6-14 私はヒーラー1
前回は評価をいただきました!ありがとうございます!
私たちの作品を読んでいただけることが本当に嬉しいです。
これからもどうぞ本作を応援よろしくお願いします。
今回(6-14)から6-17までは3人称アリス視点で話が進みます。
フェイズ1では火炎攻撃しかしてこなかったエンヴァがついに飛んだ。
ジデたちでさえも驚いていない。そもそも戦闘開始前は飛んでいた。飛翔しながら攻撃を仕掛けてくるのは目に見えている。
「ギャヴア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッッッ!!」
この一鳴きで、さっきまで悠然と飛んでいたエンヴァのスピードが急上昇した。
想定外の行動パターンの変化にアリスは驚いた。
(ええっ、こんなに速いの!?)
エンヴァの色違いボスであるロックバードの動きは遅かった。
エンヴァはロックバードとは比べものにならないほど速い。
エンヴァが爪を構えながら、上空から急降下。
「ガアッ! ガアッ!」
風をまとった爪がジデを強襲する。
ガキンッ!
間一髪のところでジデはレイピアで爪攻撃を受けた。
「ギギギギギィ……!」
しかし、相手は巨大な怪鳥。体格差でジデが押し込まれていく。
「ギヒャァッ!」
攻撃に耐えきれずジデが吹き飛ばされた。
だが、激しい力比べでエンヴァにも一瞬の隙が発生する。
「よくやった、ジデ!」
わずかな隙であってもレイ=サウスは見逃さない。さすがは超1流プレイヤー。
「おらぁっ!」
エンヴァの腿を斬りつける。
斬りつけた場所から赤い光線が吹き出した。
レイの攻撃が命中し、ダメージが入ったのだ。
エンヴァは体勢を崩したが、無理矢理翼を大きく羽ばたいた。
そして、起き上がろうとしているジデに再び襲い掛かる。
「レイさんに続けぇぇぇ!」
ガボンがエンヴァの前に立ちはだかり、バスタードソードを胸に突きつけた。
しかし、赤い光線は発生しなかった。
ガボンの攻撃は回避されたのだ。
「ガアッ! ガアッ!」
ガボンはエンヴァの足に蹴られた。
一撃でHPの半分以上が削れ、HPバーは一気に黄色になってしまった。
「下手くそ! わしは攻撃を当てるぞぉぉぉ!」
ジャンプで飛び上がったゴッヘムが、エンヴァの首めがけてバトルアックスを振るう。
だが、結果はガボンと同じ。ゴッヘムの攻撃は回避された。
レイ、ガボン、ゴッヘムの攻撃はエンヴァの体に当たっていた。
にもかかわらず、レイの攻撃だけが命中した。
なぜこんなことが起きたのか?
ガボンとゴッヘムはHITが足りなかったからだ。
レイのHITは11890。対する2人のHITは2370しかない。
「ドッジダウン! ドッジダウン! ドッジダウン!」
エンヴァのDOGを下げようと、慌ててアリスもドッジダウンを連射する。
しかし、全てかわされてしまった。
「なぁぁぁに、やってんだぁよぅ! へったくそ!」
アリスの失敗をなじるジデの怒号が響く。
(しまった! 落ち着け私、落ち着け私……)
アリスは何とか気持ちを落ち着かせようとするが、最悪のイメージが頭から離れない。心臓がバクバクと拍動しているのが分かる。
「ガアッ! ガアッ!」
ジデに対するヘイトが高いのか、エンヴァは執拗にジデを狙う。
「くそがぁぁぁ!」
ジデも応戦するが、ジデの攻撃は空を切るばかり。
ジデもHITが足りていないのだ。
その様子を見てレイが呟いた。
「まじぃな……」
アリスも同感だ。このままでは戦線は崩壊する。
さっきからジデの攻撃はスカしてばかり。
JAOでは、攻撃が当たらなければヘイトが減少する。
きっとジデへのヘイトはどんどん減っていくはずだ。
タンクであるジデへのヘイトが減りきってしまうと、他のPTメンバーにタゲが向く。
ゴッヘムとガボンは低DEFだし、レイは低HPだ。
エンヴァの猛攻に耐えられない。
「アリス、お前はHIT足りているか?」
「足りません……」
「――よし、俺がなんとかする」
そう言って、レイは手裏剣を数個エンヴァに向かって投げる。
「ははっ、DOG高すぎだろ!」
全て回避されたがレイはなぜだか楽しそうだ。
そして、レイは電卓アプリを開き一心不乱に叩き始めた。
「な、何を……?」
狩場で電卓アプリを叩く人なんてゲームの頃にもいなかった。
一体、この人は何をしているんだろうか。
電卓アプリを閉じ、レイは不敵に笑った。
「最適解、見つけたぜ」
「えっ……?」
とまどうアリスをよそに、レイがアリスに話を始める。
「今から、対エンヴァ用武器をここで作る」
「ステも分からないのにですか!?」
「もう計算した」
計算したと豪語するレイの言葉にアリスは圧倒された。
前の世界ではWikiを見なければMobのデータは分からなかった。
計算してステを求めるなんてアリスは考えたこともなかった。もちろん計算なんて自分には不可能だ。
この人は上手いなんて次元のプレイヤーなんかじゃない。本物の天才だ。
レイが異世界で華々しい業績を収めてきた理由が、今初めてアリスは理解できた。
(それに比べて私は……)
うつむくアリスを無視して、レイはアリスに話を続ける。
「俺が製造している間、あいつらを頼む」
「私なんかじゃ守れません……」
「あいつらの命を守れるのは俺じゃねえ。ヒーラーのお前だけだ」
そう言い残して、レイは走り去った。
次回は2月20日の12時頃に更新の予定です。
この作品を面白い、もっと続きが読みたいという方がおられましたら、下にある★★★★★のところを押して評価していただければ、非常に励みとなります。
こちらも読んでいただいたら嬉しいです。
【防御は最大の攻撃】です!~VRMMO初心者プレイヤーが最弱武器『デュエリングシールド』で最強ボスを倒したら『盾の聖女』って呼ばれるようになったんです~
本作の目次上部にあるJewel&Arms Onlineシリーズという文字をクリックしていただければ、飛ぶことができます。
参考までにURLも張っておきます。 https://ncode.syosetu.com/n6829gk/




