表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
184/372

5-20 節分祭2

 拍手が鳴りやんだタイミングで舞台袖からヒナツが出て来た。再び拍手の嵐。

 舞台の一番前までヒナツがやって来て一礼。

 そして、実行委員長にとっての今日一番の大仕事である、イベントの参加呼びかけを開始した。


「『鬼は外、福は内』イベント実行委員会委員長のヒナツです。本日は大勢の皆さまに神楽を見物いただき、大変光栄です」


 意外にしっかりとしたヒナツの言葉。あいつも実行委員長だからな。


「神楽とは神様に祈り、捧げるもの。今日から始まる期間限定イベント『鬼は外、福は内』の成功を祈って、先ほどの神楽を奉りました」


 そう。祭りも神楽も全てはイベントの成功のため。イベントが成功しなければ何の意味もねえ。

 ゲームでは節分イベントは大盛況だった。JAOのチーフプロデューサー伊澤星夜を福の神だと崇めるやつが後を絶たないくらいだったっていうのに。

 だけど、この世界に石を大盤振る舞いしてくれる星夜ふくのかみはいねえ。俺たちが一から成功させてみせる。


「去年はたくさんの鬼がレスターンで暴れました。連日寝れなかった人も多かったと思います。神官連も多くの方からお叱りを受けました。返す言葉もございません。私も一人のかんなぎとして、未熟さを痛感しました。何もできなかった、何もしようとしなかった自分が、悔しくて悔しくて…………」


 胸を打つようなヒナツの告白。場内はしんと静まり返った。

 これを聞いている冒険者の中にはヒナツと同じ思いを抱いている者もいるだろう。俺はそう信じたい。


「――それでも、今年もまた鬼がやって来ました。もう見かけた方もいると思います。神官連でも報告を聞いています。今年も眠れない日々を過ごすんでしょうか、今年も何もできない自分に悔し涙を流さなきゃいけないのでしょうか!? 私は――イヤ!!」


 体の底から振り絞るように大きな声で、ヒナツは鬼にノーを突きつけた。


「私は神官、私は冒険者。今度はレスターンを守りたい、今度こそ鬼に負けたくない! 私は鬼と戦うことを誓います!」


 ヒナツの勇ましい言葉に観衆がうわぁっと歓声をあげる。普段のヒナツからは考えられないくらい立派な演説だった。感動するのは無理もねえ。

 だが、ヒナツの想いを一時の感動で終わらせてはいけない。


「それでも、私1人の力じゃ足りません。鬼は24時間、レスターンのあちこちにたくさん出てきます。私1人じゃ、集められる豆の数もしれています。私1人じゃ、レスターン中の鬼に豆を投げることなんてできません。だから――!」


 ヒナツが頭を勢いよく下げる。


「私たちと一緒に戦ってくれる冒険者を募集しています!!」


 ヒナツは体を深々と折り曲げたまま、冒険者の反応を待っている。


 ――だが、彼らの反応はない。

 会場が次第に冷えていくのを感じた。



「この世界を救うものは――『困難に立ち向かう意志』だ!」



 静寂をぶち破る男の声。後方から上がったその声に皆視線を向ける。


「ジャンプ!」


 俺が姿を捉える前に、男は高く跳び上がり空中で何回転も回って、スタッと舞台に降り立った。


 男は全身黒ずくめだった。女のように伸びた黒髪の長髪で、パンクルックを思わせる黒皮の鎧とジャケット。ヴィジュアル系の雰囲気を漂わせている。



「ザフィール!」


 突然乱入してきた男を見てヒナツが驚いた。サエラも驚いている。

 ヒナツに構わずザフィールは観客に呼びかける。


「俺は豆を集め、豆を投げ、レスターンの平和を守る! みんな、俺たちに続いてくれ!」


 だが、冒険者たちの反応はない。

 ザフィールは動こうとしない冒険者たちをたきつける。


「自分から世界のために戦う。この姿勢こそ、冒険者の証。ここで戦わない者なんて、冒険者ではない!」


 それでも反応はない。

 ザフィールは切れ長の目を曇らせ、顎に手を当てて溜息をついた。


「やはり俺たちに必要なのは、力なのか……」



 ザフィールの台詞を聞いてヒナツがハッとした顔になった。そして、すぐにもう一度呼びかける。


「トップ冒険者のみなさん! 私たちには移動工房さんが協力してくれています。移動工房さんはレスターンを守るために武器をレンタルしてくれます。お値段は――なんと、タダ!」


 ヒナツの呼びかけを聞いて、観客の中から「やるぞ!」という声がちらほら上がった。

 ここで声が上がるのも、俺が築き上げてきた移動工房への信頼のおかげだ。一昔前だったら、行くなんて誰も言わなかっただろう。


 そして、ヒナツは次の呼びかけを行う。


「一般冒険者や中堅冒険者のみなさん! 豆まき隊のお仕事は豆を投げるだけです! 人のために戦う喜び、感じてみませんか? あっ、豆まき隊に入ってくれたらタダでお神酒みきをサービスしちゃいまーす」


 ヒナツの言葉を聞いて、観客が「俺もやるぞ!」と色めき出す。冷えた空気が酒を飲んだみたいに一気に温まった。お前ら、絶対お神酒につられただろ。



 ザフィールも現金な冒険者たちに呆れたのか、顎に手を当てたまま苦笑している。その気持ちは正直分かる。


 何はともあれ、ヒナツの二言で冒険者たちも戦う決意を示してくれたのは事実だ。

 戦うきっかけなんて何でもいい。かくいう俺だって、イベントを頑張るのはJAOゲームが好きだからだ。

 戦う意義なんて後から付いてくる。ヒナツの想いはいつかきっと届く。今は呼びかけが成功したことを喜ぼう。

次回は9月16日の12時頃に更新の予定です。




この作品を面白い、もっと続きが読みたいという方がおられましたら、下にある★★★★★のところを押して評価していただければ、非常に励みとなります。




こちらも読んでいただいたら嬉しいです。


【防御は最大の攻撃】です!~VRMMO初心者プレイヤーが最弱武器『デュエリングシールド』で最強ボスを倒したら『盾の聖女』って呼ばれるようになったんです~


本作の目次上部にあるJewel&Arms Onlineシリーズという文字をクリックしていただければ、飛ぶことができます。

参考までにURLも張っておきます。 https://ncode.syosetu.com/n6829gk/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ