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6-19 フレンド 4/∞

今回は3人称アリス視点で話が進みます。

 エンヴァを倒した後は、レイたちはごちそうを取って帰り、デービー村に戻ってクエストを完了させた。

 帰り道。ジデたちは今日の冒険についての感想を言い合っていた。


「いやぁ~、食った食った。こんなに旨いもんを食ったのは久々じゃわい」


 ゴッヘムが太鼓のように膨らんだ腹を叩いて笑っている。


「うぃ~、あんな料理、ランキング1位の店でも食ったことねえよ」


 酒を飲みながら千鳥足で歩くガボン。


「ギヒ、いい事思いついたぜ」


 ジデがニタリと爬虫類じみた笑いを浮かべた。


「うぃ~、どうしたんだよぉ~、ジデ~」


「ヒヒヒ――レストランを立ち上げて一儲けしようや」


「わしらはメシなんか作れんぞ」


「バ~カだにゃぁ~。メシなんかは悪魔の食卓から取ってくればいいだろぉー。きっと、もの珍しさで客が集まるぜぇ~」


「「やろう!!」」


 ジデの提案にガボンとゴッヘムが乗った。



「しっかし、お前らみたいな下手くそだけで本当に大丈夫かぁ?」


 レイの少し意地悪な質問にジデが答えた。


「まぁ、足りないメンバーは臨時で集めますけどねぇ。レイさんの武器とレイさんから教えてもらった戦術があれば怖いものなしですよぅ。それに――」


 ジデが愉快そうに高らかに笑う。


「こ~んな楽しい遊び。覚えちゃったら、またやりたくなるのが人情ってもんでしょ!」


「うぃ~。また暴れに行こうぜ!」

「最高の冒険だったわい!」


 ガボンもゴッヘムも目を輝かせて笑っている。


「そうと決まりゃあ、お前らぁ、飲み直そうぜぇ~~」


「「おお~!!」」


 ジデの号令にガボンとゴッヘムも両手を上げて万歳する。

 そんな3人を見て、レイは苦笑する。


「ってか、お前ら、まだ飲むのかよ……」



 レイがアリスに話しかけてきた。


「アリス、今日は楽しかったか?」


「えっ、あっ……はい」


 途中は色々あったが、終わってみれば楽しかった。

 今思えば、異世界このせかいに対してあんなに怯えていた自分が何だかバカみたいだ。


「じゃあ、これからも大丈夫だな」


「はい」


 アリスは自信を持ってはっきりと答えた。

 レイと一緒に居ることで、弱い自分を変える。

 アリスの目的は達成できた。

 それでも、アリスの心は晴れていない。



 村中心部にあるメテオジャムが見えてきた。


「楽しかった冒険も終わりだな……」


 名残惜しそうにレイが呟いた。


(これで終わりなんかにしたくない……!)


 自分の心の奥にある願いはまだ叶っていない。


(私なんかじゃ釣り合わないかもしれない。高望みなのかもしれない。それでも――!)



 レイがメテオジャムに手を伸ばそうとした時、


「あ! あの! レイさん!」


 アリスはレイを呼び止めた。


「レイ、さん……お……お……」


 なかなか言葉が出てこない。

 アリスの口は金魚のようにパクパクするばかり。


 それでも、アリスは一歩前に進み出た。


「お疲れさ――」






「レイさん、私とお友達になってください!」






 レイの言葉を遮り、はっきりと自分の気持ちを口にした。


(言っちゃった――!)


 全身が熱い。心臓がドクドク跳ねている。

 引っ込み思案の自分では考えられないくらいの大胆な行動。

 それでもアリスは自分の気持ちに正直になったことに何の後悔もない。



「いいぜ」



 レイは嬉しそうにはにかんだ。


「これからもよろしくな」


 思いがけないレイの笑顔に、またアリスの心臓が跳ねた。

 自分なんかが友達になってほしいなんて、レイにとっては迷惑ではないか。アリスはそう自分を卑下していたのだ。

 けれども、それはアリスの見込み違い。嬉しい誤算。


「はい!」


 アリスは笑った。

 諦めない心がチャンスをつかんだことに。




 2人のやり取りを見ていたジデが、アリスに声をかけた。


「アリスさん」


「は、はい」


「今まで散々馬鹿にしてすまなかった。許してくれ」


「俺たちこそ下手くそだったのに、下手くそって言って悪かった」

「すまんかったのぅ」


 ジデに続き、ガボンとゴッヘムもアリスに頭を下げた。


「いえ、別にもう気にしていませんから……」


「1つお願いなんだけど……俺たちとフレンド登録してくれねぇかな……」


 ジデたちは別人のようにしおらしくなっている。


「こ、こちらこそ……ありがとうございます!」


 感謝の言葉がアリスの口からこぼれた。


 ヒーラーは1人では戦えない。そして、異世界このせかいは1人では生き抜けない。

 フレンド登録をするということは、ジデたちが自分を認め、助けてくれるということだ。

 そのことがアリスにとって、たまらなくありがたかった。


 初めてアリスが異世界このせかいに認められ、初めてアリスが異世界このせかいを認めた瞬間だった。


「ヒヒヒ、『ありがとうございます』はこっちの台詞だぜぇ」


「ありがとうございます。ありがとうございます」


「やっぱ、アリスは訳分かんねえなあ」


「ありがとうございます。ありがとうございます……!」


 アリスの目からは再び涙がこぼれだした。

 涙は毎日流していた。でも、こんなにすっきりする涙は久しぶりだ。


「おい、アリスさん。なんで泣くんだよぅ!?」


「お前らみたいな下手くそとPT組むのが、泣くほどイヤだってことだろ」


「えぇ~!? レイさん、そりゃあ~ねぇよぅ~」




『メッセージが届きました』というウインドウが出現する。アリスはメッセージウインドウを開いた。


 ヒナツ『お友達から始めましょう大作戦どうなった?』


 ヒナツ(『教えて~』とかわいい犬がせがむスタンプ)


(お友達から始めましょう大作戦って、何さ……)


 アリスはクスッと笑って、ずっと応援してくれていたヒナツにフレンドリストのスクリーンショットを送った。




 フレンド 4/∞


 ON レイ=サウス

 ON ジデ

 ON ガボン

 ON ゴッヘム




 ――前に出れば、『無い』は『有る』に変わる。

6章のストーリーはここで終了です。

次回は3月10日の12時頃に更新の予定です。




この作品を面白い、もっと続きが読みたいという方がおられましたら、下にある★★★★★のところを押して評価していただければ、非常に励みとなります。




こちらも読んでいただいたら嬉しいです。


【防御は最大の攻撃】です!~VRMMO初心者プレイヤーが最弱武器『デュエリングシールド』で最強ボスを倒したら『盾の聖女』って呼ばれるようになったんです~


本作の目次上部にあるJewel&Arms Onlineシリーズという文字をクリックしていただければ、飛ぶことができます。

参考までにURLも張っておきます。 https://ncode.syosetu.com/n6829gk/

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