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4-2 レイ、取材される

前回は感想をいただきました!ありがとうございます。

皆様に読んでいただけることで、この作品はより良い物語になっていくと私たちは信じています。

これからも皆様に楽しんでいただけるように頑張りたいと思います。



(重要)今回の更新からは月曜日と木曜日の午後12時と、土曜日(更新時間は不定ですが、木曜日の後書きに告知はあります。)の更新になります。


更新頻度が下がってしまい、拙作を楽しみにしていただいている方には申し訳ありません。

これからもどうか拙作を応援よろしくお願いします。

「大きく揺れる吊り橋の上で、本当にできると思った?」


「ああ。フォッカーとサエラの動きを頭の中でシミュレートしていたからな。絶対にその一瞬が来るって思った」


「さっすがぁ~。天下のタイラン商会に喧嘩を売る男! 技術も度胸も自信も超一流!」


 女はキーボードを高速で叩きながら、オーバーに驚き、俺を褒めちぎった。



 俺とサエラはフォーリーブズで、エルテアという女記者からインタビューを受けている真っ最中だ。

 エルテアはフェクレバンNewsという新聞を発行している。

 JAOの新聞は、大手新聞社が数百万部発行するようなものではなく、学級新聞みたいなものだ。取材から記事の作成、印刷、そして、掲示まで全部一人で行う。ゲームではほとんど気にも留められていなかったが、この世界ではわりと読まれているそうだ。



「レイ君はね~、武器を作るのはもっと超一流だよ~」


 エルテアのヨイショに、サエラがさらにヨイショを重ねる。


「なるほどなるほどー。あのフェーリッツさんが認めるだけあって、何でも超一流なのねー」


 フェーリッツが冒険禁止区域を撤廃したことは、俺の想像を遥かに超える大事件となった。フェーリッツの元には連日多くの人が、彼の真意を確かめにやって来たという。冒険者はもちろん、タイランや王様までも彼と話をしたそうだ。


 そして、フェーリッツが冒険禁止区域撤廃の経緯を話したことで、俺の活躍が広く知れ渡った。フェーリッツを動かした男として世間から注目を浴びることになったのだ。

 この4、5日の間でこういう取材を何件も受けている。エルテアで6件目だ。



「そうだ! 明日の見出しは――『真の天才レイ=サウス~冒険者の未来を変える~』なんてどうかな?」


「さすがに『真の天才』ってところは勘弁してくれ」


 見出しを聞いて、背中がむず痒くなる。

 真の天才ってな――まだまだその域には達しねえ。


 どうしてこう雑誌のライターって、面白おかしく話を盛ろうとするんだよ。

 俺がゲームの大会で優勝したときもそうだった。天才中学生とか。格ゲーの申し子とか。




 2時間にも及ぶ取材が終了。

 エルテアは俺をのせるのが上手く、ついたくさんしゃべっちまった。エルテアはサエラにもちょくちょく話を振っていたので、サエラも眠ることなく終始楽しそうにしていた。


「あ、もうこんな時間なんだ」


 サエラが時計アプリを見て言った。


「そうよ。もう8時前なんだから」


 いつの間にかコプアさんがテーブルの側に立っていた。


「すみません。営業時間過ぎてしまいましたね」


 エルテアがコプアさんに軽く謝罪する。


「じゃあ、コプアさんご飯にしよ~。今日はカレーライスがいい~」


「俺にも何か作ってくれ」


 サエラと俺はコプアさんに夕食を注文した。



 その様子を見てエルテアが少し驚く。


「まるで自分のうちみたいね……」


うちか……」


 ここ『フォーリーブズ』はコプアさんが経営するカフェだ。俺たちはこの場所で、今後の相談をしたり、依頼人と打ち合わせをしたり、メシを食ったり、休憩したりしている。

 フォーリーブズでは、俺たちは他の客と同じように扱われる。行列ができていれば並ばなければいけないし、メシ代もちゃんと払う。指定席なんて無い。特別扱いといえば、せいぜい今日みたいに夜遅くでも食事ができることぐらいだ。

 それでもここは、ただのレストランでもなければ事務所でもない。どんなにまずい狩りの後でも、どんなにムカつく客と言い争いをした後でも、帰ってくれば心が安らぐ。そんな場所だ。



「エルテアも一緒にご飯を食べようよ~」


 まるで友達を自分の家の夕食に誘うかのような口ぶりで、サエラはエルテアを食事に誘う。そのままお泊まり会とか言い出しそうだ。ありうる。そうなったら俺は退散するけどな。


「ええっ!? いいのかな?」


 さらに困惑するエルテア。そんな彼女を見てコプアさんは優しく微笑む。


「遠慮なさらなくていいですよ。それに、記者さんがせっかくいらっしゃったのに、コーヒー2杯だけお出しするだけなんて、こちらも気が引けます……」


「なるほど……」


 エルテアが記者の目つきに戻る。


「それじゃあ、おいしい料理をいただきながら、記事のネタでも考えよっかなぁ~」


「うふふ……面白い記事楽しみにしていますね」


 相変わらずコプアさんは商売上手なやつだ。俺もこんな調子で常連にさせられたもんな。



「はぁ~。満足満足~」


 お腹をさすりながら、エルテアは上機嫌で口元をナプキンでぬぐっている。


「お口に合いましたか?」


 コプアさんがデザートのプリンを持って厨房から出てきた。プリンがテーブルに置かれると同時に、エルテアとサエラはスプーンを手に持ってプリンを食べ始めた。食事が今始まったかのような勢いだ。


「もっちろーん! どれもこれも普通の味じゃなくて、最高!」


 プリンを食べながら満面の笑みで答えるエルテア。こうして、一人の女子がフォーリーブズの常連となったのであった。


「ありがとうございます~。私も腕を振るったかいがありました~」


 うまいと言ってもらえて、コプアさんは嬉しそうだ。



「でも、こんなにオリジナルの味を作るのって、大変じゃないです?」


 JAOの料理の味はデータベースを用いているので、誰が作っても基本的には同じ味になる。しかし、原材料を変えたり新たに材料を加えたりしたものや、デフォルトのレシピ通りの方法以外で作った料理のデータが存在することもある。それは通称シークレットレシピと呼ばれていた。フォーリーブズの料理の半分以上はシークレットレシピだという。


「うふふ……。その答えは、正式な取材のときにお話しますね……」


 悪戯っぽく笑うコプアさん。


「それじゃあ、近いうちに聞かせてもらいますよ」


 エルテアの取材をコプアさんはあっさり取り付けた。料理の力で俺Tueee。



「これで移動工房に続いて、フォーリーブズも宣伝してもらえるんだねー。嬉しいなぁ~」


 さっきの取材で、移動工房のレンタルサービスの宣伝をしてもらうことをエルテアと約束したのだ。サエラが喜ぶのも無理はない。


「頼むぜ。今までのやつらは全然宣伝してくれなかったからなぁ。ここいらで、どーんと大きく宣伝しとかねーと」


 これまでの新聞記者は、俺たちがレンタルサービスの話をしようとしても話を聞こうとしなかったり、適当に話だけ聞いて記事に書かなかったりしていた。

 冒険禁止区域撤廃で俺の名前が知れたことは、移動工房の発展の大きなチャンスだ。何としてでも物にしたい。


「その辺りはご心配なく。ちゃんと宣伝するよ。良いニュースを広めるのは記者の務めだもの」


 俺の目を見てエルテアが話す。自分の知りたい情報だけを聞こうとする有象無象の記者よりも、やっぱりこの人は信頼できる。



「心配しすぎ、レイ君は。PTパーティーコースの話、35分も聞いてくれてたじゃない」


「分かってるって、コプアさん。書く気のねえやつがあんなに熱心に話を聞くわけねーよ。っていうか、話の内容だけじゃなくて、時間まで覚えてんのか」


 PTコースについては色々悩んだが、結局やることにした。


 設けたコースは、80代3人PTコース、80代5人PTコース、90代3人PTコース。

 PT希望者が2人や4人の場合は、足りない人数を事前にマッチングシステムを利用して埋めてもらうか、サエラの支援兼護衛オプションをつけてもらうことにした。

 6人だとサエラのオプションを受けられない(移動工房としてはサエラのオプションは推奨)ので、6人PTコースもなし。

 90代5人PTコースは、今はやらない。90代の冒険者が少ないからだ。



「取材は終わったんだけど、1つ聞きたいことがあるんだけどいい?」


 エルテアが最後のプリンの一欠片ひとかけらを口に運ぶと、俺に質問してきた。


「レイ君の恋人かな?」


「余計なことを言うんじゃねえ!」


 コプアさんにつっこんだ。


「私も気になるー」


「お前ぇも黙ってろ!」


 サエラもコプアさんに同調した。まったく、油断も隙もありゃしねえ。


「それは追加調査が――」


 ぎろりと睨む俺を見て、


「――って言いたいところだけど、レイさんのつっこみが私にもきそうだから、止めとく」


 エルテアが肩をすくめた。



「70代agi>int>str型の狩場で面白い場所って何か知らない?」


 向こうの世界ではこんなビルドは全く推奨されていなかった。俗にいう失敗ビルドだ。


「ずいぶんマニアックなビルドだな」


 俺の言葉を聞いて、エルテアは少し吹き出した。


「あはは――そのステね、私のステ」


「お、おう……。いきなりディスってすまねぇ」


「分かってる、分かってる~。agiやintがあると仕事上便利なんだ」


 エルテアは手をひらひらさせて笑った。どうやら本当に気にしてなさそうだ。



「記事にするんですか?」


 コプアさんがエルテアに質問した。


「もちろん」


 意外な答えだった。面白いって言うくらいだから、てっきりプライベートの話だと思ったんだが。

 少し気になったので質問してみた。


「そんなビルドの冒険者ってほとんどいねえだろ。記事にしても見るやつがいるのか?」


「いないね。そういう意味じゃ、需要はないかも……」


 エルテアはスプーンをくるくると回しながら語り出した。


「記事を書くときは常に読者を想定して書かないといけない。それは当然だね。でも、大切なことはそれだけじゃない――」


 回転をピタリと止めて、スプーンをペンのように握る。


「自分が伝えたいことを伝える。これが、一番大切」


「自分が伝えたいことを伝える……」


 自然とエルテアの言葉が口に出た。


「私はレイさんの話を聞いて、冒険ってこんなにわくわくするんだって思った。通い慣れた狩場以外のマップに飛び出してみたいって、本当に思った。他の人にもこの熱い気持ち、知ってほしい。思わず冒険に出たくなるような記事を、私は書くんだ」



 俺はゲームが好きだ。世界で一番好きだ。こんなに人生をかけて熱くなれるものを、俺は他に知らねえ。

 だから、他の人にもゲームの楽しさを伝えたい。興味のないやつには興味を持ってほしい。好きなやつにはもっと好きになってほしい。

 楽しさが、好きという気持ちが、たくさんたくさん広がっていったら――




 もっと世界ゲームは楽しくなる。




「そのためにはまず自分が体験しないとねー。書きたい記事も書けないからさー。中堅冒険者の私が言うのもなんだけど」


 エルテアは少し照れながら頭をかいている。


「面白そう! 是非読ませてください」


「冒険譚って人気があるから、良い企画だと思うよ~」


 コプアさんとサエラがエルテアの話に賛同する。



「世界一の新聞記者さんの質問には、世界一の武器屋が応えねえとなぁ……」


「えっ、世界一!? そんな……恥ずかしいって……」


 エルテアの顔がさらに赤くなる。そんなことはどうだっていい。


「スリリングで楽しい、とっておきの狩場。あんたに教えてやる!」



 エルテアに狩場と狩り方を教えた。


「そんなことできるんだ! 面白そう! さすが、世界一の武器屋を名乗るだけあるじゃん!」


 エルテアはスプーンの柄をグッと握って笑った。



 その後、1週間以内に冒険のレポートをあげてくれるとエルテアは約束してくれた。今までの取材と違って、記事を見るのが待ち遠しいってもんよ。

次回は4月16日の12時頃に更新の予定です。




この作品を面白い、もっと続きが読みたいという方がおられましたら、最新話にある評価をしていただければ、非常に励みとなります。

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