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5-44 ダガーにはダガーの良さがある

前々回に引き続き評価をいただきました!

これからも皆様の声を励みに頑張ります!

これからも本作をどうか応援よろしくお願いします。

「…………できたのか?」


 ツフユが心配そうな顔をして俺に話しかけてきた。


「当然」


 腰に帯びた短剣を指して返事する。


「さっすがー、レイ! 世界一の鍛冶屋だよ!」


「あたしは疲れた。早く倒せよ」


「いいぜ。支援くれ」


 マジックバリアやパワーアップなどの支援魔法をヒナツとツフユにかけてもらった。これで百人力。



 前線の3人に大声で指示を飛ばす。


「全員退け! こいつは俺1人で倒す!」


 俺の指示を受け、3人はサイクロプスから距離を取った。

 それを見てツフユが苦言を呈する。


「1人って……無茶苦茶すぎねえか……」


「任せろ。ファイトプランはちゃんとできている」


 そう言って、単身でダンジョンボスの元へ向かった。



 ある程度の距離まで近づいたところで、サイクロプスの注意を引くべく大声で挑発する。


「おい、自称鍛冶屋!」


「ああん?」


 巨眼がぎろりと俺を睨む。俺も負けじと睨み返す。


「HU武器、作ってきたぜ」


「それらしい武器は見当たらんなぁ?」


「お前、目はデカいけど近眼なのか。よーく目を凝らして腰の辺りを見やがれ」


 サイクロプスは足を止め、俺をじっと観察する。そして、突然笑い出した。


「がっはっはっはっはぁ~。HU武器を作ったというからどんな代物だと思いきや、ただの短剣じゃないか!」


「一人前の鍛冶屋を名乗るなら、武器は名前で呼べよ。こいつは【ダガー】だ」


 俺の言葉にサイクロプスが腹を抱えて笑う。


「ぐわぁっはっはっはっはっはぁ~。俺を笑い死にさせる気か、虫けらぁ~」


「何が可笑おかしい?」


「ダガーは貧弱な短剣の中でも、特に貧弱な武器。ちんけな虫けらにお似合いの、ちんけな武器だと思ってのぉ~!」


 馬鹿笑いを続けるサイクロプスを見て、俺は小さく溜息をついた。



 サイクロプスを倒すのにベストな武器は何ですかと問われれば、俺はスピアーを推す。


 だが、今回の製造は時間との勝負。HU武器を製造できなければ死が見えていた。だから、製造成功率を重視することにした。


 ダガーの製造成功率は全100種類の武器の中で2番目に高い。

 1番はナイフだが、それほど製造成功率は変わらない。そこで、性能でやや勝るダガーを選択したのだ。



「やっぱMobだわ……。武器製造の奥深さ、何も分かっちゃいねえ」


「何ぃ?」


「Mobごときに説教垂れても仕方ねーけどよぉ、これだけは言ってやる。ダガーにはダガーの良さ、ダガーにはダガーの戦い方があるんだぜ」


 JAOで製造できる武器の種類は100種類。その1つ1つが異なる特性を持っている。長い武器、短い武器、威力が高くなる武器、威力が低くなる武器、壊れにくい武器、壊れやすい武器、重い武器、軽い武器……。似ているものこそあるが、細かいことまで検討すると、1つとて同じものなどない。


 100種類もあるのだから、弱いと評価されている武器だって当然ある。

 ダガーだってそうだ。突攻撃しか攻撃手段がないにもかかわらず、威力が低い。DRAも低い。同系統のポニャードダガーやスティレットの下位互換だと言われることもある不遇武器。


 そんな武器でも、レシピを工夫し武器の特長をしっかり理解して戦えば、強いとされる武器にだって勝つことができるのだ。

 プレイヤーの創意工夫次第でいくらでも楽しめる。JAOはそんなところが神ゲーだと思うんだよなぁ。



 鞘からダガーを抜いた。


「いくぜ、デュエルハート!」


 デュエルハートとは、挑発スキルの一種だ。味方の援護を受けると効果を失うが、その分タゲ取り性能は高い。ステ上昇効果もあるのだが、今回は関係ない。

 俺がしっかりタゲを取ることで、他のPTメンバーが襲われないようにする。HU武器と戦えるのは俺しかいねえ。


 サイクロプスがラムダオを振り上げる。


「HU武器を作れるのは、俺だけだぁぁぁーーー!!」


 単眼を血走らせて俺に向かって走るサイクロプス。

 それを見て、俺は口角をニッと上げる。


「いいねぇ――」


 デュエルハートを使った理由はPTメンバーを守ることだけじゃねえ。


「そうこなくっちゃ!」


 HU武器を持ったボス相手にタイマンを張るっていう、最高に熱いバトルがしてぇんだよぉ!



「死ねぃ、虫けらぁぁ!」


 刃渡り2m40cmもある巨大なラムダオが猛然と振り下ろされる。くらえば一撃であの世行きの超攻撃。



 ガキンッ!



 刃渡り20cmしかない薄い刀身が、重量級の巨人用武器による斬撃を止めた。

 いかにHUラムダオが超威力だろうと、ブロックしてしまえばダメージは0。


「こざかしいわぁぁぁ!」


 サイクロプスが吼え、剛腕を振り上げ再度攻撃。


 ガキン!

 だが、それもブロック。


「うおおおおおぉぉぉっ!」


 巨人の連続攻撃が続く。

 サイズ巨大だけあって、1発1発の攻撃が重い。1撃受けるたびに俺の体が大きくよろめく。

 それでも、相手が攻撃を繰り出す前に体勢をすばやく整え、次の攻撃に備える。WDLウエポンディレイの小さい武器にしかできない芸当だ。



「くそっ! 俺の攻撃が通れば、こんな虫けらなんぞにぃ!」


 ことごとく攻撃を止められ、サイクロプスはいらつきを隠せない。


「さて、俺からもいかせてもらうぜ」


 巨人の足元まで近づいた。ここは20%エリアだ。攻撃は通る。


「お、おのれぇ……!」


「そんなにビビんなよ。ちんけな武器のちんけな攻撃なんだろぉ!」


 足付近の20%エリアを突いた。


「ぐわぁぁぁ~~!」


 赤い閃光が吹き出す。ダメージは70,046。

 サイクロプスが高DEFだろうが関係ない。威力の魔石をきちんと内蔵していれば、ダガーでも問題なくダメージが出る。




 サイクロプスとのタイマンが始まって3分が経過。サイクロプスのHPはたった300K(30万)程しか残っていない。楽しい時間もあとわずかだ。


「ええいっ、エナジードレイン!」


「ジャンプ!」


 エナジードレインは名前の通り、HPドレイン効果がある攻撃魔法だ。くらったら回復されるし、ダメージも馬鹿にならねえ。ここはジャンプで確実にかわす。


「虫けらの武器なんぞに、俺がやられてたまるかぁっ! ウエポンクラッシュ!」


 回復できなかった苛立ちを得物に込めて、サイクロプスはラムダオを力いっぱい俺のダガーに叩きつけようとする。

 短剣はDRAが低い。DRAを減らしてしまえば勝機はあると考えているのだろう。


「甘ぇ」


 怒りに任せた雑な攻撃など、モーション避けするのは簡単だ。万一武器に当たっても1発ぐらいならなんとでもなるが。


 サイクロプスの硬直中に、すぐさま数回攻撃を入れる。赤いダメージエフェクトが勢いよく吹き出した。


「嘘だぁぁぁ~~! ダガーなんぞに俺がやられるのかぁ!」


 サイクロプスの情けない叫び声がこだまする。


「まだ分からねぇのか! お前の攻撃は、俺のダガーに全然通用してねえんだよ!」


 相手の攻撃をブロックし、手数でDPS(秒間ダメージ)を上げる。これが短剣の戦い方だ。

 それを理解していないMobなんかにはなっから勝ち目なんてねえ!



 HUダガーのレシピは以下の通り。


 HUダガー(ランカー武器 製造者:レイ=サウス)

 DRA:10400

 SDRA:6400

 BBAT(受ATK):27412(str:99)

 SAT(突ATK):27467

 HIT:1890(dex:99)

 DOG:10(agi:1)

 DEF:15010(res:1)

 防御属性倍率:風属性 0.68倍、DOGとDEF1075上昇


【大種族人間】

 SAT:45530

 HIT:2390

 防御種族倍率:大種族人間 0.62倍、DOGとDEF500上昇


 内蔵魔石:威力の魔石U×3

      防御の魔石U×3

      耐久の魔石U×1

      WDL減少の魔石U×1

      耐風の魔石HS×1

      滅人の魔石S×1

      耐人の魔石S×1

      デュエルハートの魔石S×1



 この戦いはブロック前提のシビアな戦いとなる。

 ダガーの特長はWDL(硬直)が小さく、BBATが高い。サイクロプスのラムダオに対抗するには、同系統の武器の中でもかなり適した性能だ。雑魚武器だなんて評価は、とんだ的外れ。


 WDL減少の魔石を内蔵することでWDL0、つまり硬直なしで動けるようにした。

 硬直がなければ攻防をスムーズに行うことができ、非常に安定した戦いを進めることができる。


 防御面は耐風、耐人、防御3を内蔵。

 ここまでやれば、サイクロプスのジャッジメントサンダーをある程度防ぐことができる。

 ジャッジメントサンダーをくらって1ダメージでも入れば麻痺してしまう。そうなったら一巻の終わりだからな。

 平均的な叩攻撃では死なないだろう。だが相手のステが分からない以上、油断は禁物。


 耐久の魔石は1個しか組み入れられなかった。

 ウエポンクラッシュが怖いが、これ以上は厳しい。ウエポンクラッシュのリキャストタイムに入るまでは、耐久の魔石Sを3~4個外付けすることで対処する。



 ズドンッ! ズドンッ!


 サイクロプスが両足を開いて仁王立ち。そして、ラムダオをぐっと握り、高く振りかぶった。

 このモーションは――。


「よくもこけにしてくれたな。だが、これで終わりだぁ、虫けらぁ!」


 当たったら超威力。当たらなくても、波打つ地面に呑みこまれたら麻痺。サイクロプスの切り札。

 どう考えても、今使ってきてほしくないスキルナンバー1だといえる。だが、俺にとっては――、


「待ちくたびれたぜ!」


 最高に楽しい瞬間。

 これを乗り切ってこそ、サイクロプスを遊び尽くしたことになる!


「アース――」


 目を血走らせ憤怒の形相を浮かべながら、サイクロプスは俺を睨みつける。

 その気迫、たまんねぇ!!


「シェイカァァァーー!」


 迫りくる鉄の塊。人生を終わらせる一撃。


「ジャンプ!!」


 前に跳ぶことで鮮やかにかわす。



 だが、それだけじゃ俺は終わらねえ。

 巨人の肩を思いっきり蹴り、顔目掛けて真っ直ぐに跳ぶ。


「これでとどめだぁぁぁ!!」


 小さな刀身を巨人の瞳のど真ん中に突きつけた。

 サイクロプスは目を攻撃されると、必ずクリティカルする。サイクロプスの残りHPはもう130K(13万)程度。勝利は目前だ。


 そして、突き刺した場所からダムの放水のように赤い閃光が吹き出した。

 ダメージを表すエフェクトが遅れて出現する。その数値は――



 150,475



「うごごごおおおおっ~~~!!」


 サイクロプスの断末魔の悲鳴が大地を震わせる。

 ダガーがサイクロプスの目から外れて、俺の体は宙に浮いた。



「HU武器を作れるのは――」


 サイクロプスの最期の言葉に繋げる。




「鍛冶屋全員だ」




 転倒することなくスタッと地面に着地。

 それと同時に、サイクロプスが水色の閃光を放ち爆散した。



 戦い終わって仲間たちが走り寄って来る。それを見て、俺は両手を突き上げた。


「巨人工房、攻略完了!」

(注意)次回は所用のため1週以上空きまして12月20日の19時頃に更新の予定です。お待たせすることになってしまい申し訳ございません。


    


この作品を面白い、もっと続きが読みたいという方がおられましたら、下にある★★★★★のところを押して評価していただければ、非常に励みとなります。




こちらも読んでいただいたら嬉しいです。


【防御は最大の攻撃】です!~VRMMO初心者プレイヤーが最弱武器『デュエリングシールド』で最強ボスを倒したら『盾の聖女』って呼ばれるようになったんです~


本作の目次上部にあるJewel&Arms Onlineシリーズという文字をクリックしていただければ、飛ぶことができます。

参考までにURLも張っておきます。 https://ncode.syosetu.com/n6829gk/

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