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7-12 ターキンの試練1

 アニルたちの武器を3本製造した。

 予想通りここの工房は使えなかったが、俺には移動工房のチートがある。何も問題ねえ。



 店の奥から出てきた俺を見て、アニルたちが歓声を上げる。


「カッコイイ武器作ってくれたよな!」


「これを貸してやる。ありがたく思えよ」


 俺から武器を渡されて、アニルがしかめっ面になる。


「これ、ただの棒じゃ~ん。だっせぇ~~」


 俺が渡した武器はクラブ。つまり、木製の棍棒だ。


「るせぇ! 文句があるなら、追加で金払え!」


 俺が怒鳴ると、アニルたちは渋い顔のまま黙り込む。

 さっき、こいつらからレンタル代を無理矢理ぶんどったところだ。ぶんどったといっても、たかだか数千マネの話なんだけど。



「大丈夫だよ~。お兄ちゃんが作ったんだもん、きっとすごい武器だよ。私にも見せてー」


 武器のステータスを確認したメマリーの顔が引きつった。


「お兄ちゃん、これ……。防御が1個も内蔵されていないよ!」



 アニルたちの武器のレシピはこうだ。


 武器:Uクラブ(ランカー武器 製造者:レイ=サウス)

 内蔵魔石:威力の魔石SS×6

 命中の魔石SS×3

 耐久の魔石SS×2

 滅魔獣の魔石S×1


「防御を内蔵して最低ダメージにしたところで、レベル1のHPじゃどうせ即死だ。超攻撃特化にして短期決戦ですまさなきゃ殺られるぞ。それに、お前言ったよな――」


 メマリーの顔に真っ直ぐ視線を向ける。


「こいつらを護るって」


 自分の言葉の重みを感じているのだろうか。メマリーの顔がこわばった。

 こいつらを無事に生還させるには、全ての攻撃をメマリーが受け止めなければならない。万に一つの間違いもあってはいけないのだ。


「今ならやめることもできる。――どうする?」


 俺の問いかけにメマリーは首を横に振った。


「やめないよ」


「ほぅ」


「だって、わたしは一人前のタンクだもん。――お兄ちゃんも、アニルたちも、ママも、みんな護るって決めたの」


 メマリーが胸を拳でドンと叩く。


「わたしが絶対に護ってみせるよ!」


 良い答えだ。

 腕はともかく、ちっとはタンクらしくなってきたじゃねーか。


「ペチャパイが胸叩いても、全然揺れねーよ!」


「ふ……ふえ~~ん~~」


 アニルの野次にメマリーがまた泣いた。

 タンクとしてはともかく、大人としてはまだまだ一人前じゃねーな。胸のサイズ的にも……。



 メマリーと俺はアニルたちに付いていくことに、サエラとアリスとズニックは引き続き村の調査をすることになった。





 石造りの廊下をただひたすら歩く。

 ここは石窟寺院。

 アニルたちが目指す大月経だいがつきょうが奥に収められている。


「や~まに登れば強い子に~♪ て~らで祈れば救われる~♪」


 アニルたちはデカい声で歌を歌いながら先頭を行く。


 今回は正規のクエストではないため、ボスを倒して大月経だいがつきょうをゲットすればいい。

 道中敵も出てこないから、アニルたちは遠足気分なのだろう。



 メマリーが不安そうに俺に尋ねてきた。


「ボスってどんなのかな?」


「悪ぃ。このクエストはやるつもりがなかったから、あんまり覚えてねえんだ」


「そうなんだ……」


「だけど、いくつか覚えていることはある。ボーナス8の高intで睡眠を仕掛けてくる。特にエリアスリープには注意だな」


 エリアというのは、半径20m以内にいる者全てを対象とするデバフのことだ。

 つまり、Aスリープを使われたら半径20m以内にいる者全てが睡眠になる。


「そんなの使われたら、わたしも寝ちゃうからどうしようもないの?」


「安心しろ。お前のresなら睡眠にかからねーよ」


「よかったぁ……」


「だが、3人は寝る。ボスは攻撃魔法を使用するから、3人が眠った隙に攻撃魔法を撃ってくるかもしれない。しっかり守れよ」


「うん」


「ボスの小種族はキマイラだ。キマイラはヘイト変動のパターンがころころ変わる。その辺を踏まえてヘイトを稼げ」


「難しそうだね……。でも、がんばる!」


「その意気だ」



 そんな話をしていたら、行く手に大きな鉄の扉が現れた。


「この奥にボスがいるんだね……」


 重苦しい鉄の扉に威圧感を感じているのか。

 メマリーが息を呑む。

 アニルたちも緊張しているのか言葉を失っている。


「じゃあ……」


 そう言って、扉を開けようとしたアニルの手をメマリーが止めた。


「待って。タンクのわたしが先に行くよ。後ろから付いて来てね」


 メマリーが扉を開け中に入った。




 中はだだっ広い空間だった。極彩色の壁には所狭しと仏画が描かれている。


 少し進むと、突然何も無い空間から声が響いた。


『ここは聖典が収められている神聖なる場所。用無き者は立ち去りなさい』


 アニルが声を上げる。


「俺たちは大月経だいがつきょうを取りに来たんだー!」


『そうですか。ならば――』 


 謎の声がそう言うと、牛と羊の頭を持った金色のキマイラが姿を現した。


「あなたたちに試練を与えましょう」


 アニルたちの足が止まった。

 相手は自分たちの背の倍以上ある獣だ。

 初陣でこんなのを相手にするなんて、ビビらねぇほうが無理ってもんだ。


「我が名はターキン。ゴーリャバザールの守護神。大月経だいがつきょうが欲しくば、己の弱き心に打ち克ち、力を示すのです!」

次回は5月26日の12時頃に更新の予定です。




この作品を面白い、もっと続きが読みたいという方がおられましたら、下にある★★★★★のところを押して評価していただければ、非常に励みとなります。




こちらも読んでいただいたら嬉しいです。


【防御は最大の攻撃】です!~VRMMO初心者プレイヤーが最弱武器『デュエリングシールド』で最強ボスを倒したら『盾の聖女』って呼ばれるようになったんです~


本作の目次上部にあるJewel&Arms Onlineシリーズという文字をクリックしていただければ、飛ぶことができます。

参考までにURLも張っておきます。 https://ncode.syosetu.com/n6829gk/

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