表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
256/372

7-20 vsヨトゥン

評価が100人を突破しました!

読んでもらうだけではなかなか評価が得られないものですが、それでも本作を評価していただいた方が100人もいることはとてもありがたいことです。

これからも皆様に面白いと評価していただけるよう頑張ります。

感想、評価、ブクマをしていただければ、それが作者の励みになります。

これからも引き続き本作を応援よろしくお願いします。

俺とメマリー、アリス、村人の冒険者3人でヨトゥンと戦う。

村人は、ちりちり頭のおっさん、日焼けしたおっさん、坊主頭の若者の3人だ。



村人には俺たちのUウォーピックで戦ってもらう。


武器:Uウォーピック(ランカー武器 製造者:レイ=サウス)

内蔵魔石:威力の魔石SS×3

耐久の魔石SS×2

防御の魔石SS×2

耐水の魔石SS×1

耐風の魔石HS×1

耐物質の魔石S×1

耐ゴブリンの魔石S×1

火の魔石S×1


耐風、耐物質、耐ゴブはヨトゥン戦では全く役に立たない。俗にいう死に魔石ってやつだ。

本当はちゃんとした武器を作ってやりてぇが、予算と時間の関係上仕方ねえ。



ヨトゥンについて簡単に解説する。


HPが非常に高いうえ、ややDEFが高いので、倒すのに時間がかかる。

水属性攻撃は無効だが火属性攻撃に弱い。


フェイズ1の武装は、踏みつけのみ。

フェイズ2の武装は、フェイズ1の武装に加えてパンチと魔法。

フェイズ3の武装は、フェイズ2の武装に加えてUバトルアックス。


パンチは水属性攻撃だから被ダメを大きく軽減可能。

こいつは話にならねえ。


使用する魔法はダイヤモンドダスト、フリーズ、ヒットアップ。

問題なのはフリーズ、ダイヤモンドダストといった凍結のデバフ魔法だ。

耐水の魔石である程度凍結確率を抑えられるが、凍結の効果は深刻だ。

アリスと俺が素早く解除しなければならない。


バトルアックスと踏みつけはATKが約2万あるが、無属性攻撃なので耐水の魔石で被ダメを軽減できない。

対して、村人たちのDEFは4600しかない。

まともにもらうのは危険だ。




アリスにはターキンと共闘するように事前に打ち合わせ済みだ。

すぐにターキンがやられることはない。


現場に着くとすぐにアリスに呼びかける。


「どうなった!?」


「レイさん! ヨトゥンはフェイズ3です」


「さすが村の護り神様だ!」


アリスの報告を聞いてどよめく村人たち。

支援にアリスをつけたとはいえ、ヨトゥンをフェイズ3まで追い込めるとは思わなかった。


「後は私たちがさっさと倒しましょう」


「アリス、俺たちはサポートに回るぞ。メマリーがタゲを取り、アリスが支援、俺が研ぎ兼指揮をとる」


「分かりました」


アリスは納得してくれた。

そして、村人たちに最後のアドバイス。


「あんたらは――ゴーリャバザールを愛する住民として、この村を護ることだけを考えて戦え」


ヨトゥン戦の主役は俺たちじゃねえ。

3人の村人冒険者がどこまでやれるか。

ゴーリャバザールの未来はこいつらにかかっている。



「行くぞ!」


「「おう!」」


メマリーがタゲを固定した後、アリスにマジックバリアとパワーアップ、ヘイストをもらった3人は威勢よく飛び出していった。


「どりゃあっ!」


ちりちり頭の攻撃がヨトゥンの足首に当たった。


「ぐあっ!」


ヨトゥンが足首を押さえ痛がっている。


「俺たちも続くぞ!」

「うおぉぉ!」


残りの村人たちが追撃しようと、勇敢にヨトゥンに向かっていく。


「こざかしいわ!」


ヨトゥンはバトルアックスを消し、「ふん!」と気合を入れた。両拳に冷気が集まっていく。

ヨトゥンがメマリーを殴った。超カスダメ。

バトルアックスよりも威力の低い拳の攻撃じゃ、当然こうなるわな。


「馬鹿か、ここで格下の武装に変更かよ! お前ら、そのままやっちまえ!」


「「くらえぇぇぇ!」」


2人のウォーピックがヨトゥンの脚に当たった――が、



「そんなへなちょこ武器じゃあ、話にならんのぅ!!」



ダメージエフェクトは出なかった。


「なぜダメージをくらわない!?」


驚く村人たち。

最初に攻撃した村人も再びヨトゥンの足首を攻撃するが、やはりダメージエフェクトは出ない。


「う……嘘だろ……おい!」


想定外の事態に、みるみるうちに村人たちの顔色が青くなった。



「HIT足りてねぇなぁ……」


村人たちは呆然としているが、なんてこたぁねえ。

村人たちのHITをヨトゥンのDOGが上回っているだけの話だ。


俺の呟きを聞いて、先に戦っていたアリスがアドバイスをくれた。


「拳はDOG高めですよ。2500くらいあると思います」


「へー。バトルアックスと同じで1200くらいだと思ってた」


「でも、しょせんは2500。外付けと命バフ、回低で十分対応可能です。アドバイスと支援しに行ってきます」


「待て」


行こうとしたアリスの腕を掴んで止める。


「この戦いは村を護る戦いだ。俺たちがしゃりしゃり出張ったら、村人たちは自分たちで戦えないへたれのままだ」


困ったときは他人任せ。

そんなままじゃ、偽りの竜神にすがっていた頃と何も変わんねえ。

第2、第3のムルドナシャルが現れたら、またころっと騙されるだろうな。


「それによぉ、俺たちよりも頼もしい味方かみさまがこの村には居るじゃねーか」


村が困ったとき本当に助けになってくれる護り神――ターキン様が。




「諦めてはいけません!」




顔面蒼白で立ちすくむ村人たちにターキンが駆け寄って声をかけた。


「村人たちよ。心の強さを示すのです。心を強く持てば困難は必ず打開できます」


「でも、攻撃が当たらないんじゃ……俺たちにはどうしようも……」


「考えなさい。どうすれば戦うことができるのか、自分たちには何ができるのか、自分たちは何をしにここに来たのかを」


ターキンに諭され村人たちは顔を上げた。

彼らの視線の先で、メマリーが巨人相手に独り戦っている。小さな体で巨大な斧をもらいながらも懸命に攻撃を繰り出す。


「そうだ……俺たちは村を護るためにここに来たんだった」

「あんな小さな女の子でも戦っているんだ。俺たちだって戦わないと!」

「村を護りたい気持ちなら、俺たちのほうがある!」


村人たちの顔に生気が戻った。

いい顔だ。強敵を前にぶるってちゃ話にならねえ。

だが、気持ちだけじゃ戦うことはできない。

どうする?



メマリーの戦いを観察していた坊主頭の村人が疑問を口にした。


「どうして、あの女の子の攻撃は当たっているんだ?」


その疑問を皮切りに村人たちの間で議論が始まる。


「HITが違うからだろ。外付けの命中の魔石を増やしてみるか?」


俺は命中の魔石Sを4填めするように指示していた。

4填めだとHITは2000になる。

だが、ヨトゥンのDOGは推定2500まで上がる。

そうなれば、村人たちの攻撃はまた当たらなくなる。


「だけど、長期戦になるから耐久3命中4は崩すなって言われていただろ」


「だからといって、当たらなかったら意味がない。DRAが減ったら研いでもらえばいい」


それでいい。俺の言葉はあくまで参考意見。

臨機応変に動けないやつなんて戦場では役に立たねえ。


「よし、じゃあ命中5填めでいくか!」


命中5填めだとHITは2500になる。

ヨトゥンと五分五分だ。



外付けを変更し坊主頭の村人が再アタック。


「今度こそ!」


村人が向かってくるのを確認したヨトゥンは、またしても武装をパンチに変更。


「無駄じゃあ!」


「無駄かどうかは――分からんだろ!」


坊主頭はヨトゥンのかかとにウォーピックを力いっぱい突き立てた。


「わっはっはぁ~」


しかし、ダメージエフェクトはまたしても発生せず。

ヨトゥンの勝ち誇った馬鹿笑いがこだまする。



Mobも人間もヒットエリアというものが設定されている。

ヒットエリアは、へそを中心として同心円状に――必中エリア、80%エリア、50%エリア、20%エリアに分かれている。


攻撃する側のHITと攻撃される側のDOGが同値なら、当たったヒットエリア分の数値の確率で命中判定が成功する。

おそらく、村人のHITとヨトゥンのDOGはほぼ同値。足は20%エリア。

つまり、20%の確率でしか攻撃が当たらない。



いけると確信したときの失敗。これはきつい。

攻撃しなかった2人の村人の顔がまた曇り始める。


だが、攻撃を失敗した坊主頭の村人が吠えた。


「何度でも……何度でも!」


諦めていなかった。

歯を食いしばりウォーピックを何度も振るう。


「そうだ。心の強さを示すんだ!」


それを見た残りの2人もヨトゥンに向かって行く。



11回目の攻撃でついに赤い閃光が噴き出した。


「やっと届いた!」

「いけるぞ!」


ようやく起こした奇跡に、坊主頭の村人とちりちり頭の村人が喜び合う。


「いや、まだだ」


日焼けした村人の顔は固い。


「こんなペースで戦っても、役に立ったとはいえない」


ヨトゥンの攻撃は全てメマリーが受け、支援は全てアリスが行っている。

11回に1回攻撃が当たったくらいで、アタッカーの仕事を果たした気になってもらっちゃ困るな。


「まだHITは足りていない。もっと攻撃を当てないと……」


村人たちはウォーピックを振るいながら考える。



そして、彼らは1つの結論にたどり着く。


「ターキン様!」


ちりちり頭の村人が護り神に呼びかける。


「みんながばらばらに戦っても効果はありません。私たちと一緒に力を合わせて戦って下さい!」


ターキンと村人たちの連携は取れておらず、それぞれが自分たちのペースで戦っていた。


PTで戦うときは、個人個人が好き勝手にしても良いパフォーマンスは発揮できない。

メンバーが各人の役割を理解し協力することで、初めて強敵とも渡り合うことができるのだ。


「いいでしょう!」


村人の頼みにターキンが快く返事する。


「ターキン様、こっちに来てください」


村人に呼ばれてターキンが側にやって来る。


「HITが足りないこの状況でどう戦いますか?」


ターキンの問いかけにちりちり頭の村人が答える。


「ターキン様、我々を背中に乗っけていただけませんでしょうか? 巨人の膝上を狙います!」


膝下は20%エリアだが、膝上は50%エリア。

つまり膝上を攻撃すれば、命中判定が成功する確率がこれまでより30%上がる。

この差はデカい。


「よろしい。ですが、その前に――ヒットアップ!」


ターキンは村人たち全員にヒットアップかけた。

やっぱターキンの野郎、村人たちが本気になるのを待っていやがったな。こんな状況でも心の強さを試すなんて、相変わらず神様してやがる。



村人たち全員がターキンに騎乗。

ボスの背中に乗って戦うなんて、ちくしょう、うらやましいぜ!


「行きますよ」


ターキンは立ち上がり地面を蹴った。ターキンが地面を一蹴りするたびに白雪が舞う。


「「「行くぜーー!」」」


すれ違いざまにヨトゥンに攻撃。

鮮血のエフェクトが派手に吹き上がる。その数3本。

全員の攻撃が命中したのだ。


「ぐうぉぉぉ!」


ヨトゥンは太ももを押さえ痛がった。

DOGを上げても無駄だと悟ったのか、武装をバトルアックスにチェンジ。


「「「もういっちょう!」」」


さらに全員の攻撃が命中。問題なく戦えている。

村人は自分たちで困難を解決することに成功した。



「えいっ!」


村人たちが攻撃を仕掛けている間も、メマリーは独りでタゲを取り続けている。

メマリーの攻撃がヨトゥンの足に命中。

その隙を狙い、ヨトゥンが戦斧を振り下ろす。


「逃さんわ! ダブルカッティン――!」


「ターキン様! あの子が危ない!」


「メェェェ!」


村人が叫んだのを聞いて、ターキンが振り向きざまにスリープ。


「ぐぅぅぅぅ~zzzzz……」


攻撃の途中で眠らされ、バランスを崩したヨトゥンは無様に地面に倒れ込んだ。


「ありがとう!」


メマリーがターキンたちに礼を言う。

その様子を見て、俺とアリスが感想を言った。


「見事な連携プレイだな」


「ですね」


村人たちもターキンも生き生きとしてきた。

村人たちとターキンとだけ連携を取るのではなく、メマリーのフォローにも入ってくれた。

周りが見えている。いい感じのPTプレイだ。



「お、おのれぇ……! こうなったら、4人と1頭まとめて氷漬けにしてくれるわい!」


ヨトゥンの足元に巨大な魔法陣が浮かび上がる。大技ダイヤモンドダストの詠唱だ。


「ダイヤモン――zzzzz……」


「私たちを忘れてもらっては困りますよ」


アリスのスリープがヨトゥンに命中。ダイヤモンドダストは不発に終わった。


「だな。そろそろ俺たちも混ぜてもらおうか」


そう言って、ロングソードを抜く。

もう十分村人たちは心の強さを示した。彼らの試練は終わった。


こっからは楽しい遊びの時間だぁ!


「ダブルカッティング!!」


俺のロンソがヨトゥンの足を真っ赤に染めた。




俺とアリスが本格的に参戦してからというもの、ヨトゥンはぼこぼこにやられっぱなしのまま、あっさりと俺TUEEEされた。

次回は7月21日の12時頃に更新の予定です。




この作品を面白い、もっと続きが読みたいという方がおられましたら、下にある★★★★★のところを押して評価していただければ、非常に励みとなります。




こちらも読んでいただいたら嬉しいです。


【防御は最大の攻撃】です!~VRMMO初心者プレイヤーが最弱武器『デュエリングシールド』で最強ボスを倒したら『盾の聖女』って呼ばれるようになったんです~


本作の目次上部にあるJewel&Arms Onlineシリーズという文字をクリックしていただければ、飛ぶことができます。

参考までにURLも張っておきます。 https://ncode.syosetu.com/n6829gk/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ