表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
231/372

6-18 ダイビングハグ

投稿が遅れてしまい申し訳ありません。

 長かったエンヴァのとの激闘もいよいよクライマックス。

 現在はフェイズ3の終盤。エンヴァのHPバーはほぼ真っ黒だ。


 今、現在のポジショニングは次のようになっている。

 ジデがエンヴァと対峙中。

 そのすぐ後ろにはアリスがジデをサポート。少し離れた場所にゴッヘム。

 エンヴァの後方には俺とガボン。

 俺はガボンのバスタードソードを研ぎ中だ。



「おおう!」


 ゴッヘムのバトルアックスがエンヴァの首元に叩きつけられた。


「ギャバア゛ッ!」


 エンヴァは悲鳴を上げた。

 フェイズ3から使用するくちばしは強力だが、DOGは2500程度しかない。バッソやバトルアックスのHITでも十分命中させることができる。


「ゲゲゲゲゲゲゲッッッ!!」


 エンヴァが激しく鳴いた。

 瞳の色が真紅から深緑に変わる。


「クワァ!」


 エンヴァが激しく羽ばたく。

 ハイスピードボルテージ、速度増加のアクティブスキルだ。



「ガッ! ガッ!」


 エンヴァは足を前方に突き出し、地上に向かって滑空攻撃をする。


「そのモーションは――爪きぃゃゃあ~」


 ジデが装備をレイピアからエペにチェンジ。


「ナイトフォース! 俺様を攻撃しろ!」


 ジデはヘイト上昇スキルを使用し、そのまま攻撃に転じた。



 後はジデがタゲをしっかり取り、アタッカーが連続攻撃でとどめを刺して終了。

 そんなファイトプランを思い描いた最終局面。


 まさかのエンヴァによる反撃が始まる。




「オ゛ア゛オ゛ッ!」


 エンヴァの爪が白く輝く。

 強力なブロックスキル「アームズブロック」だ。

 野郎。フェイズ2でゴッヘムに打ち負けてから1回も使ってなかったのに、この局面で使ってくるなんて……やるじゃねえか!


「ギ……ギヒャァ!」


 エペは命中を高めた分、威力は低い。

 ジデは攻撃をブロックされ弾き飛ばされた。


「ゴワ゛ア゛ア゛ッ!」


 空中でエンヴァがくちばしを大きく突き出した。

 爪からくちばしへの武装変更の合図。


「ンゲァ゛ァ゛ッッ!!」


 エンヴァがくちばしを開き、まだ起き上がっていないジデに猛スピードで襲い掛かる。

 この鳴き声はチェーンホールド。

 チェーンホールドは絶対にもらっちゃいけねえ――――回避不能の即死攻撃DtHダイヴトゥヘルの餌食になっちまうからな。


 エンヴァのくちばしが、地面に転がっているジデをついばむ。

 その直前――




「ジデさん、危ない!」




 アリスが前に出た。

 そして、アリスはジデの身代わりとなり、エンヴァのくちばしに捕まってしまった。

 このままだとDtHで死亡コース一直線だ。



「アリスを返しやがれえええ!!」


 ジデはすぐさま起き上がると、馬鹿デカいエンヴァのくちばしをこじ開けようとする。


 DtHは、捕まえたプレイヤーを上空から放り投げるスキルだ。

 飛び上がる前に助け出せばDtHは発動しない。


「マイティビート!」


 ゴッヘムがエンヴァに攻撃。

 攻撃は命中したが、まだエンヴァは倒れない。


「俺たちも行くぞ!」


 バッソの研ぎがちょうど完了。

 ガボンに渡して、すぐさまアリス救出に向かう。


「HPはもう残ってねえ! 倒しきるぞ!」


 ジデに指示を飛ばし、俺もロングソードで攻撃。

 エンヴァのHPバーを見る猶予も残っていない。


「あと少しだろ! さっさと倒れろよ!」


 俺が3撃目を斬りつけようとした瞬間――。


「助けてえええええ!!」


 助けを求めるアリスをくわえたまま、怪鳥は天高く上がってしまった。



 ヒーラーはPTのかなめ

 回復、バフ、デバフ、魔法攻撃、時には指揮。

 ヒーラーがいないと満足に戦うことはできない。

 ヒーラーが他のプレイヤーをかばって真っ先に死ぬ。

 そんなの悪手以外、何でもねえ。


 でも、ここはゲームじゃねえ。異世界というリアルだ。

 命はたった1つ。死んだら終わり。

 命を守る――そんなヒーラーとしての本能が働いて、とっさにジデをかばったに違いない。

 その感覚、異世界を本気で生きる俺にはよく分かる。



「レイさんよぉ、捕まって投げられたら絶対死ぬんだろ」


 DtHされたプレイヤーは地面に投げ飛ばされて即死。

 投げ飛ばされたプレイヤーには攻撃判定があり、投げ飛ばされたプレイヤーに他のプレイヤーが当たると2人とも即死してしまう。

 投げられたプレイヤーを助けられないのはもちろん、助けに行ったプレイヤーをも殺しにかかるという鬼畜仕様。


「あいつは俺様の代わりに捕まった。何とかしてくれよぉ!」


 必死に頼み込むジデ。他の2人も同じような顔をしている。

 暴れたい放題のクソ冒険者だけど、アリスに対しては義理や責任を感じているのだろう。


 アリスは危険を恐れず前に出た。

 アリスは変わった。ジデたちも変わった。

 この成果を絶対に無駄になんかさせねえよ!


「今度は俺たちが前に出る番だ。必ず助けてやる!」




 DtHには特殊な裏仕様が存在する。

 投げ飛ばされた直後は勢いがついておらず、プレイヤーを受け止めることができる。具体的には、高度50m(推定)以上の空中では攻撃判定がないのだ。



「助ける方法は1つだけ――『ダイビングハグ』だ」



『ダイビングハグ』とは、ジェットウイングというアクティブスキルで上空に飛び上がり、投げられたプレイヤーを空中でキャッチする方法だ。

 空中で抱き合うという点がネタとして最高に面白く、たくさんのネタ動画が作られた。

 ゲーム内結婚式のクライマックスに新郎と新婦がダイビングハグに挑戦するとか、ガチムチの筋肉マッチョのおっさん2人がダイビングハグするとか、人間大砲vsDtHとか。

 ダイビングハグが流行っていた頃は、俺も色々動画を漁っていたもんだ。


 まさか、俺が挑戦するとは思いもよらなかった。

 しかも、失敗が許されない異世界で。

 当然、ダイビングハグの練習なんてしたことなんてねえ。

 成功率なんて見当がつかない。


「ダイビングハグ……?」


「エンヴァが放り投げたアリスを上空でキャッチする」


「ギッ……! できるんすか!?」


「できるかどうかじゃねえ。やるんだよ」


 ぶっつけ本番の大勝負。失敗すれば俺も死ぬ。

 緊張と興奮でアドレナリンが全開だ。

 アリスには悪ぃが最高にワクワクしている。


 アリスを絶対に助けてみせる!


「お前ら、ここに集合!」


 俺の号令でガボンとゴッヘムも集まった。

 今、エンヴァは投げるタイミングを見計らっているのだろう。

 PTメンバーを一か所に集めれば、エンヴァは狙いをつけて投げることができるようになる。

 そのタイミングを、俺が読む!



 上空を飛び回るエンヴァをまばたきもせずに観察。

 タイミングも軌道も寸分の違いもなくジェットウイングを決めなければならない。

 沸騰しそうなテンションを抑えながら、冷静に頭をフル回転させる。


 上空のエンヴァの動きが止まり、ホバリングに切り替わった――今だ!


「ジェットウイング!」


「ギエッ!」


 俺の飛び出しとアリスの発射が同時。タイミングはバッチリだ。


 ビュオオオオオ!

 思わず目をつむってしまいそうになるくらい激しい風の抵抗。それを顔全体で受けながら、真正面を見据える。

 視界の真ん中の点がだんだん大きくなってくる。

 よし、軌道もバッチリだ。


 点がアリスだとはっきり分かるほどの大きさになった。

 アリスは腕を抱きかかえて縮こまっている。

 それじゃあ、まずい!


「前を見ろ! 手を伸ばせ!」


 タイミング、軌道を合わせる以外にも、ダイビングハグを決めるには難所がある。

 それはダイビングハグの文字通り、『ハグ』をしっかり決めなければならないことだ。

 ハグしなければ、お互いの頭と頭がぶつかりスタンし失敗するだけ。

 そうならないように手を伸ばしハグすることで、衝突を避ける必要がある。


「早く! アリスーーーーー!!」


 俺の呼びかけに、


「レイさんーーー!!」


 アリスが応え、手を伸ばした。



 ぎゅっと手を取り、腕を曲げ、お互いの体を引き寄せる。

 地上から遥か離れた上空で、俺たちはお互いの体を離さないように強く抱き合った。


「助けにきたぞ、アリス」


「わ、私、信じていました……」


「俺たちもだ」


「はい……」


 キャッチに成功したことを俺とアリスは喜び合った。

 だが、あと一仕事残っている。


「しっかり、掴まれよ! ジェットウイング!」


 もう一度ジェットウイングを発動させ、DtHの慣性から脱出。大きく空中でカーブを描いて飛んだ。


「着陸だあああ!」


 ズザザザサササササ……。

 アリスを抱きかかえたまま、地面に背中を向け台地に滑り降りた。

 ダイビングハグ成功だ。



 着地してもアリスは腕を放そうとしなかった。


「おい、アリス。着いたぞ。離せ」


 成功で気が抜けたのか、急にアリスの柔らかさや温かさを感じた。

 ま、まじぃ……。


「おい、まさか気絶したのか。起きろ!」


 無理矢理引きはがそうとした時、アリスが耳元でささやいた。


「おみくじの内容当たっちゃいましたね。『マッチングシステムを利用すれば、2人の仲は急接近』」


「は……。違う、違うだろ! 当たったのは『高い場所に注意しろ』のほうだろ!」


「ふふふ……それもそうですけど、急接近っていうところも当たってますよ」


 アリスと俺は今密着している。接近という点ではこれ以上ない近さだ。


「なんだ物理的ってことか。そんなことはどーでもいいんだよ」


 俺はアリスを引きはがした。



 現在、地上に降りてきたエンヴァとジデたちが戦闘中だ。

 くだらない話をしている場合じゃねえ。


「行くぞ。エンヴァ戦、きっちりやりきらねえとなぁ」


「はい」


 俺とアリスは装備を変更し、エンヴァを倒しに向かった。




「「「レイさん! アリスさん!」」」


 戦場に戻ると、ジデたちは同時に俺たちの帰還を喜んでくれた。


「最後きっちり締めんぞ! アリス!」


「支援開始します。パワーアップ! パワーアップ! パワーアップ!」


 アリスはジデたち3人に攻撃増加バフをかけた。俺は合流前にもらっている。


「ギヒ、死ねええええ! ドレインスティング!」

「最後も暴れてやらあああ! ストライク!」

「早くメシをくわせろおおお! マイティビート!」


 ジデたちによる怒涛の猛攻撃。エンヴァの現在の武装はくちばしだ。DOGは低い。問題なく3人の攻撃は当たる。


「サイコバレット!」


 アリスも攻撃に転じた。水の弾丸が容赦なくエンヴァの体を撃ち抜く。


「ゴワ゛ア゛ア゛ア゛!」


 エンヴァは大きな翼を羽ばたかせ空中に逃げようとした。


「ウインドブレス来ます!」


 アリスの注意喚起よりも早く――、俺はエンヴァの前に飛び出し、ジャンプ!


「これでとどめだ、ダブルカッティング!!」


 高速の2連撃でエンヴァの腹を斬り裂いた。そこから鮮血のような赤い光線が放たれる。


「ンンングググ……グババワ゛ャ゛ャ゛ャ゛ァ゛ァ゛ァ゛~~!!」


 最期まで耳障りなダミ声で喚き散らし、漆黒の大鷲は空中で爆散した。

次回は3月7日の12時頃に更新の予定です。



この作品を面白い、もっと続きが読みたいという方がおられましたら、下にある★★★★★のところを押して評価していただければ、非常に励みとなります。




こちらも読んでいただいたら嬉しいです。


【防御は最大の攻撃】です!~VRMMO初心者プレイヤーが最弱武器『デュエリングシールド』で最強ボスを倒したら『盾の聖女』って呼ばれるようになったんです~


本作の目次上部にあるJewel&Arms Onlineシリーズという文字をクリックしていただければ、飛ぶことができます。

参考までにURLも張っておきます。 https://ncode.syosetu.com/n6829gk/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ