1-1 俺の人生ゲームオーバー
はぁっ、はぁっ、はぁっ……はぁっ……。
人気の少ない夜道をチャリで駆け抜けていく。スピードを出せば出すほど、10月中旬の夜の空気が冷たい風となり、俺の行く手を阻む。
バイト先のコンビニを出てからずっと、全力でチャリをこぎ続けている。とっくに息は上がっているし、脚はパンパン。心臓は今にも張り裂けそうだ。
けど、そんなことは今どうだっていいんだよ。
あふれ出す喜びを力に変え、限界を超えてペダルを回せ。ひたすら回せ!
俺、南礼の高校生活はリア充からほど遠かった。
勉強なんてほとんどやってねえ。底辺校だったし、どうせやっても意味ねーしな。部活も中学校から帰宅部だ。
コンビニバイトはやっているが、別に面白いとは思わねえ。
学校でも孤立気味だ。周りのやつらはチャラチャラしているDQNばっかだし。こっちとしてもつるむ気ねーけど。
だが、普通の高校生が注ぐ情熱を、俺は全てゲームに注いだ。
バイトの稼ぎは全部ガチャにつっ込んだ。学校とバイト以外の時間は大半ログインしていた。穴が開くほど攻略Wikiも見た。どうすれば最適なプレイができるのか、朝から晩まで考え続けた。
大量のクエストも終わった。高価なアイテムも揃えた。莫大な資金だって貯めてやった。
そして、ついに、ついにこの日が来たんだ!
JAOを始めて1年7ヶ月。やっと俺の悲願が達成されるんだ!
チャリを猛スピードでこぎ続けて5分強。小さな橋を渡る。ここを越えれば、俺の家まで1分くらい。もうすぐだ。
アドレナリンが全開になっていたので、疲労は完全に体中から消え去っていた。
秋の夜風でさえも、俺の体を冷やすことはもう出来やしない。
家に帰ればログインして取引を完了させるだけ。これでようやく、悲願の工房が開店でき──。
突然、目の前に太陽よりも強い光。
次の瞬間には、体がチャリごと宙に浮いていた。
──何が起きたんだ……?
どちらが上で下なのかも分からない。何かの音は聴こえてくるが、ひどく反響しており何の音なのか分からない。
頭からぬるっとした生温かい液体が流れ出す感覚。それで初めて何が起きたのかを理解した。
俺は車か何かに、はねられたのか。
そのことを意識すると同時に激しい痛みに襲われる。
痛ぇ! 痛ぇ! 痛ぇ! 痛ぇ! 痛ぇ! 痛ぇ! 痛ぇ! 痛ぇっ、つってんだろ!!
治まらない痛みはますます強くなるばかり。
痛みが強くなるにつれて、痛覚以外の感覚が薄れていく。その代わりに一つの感情が現れる。
──もうダメだ。これがゲームオーバーってやつかよ……。
畜生! もっとゲームやらせてくれよ! まだ何も、何もできてねえんだよ! 俺のゲーム人生、これからだっていうのに!
くそったれ!! せめてどうせ死ぬくらいなら、ゲームの世界で死なせてくれよ!!
激しい痛みもいつしか消え、気が狂いそうなほどの強い無念が、俺の意識を塗り潰した。
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