5-46 真夜中の通信1
更新が遅れてしまい、申し訳ありません。
この話は3人称戯曲形式で話が進みます。
レイが巨人工房をクリアした日の深夜。ツフユの元に着信が届いた。
ツフユは通話ウインドウを操作し、通信を開始する。
GM001伊澤星夜『ツフユ~。キミとの約束通り、遅れずに来たよ~。オレの愛しのツフユ~。今、返事できる~?』
ツフユ『きもい』
GM001伊澤星夜『メッセージじゃなくて、せっかく久しぶりの通話なのにさ。その言い方はひどくない?』
ツフユ『死ね』
GM001伊澤星夜『今日もさ、朝から晩までずっと仕事だったんだよ。メールチェックが済んだら、会議、会議、会議、会議。それが終わったら動画配信。残業が終わって、やっと解放されると思ったら、急にフジヤマテレビの社長に飲みに行こうって言われて、今までずっと飲まされて。オレはもうホストを卒業したんだよ、なんでこんなことやってるのさ』
ツフユ『それがあんたの仕事でしょ。つべこべ言わず働けや』
GM001伊澤星夜『ひどいよ、ツフユ。恋人がこんなに疲れているのに、癒しの言葉の一つくらいかけてくれたっていいだろ』
ツフユ『あんたがホストクラブで口説いてきた女たちも、きっと同じことを思っていただろうな』
GM001伊澤星夜『ひどい!』
ツフユ『ひどいのはあんただろ。こっちが真面目な話をしようと思って緊張していたら、「オレの愛しのツフユ~」だぞ。相変わらず、愛がクソ重いんだよ。あんた、それでよくホストやってこれたな』
GM001伊澤星夜『こっちの世界にキミほど素敵な女性はいないね』
ツフユ『カッコイイ声でごまかせば、めぐんでくれるのかよ。楽な商売だな、ホストってやつは』
GM001伊澤星夜『…………っ! そ、それはおいといて、珍しいね、キミから通話をしようって言ってくるのは。さては、本当はオレの声、聞きたくなったんだな』
ツフユ『通信切っていいか』
GM001伊澤星夜『冗談だよ、冗談。怒るなよ。――で、話って?』
ツフユ『ECクリアしてきた』
GM001伊澤星夜『――――! 場所は?』
ツフユ『巨人工房』
GM001伊澤星夜『サイクロプスはECの中でも弱いダンジョンボスだけど……。DRAの消費がとても大きい場所だ。耐久を内蔵していないタイラン製の武器じゃ、絶対に攻略できない。どうやったんだ?』
ツフユ『レイ=サウスのチートスキル【移動工房】でDRAを回復させたんだよ。最後のボス以外は特に問題なくいけた』
GM001伊澤星夜『……そうか。でも、よかったな、WPが実装された後で。楽に倒せただろ?』
ツフユ『HUラムダオで死にかかったけどな』
GM001伊澤星夜『あぁ……マジでごめん…………』
ツフユ『相変わらずほんっとうに使えねぇな。1人で逆転したレイとは大違いだよ』
GM001伊澤星夜『どういうこと!?』
ツフユ『HUラムダオに合わせたHU武器を作ったんだよ』
GM001伊澤星夜『えっ!』
ツフユ『しっ、声がでけぇよ。で、その武器1本持ってタイマン挑んでそのまま勝った。あんた、チート持ってたら、同じことできる?』
GM001伊澤星夜『……無理だ。ちゃんとした武器があったら、タイマン勝負することくらいはオレだってできる。でも、サイクロプスのデータも分からない状態で武器のレシピなんて組めっこない』
ツフユ『あいつは……化け物だよ。強さだけでも、あんたやザフィールに並ぶ。底が知れない』
GM001伊澤星夜『なぁ、レイ=サウスは他の転生者のように消えそうか?』
ツフユ『消えそうにもないね』
GM001伊澤星夜『強いから?』
ツフユ『それもある。でも、他の転生者と違って、レイは軽薄な存在じゃない』
GM001伊澤星夜『JAOの頃とは全く別の生き方をしているとか?』
ツフユ『今までに現れた転生者みたい、それ以上――いや、ずっとだね。この世界をゲームとして遊んでいる感じはする』
GM001伊澤星夜『じゃあ、消えるだろ。そっちに石はないからね』
ツフユ『でも、この世界と真剣に向き合っている。1人1人の命や想いをとても大切にしている。レイは本気でこの世界を良くしようと考えている。この世界をゲームとして遊び、この世界に本気で生きている。だからこそ強い。あたしはそう感じた』
GM001伊澤星夜『なるほど……。オレは「ゲーマー」も「勇者」もどっちも知っている。キミの言いたいこと、分かった気がする』
ツフユ『本題だ。聞いてほしい』
GM001伊澤星夜『うん』
ツフユ『この淀みきった世界。それを変える可能性をあたしはレイ=サウスに感じた』
GM001伊澤星夜『それって――タイランの支配を終わらせるという意味?』
ツフユ『バカ、言わせるな』
GM001伊澤星夜『ごめん』
ツフユ『世界を変える手助け――あんたに頼む』
GM001伊澤星夜『キミの頼みだ。もちろん手伝うさ』
ツフユ『恩に着るよ』
GM001伊澤星夜『1人の力じゃどうにもならないことでも、みんなの力を合わせたら――上手くいくんだ、絶対に!』
ツフユ『そのださい台詞、そっちでも言ってるんだってな。恥ずかしいからやめとけよ』
GM001伊澤星夜『しょぼん……』
GM001伊澤星夜『さて、そうと決まれば、オレはもう動き出さないといけないな』
ツフユ『あたしとしては、レイが何をやってくれるのか、もう少し様子を見たいんだけど』
GM001伊澤星夜『キミはそれでいい。でもそれだとオレは間に合わない。ゲームというものは、信じられないくらいの規模で作られているんだ。人数も金も時間もかかる。オレたち17人でどうこうしていた時代とは違う』
ツフユ『大変だな……。ゲームを作るっていうのは』
GM001伊澤星夜『でも、その分やりがいはある。キミにもちゃんとした状態でゲームを遊んでもらいたいな』
ツフユ『面倒くせぇ。あたしはパス』
GM001伊澤星夜『そんなぁ!』
ツフユ『他のやつらが楽しく生きてくれたら、あたしはそれでいい』
ツフユ『早速動くっていうんだったら、あんたに1つやってほしいことがある』
GM001伊澤星夜『オレにできることなら、なんだってやるさ』
ツフユ『それはね――――』
次回は12月26日の0時頃に更新の予定です。
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【防御は最大の攻撃】です!~VRMMO初心者プレイヤーが最弱武器『デュエリングシールド』で最強ボスを倒したら『盾の聖女』って呼ばれるようになったんです~
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