁ、そろそろ本気で暴れてこい! テスト用守護霊、顕現せよ!」


 顕現をすれば、守護霊が戦ってくれる。

 つまり、戦力が増えるということだ。

 めちゃくちゃ強いに決まっている。


 俺の呼びかけに応じて、登録武器のロングソードを持ったスクルドが現れ――――なかった。


 その代わりに、

『ロールを設定してください』

『エキストラスキルを設定してください』

『属性倍率を設定してください』

『状態異常耐性を設定してください』

『速度を設定してください』

 というウインドウが次々目の前に現れた。


「おい! 一体どうなってんだよ!?」


『守護霊ウインドウで各種設定を設定することで、自由に能力をカスタマイズできるの。君好みの女にしてね』


 普通の守護霊には当然そんな機能はついていない。

 まさに守護霊の挙動を文字通りテストするための機能。



「とりあえず、強くしておくか。あれ? 顕現できねえぞ?」


『ああ、言い忘れてたけど、何でもかんでも強く設定しすぎることはできないわ。あるパラメーターを強く設定すれば、他のパラメーターを弱く設定して上手にバランスをとらなきゃダメよ』


 俺がウインドウを操作している間にも、ジャンボスノーマンの攻撃は続く。

 特に薙刀の威力は強大だ。当たるわけにはいかねえ。

 攻撃をかわしながら、スクルドをカスタマイズしていく。


「くそっ、もう削るところなんてねえぞ」


 あの機能も組み込みたい、この機能も組み込みたい。

 なんて自由度が高すぎる守護霊なんだ。

 設定がいらない普通の守護霊のほうがよっぽど使いやすい。

 自由すぎて、不自由なシステム。



「でも――、面白ぇな!」



 こういう不自由、俺は大歓迎だ。



 基礎ステータスを入力。

 これで設定入力は全て済んだ。

 OK! 後は『テスト用守護霊の設定を決定する』の表示をタップして――設定完了だ!


「テスト用守護霊、顕現せよ!」


 虹色の輝きとともに、テスト用守護霊スクルドが顕現した。


「なかなかいい感じのステータスに仕上げてくれたわね」


「ステ調整には自信があるんでね」


「さぁ、一緒に戦いましょう」


「ああ」


 そう言うと、俺たちは左右に分かれる。


 狙うはジャンボスノーマンの背後。

 ジャンボスノーマンは図体がデカい分、動きが非常に遅い。

 背中を取れば、素早いこちらが主導権を握ることができる。


「プロボック!」


 スクルドが挑発スキルを使用。

 挑発されたジャンボスノーマンがスクルドに向かって薙刀を振り下ろす――


 パキィィィン!


 薙刀は水色の破片となって砕け散った。

 ダメージは――0。


 その結果を見て、ニヤリと俺の口角が上がる。

 スクルドの水属性倍率を0倍に設定しておいた。

 つまり水属性の攻撃はどれだけアタックが高くても、ダメージは0。



 武器を失い、ジャンボスノーマンは魔法攻撃しかできなくなった。


 だが、わずかな反撃すら許さねえ。


「シーリングアタック!」


 スクルドに斬られて、ジャンボスノーマンは封印にかかった。

 封印にかかったら魔法を使えない。

 もはやジャンボスノーマンはただのデカい雪だるまになってしまった。


 守護霊は、その守護霊にしか使えないスキル――【エキストラスキル】を使用することができる。

 普通の守護霊のエキストラスキルは守護霊ごとに決まっているが、スクルドのエキストラスキルは自由に俺が設定することができる。


 シーリングアタックはプレイヤーには使えない。

 そんなスキルまで使えるテスト用守護霊、マジでチート。



 2人がかりで殴られて、ジャンボスノーマンのHPバーはあっという間に真っ赤になってしまった。


 ここでスクルドの顕現を解除。

 エキストラスキルの設定をシーリングアタックから別のスキルに再設定して、再度顕現させる。


「最後、決めちまえ!」


 スクルドに合図を送った。

 もちろん通常攻撃だけでも余裕で倒せる。

 でも、せっかくのデビュー戦なんだ。派手にいこうぜ。


「ラグナエンド!」


 ラグナエンドは、サエラが持つ伝説の剣「ピートハイプラスター」でしか使えないスキル。

 けれども設定さえすれば、テスト用守護霊なら使用可能。


 ジャンボスノーマンはラグナエンドをくらって、そのまま爆散した。



 ジャンボスノーマンがドロップした魔石を拾って呟く。


「あのデカブツがこうもあっさりやられるとはねぇ」


「でも、その分、DRAの消費は大きいわ。最大3分しか持たないんだもの」


 現界中も憑依中もDRAは減少する。

 でも、ここまで大きくはない。


「でも、レイ君のチートがあればすぐに元通り。強力な私を使い放題よ」


 ドヤ顔でスクルドは俺に視線を送る。


「ったく、勝手に言ってくれるよ……」


 いくらチートスキル移動工房があるといっても、戦闘中に研ぎを何度もできるとは限らない。

 テスト用守護霊を顕現し放題というわけにはいかないだろう。


 けれども――、


「せっかくチート守護霊をゲットしたんだ。それを使いこなしてこその、ゲーマーってもんだ!」


 DRAの消費もお構いなしに顕現を要求する、自由すぎる守護霊。

 他のやつが持っても手に余るだろう。

 だが俺なら、こいつを使いこなすことができる。


 だって、俺はこの世界で1番自由な冒険者――『ゲーマー』なんだから。



「さてと、テストしてぇことはまだまだあるからな。たっぷり付き合ってもらうぜ」


「うふふ……やっぱりあなた、最高よ!」


 スクルドは赤い唇を弾ませ、笑みを浮かべた。


次回は12月22日の12時頃に更新の予定です。




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こちらも読んでいただいたら嬉しいです。


【防御は最大の攻撃】です!~VRMMO初心者プレイヤーが最弱武器『デュエリングシールド』で最強ボスを倒したら『盾の聖女』って呼ばれるようになったんです~


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