7-20 vsヨトゥン
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俺とメマリー、アリス、村人の冒険者3人でヨトゥンと戦う。
村人は、ちりちり頭のおっさん、日焼けしたおっさん、坊主頭の若者の3人だ。
村人には俺たちのUウォーピックで戦ってもらう。
武器:Uウォーピック(ランカー武器 製造者:レイ=サウス)
内蔵魔石:威力の魔石SS×3
耐久の魔石SS×2
防御の魔石SS×2
耐水の魔石SS×1
耐風の魔石HS×1
耐物質の魔石S×1
耐ゴブリンの魔石S×1
火の魔石S×1
耐風、耐物質、耐ゴブはヨトゥン戦では全く役に立たない。俗にいう死に魔石ってやつだ。
本当はちゃんとした武器を作ってやりてぇが、予算と時間の関係上仕方ねえ。
ヨトゥンについて簡単に解説する。
HPが非常に高いうえ、ややDEFが高いので、倒すのに時間がかかる。
水属性攻撃は無効だが火属性攻撃に弱い。
フェイズ1の武装は、踏みつけのみ。
フェイズ2の武装は、フェイズ1の武装に加えてパンチと魔法。
フェイズ3の武装は、フェイズ2の武装に加えてUバトルアックス。
パンチは水属性攻撃だから被ダメを大きく軽減可能。
こいつは話にならねえ。
使用する魔法はダイヤモンドダスト、フリーズ、ヒットアップ。
問題なのはフリーズ、ダイヤモンドダストといった凍結のデバフ魔法だ。
耐水の魔石である程度凍結確率を抑えられるが、凍結の効果は深刻だ。
アリスと俺が素早く解除しなければならない。
バトルアックスと踏みつけはATKが約2万あるが、無属性攻撃なので耐水の魔石で被ダメを軽減できない。
対して、村人たちのDEFは4600しかない。
まともにもらうのは危険だ。
アリスにはターキンと共闘するように事前に打ち合わせ済みだ。
すぐにターキンがやられることはない。
現場に着くとすぐにアリスに呼びかける。
「どうなった!?」
「レイさん! ヨトゥンはフェイズ3です」
「さすが村の護り神様だ!」
アリスの報告を聞いてどよめく村人たち。
支援にアリスをつけたとはいえ、ヨトゥンをフェイズ3まで追い込めるとは思わなかった。
「後は私たちがさっさと倒しましょう」
「アリス、俺たちはサポートに回るぞ。メマリーがタゲを取り、アリスが支援、俺が研ぎ兼指揮をとる」
「分かりました」
アリスは納得してくれた。
そして、村人たちに最後のアドバイス。
「あんたらは――ゴーリャバザールを愛する住民として、この村を護ることだけを考えて戦え」
ヨトゥン戦の主役は俺たちじゃねえ。
3人の村人冒険者がどこまでやれるか。
ゴーリャバザールの未来はこいつらにかかっている。
「行くぞ!」
「「おう!」」
メマリーがタゲを固定した後、アリスにマジックバリアとパワーアップ、ヘイストをもらった3人は威勢よく飛び出していった。
「どりゃあっ!」
ちりちり頭の攻撃がヨトゥンの足首に当たった。
「ぐあっ!」
ヨトゥンが足首を押さえ痛がっている。
「俺たちも続くぞ!」
「うおぉぉ!」
残りの村人たちが追撃しようと、勇敢にヨトゥンに向かっていく。
「こざかしいわ!」
ヨトゥンはバトルアックスを消し、「ふん!」と気合を入れた。両拳に冷気が集まっていく。
ヨトゥンがメマリーを殴った。超カスダメ。
バトルアックスよりも威力の低い拳の攻撃じゃ、当然こうなるわな。
「馬鹿か、ここで格下の武装に変更かよ! お前ら、そのままやっちまえ!」
「「くらえぇぇぇ!」」
2人のウォーピックがヨトゥンの脚に当たった――が、
「そんなへなちょこ武器じゃあ、話にならんのぅ!!」
ダメージエフェクトは出なかった。
「なぜダメージをくらわない!?」
驚く村人たち。
最初に攻撃した村人も再びヨトゥンの足首を攻撃するが、やはりダメージエフェクトは出ない。
「う……嘘だろ……おい!」
想定外の事態に、みるみるうちに村人たちの顔色が青くなった。
「HIT足りてねぇなぁ……」
村人たちは呆然としているが、なんてこたぁねえ。
村人たちのHITをヨトゥンのDOGが上回っているだけの話だ。
俺の呟きを聞いて、先に戦っていたアリスがアドバイスをくれた。
「拳はDOG高めですよ。2500くらいあると思います」
「へー。バトルアックスと同じで1200くらいだと思ってた」
「でも、しょせんは2500。外付けと命バフ、回低で十分対応可能です。アドバイスと支援しに行ってきます」
「待て」
行こうとしたアリスの腕を掴んで止める。
「この戦いは村を護る戦いだ。俺たちがしゃりしゃり出張ったら、村人たちは自分たちで戦えないへたれのままだ」
困ったときは他人任せ。
そんなままじゃ、偽りの竜神にすがっていた頃と何も変わんねえ。
第2、第3のムルドナシャルが現れたら、またころっと騙されるだろうな。
「それによぉ、俺たちよりも頼もしい味方がこの村には居るじゃねーか」
村が困ったとき本当に助けになってくれる護り神――ターキン様が。
「諦めてはいけません!」
顔面蒼白で立ちすくむ村人たちにターキンが駆け寄って声をかけた。
「村人たちよ。心の強さを示すのです。心を強く持てば困難は必ず打開できます」
「でも、攻撃が当たらないんじゃ……俺たちにはどうしようも……」
「考えなさい。どうすれば戦うことができるのか、自分たちには何ができるのか、自分たちは何をしにここに来たのかを」
ターキンに諭され村人たちは顔を上げた。
彼らの視線の先で、メマリーが巨人相手に独り戦っている。小さな体で巨大な斧をもらいながらも懸命に攻撃を繰り出す。
「そうだ……俺たちは村を護るためにここに来たんだった」
「あんな小さな女の子でも戦っているんだ。俺たちだって戦わないと!」
「村を護りたい気持ちなら、俺たちのほうがある!」
村人たちの顔に生気が戻った。
いい顔だ。強敵を前にぶるってちゃ話にならねえ。
だが、気持ちだけじゃ戦うことはできない。
どうする?
メマリーの戦いを観察していた坊主頭の村人が疑問を口にした。
「どうして、あの女の子の攻撃は当たっているんだ?」
その疑問を皮切りに村人たちの間で議論が始まる。
「HITが違うからだろ。外付けの命中の魔石を増やしてみるか?」
俺は命中の魔石Sを4填めするように指示していた。
4填めだとHITは2000になる。
だが、ヨトゥンのDOGは推定2500まで上がる。
そうなれば、村人たちの攻撃はまた当たらなくなる。
「だけど、長期戦になるから耐久3命中4は崩すなって言われていただろ」
「だからといって、当たらなかったら意味がない。DRAが減ったら研いでもらえばいい」
それでいい。俺の言葉はあくまで参考意見。
臨機応変に動けないやつなんて戦場では役に立たねえ。
「よし、じゃあ命中5填めでいくか!」
命中5填めだとHITは2500になる。
ヨトゥンと五分五分だ。
外付けを変更し坊主頭の村人が再アタック。
「今度こそ!」
村人が向かってくるのを確認したヨトゥンは、またしても武装をパンチに変更。
「無駄じゃあ!」
「無駄かどうかは――分からんだろ!」
坊主頭はヨトゥンのかかとにウォーピックを力いっぱい突き立てた。
「わっはっはぁ~」
しかし、ダメージエフェクトはまたしても発生せず。
ヨトゥンの勝ち誇った馬鹿笑いがこだまする。
Mobも人間もヒットエリアというものが設定されている。
ヒットエリアは、へそを中心として同心円状に――必中エリア、80%エリア、50%エリア、20%エリアに分かれている。
攻撃する側のHITと攻撃される側のDOGが同値なら、当たったヒットエリア分の数値の確率で命中判定が成功する。
おそらく、村人のHITとヨトゥンのDOGはほぼ同値。足は20%エリア。
つまり、20%の確率でしか攻撃が当たらない。
いけると確信したときの失敗。これはきつい。
攻撃しなかった2人の村人の顔がまた曇り始める。
だが、攻撃を失敗した坊主頭の村人が吠えた。
「何度でも……何度でも!」
諦めていなかった。
歯を食いしばりウォーピックを何度も振るう。
「そうだ。心の強さを示すんだ!」
それを見た残りの2人もヨトゥンに向かって行く。
11回目の攻撃でついに赤い閃光が噴き出した。
「やっと届いた!」
「いけるぞ!」
ようやく起こした奇跡に、坊主頭の村人とちりちり頭の村人が喜び合う。
「いや、まだだ」
日焼けした村人の顔は固い。
「こんなペースで戦っても、役に立ったとはいえない」
ヨトゥンの攻撃は全てメマリーが受け、支援は全てアリスが行っている。
11回に1回攻撃が当たったくらいで、アタッカーの仕事を果たした気になってもらっちゃ困るな。
「まだHITは足りていない。もっと攻撃を当てないと……」
村人たちはウォーピックを振るいながら考える。
そして、彼らは1つの結論にたどり着く。
「ターキン様!」
ちりちり頭の村人が護り神に呼びかける。
「みんながばらばらに戦っても効果はありません。私たちと一緒に力を合わせて戦って下さい!」
ターキンと村人たちの連携は取れておらず、それぞれが自分たちのペースで戦っていた。
PTで戦うときは、個人個人が好き勝手にしても良いパフォーマンスは発揮できない。
メンバーが各人の役割を理解し協力することで、初めて強敵とも渡り合うことができるのだ。
「いいでしょう!」
村人の頼みにターキンが快く返事する。
「ターキン様、こっちに来てください」
村人に呼ばれてターキンが側にやって来る。
「HITが足りないこの状況でどう戦いますか?」
ターキンの問いかけにちりちり頭の村人が答える。
「ターキン様、我々を背中に乗っけていただけませんでしょうか? 巨人の膝上を狙います!」
膝下は20%エリアだが、膝上は50%エリア。
つまり膝上を攻撃すれば、命中判定が成功する確率がこれまでより30%上がる。
この差はデカい。
「よろしい。ですが、その前に――ヒットアップ!」
ターキンは村人たち全員にヒットアップかけた。
やっぱターキンの野郎、村人たちが本気になるのを待っていやがったな。こんな状況でも心の強さを試すなんて、相変わらず神様してやがる。
村人たち全員がターキンに騎乗。
ボスの背中に乗って戦うなんて、ちくしょう、うらやましいぜ!
「行きますよ」
ターキンは立ち上がり地面を蹴った。ターキンが地面を一蹴りするたびに白雪が舞う。
「「「行くぜーー!」」」
すれ違いざまにヨトゥンに攻撃。
鮮血のエフェクトが派手に吹き上がる。その数3本。
全員の攻撃が命中したのだ。
「ぐうぉぉぉ!」
ヨトゥンは太ももを押さえ痛がった。
DOGを上げても無駄だと悟ったのか、武装をバトルアックスにチェンジ。
「「「もういっちょう!」」」
さらに全員の攻撃が命中。問題なく戦えている。
村人は自分たちで困難を解決することに成功した。
「えいっ!」
村人たちが攻撃を仕掛けている間も、メマリーは独りでタゲを取り続けている。
メマリーの攻撃がヨトゥンの足に命中。
その隙を狙い、ヨトゥンが戦斧を振り下ろす。
「逃さんわ! ダブルカッティン――!」
「ターキン様! あの子が危ない!」
「メェェェ!」
村人が叫んだのを聞いて、ターキンが振り向きざまにスリープ。
「ぐぅぅぅぅ~zzzzz……」
攻撃の途中で眠らされ、バランスを崩したヨトゥンは無様に地面に倒れ込んだ。
「ありがとう!」
メマリーがターキンたちに礼を言う。
その様子を見て、俺とアリスが感想を言った。
「見事な連携プレイだな」
「ですね」
村人たちもターキンも生き生きとしてきた。
村人たちとターキンとだけ連携を取るのではなく、メマリーのフォローにも入ってくれた。
周りが見えている。いい感じのPTプレイだ。
「お、おのれぇ……! こうなったら、4人と1頭まとめて氷漬けにしてくれるわい!」
ヨトゥンの足元に巨大な魔法陣が浮かび上がる。大技ダイヤモンドダストの詠唱だ。
「ダイヤモン――zzzzz……」
「私たちを忘れてもらっては困りますよ」
アリスのスリープがヨトゥンに命中。ダイヤモンドダストは不発に終わった。
「だな。そろそろ俺たちも混ぜてもらおうか」
そう言って、ロングソードを抜く。
もう十分村人たちは心の強さを示した。彼らの試練は終わった。
こっからは楽しい遊びの時間だぁ!
「ダブルカッティング!!」
俺のロンソがヨトゥンの足を真っ赤に染めた。
俺とアリスが本格的に参戦してからというもの、ヨトゥンはぼこぼこにやられっぱなしのまま、あっさりと俺TUEEEされた。
次回は7月21日の12時頃に更新の予定です。
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