4-37 コプアさんの予言
さらに評価をいただきました!こんなにも評価をいただけることに、感謝してもしきれません。本当にありがとうございます。
これからも皆様に評価される作品を、皆様に楽しんでいただける作品を創っていきたいです。
そして、移動工房のキャラクターたちを好きになっていただけたら、作者にとってこれほど嬉しいことはありません。
これからも拙作をどうぞ応援よろしくお願いします。
バファルガーたちとの決闘が終わった次の日、俺たち移動工房が決闘に勝ったことが色々な新聞に報じられた。もちろん、バファルガーが「タイラン商会の武器はがらくただ」と言ったこともセットで。
その後開かれた記者会見でバファルガーは、「がらくたと言ったことは、『タイラン商会で売られている武器は、タイラン本人が作った武器に比べて品質がちょっとだけ落ちる』という意味だ」と苦しい言い訳をした。
しかし、タイラン商会のイメージダウンにつながったこと、そして、俺たちに負けたことの責任をとらされて、バファルガーは限定イベントの総責任者から降ろされた。
代わりに責任者になったのは、なんと前回醜態を晒した店長だった。よっぽど人材がいねーのかよ、タイラン商会。
その記者会見の翌日早朝。そろそろ陽が上る時間だ。
食材調達スタッフ(サエラは寝ている)と調理スタッフは開店準備のためにフォーリーブズに集まった。ほとんどのやつが眠い目をこすっている。
そんな朝の気だるい雰囲気は、調理スタッフの叫び声で一気に吹き飛ばされた。
「うっそぉぉぉぉぉ~~~!!」
「どうしたの?」
メマリーが叫び声を上げたスタッフに尋ねた。
「ランキング見てください!!」
彼女に言われたのでランキングを見てみる。
「累計1位は――まだあのクソ店長かよ。でも昨日の調子だとそろそろ抜くだろ――って、なんじゃこりゃぁ~!」
店長の累計ポイントを見て、思わず目玉が飛び出そうになった。
「何で3万ポイントも上がってるんだよ……!?」
昨日の夜23時に確認した時点では、店長たちの累計ポイントは約19万ポイントだった。それが219,447ポイントまで増えている。
「ランキング1位の人って料理は作れないんだよね。ということは、夜中に販売したってこと!?」
ランキング1位に記されている名前は店長だ。店長は料理なんてできないはず。製造ポイントは稼げない。スタッフの言う通り、積み増した約3万ポイントは販売で稼いだことになる。
「昨日はエルテアさんの記事のおかげで、タイラン商会のケーキは全然売れてなかったんでしょ。何で夜中に3万ポイントも増えてるの!?」
昨日確認した時点では、昨日一日の店長たちの稼ぎは約4万ポイント弱しかなかったはずだ。
それなのに、人が買いにくることなんて考えられない時間帯に、約3万ポイントもさらに増えた。どう考えてもおかしい。ゲームの頃なら緊急メンテ案件だ。
俺たちが騒いでいると、コプアさんが2階から降りてきた。
「ん~。今日はちょっと暖かくていい朝だね。こんな日は何かいいことありそう~」
「残念っすけど、今日は最悪の日みたいっすね。ランキング見てくれ」
「いいけど……どれどれ~」
フェーリッツに勧められてコプアさんはランキングを見る。
コプアさんが小さく、クスリと笑った。
「あぁ~あ、これは決まっちゃったね~」
コプアさんの言葉に、メマリーがますます不安そうな顔になる。
「『決まっちゃった』って、まさか……」
「そう! 私たちの勝ちが!」
「「「えぇぇっ!?」」」
思いがけないコプアさんの言葉に、一同が驚いた。
「コプアさん、タイラン商会がどうやって3万ポイントも増やしたのか分かったの!?」
「メマリーちゃん、そんなの分かるわけないよ」
コプアさんは興味なさそうにそっけなく言った。
「昨日だけであいつら7万ポイントも稼いだんだぜ。昨日の俺たちが稼いだポイントより7千も多いんすよ。さすがにこれを巻き返すのきちーっしょ」
フェーリッツも慌てている。
「ふふん~」
コプアさんは俺の顔を見て得意気に笑った。
「な、何だよ……」
「予言しよう!」
コプアさんは芝居がかった仕草で高らかに叫ぶ。
「タイラン商会のケーキはあと4日、いや3日で――作れません!」
ひょっとして、バファルガーのモノマネ……? 予言が外れるフラグじゃねーか! やめてくれぇ~。
「な、何でだよ……?」
引きつった顔で聞くことしかできない。
「何でって……」
コプアさんはインベントリから小さなお菓子を取り出した。
「忘れちゃったのー? かわいい毒のこと」
皿の上に乗っているのは色鮮やかなマカロン。
「そうか!」
コプアさんが仕掛けた毒の罠。すっかり忘れていた。
マカロンの原価率は良いが、作るときのFPの増加が激しい。
店長が躍起になってマカロンを作らせようとすればするほど、ケーキ職人がFP限界に陥ってしまう。つまり職人が過労で倒れてしまうということだ。
「私たちは自分たちの仕事をするだけ。もちろん、倒れないぐらいにね」
「コプアさんの言う通りだな」
「さて――」
そう言ってコプアさんは髪を結ぶ。戦闘モードスイッチオン。
「みんな、今日も1日頑張りましょう!」
「「「おおー!」」」
この日、俺たちは、絶対に越えられないと話していた前日のポイントを8千も上回った。みんな奇跡が起きたと喜び合った。
偶然にもこの日は12月25日――クリスマスだった。
次回は7月4日の9時頃に更新の予定です。
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