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1-16 買い物は計画的に

「たかが、湧泉洞なんかで大袈裟なんだよ。それより、サブウエポンも見せてくれ」


 取引要請を飛ばし、サエラからサブウエポンを受け取る。

 サブウエポンを見て、なんとか言葉を絞り出す。


「これにも、さっきの武器みたいに伝説とか何かついてねーのかよ……」


「ないですよ。たぶんタイラン商会の武器だと思います」


「やっぱ、そうだよな……」


 サブウエポンがタイラン商会で作られた武器だっていうことは、見た瞬間分かった。



 武器を製造するときは魔石を12個フルで組み込むのが常識だ。一応、6個以上の魔石を組み込めば製造自体はできる。でも、魔石をケチった分、性能は落ちてしまう。前の世界じゃ、魔石12個フルで内蔵されていない武器なんて、使い捨ての投擲用武器以外は作られていなかった。

 だが、タイラン製の武器は全て、魔石が6個しか組み込まれていないものだった。

 サエラのサブウエポンも6個しか組み込まれていない。


 内蔵魔石のランクが低いのもタイラン製の特徴だ。

 武器を製造するには、武器のランクより1つ下のランクの魔石を最低1つは組み込む必要がある。ただし、1番ランクが低いNの武器だけは例外で、魔石が組み込めない。

 タイラン製もこの点は例外じゃない。だけど、1つしか組み込んでいない。他の魔石のランクは2から3ランク下だ。

 もちろん、前の世界じゃ、武器のランクより1つ下のレアリティの魔石を組み込むのが基本だった。


 更にひどいことに、タイラン製は耐久の魔石が内蔵されていない。DRAが低い短剣ですら0個だった。DRAが低ければ滞在時間が短くなる。それじゃあ、とてもじゃないが効率は出ない。

 おそらく、研ぎのサービスをなるべく多く利用させようとしているんだろう。そして、あわよくばDRAが0になって武器が壊れて、新しい武器を買ってもらおうという狙いも透けて見える。はっきりいって、せこすぎるんだよ!



「タイラン製は粗悪品だと俺は思うけどよお……。それはまあいい」


「どうしたんですか?」


 俺が顔を引きつらせているのに対して、サエラは小首をかしげながら俺の顔を不思議そうに覗き込む。


「なんで三節棍なんだよ!」


 三節棍というのは、3本の木の棒を短い鎖で繋いだ武器で、長柄武器のカテゴリーに含まれる。3本の棒を繋いで1本の棒に変形することも可能だ。見た目が派手なので、カンフー映画やアニメなどのフィクションでよく用いられる。

 ところが、三節棍は扱いが非常に難しい。3つの棒が不規則に動くので、自分や味方によく当たってしまう。自分に当たっても、ダメージは入らないので、まだいい。しかし、味方に当たると、味方にダメージが入るので、かえって足を引っ張ることになる。

 変形して使うにしても、棍という武器のほうが長さとDRAの点で優秀なので、出番がない。

 ゲームでの三節棍の位置づけは、マニアのためのネタ武器。需要なんてほとんどないものだった。


「んー、安かったから」


 サエラは明るい笑顔になって、とんでもないことをさらりと言った。


「はぁ!?」


「高級羽毛布団の営業さんが来たときに、おまけでついてきたんですよー。すごいでしょー」


「合わせて、いくらで買ったんだ?」


「7メガで買いましたー。SS武器の相場が10.5Mだから3M以上得したことになるのかな~」


 ほくほく顔で胸を張るサエラ。


 高級羽毛布団の相場は知らないが、1Mもしなかったはず。しかも三節棍なんてネタ武器、6Mで取引されるわけねえ。まともなHS武器に負けるんじゃねえのか。


「……おまえ、買い物は計画的にしたほうがいいぞ」


「はい。欲しいものリストなら、メモ帳に書いてますよ」


 俺の皮肉を分かっていないらしい。説明するのも面倒くせえ。話を戻すか。


「三節棍、ちゃんと使えんのかよ。やみくもに振り回したところで使えねーからな」


「大丈夫ですよ。いつも棍にして使ってます」


 まあ、それなら別にデメリットは気にせず使えるわな。だけどそれじゃあ、ただの劣化棍でしかない。何だかもったいない話だ。


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