7-32 開店、移動工房2
長老たちと話をしていたら、また扉が開いた。
「みんな! 念願の武器屋開店おめでとーーー!」
「おめでとうございます。入口に花輪置いときましたよ」
「レイさーん、応援に来たぜーーー(今、金無いけど)」
ヒナツ、アリス、フェーリッツが同時に入ってきた。
「開店時間の12時はまだだ! さっさと外に出ろ!」
俺がキレたのを見て、笑う3人。
「もぅー、レイは相変わらず素直じゃないねー」
「ヒナツさんの言う通り、見事なツンデレですね」
「アリス、誰がツンデレだ!」
「そんなこと言ってー、本当は寂しかったんっすよねー。俺たちが応援してあげるっすよー(今、金無いけど)」
「金無いやつはマジで帰れ」
ヒナツが辺りを見回して言った。
「でも、なんか地味だよねー。内装いじったほうがいいよー」
「確かに、これではインパクト弱いですね。店舗は目立ってなんぼでしょう」
アリスが冷静に分析する。
確かに、向こうの世界では色々な店があった。武器屋なのにガールズバー風だったり、薬屋なのにプールがあったり。
でも、正直そんなのってどうよ……。
「畳敷きにして鳥居を置こうよ☆」
「鳥居もよいが、礼拝堂を作るのはどうじゃ?」
「ターキン様と戦ってゲットした仏像飾ろうぜーー!」
「フィギュアやタペストリーを飾って、萌え度を上げるのはどうでしょう?」
「サエラちゃんやメマリーちゃんのエロいポスターのほうがいいっすね!」
「やっぱりうさちゃんを放し飼いにしよう~」
みんなが一斉にアイデアを並べたてる。
「お前ら揃いも揃って、俺の店を何屋にしたいんだよぅ」
「お兄ちゃーん、モップ掛け終わったよー」
メマリーに頼んでいた仕事がどうやら終わったみてぇだな。
「サエラ、今何時だ?」
「時間は11時52分だよー」
「ちょっと早ぇけど――やるか」
正直、12時までもう待ちきれない。
「何をやるの?」
ヒナツの質問に答える。
「今、俺は店舗を持っている。でもそれだけじゃ、武器屋とはいえねえ。最後の仕事――『屋号登録』を済ませねえとなぁ」
自分の店舗を持って商売を始めるには、屋号登録を行わなければならない。
屋号登録を行うことで初めて、一人前の商売人だとシステム上認められるのだ。
「屋号登録をしないと、ここでお店を開けないんだね」
店舗だけあっても、商売することはできない。
カタログも客に見せられないし、個人の金と店の金を別々に管理することもできないし、作った武器の受け渡しをするのにいちいち倉庫BOXまで取りに行かなくちゃいけねえ。
これまで通り不便な1対1の取引しかできないのだ。
「その通りだ、メマリー。でも、屋号登録のメリットはそれだけじゃねえ――俺の野望のためには絶対に屋号を登録しなきゃいけないんだ」
「レイさんの野望?」
クマールが俺に尋ねる。
それを聞いて、俺とサエラとメマリーがふっと笑った。
「決まってるだろ――俺の野望は『世界一の鍛冶屋になる』ことだ!」
世界一の鍛冶屋――ゲームの頃からの俺の野望。
それを叶えるには、鍛冶屋ランキングで1位をとることなんて最低条件だ。
鍛冶屋ランキングで俺の最高順位は5位だ。
4位以上はポイントが高い。今のまま製造だけしていても、なかなか破れそうにもなかった。
だが、店舗で武器を販売すればポイントをさらに稼ぐことができる。
店舗販売による獲得ポイントは、製造による獲得ポイントのなんと10倍!
1位を獲るには店舗が無きゃ話にならねえ。
スキルウインドウを開いて、屋号登録のための入力を進めていく。
銀行の口座番号、本店所在地の座標、店員名……必要な準備は全部済ませた。不備なんてねえ。
そして、最後の項目は屋号だ。
屋号は、やっぱこれしかねえだろ。
「――『移動工房』っと!」
キーボードをタタンッと入力。そして、確認ボタンをポチッと。
虚空に『新たに屋号が登録されました』というメッセージウインドウが浮かんだ。
「終わったぜ。サエラ、今何分だ?」
「ちょうど12時だよー」
ついにこの時が来た!
「移動工房、今ここで開店で~す!」
サエラの開店宣言。
それと同時に扉が開く。
スキンヘッドの冒険者ガンザスと彼の仲間2名がやって来た。
「開店おめでとう、レイさん! 早速だけどカタログを見せてくれませんか」
「はい、どうぞ。ゆっくり見ていってくださいねー」
メマリーが笑顔で3人にカタログを配る。
「レイさん、カタログを見せてくれ。俺たちシェルパもレイさんのウォーピックが欲しいんだ」
「はい、カタログでーす」
サエラがクマールにカタログを配る。
「アタシもカタログ見たい!」
「どうぞ」
バイトがヒナツにカタログを渡した。
「レイさーーん! 俺にもカタログちょうだいっすよぉ~!(金無いけど)」
馴れ馴れしく肩を組んでくるフェーリッツ。
「冷やかしに渡すカタログはねえ」
また扉が開いて、3人の冒険者が入ってきた。
荒くれクソ冒険者ジデたちだ。
「ギヒィ! 強ぇ刺突剣ありやすかぁ!?」
「ごめんなさい、カタログもうないんですぅ~~」
「んだと、このガキャァァァ!!」
「え~~ん。どうしよぅ~、お兄ちゃ~~ん」
「代われ、メマリー。そいつらの相手は俺がやる!」
金が無いくせにうざ絡みしてくるフェーリッツをメマリーに押し付け、ジデたちを相手することにした。
そうこうしている間に、さらに扉が開く――。
開始1分もしないうちに、もう店は満員だ。
予想を超える忙しさ。あちこちで店員を呼ぶ声が上がる。
俺は吠え、メマリーはテンパり、サエラもお目目パッチリだ。
まさに店内は戦場。
だけど、いいねぇ!
俺の武器を求めて冒険者がやって来る。
これこそ俺が憧れ目指していた、武器屋の姿だぜ!
7章のストーリーはここで終了です。
次回は10月20日の12時頃に更新の予定です。
この作品を面白い、もっと続きが読みたいという方がおられましたら、下にある★★★★★のところを押して評価していただければ、非常に励みとなります。
こちらも読んでいただいたら嬉しいです。
【防御は最大の攻撃】です!~VRMMO初心者プレイヤーが最弱武器『デュエリングシールド』で最強ボスを倒したら『盾の聖女』って呼ばれるようになったんです~
本作の目次上部にあるJewel&Arms Onlineシリーズという文字をクリックしていただければ、飛ぶことができます。
参考までにURLも張っておきます。 https://ncode.syosetu.com/n6829gk/




