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3-21 正規ルートか橋ルートか

300ブクマ達成しました!ありがとうございます!

たくさんの読者様に拙作を読んでいただいて、私たちも嬉しいです。

これからも頑張りますので、応援よろしくお願いいたします。

 サナは何度も何度も礼を言った。1年1か月ぶりに親父の安否を確かめようと言ってくれたのだ。感謝してもしきれないことだろう。


「よかったね」


 サエラが振り向いて俺に言った。


「ああ」


 なんかクエストの内容変わっているような気がするんだが。ま、空気を読んで黙っておこう。



 サナはひとしきり礼を言った後、何かを思い出したかのような顔になって、俺たちに依頼をしてきた。


「そうだ。そろそろお昼の時間ですし、せっかくなので父――ゴードンに弁当を渡していただけませんか? 元気にやっているかも分からないから、父の好物を詰め込んだお弁当を作って元気づけてあげたいんです」


 結局クエストやんのかよーー!!


「お父さんが好きなおかずにしないと。あ、でも――」


「ジャガイモ、ほうれんそう、牛コマ肉、卵、海苔だろ」


 そう言ってサナに取引要請を飛ばす。

 俺が出した品物を見てサナが驚いた。


「そ、そうです。足りなかったんです。何せ急に、お弁当を作ろうと思い立ったものですから」


 いや、あんた。どうせいつも同じ具材が足りないんだろ。100年分くらい用意しておけよ。


「10分ほどお待ちください。お弁当を作ってきますね」


 そう言って、サナは家の中に引っ込んだ。




「10分ひまだね~」


 サエラが半分寝そうな顔でそう言った。


「お前ぇはいいよな。ちょうどいい時間の潰し方があってよぉ」


 橋のデータでも確認しようかと思ってメモ帳アプリを開いた時、フェーリッツから話しかけられた。


「レイさん、サエラちゃん。ちょっといいっすか」


 少し思いつめたような真剣な表情。


「サナさんを苦しめたのは、俺が作った冒険禁止区域だ」


 フェーリッツの言う通りだ。冒険禁止区域なんてものを作らなかったら、誰かがこのクエストを引き受けたかもしれない。


「このクエスト、絶対に成功させたいんっすよ。だから、橋には行かないで――」


「ダメだ。予定通り、橋を通って詰所に向かう」


 そもそもこのクエストを受けた理由は、橋のタイムアタック目的だ。橋を通らなければタイムアタックの意味がない。


「俺は本気マジでサナさんの依頼を叶えたいって思ったんっすよ。橋を通りたいってレイさんが言うのは、自分が遊びたいからっすよね?」


「俺はゲーマーだ。遊んで何が悪ぃ」


「俺は遊びじゃなくて、本気マジでやりたいわけ。強いMobがでる橋ルートじゃなくて、簡単な正規ルートで行くのが筋ってもんっしょ」


 サナの親父がいる詰所に行くには2つのルートがある。ロールディアダンジョンのメテオジャム前から橋を通る、橋ルート。ロールディアという町からロールディア山道を抜けて詰所に行く、正規ルート。

 橋ルートつまりロールディア峡谷の推奨レベルは85。対して、ロールディア山道の推奨レベルは78。フェーリッツの言うことは正しいように思われる。

 だが、フェーリッツは1つ大事なことを見落としている。



「フェーリッツ、クエストウインドウを開いてクエスト名を確認してみろ」


 俺に言われて、フェーリッツがクエストウインドウを開きクエスト名を読み上げる。


「『温かいお弁当を届けて』……?」


「そうだ。弁当の温かさは、サナさんの親父さんに対する真心の証だ」


「そうっすよ! だから――」


「冷めちまったら、台無しだろ」


 実際30分以内に届けられなかったら、弁当が冷えてしまったということでクエスト失敗となる。


「正規ルートは簡単だが、曲がりくねった山道を行かなくちゃいけねえ。30分弱かかる。だが、橋ルートだったら、Mobとの交戦具合によっても変わるが、20分もかからねえだろう。どっちが、うまいメシを届けられるんだ?」


 フェーリッツが俺の言葉を聞いて言葉に詰まる。


「まったく、レイさんには敵わねえっすわ……」


 フェーリッツの顔から怒りが消え、その分炎が赤い瞳に宿る。


「冒険者は困っている人を助けるのが仕事! 熱々のお弁当絶対に届けようぜ!」


「お~」


 熱く叫ぶフェーリッツにつられて、サエラも手を上げる。相変わらず間の抜ける声だったが。



 あとな、フェーリッツ。橋ルートにしたのは、もう1人困っている人を助けなきゃいけないからだよ……。

 本物の冒険を求めてやまない男に、本物の冒険を味わせる。それこそが橋を攻略する本当の目的だからな。

次回は4月3日の12時頃に更新の予定です。




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