1-22 反撃のターン
後方にいるサルファーギズモがヤバい。こいつを放置しておくとやられてしまう。
サルファーギズモのデータはこうだ。
名前:サルファーギズモ
レベル:68(HSランク)
大種族:物質
HP:4126
AI:アクティブ・後衛
武器1:火炎
火属性攻撃
射程:10m前方90°
MAT:1398
HIT:934
DOG:2607
DEF:0
武器2:魔法
火属性攻撃
MAT:2097
HIT:934
DOG:2607
DEF:0
アクティブスキル:ポイズンR
エネルギーエクスプロージョンHN
動きが非常に遅く、通常攻撃である火炎のDPS(秒間ダメージ)はあまり高くないが、範囲攻撃なのがやっかいだ。この状況だと回避は不可能だ。
何といってもヤバいのは、エネルギーエクスプロージョン(EXP)という強力な範囲魔法を撃ってくることだ。湧泉洞の事故死の主な原因の1つだ。被ダメは303~2106。こんな魔法まともに受けていられない。
防御SSをもう1つ填めたら最低ダメージになり、被ダメが261~442になるが、それでも痛い。
たまに撃ってくるポイズンもやっかいだ。毒のDPSはMaxHPの2%。つまり毎秒88ダメージ。これをどう考えるかだな。
現状、俺の周りを常に10匹前後のスパモンが取り囲んでいる。インデュアペインがあるとはいえ、スパモンを振り切ってサルファーギズモを倒しに行くことはできない。
となれば、今はスパモンを減らして、後衛を倒しにいくチャンスを作るしかねぇ!
三節棍の関節を1つだけを接合させる。疑似フレイルの完成だ。
フレイルというのは長い棒の先に短い棒が鎖で繋がれている武器だ。長い棒を両手で持ち、短い棒を振り回して攻撃する。
フレイルで振り回されている棒は短いので、攻撃モーションが速い。
スパモンキーたちは疑似フレイルの攻撃に対応できずに、次々と消滅していく。
倒しても倒しても、次から次へと前から後ろからスパモンの増援がやってくる。
でも、そんなのはお構いなしだ。
倒せ、倒せ!
倒せ、倒せ!
倒して、倒して、倒しまくれ!
1匹のスパモンがサエラの方に走り出したのが、視界に入った。スパモンキーはターゲットを変更しやすい。当然こういうことは起こりうる。
サエラも後方でスパモン10匹くらいに囲まれている。サエラを後方に下がらせたのも彼女を守るためだけじゃない。後ろからやって来る増援のスパモンを少しでも食い止めてほしかったからだ。
なにせこのスパモンの数だ。スパモンはリンクという性質を持っている。数が増えれば増えるほど呼び寄せる力は強くなる。ダンジョン中のスパモンを呼び寄せても不思議じゃない。
今スパモンがサエラのところに行けば、サエラの負担が増える。そんなことはさせねえ!
「行かすかよ!」
三節棍を一本の棍に接合し、振り向きざまに一突き。後頭部を突かれたスパモンは消滅した。
これで現在スパモンが11匹。大分減ったな。もしかしたら、インデュアペインのリキャストタイムが経過する前に、サルファーギズモを倒しに行けるんじゃねえか。
そう考えた時、ハッと重大なことに気付いた。さっきから吹き続けられていた火炎が止んでいる。ってことは、サルファーギズモは魔法の詠唱中かよ!
ほとんど反射的に装備ウインドウを呼び出す。
現在の外付け魔石はこうだ。
威力の魔石SS×1
防御の魔石SS×1
回避の魔石SS×1
命中の魔石SS×1
耐久の魔石SS×1
ウォークライの魔石S×1
インデュアペインの魔石S×1
EXPを耐えるには、防御の魔石SSをもう1つ填めなきゃならねぇ。
どれをはずす……。命中か? 耐久か? ウォークライか?
DRAを確認したいがステータスウインドウを開く時間がねえ。でも、さすがに2分くらいしか経っていないんだ。ここで耐久を外しても武器は壊れねえだろ。
耐久を外して防御を填めた。これでダメージも怖くねぇ。
次の瞬間、サルファーギズモから毒々しい緑色の靄をまとった泡状の魔法が発射された。
EXPじゃなくてポイズンかよ! 防御の意味ねーし!
一瞬動揺したせいでポイズンのエフェクトに当たってしまう。体が薄い緑色に光り、毒の状態異常アイコンが出現した。そして、HPバーが少しずつ減り始める。
すぐには大きなダメージにならないとはいえ、時間が経つとかなり痛い。一刻も早く毒解除のポーションを飲んで一刻も早く毒を解除したい。
だが、インデュアペインのリキャストタイム中なので、ポーションを飲めるとは限らねえ。どうする?
前方から赤と青の光弾がいくつも飛んできた。スパゴブのマジックアタックだ。リキャストタイムが過ぎたみたいだな。
ホーミングバブルほどじゃねえとはいえ、ほとんどの魔法にはホーミング機能がついているのでよけにくい。
このままじゃ、またじり貧だ。悠長に戦っている暇はない。ダメージ覚悟で行くしかねえだろ!
後方からスパモンが2匹走ってきた。サエラを無視して俺をターゲッティングしている。俺に向かっていくスパモンも処理しきれないほど、サエラは一杯一杯なのだろう。
スパモンの爪とマジックアタックをかわしながら装備ウインドウを呼び出して、3匹が接近するのを待つ。近づいてきたところでスキル発動。
「ウォークライ!」
サエラのところにはもう1匹も行かせねえ! お前ぇら全員、俺について来い!
「キ、キキィー」
スパモンたちが金切り声を上げ跳びかかってくる。相変わらずうっとおしいやつらだ。
「そこを――、ど、き、や、が、れ~~!」
大声で叫びながら、右手に持った棍で薙ぎ払う。だがしょせん片手で振るった攻撃。スパモンたちはバク転であっさりとこれをかわす。
しかし、これは狙い通り。先の攻撃でスパモンを遠ざけることに成功した。これで俺の行動は止められねぇ。そろそろ後衛のところに行かせてもらうぜ!
装備ウインドウをタップして、ジャンプの魔石を填める。足に力を込め、大きく前へ向かって跳んだ。
天井ぎりぎりまで跳び上がった俺に、スパモンたちは攻撃をしかけることはできない。できることといえば、ただ悔しそうに視線で追うくらいだった。
この作品を面白い、もっと続きが読みたいという方がおられましたら、下にある評価をしていただければ、非常に励みとなります。




