7-10 一人前の男2
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突如背後から現れた謎の声の正体を確認した。
「はぁ……」
「何で溜息なんかつくんだよ!」
「だって、お前らガキじゃん……」
謎の声の正体は3人組の子どもだった。小学5、6年生くらいの生意気そうなガキ。
「うるせぇー、俺たちはガキじゃねえ! それよりもな、お前らに話がある!」
「さ、引き続き村の調査でもすっか」
「話、聞けーー!」
無視して歩き出そうとした俺に、リーダー格のガキがドロップキックをかましてきた。痛くねえんだけど、ムカつくな。
「はいはい、話聞きゃいいんだろ。3秒だけ時間をくれてやる。はい、3、2、1、0。終了」
「3秒で話しできるかーー! って、うわぁ!」
ガキのドロップキックをサッと回避。
「俺たちは冒険者だ。2度も同じ攻撃をくらうかよ」
「うるさい! 俺たちも冒険者だぁーーー!!」
ガキに言われてもなぁ……。
「まぁまぁ、レイ君。お話はちゃんと聞こうよ」
「ちっ、お前ら、とっとと話しやがれ」
「いいぜぇ~! 山にゴブリンどもが――」
「zzzzzz~~~……」
「お前こそ、話聞いてやれよ!」
秒で寝てしまったサエラの頬をつねって起こす。
「なぁ、お姉ちゃんのこと好きなんだろー! 教えろよー」
「おっぱいでかいなー。おっぱい揉んだんだろー」
「なぁなぁ、Hしたの!?」
俺とサエラのやり取りを見て、馬鹿みたいに大騒ぎするクソガキども。っていうか、馬鹿そのものだろ。
「てめぇら、まとめて大雪渓のクレバスに放り込んでやろうかーー!」
ガキがあっかんべーをして俺に言い返す。
「お前らなんかに俺たちが負けるかー! いいか、俺たちは冒険者だ! あんたとも戦えるんだぜ、村の大人と違ってな!」
どっから出てくるんだよ、その自信。
「特にクマールみたいな、へたれ中のへたれよりも、俺たちはすごいんだぜーーー!!」
馬鹿笑いするリーダー格のガキ。
そういえば……こいつの顔って……! まさか!
「お前、ひょっとしたら、クマールの息子、アニルか!?」
スクリーンショットに写っていたときは帽子をかぶっていたが、今は立派な坊主頭。だから分からなかった。
「ほんとだ!」
メマリーも気づいていなかったようだ。
「確かに、クマールと目元がちょっと似てるな」
「あんなへたれ無職なんかと一緒にすんな!!」
アニルがキレて俺の足を踏んづけようとした。
これも華麗に回避。
メマリーが優しく話しかける。
「ねえ。わたしたちに話があったんだよね。詳しくお話してくれるかな?」
「お前だってガキのくせに大人ぶるんじゃねーぞ、ペチャパイ!」
「うえ~~ん~~。まだまだこれから大きくなるんだも~~ん~」
アニルの野郎、ロリキャラの弱点を的確につきやがった。っていうか、メマリーお前も泣くんじゃねーよ。
「泣~かした~、泣~かした~」
「坊~さま~に言ってやろう~」
「な、泣くなよ~」
他の2人にいじられ、アニルがしどろもどろになる。
まんまクソガキのノリだ。
2人のいじりをごまかそうとしたのか、アニルが突然叫ぶ。
「ああ、もう分かった! 案内してやるよ、俺たちの秘密基地」
何が分かったのか分かんねーまま、俺たちは秘密基地とやらに案内されることになった。
「「「ここが俺たちの秘密基地だーーー!!」」」
1軒の建物の前でガキどもが宣言する。
こんな大声で叫んだら、丸聞こえだろ。どこが秘密なんだよ。通りすがりのおばさんがこっちを見ているぞ。
「よーし、お前らも俺たちに付いてこーい!」
アニルが扉を開け、ガキどもは中に入っていった。
「他人の建物の中に勝手に入っていいのかよ」
俺が苦笑していると、サエラが看板を見て驚く。
「これって、タイラン商会の看板だよ!」
金色のTと、その下で交差している剣と槍。
間違いねえ。この世界を牛耳っているクソギルド、タイラン商会の武器屋の看板だ。
「こんな秘境にまで出店しているのかよ……」
嫌なものを見ちまった……。
でも、相手がタイラン商会なら気にする必要はねーな。遠慮なく上がらせてもらうぜ。
「おい、どうなってんだ……?」
タイラン商会の武器屋の看板がかかっているということは、ここは現役の武器屋のはずだ。
それなのに――
「なんで武器が1つも飾られていねえんだよ……」
いくらカタログシステムがあるとはいえ、武器屋なんだから見本の武器が飾られているのは当たり前の話だ。
実際、武器が飾られていないタイラン商会の武器屋なんて見たことねえ。
「それもそうだけど……、このお店、店員さんが1人も居ないよ……」
サエラの言う通り、俺たちとガキんちょ以外中には誰も居ない。
「ここは一体、何なんだ……?」
「バカだなー。俺たち以外誰も居ないから、秘密基地っていうんだぜー」
得意顔で語るガキ。そういうことを言ってるんじゃねーよ。
「まあ、それはいい。で、話って何だ?」
「話は聞いたぜ!」
腕組みをして自信満々の態度を取るアニル。
「話は何だ?」って聞かれて、何で出てくる答えが「話は聞いた」なんだ。全然答えになってねーよ。
「お前、武器屋なんだろ。本物のプロなんちゃらって言ってたよな」
アニルの野郎、俺たちとクマールの話を聞いてやがったな。
「ゴブリンやドラゴンだって倒せる武器を作れるんだってな!」
ガキの1人が目を輝かせて俺を見ている。
「もちろんな」
「だったらさぁ――」
これは、あれか。俺たちにゴブリンやグレイシアを倒してくれっていう依頼だな。
そういうことなら、いいぜ。頼まれていなくても、やって――。
「そんな超強い武器を作ってくれよ――俺たちに!」
「はあああああぁぁぁーーー!?」
ありえねえんだけど!
お前ら、ただのガキんちょじゃねーか。
戦えるわけないし。
「お前ら、冒険者っていってたよな。レベルはいくらなんだ?」
「レベルは1億だぜ!」
「……レベルは1ってことか」
JAOのレベルキャップは99。
1億とかジョークにしても寒すぎだろ。
「おい、ガキんちょども。Mobとの戦いは遊びじゃねえんだぞ」
いや、本当はゲームなんだけど。
「遊びじゃないねー! お前らには特別に俺たちの計画を教えてやる。絶対に言うなよ」
馬鹿馬鹿しくて話したくねーよ。
「まずは、石窟寺院に行って大月経を取ってくる。それで、ふぬけの大人たちに俺たちがガキじゃないってことを認めさせてやる」
街のはずれの石窟寺院へ、お経を取りに行くクエストのことを言っているのだろう。
「それから、大雪渓のゴブリンたちを退治。ゴブリンを退治したら竜神様の怒りも収まって、めでたしめでたし」
だからゴブリンも退治できないし、グレイシアもどこかへ行かないって。
「俺たちも村を救ったヒーローになってめでたしめでたし」
「『めでたしめでたし』じゃねーよ! 無茶苦茶なんだよ、お前ぇらの話はよぉ!」
ツッコミどころ満載で、ツッコむ気すら起きねえ。
「あぁ、もぅ! 俺たちは忙しいんだ。ガキのおもりに付き合ってる暇なんてねーんだよ。行くぞ、お前ら」
そう言って出て行こうとする俺を、
「待って、お兄ちゃん!」
メマリーが引き止めた。
「わたしね、アニルたちのこと手伝いたい。お兄ちゃんたちにも手伝ってほしい。だって……」
泣きそうなメマリーの顔。
そんなもん見せられたら、何も言えねえよ。
本当は一番急いでいるはずなのに。お前ってやつは……。
「話聞くだけだからな!」
俺は床にどかっと腰を下ろし、あぐらをかいて座った。
次回は5月12日の12時頃に更新の予定です。
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