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7-27 vsグレイシアドラゴン3

7-26から7-28までは3人称メマリー視点で話が進みます。



前回は評価をいただきました。ありがとうございます!

いよいよ7章も佳境。メマリーたちの活躍を楽しんでください。

 メマリーの励ましを受け、レイがニヤリと不敵な笑みを浮かべた。


「世界一のタンクか……。だったら、俺は世界一のアタッカーとして仕事をしねえとな」


 メマリーにとってレイは兄のような存在だ。

 どんなピンチが起きても、レイの自信満々な態度を見ていると力が湧いてくる。


「アリス、支援くれ。メマリー、DRAとSDRAの値を教えろ」


 レイに言われて、メマリーはグレイシアドラゴンの攻撃をかわしながら数値を読み上げる。


「DRAは12748。SDRAは――7275だよ」



「分かった。――行くぜ!」


 支援をもらったレイはボスに向かって飛び出した。

 そのままグレイシアドラゴンの足に向かって掛矢を振り下ろす。


「これでもくらいやがれ! マイティビート!」


 レイのHU掛矢のATKは30万を超えている。マイティビートSSを使用しているからさらに2.1倍。弱点特性と弱点属性も攻めているのでさらに3倍弱。

 いかに高DEFのグレイシアドラゴンとはいえ、ひとたまりもないはず。


 ガキガキバキッ……


 ダメージエフェクトは出なかった。

 ズニックの攻撃と同じ結果。

 頼みの綱のレイの攻撃までグレイシアの氷鎧に阻まれてしまった。


(そんな! お兄ちゃんの超ATKでもダメなの……!)


 驚くメマリーたちをよそに、当の本人であるレイは平然としている。


「やっぱブロックだったな」


 ブロックとは、相手の攻撃を武器で受け止めることだ。

 当たり前だが、ブロックされた攻撃は失敗に終わる。ダメージエフェクトなど出るわけがない。


(たった1回の攻撃でボスの性質を見破るなんて、やっぱりお兄ちゃんはすごい!)


 さすが、メマリーが尊敬する最強の冒険者。自慢のお兄ちゃん。


「メマリー、もう一度DRAとSDRAを教えろ!」


「DRAは11688、SDRAは6748」


 グレイシアドラゴンの白い光線のせいで、メマリーのマンプルのDRAとSDRAはどんどん減っている。



「秒間減少100ってところか…………よしっ!」


 レイがポンと膝を打ち、吠えた。


「このクソ邪魔な氷鎧をぶっ壊す!」


 ブロックした側とブロックされた側のATK差が大きいほど、ATKが低い方の武器のDRAとSDRAが大きく減少する。

 つまり、レイが超ATKの掛矢で叩き続ければ、いつかは氷鎧を破壊できるということだ。


 よく見ると、ボスの氷鎧に亀裂がいくつも入っていることにメマリーは気付いた。

 ズニックの攻撃では無理だったが、レイが叩いたおかげで氷鎧にひびを入れることができた。

 そう遠くないうちに氷鎧は砕け散る。


「メマリー、90秒だけ時間をくれ! できるよな!?」


「できるよ! だって、わたし世界一のタンクだもん!」


「よく言ったぁ!」


 レイがいったん後ろに下がる。



「ビュオオオオッ!」


 太い氷柱つららのような氷牙がメマリーを襲う。


 ガシッ!

 氷牙による一撃をマンプルの小手ではじく。

 武器が凍って水属性になっても、ブロックはできる。


「お兄ちゃんが作ったマンプルが大丈夫だから――わたしも大丈夫!」



 その後も氷牙による連続攻撃をさばき続けるメマリー。そこに、


「マイティビート!」


 レイの攻撃が命中。


「もういっちょう、マイティビート!」


 亀裂がさらに大きくなる。


「まだまだぁっ! マイティビート!」


 よく目を凝らさないと分からなかったぐらい細かった亀裂は、もはやはっきりと視認できる。

 あと2、3回マイティビートを打ち込めば氷鎧を破壊できるかもしれない。



 グレイシアドラゴンがレイに鋭い視線を向ける。

 連続攻撃でレイに対するヘイトが上昇してしまった。

 メマリーに対するヘイトを再び上げにかからないといけない。


「プロボック!」


 挑発スキルで強制的にタゲを取る。


「ヒュウォッ!」


 グレイシアはメマリーにフリーズアタックを使用。

 メマリー、ここはモーション回避でしのぐ。


(これからどうしよう……)


 プロボックの効果が切れたら、グレイシアはレイを狙う。

 しかし、強制的にタゲを取る挑発スキルは全てリキャストタイムに入ってしまった。


 挑発スキル以外の方法でタゲを取り返すには、ヘイトを稼ぐ必要がある。

 だが、ブロックやモーション回避で攻撃を避け続けていてもヘイトを稼ぐことはできない。

 右腕に填めた相変わらずマンプルは凍っている。水属性なのでダメージは通らない。攻撃を仕掛けることでヘイトを稼ぐのは不可能。



(怖いけど、ダメージを受けてヘイトを稼ぐしかないよね)


 痛みが怖いのではない。ダメージを受けて凍結することが怖いのだ。

 メインタンクである自分が凍結すれば、氷鎧に無力なズニックではたちうちできない。そうなれば戦線は崩壊する。


 メマリーは決意した。


「ママ、見てて! わたしは世界一のタンク! わたし一人で守ってみせる!」


 メマリーは外付けしていた耐龍の魔石を外した。

 被ダメを上げてヘイトを一気に稼ぐ。


「ヒュウヒュウヒュウ!」


 再びグレイシアドラゴンが飛んだ。丸太のように太い腕を振り回している。

 見たことがないモーション。武装を氷爪に変更したのだろう。


 チャンスだ。

 氷戟尾や氷魔法のような凶悪な状態異常攻撃や、氷牙のような超ATKを心配する必要がない。


 逃げるレイをグレイシアドラゴンが追いこんだ。


「ビュルルルルルゥゥゥ~~~!」


 グレイシアがナイフのように尖った爪を振り下ろす。


「させない!」


 メマリーがレイをかばった。


 ブシャアッ!!

 普通のダメージエフェクトよりも激しい光。クリティカルだ。

 ダメージは12,737。メマリーのHPの4分の3を持っていかれた。


「ッ~~…………!!」


 メマリーは歯を食いしばり耐えた。

 こんな痛み、今までの苦しい戦いの痛みに比べれば大したことがない。ママの病気の苦しみに比べれば話にならない。




「泣かないもん!」




 ボスがメマリーを睨みつける。負けじとメマリーもキッと見上げた。敵から目をそらしてはタンク失格。


「マイティビート!」


 レイの攻撃が決まった。ボス自慢の氷鎧は全身に大きな亀裂が入り、もはや剥がれ落ちそうだ。



 とはいえ、メマリーの現在のHPは3863。このままでは危険だ。少し後ろに下がって前衛支援のヒナツにヒールをもらいたい。

 そのタイミングで――、


「ヒュウヒュウヒュウ!」


 ドラゴンの長い尾がうねった。武装を氷戟尾に変更したのだ。

 氷戟尾は射程が7m80cmと長いうえ、威力が割と高く、厄介なスキルが使用できる。


「ヒュルヒュルヒュルヒュルヒュル~~!」


(うそぉ! ここでチェーンホールドなの!)


 チェーンホールドとは、相手を拘束し継続的にダメージを与えるスキルだ。

 HPが減少しているこの状況でチェーンホールドを受ければ、何もできないままHPが削られ、最悪死ぬかもしれない。


 それでもメマリーは迷わなかった。


「来ぉーーーい!!」


 タンクの仕事は攻撃を受けること。

 どんな恐ろしい苦難が向かってきても、タンクは逃げない。


 ドラゴンの太い尾がメマリーの体を締め上げようとする、その直前で――



「でかした、メマリー! マイティィビィィィィィト!!」



 レイの掛矢がついに氷河鎧を粉砕した。



「キュオオオオオンン~~!」


 鎧を失ったドラゴンが悶絶し、地上に墜落。

 さらに――


「ラグナエンド!!」


 サエラの最強スキル、ラグナエンドがグレイシアドラゴンの腹に入った。


「キュオオオオオンン~~!」


 またも悶絶するドラゴン。


「おい、こいつDEF減ったんじゃねーか?」


 レイの指摘は正しい。

 氷鎧を壊された直後の5分間はグレイシアのDEFは9961固定になるのだ。各武装ともDEFが2万前後あったことを考えると、大体半減しているといっていい。


「チャンスだ! ガンガン攻めんぞ!」


 レイの号令のもと攻撃に転じた。



 その後何度か氷鎧は復活したが、メマリーは大崩れすることなく抑えることができた。


 ボス戦は終盤戦に突入する。

次回は9月15日の12時頃に更新の予定です。



この作品を面白い、もっと続きが読みたいという方がおられましたら、下にある★★★★★のところを押して評価していただければ、非常に励みとなります。




こちらも読んでいただいたら嬉しいです。


【防御は最大の攻撃】です!~VRMMO初心者プレイヤーが最弱武器『デュエリングシールド』で最強ボスを倒したら『盾の聖女』って呼ばれるようになったんです~


本作の目次上部にあるJewel&Arms Onlineシリーズという文字をクリックしていただければ、飛ぶことができます。

参考までにURLも張っておきます。 https://ncode.syosetu.com/n6829gk/

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