3-24 橋攻略3
サエラが俺にエアフロートをかけた後すぐ、5体のフォッカーに向かって走る。俺とサエラが向かって来るのを見て、フォッカーたちは空中で静止。
次々フォッカーの真下に浮かび上がる魔法陣。それを見た時、思わず怒りが込み上げてきた。
はっ、はぁぁぁぁっっ~~~! くそがぁ~~! あいつら、1秒おきにドラゴンブレスの詠唱に入りやがった。俺を確実に殺る気まんまんじゃねーかよ!! ひょっとして俺のステータス知ってんじゃねーよな!!!
ドラゴンブレスのエフェクトは2秒間持続するが、エフェクト持続中は命中判定が行われる。つまり、2秒間ハイディングできっちり隠れてやり過ごさなければならないというわけだ。
さて、フォッカーたちが1秒おきにドラゴンブレスを発射することでどのようになるのか。
1秒目 フォッカーA
2秒目 フォッカーA&フォッカーB
3秒目 フォッカーB&フォッカーC
4秒目 フォッカーC&フォッカーD
5秒目 フォッカーD&フォッカーE
6秒目 フォッカーE
このようにドラゴンブレスの命中判定が行われる。
俺のハイディングは4秒しかもたない。
1~4秒をやり過ごしたとしても、5秒目にドラゴンブレスを2発もらってしまう。2~5秒をやり過ごしたとしても、1秒目に1発と6秒目に1発、合計2発もらうことになる。2秒目をやり過ごさない場合は――そんなことは言うまでもないだろう。
ちなみにサエラのハイディングは102秒もつ。余裕だ。
ドラゴンブレスをもらうと1260~4261、平均2565のダメージを受ける。
俺のHPは4370。2発くらえば運が良くない限り死ぬだろう。運任せなんてクソくらえ。絶対に2発もらうわけにはいかない。
ああ、もう考える時間もねえ。まずは1体葬ってやらぁ!
狙うは、一番前でイキってるやつ。お前だよ、フォッカーA!
「リタァァーーン――スロォォォーー!」
思いっきりチャクラムをぶん投げる。
ギュルギュルギュルギュル――――!
空を裂き進むチャクラム。対するフォッカーはその場から動かない。いや、詠唱中だから動けないのだ。
動かない的なんて当てるのは朝飯前。刃はフォッカーAの首筋を斬った。Aはドラゴンブレスを放つことなく消滅。そのままチャクラムはUターン。
と、このタイミングで、フォッカーBの口から嵐のようなブレスが放たれた。
チャクラムを持ってねえとハイディングが使えねえ。早くキャッチしねえとヤベぇ。
猛スピードでこちらに戻って来るチャクラム。でも、戻って来るのを待ってちゃ、あと0コンマ数秒が間に合わない。意地でも掴んでやらぁ!
空を蹴り、手を伸ばして大ジャンプ。指の一本一本を限界まで伸ばす。
ドラゴンブレスの光で何も見えない。けれども、軌道もタイミングも分かっている。絶対に間に合う!
指先に金属が触れる感触。指を丸め、咄嗟に叫ぶ。
「ハイディング!」
ダメージエフェクトが出現する前に、ハイディングが発動。フォッカーBのドラゴンブレスをノーダメージでやり過ごすことに成功。
次々と発射されるドラゴンブレス。結局、くらったのは最後のフォッカーEによる攻撃だけだった。残りHPは601。HPバーは赤くなっている。体全身の骨が粉々になったような激しい痛み。
だが、痛みに構っている暇なんてねえ。次の行動に取り掛からないといけない。
姿の見えないサエラに向かって呼びかける。
「ヒールはいらねえ」
傍から見れば瀕死の状態。でも十分だ。HPは0にならなきゃ、どうとでも戦える。
「フォッカーのタゲをとってくれ、全力で」
我ながら無茶な要求だ。
DOGが俺より高い分ましとはいえ、サエラの防御力もHPも俺と大して変わらない。かわしきれなかったら削り殺される。フォッカーが4匹もいるんだ。かわすことなんて至難の業。
それでも――、
「わかったよ~」
あいつは何でもないことのようにOKしてくれる。俺が何をするかも説明していねえのに。
あいつの間延びした、でも、優しい声が頼もしい。普段だったら、頼りなさすぎて笑っちゃうくらいなのにな。
さぁ、これで俺も自分の仕事に専念だ!
次回は4月6日の12時頃に更新の予定です。
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