5-33 巨人工房攻略検討1
節分イベント打ち上げの翌日の夜。閉店後のフォーリーブズで巨人工房攻略会議を行う。
「飯も食ったし、そろそろ会議始めんぞ」
「zzzzz~~~」
会議が始まる前から寝ているやつもいるが、そいつは無視。既に打ち合わせ済みなので問題ない。
「今回俺たちが攻略するのは巨人工房というダンジョンだ。推奨レベルは――98」
俺が告げた数字を聞いて、一同の顔色が変わる。
「きゅ、98レベルぅ~。お兄ちゃん、わたしで大丈夫かなぁ~~」
両手を前に出しテンパっているのはメマリー。
出会ったときはクソ雑魚だったが、もう一人前の冒険者になった。俺のことをお兄ちゃんと呼ぶが、俺はメマリーを妹だと認めた覚えはない。
「巨人工房っすか。相手にとって不足はねえな……。へへっ、ワクワクしてきたぜ」
ニヤリと笑うのはフェーリッツ。
タイランにつかまされた雑魚武器なんかで高レベルダンジョンの調査を行っていた、筋金入りの冒険野郎だ。
「アタシたち十五勇者が3人もいるんだ。巨人なんかアタシの槍で倒してやる」
コップをドンと置き、勝気な発言をするのはヒナツ。
ノリと勢いだけなら誰にも負けない。つか、お前に期待しているのはヒーラーなんだけど……。
「で、ヒナツ。こいつは戦えるのかよ?」
そう言って、ヒナツの隣にいる青い服の巫女を指差した。
「……一応な」
テーブルに肘をつき不機嫌そうに答えるのはツフユ。
他のメンバーと違って、こいつと狩りに行ったことはない。戦闘力は未知数だ。
「ふっふっふ……。まぁ、それは当日までのお楽しみだね」
ヒナツは笑って答えた。お楽しみとは言うものの、クリスピーをくわえた子犬のように目をキラキラさせている。早く自分の姉の実力を披露したくて仕方がないという雰囲気だ。
まったく……、この巫女姉妹は仲が良いんだか、悪ぃんだか。
この6人で巨人工房を攻略する。
「まずはロールを確認するぞ。ツフユは俺と狩りしたことがないから、もう一度説明する」
「手短に頼む」
ここでロールの説明を復習しておく。
多くのRPGなどでは【タンク】、【アタッカー】、【ヒーラー】の3つのロールが設定されている。
タンクとは、PTを先導しMobのヘイトを引きつけるロール。
アタッカーとは、大火力で攻撃するロール。
ヒーラーとは、回復などを行うロールだ。
PTプレイでは、この3つのロールに応じた動きをすることが求められる。
ロールの説明を受けてツフユが口を開く。
「なるほどね。理解した。あたしはアタッカーってやつだな」
「勝手に話を進めるんじゃねえ。PTリーダーは俺だ。俺が決める。まずはメインタンク。メインタンクはメマリー、お前だ」
「うん、頑張るっ!」
メインタンクはPTの生命線。メインタンクが敵のヘイトを稼ぎ、敵の攻撃を防ぐことができなければ、PTは決壊する。
ビビリのメマリーのことだ、本当はメインタンクを務められるか不安もあるだろう。それでもメマリーは二つ返事で引き受けてくれた。俺はそのことを褒めてやりたい――心の中で。
「サブタンクはフェーリッツ」
フェーリッツにはメマリーの補助をやってもらう。
メマリーよりもフェーリッツのほうがはるかに技量は高い。メマリーが崩れてしまった場合やメマリーが前線から退がっている場合など、そんな難しい局面でもフェーリッツならしっかり抑えてメマリーのフォローをしてくれるだろう。
しかし、フェーリッツはいわゆる避けタンク。安定性はどうしてもvit型のメマリーに劣る。メインタンクにはメマリーのほうがふさわしい。
「あと、フェーリッツには道中のスカウトもやってもらう」
スカウトというのは偵察のことだ。巨人工房は見晴らしがいいマップだが、それでも何があるか分からない。フェーリッツを先行させておけば、無用な危険を排除できる。
「任せろ。俺の得意分野だぜ」
「俺は研ぎ兼アタッカーだ。PTリーダーとして戦局に応じて指示を出すから、お前らも聞けよ」
俺の言葉をメマリーとフェーリッツとヒナツが了承する。ツフユも返事しないだけで嫌そうな顔はしていない。
「ヒーラーはヒナツ」
「え~」
「アタッカーも兼任させてやるから我慢しろ」
「それならオッケー☆」
前の世界ではヒーラーのintは99あって当たり前だった。しかし、この世界ではint99のキャラは貴重だ。
ヒナツのintは99。ヒナツは嫌かもしれないが、ヒーラーをやってもらうしかねえ。
サエラは3種のロールの動きを理解しているので、アタッカーだけでなくヒーラーもできる。だが、intが44しかない。
サエラとツフユ、intが高い方にヒーラーをやってもらう。
「ツフユ、お前の基礎ステを教えてくれ」
「vit25、str55、dex40、agi11、int99、res1だ」
「なるほど。ツフユ、エイムは苦手か?」
杖などの先端を対象に向けると照準が視界に現れる。サイトを合わせて狙いを定めることをエイムという。
JAOの魔法は自動的に相手に命中しない。エイムができなければ魔法メインで戦うことは厳しいのだ。
「馬鹿にすんなよ。エイムぐらい余裕だっつーの」
「じゃあ、ツフユもヒーラーやってくれ」
「了解。だけど、あたしの本分はアタッカーだ。兼任でやらせてもらう」
「お前もアタッカーかよ!」
「そうだよ、レイ。ツフユの魔法はねぇ――おっと、まだ言えない」
相変わらず思わせぶりな態度を取るヒナツ。自分で振っておきながら勿体ぶるんじゃねえよ。
「ヒーラーやってくれるなら、俺は別に構わねーよ」
武器や外付魔石を変更するだけでロールを変更できるのは、JAOの良いところだ。
「ヒーラーが2枚揃ったから、サエラはアタッカーに据えておく」
「了解~、レイ君~」
まさかのサエラの返答。だがよく見ると、サエラはテーブルに顔を伏せたままだった。眠っているのか起きているのか知らねえが、後で話してもこりゃきっと忘れているな。
これで各人のロールが決まった。次は雑魚Mobの検討だ。
次回は11月4日の12時頃に更新の予定です。
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