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7-13 ターキンの試練2

「ファイナルスーパーグレートマグナムアタァァァック!」


 牛と羊のキマイラ、ターキンとの戦いが始まって30分以上経過。何度目か分からないアニルのファイナルなんちゃらアタックが決まった。


 アニルの攻撃を受けたターキンの体から水色の光が放たれた。


「やったかー!」


 赤い服を着たアニルの友達が叫んだ。

 ざわつくガキどもと違って、メマリーは冷静だ。


「まだだよ。フェイズが移行しただけ」


 ボスのHPバーが消滅するたびに、フェイズが移行する。

 フェイズが変わるとボスの行動パターンが変わる。


「ここからが本番だよ」


 メマリーの言う通り。

 フェイズ2ではフェイズ1よりも強力な攻撃を仕掛けてくるようになる。


 羊が「エエエエエ」と吼える。

 今までは羊の頭は何の行動もしてこなかった。

 フェイズ2からは羊による攻撃と牛による攻撃を使い分けてくる。



「みんな、下がって! ナイトフォース!」


 ナイトフォースは攻撃行動によるヘイトの増加量を上昇させるスキルだ。ヘイトを稼ぐうえで最も基本的なスキルだといっていい。


 ターキンはヒットアップを使用した後、メマリーに向かって突進してきた。


「心弱き者に経典を手にする資格はありません」


「負けないもん!」


 ターキンは羊の角で、メマリーはマンプルで、互いに打ち合う。激しい乱打戦。

 今、ターキンのヘイトはメマリーに集まっている。


 牛のヘイト変動パターンは『ヘイト変動小』というパターンだった。最初はタゲを取りにくいが、1度ヘイトを集めてしまえばタゲを固定できる。

 フェイズ1は、最初以外ずっとメマリーがタゲを取っていたため、楽勝だった。


 だが、小種族キマイラの特長は武装ごとにヘイト変動パターンや行動パターンが変化することだ。

 羊のパターンはまだ分からねえ。

 気を抜くんじゃねえぞ、メマリー。



 しばらくして、ナイトフォースの効果が切れた。


「みんなー。そろそろ攻撃してー」


 悪くねえタイミングだ。そろそろ頃合いだろ。


「待ってたぜーー!」

「行くぞーーー!」

「うおーーー!」


 3人が突撃。ターキンを殴る。


「やりますね。ヒール!」


 ターキンのHPが回復する。


「うわ、HPが増えた」

「ビビんな。もっと殴ればいいだろ」

「そうだ、やっちまえ!」


 ヒールの回復量は約4万2千。

 放っておけばかなり回復されてしまう。

 ムキになった3人は攻撃を続けた。


 3人へのヘイトがかなり上がったんじゃねーの。

 メマリー、ちゃんとケアしろよ。

 そう思った時、メマリーがアニルたちに声をかける。


「そろそろ下がってー」


 ターキンはメマリーを追い回し続けている。

 少しタイミングが遅いような気もするけど、問題なさそうだな。


「いったん退くぜー」


 アニルの号令で他の2人もターキンから離れようとする。


「逃がしませんよ」


 このタイミングでターキンが急に振り返った。

 ターキンは逃げる3人を睨んでいる。

 ターゲットはアニルたち。

 こいつ、反撃するタイミングを計っていたのか!


「スリープ!」


 羊角から雲のような魔法弾が放たれた。

 狙われたのは赤い服の少年。突然の攻撃に経験の浅い少年は対処することもできない。

 あっさり魔法弾が命中。

 少年は転び――そのまま眠りに落ちた。


 その隙を逃がすボスではない。

 続けざまに攻撃魔法が放たれた。

 当たれば死。そんな絶体絶命のピンチに――


「プロボック!」


 メマリーは最後の挑発スキルを使用した。



 挑発スキルと呼ばれるアクティブスキルは次の4つ。

 単体のMobを挑発状態にし、タゲを強制的にとる「プロボック」。

 攻撃行動によるヘイトの増加量を上昇させる「ナイトフォース」。

 周囲のMobを挑発状態にし、タゲを強制的にとる「ウォークライ」。

 周囲のMobのヘイトを上昇させる「スレットオーラ」。


 超貴重な星4スキルのスレットオーラは使えないものの、メマリーは3つのスキルを駆使してヘイトを稼いでいる。


 だが今は全ての挑発スキルがリキャストタイム――スキル使用不可期間に入っている。

 挑発スキルでタゲを取り、3人から注意を逸らすことはできないのだ。



 ピンチを間一髪で凌いだ。

 だがプロボックの効果はわずか10秒にも満たない。

 再びターキンがアニルたちの方に向き直ってしまう。


「あ、ああ……」


 震える茶色の服の少年。

 アニルがクラブを握りしめ、声を絞り出した。


「ビビんな! 行くぞ!」

「お、おぅ!」


 あっ、バカ!

 ヘイトが上がるから行くんじゃねえって!


 ビジュッ!

 飛び出そうとした2人の足元に光弾が着弾。

 もう10cmずれていたら命中していただろう。

 この攻撃が2人の心を折ったのか。

 2人は再び、その場に立ち尽くしてしまった。



「エエエエエ」


 ここで、ターキンが前脚を高く上げて啼いた。

 半径20mの範囲睡眠――エリアスリープだ!


「お兄ちゃんのところまで逃げて! 早く!!」


 メマリーが必死になって叫ぶが、アニルたちは震えて動けない。


「メエエエエエェェ!」


 Aスリープ発動。アニルたちはどさりと地面に崩れ落ちた。



 起きているのは、離れた場所に居る俺、そして、高resタンクのメマリー。


 ターキンには魔法攻撃がある。

 眠っているあいつらに撃たれたら終わりだ。

 ガキの冒険者ごっこにしては危険すぎる状況。


 どうする、加勢に行くか?

 いや……メマリーにあいつらを任せたんだ。

 俺はメマリーを信じる。

 いつでも行けるようにスキルウインドウを出し武器を握りしめ、じっと見守ることにした。



「わたしに攻撃して! ピアース!」


 メマリーがターキンにスキルを使用して殴りかかる。

 良い判断だ。


 ヘイトは主に次の行動によって増加する。

 ・接近

 ・自身に対する攻撃行動

 ・与ダメージ量

 ・被ダメージ量

 ・回復魔法の使用

 ・自己バフ、支援、妨害スキルの使用

 ・ヘイトスキルの効果


 前半メマリーがしっかりヘイトを稼いでいたにも関わらず、アニルたちにタコ殴りにされたことで、ターキンのタゲがアニルたちに移った。

 おそらく、今のヘイト変動のパターンは「ヘイト変動大」か「被ダメによるヘイト変動大」。

 どちらにせよ、ここで大ダメージを与えることができればヘイトを稼ぐことができる。


 それに、タゲがガキんちょに移ってから、そんなに時間が経っていない。ガキども対するヘイト値とメマリーに対するヘイト値は、まだそれほど差がないはずだ。

 今ならタゲを取り返せる。



「甘いですね」


 だが、メマリーのピアースはかわされてしまった。

 そして、ここでターキンが予想外の行動に出る。


「モォォォォォ!」


 ターキンの野郎。ここで牛頭に武装チェンジだと!

 牛頭のヘイト変動パターンは「ヘイト変動小」。

 大ダメージを与えてもヘイトを稼ぎにくい。

 これでメマリーはタゲを取り返しにくくなった。

 つまり、ターキンは何が何でもアニルたちを殺すつもりかよ!



「護れるものなら、護ってみせなさい! モォォォ!」


 ターキンがダッシュを使用し、メマリーから距離をとった。

 ターキンが駆ける。獲物をしとめるための助走。


「冒険者よ、意志を示すのです!」


 金色の角を突き出し、アニルたち目掛けて一直線に突進するターキン。


「わたしはタンク。みんなを護るの」


 ターキンの軌道に立ちはだかるメマリー。

 右手を前に突き出し構える。


「どきなさい!」


「どかないもん!」


 ターキンの体高は2m以上。

 ターキンにねられれば、メマリーはあっさり吹き飛んでしまう。

 そうなったら――メマリーはアニルたちを護れない。

 しかし、猛スピードで走る神獣にメマリーは一歩も引かなかった。まるで自分の意志を示すように。


 迫りくる金色の巨体。

 荒れ狂う巨獣の前では非力な人間など無力――。



「アームズブロック!!」



 メマリーのマンプルが白く輝いた。

 そして、ターキンの巨体を弾き返した。


 アームズブロックとは強力なブロックスキルだ。ブロックした相手に強い衝撃を与える。その効果はアタックの差が大きいほど強い。

 ターキンの牛角のATKは約9500程度。対するメマリーのBBATは3万を超えている。

 たとえ、スピードに乗った巨獣の体当たりでも、この差をひっくり返すなんて不可能に決まっている。



「オオオオオッ!」


 ターキンが吹き飛ばされて派手に地面に転がった。

 ターキンは4足歩行の獣。起き上がるには時間がかかる。


 そのチャンスを見逃すほど、うちのタンクは甘くねえ。


「ピアース! ピアース! ピアース!」


 続けざまにピアース3連撃をターキンにおみまい。


「グッ……グハッ!」


 よく見たら、マンプルの刃がターキンの脇腹に深々と突き刺さっているじゃねーか。ここでファンブルかよ。良い流れだ!

 ファンブル中はダメージが入り続ける。ピアースのダメージが続けば、さすがに体力自慢のターキンでも痛ぇだろうな。



 ファンブルが終わり、ターキンがよろよろと立ちあがった。


「モオオオ。甘く見ていました。先にあなたと戦いましょう!」


 やった! メマリーがタゲを取り戻したぞ。

 さすがは世界一のタンクを目指すだけあるぜ。やればできる。



 アニルたちが起きてこなかったということもあり、ここからはしばらくメマリーがタゲをきっちり確保し優勢に戦いを進めた。


 ターキンとの戦いは終盤戦に突入する。

次回は6月2日の12時頃に更新の予定です。




この作品を面白い、もっと続きが読みたいという方がおられましたら、下にある★★★★★のところを押して評価していただければ、非常に励みとなります。




こちらも読んでいただいたら嬉しいです。


【防御は最大の攻撃】です!~VRMMO初心者プレイヤーが最弱武器『デュエリングシールド』で最強ボスを倒したら『盾の聖女』って呼ばれるようになったんです~


本作の目次上部にあるJewel&Arms Onlineシリーズという文字をクリックしていただければ、飛ぶことができます。

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