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ヒトと魔物のキューピッド  作者:
一年生
8/300

悪夢少女とナイトメアイートフロッグ

既にお察しかもしれませんが、魔物の名前は、作者が英語に疎いので検索して出た単語をつなぎ合わせております。



 彼女の話をしよう。

 よく寝ていて、悪夢を見がちで、常に寝不足な。

 これは、そんな彼女の物語。





 寮の談話室は、憩いのスペース扱いをされている。

 ゆえに部屋ではなく、ここで昼寝をしている生徒も時々居る。


 ……ソファまでありますものね。


 二階のロフト部分はカフェのようにテーブルと椅子、という感じだが、一階はまるで高級ホテルのロビーのように、休むコトも出来る空間になっている。

 なので育ち盛りが寝ているのはよく見る光景ではあるが。



「……スヴェトラーナ?」


「う、……ぅ~ん」



 魘されている同級生を放置するワケにもいかない。

 広い談話室内に多数置いてあるソファは、殆どが二人用三人用のソファだ。

 つまり横になって寝るコトが出来、スヴェトラーナも余る程あるソファの一つを大胆に使い、横になって寝ていた。


 ……でも、いまいち起きませんわねー。



「スヴェトラーナ、起きてくださいな」


「ん~……」



 声を掛けて揺すっても、返ってくるのは唸り声のみ。

 スヴェトラーナはイヤイヤと言わんばかりに頭を振り、その灰色に金のメッシュが入った髪を揺らす。


 ……仕方ありませんわね。


 談話室で読むつもりで持っていた魔法の指南書を開き、起きない相手を起こす為の呪文が載っているページを開く。



「……眠りの中の迷い子よ、(うつつ)の世界にお戻りなさいな」



 この世界の魔法は、使おうと思えば誰もが使える。

 呪文が必要とはいえ、別に固定の呪文が必要なワケでもない。

 目的地に行くのは馬車でも徒歩でも良いように、使う魔法さえ固定されていれば、呪文はある程度合っていればどうにかなるのだ。

 ただソレはソレとして、魔法は長ったらしい呪文が必要な理由もあるのだが……それはまたその内。

 とにかく今の自己流アレンジを混ぜた呪文で、魔法は発動したらしい。



「……っ、やぁぁぁああああ!」



 叫び声を上げながらではあるが、無事にスヴェトラーナが起き上がった。



「……あ、あれ?パスタ、は…?」



 まだ少し意識が夢の中寄りなのか、周囲をキョロキョロ確認するスヴェトラーナに、話しかける。



「スヴェトラーナ、おはようございます」


「お、おはよう、ございます……?」



 キョトンとした様子でのオウム返しだったが、ソレで夢から覚めたと理解したらしいスヴェトラーナは、恐ろしい場所から生還し安心した子供のような顔で抱き付いて来た。



「うああぁぁああん!ジョゼさぁぁあああん!怖かったんです、怖かったんですよぉう!」


「あー……仕方ありませんわねー」



 声を上げて泣くスヴェトラーナを抱き返しながら、その背中をポンポンとリズム良く叩く。



「で、どんな夢を見てたんですの?魘されてましたけど」


「……暗いんです」



 少しの無言の後、スヴェトラーナは寂しそうな声でポツリとそう言った。



「暗くて、肌寒くて、広くて、誰も居なくて……ドコに行ったら良いのかなって思ってたら……!」



 グ、とスヴェトラーナによって制服が握り締められるのがわかる。



(すっご)(おっ)きなパスタが追ってくるんですよ!」


「パスタ」



 ……あー、コレ、制服シワになりそうですわねー。


 実際は学園側により特殊な生地でオーダーメイドされた制服なのでシワにはならないが、現実逃避だ。

 それにしてもパスタに追われるとは……起きた時のパスタ発言はソレか。



「パスタがずっと、グゲゲゲって感じの笑い声させながら、逃げても逃げてもひゅーんって飛んで追っかけてきて……しかも真正面にはギャバババって笑い声させた(おっ)きなチョコミントアイス!」


「チョコミントアイス」



 ……夢って、意味わかんない展開になるコト多いですわよねー。



「挟み撃ちにされるかと思って絶望してたら、目が覚めて……本当にありがとうございますジョゼさん!起こしてくれなかったら、私、私……!」



 正面から抱き締めているので普通なら見えないのだろうが、ボロボロと涙を流しているのが視界の端に()えたので、スヴェトラーナの頭を軽く撫でる。



「よーしよし、大丈夫ですわよー」



 まったく、偶然とはいえ、起こす為の呪文の例文が書かれている魔法の指南書を持っていて本当に良かった。





 あれから時々、魘されるスヴェトラーナを見掛けては起こすようになった。

 どうやらスヴェトラーナは悪夢を見がちな体質なのか、満足に眠るコトが出来ないらしい。

 それを補う為にか、単に寝落ちなのか、よく中庭の端のベンチや、談話室のソファで眠って魘されているのを見かける。


 ……魘される前提なのがちょっとヤですわね。


 昔から魘されるらしく、スヴェトラーナはヒトの迷惑にならないように、と端っこで寝るコトが多い。

 中庭の端にあるベンチで寝ていたりするのも、そういう理由なのだろう。


 ……中央の方が日当たりが良いから、昼寝スポットとしてはソッチの方が人気ですしね。


 さておき、スヴェトラーナだ。

 現在スヴェトラーナは中庭の端のベンチで眠っており、いつも通り魘されていた。



「また魘されてますのね……」



 自分はただ、バジーリオ料理長にブルーダックの毒があったら毒料理に使いたいから、時間がある時に採取して来て欲しいと言われ、時間もあるしと中庭の端にある池の方へと来ただけだが、魘されているのを見ては放っておけない。


 ……というか目的であるブルーダック自体、丁度リゼットとデート中なのか不在ですし。


 池の方を見るが、池に浮いているハスの葉の上にカエルの魔物が居るだけだ。

 つまり今日中に目的を達成するのは不可能というコトなので、悪夢を見ている友人を起こすくらいはしても良いハズだ。



「スヴェトラーナー」



 スヴェトラーナに近付き声を掛けつつ揺さぶるが、やはり起きない。

 眠り自体は深いのかもしれないが、ソレで悪夢を見ていては疲れも取れない。

 そう思い、もう一度声を掛ける。



「スヴェトラーナ。……ホラ、早く起きなさいな。魘される元気があるのなら……」


「そう!彼女はいつも魘されているのです!」


「きゃっ!?」



 魘される元気があるのなら起きろと言おうとしたら、急に背後の池の方から大きな声でそう言われた。

 慌てて振り返ると、ソコには先程同様、カエルが居た。



「私はここに居るので、よく彼女を見かけるのです。そして見かける度彼女は眠り、悪夢に魘されている!ああ、ナンという悲しき出来事でしょう!彼女のように美しく可愛らしい方は、お菓子のように甘い夢を見て微笑むべきだと言うのに!」



 そう高らかに男の声で叫んでいるのは、カエルだった。

 全体はピンク色で、体中に水色の星模様がある、紫の目をしたカエル。



「ああ、まったく、ナンというコトでしょう!私が彼女のそばに居れたなら、そんな悪夢など見せず、素敵かつ素敵で素敵な夢を見せてあげられるというのに!」



 ……ナイトメアイートフロッグ、ですわね、よく見たら。


 特に意識して見ては居なかったが、色と模様からするとナイトメアイートフロッグだ。

 名前通りのそのまんま、悪夢を食らうカエルである。

 ちなみにナイトメアイートフロッグの場合、主食である悪夢を食うコトで悪夢を見ていた相手の夢を素敵な夢へと変えるコトが出来る、と図鑑には書かれていた。



「……あの」



 魘されるスヴェトラーナを起こす動きを一旦止め、ナイトメアイートフロッグに声を掛ける。



「ンン?ハイハイ、ナンでしょう?あ、もしかして彼女のご友人ですか?良いですよねぇ、彼女。とても美しくて柔らかそうで可愛くてハーーーーーッ!好き!!」


「いえそういう個人的な、というか個魔物的な事情はわたくしとしてはどーでも良いんですけれど」



 荒ぶるナイトメアイートフロッグの奇声はスルーした。



「えーと……アナタ、スヴェトラーナ……彼女に惚れてますの?」


「スヴェトラーナ!スヴェトラーナと言うんですね彼女は!名前まで美しいとかコレはもう神に愛されまくっているのでは!?そして惚れているかと言われれば全力でイエス!と!答えさせていただきますとも!もう本当超超超愛してますとも!」



 ……ジェットコースターのようなスピードで愛を語りますわねこのカエル。


 思わず表情筋が仕事を放棄してしまっていたが、スヴェトラーナが悪夢に魘されているこの状況でナイトメアイートフロッグが居るのはありがたい。

 協力を要請出来そうなトコロもグッド、だが。



「……アナタ、彼女が魘されてるの、見かけてたんですのよね?」


「ええ、モチロン!」


「で、アナタの主食は悪夢で、彼女を助けたいとも思っていた」


「私にとっての食事で彼女を救えるとは、私は私として生まれたコトをこの世に存在する全てのモノに感謝してもし足りないくらいです!」


「なのに助けなかったんですのね?」


「そんな!」



 その言葉に、ナイトメアイートフロッグは悲痛な声で返す。



「私に好きな方の寝込みを襲って食べろと!?魘されていようと揺るがぬ愛らしさの彼女の!寝顔を!間近で見るなど!私に心臓麻痺で死ねと言うのですか!?大体まだパートナーにすらなっていないというのにそんなおこがましいコト出来るワケ無いじゃありませんか!」


「面倒クサッ」


「辛辣ですね!?」



 思わず本音が漏れてしまったが、まあ良いだろう。

 というかこちらの本音は正論だと思う。

 ナンだろう、この、意識を失っているヒト相手に人工呼吸を下心で行おうとするヤツを見たようなモヤモヤ感は。


 ……いえ、まあ、不愉快感でしかありませんのよねー……。



「良いから、スヴェトラーナの為にも食事をしていただけませんこと?」


「いえ、ですからそのような不埒な真似は出来ません!」



 お前の思考だけだよそんなのは。

 思わずそんな汚い言葉が出そうになり、グッと飲み込む。

 目は微妙に死んだ気もするが、元々父からの遺伝でリスのような目なのだ。つまり多少変化があっても気付かれないから大丈夫ですの。



「でも」



 ナイトメアイートフロッグは、モジモジしながら言う。



「ご友人の方がどうしても、どうしてもと言うのであれば!そう、全責任を負ってくれると言うのなら!あと目覚めた後のスヴェトラーナに私を恩人と紹介してくれるのであればウェヘヘヘ名前呼んでしまいました私ったら!」


「水よ、そこの不埒者を軽く小突いてくださいな」


「ォブッ!?」



 ……いけない、つい衝動のままに魔法を使ってしまいましたわ。


 しかし相手の言動も言動だったので、十割相手が悪い。こちらに非は無い。

 百人中百人がそう同意してくれるハズだ。

 同意した瞬間に不埒者扱いになるので、確実にこちらが有利。つまりわたくし悪くありませんの。

 こちらの世界では性欲が薄いので、こういった言動もちょっと変わってるなーくらいで流されるコトが多いが、しかし自分には性欲が三大欲求レベルな地球という異世界の知識が備わっている。

 だからこそ、魔法を使ってしまったのだろう。地球ならソッコで危険人物扱いされるような言動だったから。

 ナイトメアイートフロッグのような性格のモノからすると、ここが大体のコトはスルーが常識なアンノウンワールドで救われたと言えよう。逮捕的な意味で。


 ……まあ、地球ならゲロゲロ鳴くだけのカエルでしょうから、結局捕まったりはしなさそうですけれど。



「ひ、酷いコトしますね、ご友人」


「ご友人ではありますが、わたくしはジョゼフィーヌですわ」



 ザバリと池の中から上がって来たナイトメアイートフロッグに、改めて自己紹介。

 ナイトメアイートフロッグが池に沈んだのは自分の魔法が原因だが、謝罪する気は無い。こちらは少し小突くだけに抑えたし。



「とにかく、これ以上悪夢を見せるのはスヴェトラーナの負担になりますわ。ソッコで食事しちゃってくださいな。悪夢を良い夢に変えてくれた、くらいの紹介ならしてさしあげますから」


「本当ですか本当ですね絶対ですよ!?ヨッシャいただきマース!」



 ホントにソッコで大ジャンプしてまでスヴェトラーナの悪夢を食べるとは思わなかったが、そのお陰で、自分とナイトメアイートフロッグの会話の間ずっと魘されていたスヴェトラーナの呻き声は、止んだ。





 あの後、良い夢を見ているから、とスヴェトラーナが自然に起きるまでを待った。

 約束した以上は、ナイトメアイートフロッグを紹介しなくてはいけないからだ。

 あと中身は少々変態っぽくはあるが、スヴェトラーナに好意を寄せているのは本当だから、パートナーにどうか、とも進言くらいはするつもりでもある。


 ……流石に悪夢を見続けるというのは、肉体だけではなく、精神的にも良くありませんものね。


 待っている間にスヴェトラーナの寝顔を見つめていたナイトメアイートフロッグが変態的発言をする度に池にピッチングしたりというアクシデントもあったりしたが、まあ些事だ。



「ん……」



 日が暮れ始めた頃、スヴェトラーナが目覚めた。



「あれ、ジョゼさん?あ、そっか、私また寝て……寝て……」



 うとうとした表情から一変し、スヴェトラーナはハッとした表情になってから、キラキラが散っているように見える笑顔で肩を掴んで来た。



「聞いてくださいジョゼさん!私!今日!というか今さっき!悪夢を見なかったんです!ずっと大口開けたモンブランに追い掛けられてたのに、急に居なくなって、ティーパーティになって!」


「お、落ち着いてくださいな。というか揺らさないで欲しいですの」



 興奮気味に肩を掴んでグワングワンと揺らしてくるスヴェトラーナをなだめ、呼吸を整える。



「でも、良い夢が見れたなら、良かったですわね」


「はい!すっごく、すっごーく嬉しいです!」



 キラキラとした笑顔でそう頷いたスヴェトラーナだが、すぐに暗い表情で俯いてしまった。



「……でも、今日の夜また寝たら、また怖い夢、見ちゃうのかな……」



 一度良い夢を見れたからこそ、スヴェトラーナは今までよりも辛そうにそう呟く。



「……スヴェトラーナ次第ですわね」


「え?」


「実はスヴェトラーナの悪夢が途中で消えたのは、彼がその悪夢を食べてくれたからですの」



 そう言って、スヴェトラーナには気付かれていなかったものの、ずっと自分の膝の上に居たナイトメアイートフロッグを手に乗せてスヴェトラーナに見せる。



「こちら、悪夢を食べて良い夢にしてくれる、ナイトメアイートフロッグですわ」


「よろしくお願いいたします、スヴェトラーナ!」



 何度も池に放り投げたお陰か、ナイトメアイートフロッグは普通の挨拶をしてくれた。

 それにこっそり安堵の溜め息を零していたが、安心するには早かった。



「そして好きです是非パートナーになってください幸せにいたしますよ夢の中までええそう全て!」



 挨拶の直後、一息でそう言い切ったナイトメアイートフロッグに、自分の目が死ぬのを感じた。



「必死過ぎますわー……」



 小声ではあったが本音が漏れた。

 どうやら自分は地球基準で変態に分類されるタイプが苦手なのかもしれない。

 つい厳しめの本音が零れてしまう。

 一方、ハシャいでいたとはいえ寝起きにそんな告白をされたスヴェトラーナの反応だが。



「凄い早口ー」



 そう言って楽しそうにパチパチと拍手をしていた。


 ……あ、そういう反応なんですのねー。


 アンノウンワールド的にはその反応が正解だとわかっているが、地球知識があるとどうも過剰反応をしてしまう。

 こういう反応を見ると、もう少しスルースキルを鍛えるべきな気がしてならない。

 将来的にはきっともっと理不尽なイロイロを()るコトになる可能性が高いし、早めに適応しなくては。



「えっと……それで、パートナーにってコトでしたけど……私に、ですよね?理由とかって、聞いても良いですか?」



 スルーかと思いきやちゃんと確認したスヴェトラーナに、自分の母性が安堵の息を吐いた。

 良かった、ソッコでオッケー出さなくて。

 スヴェトラーナの問い掛けに、ナイトメアイートフロッグは答える。



「理由は簡単かつ端的に、アナタに惚れたからでございますよ!」



 ……確かに簡単かつ端的ではありますわね。



「可愛らしいその顔、愛らしいその声!うとうとしている眠そうな表情も、眠るまでのちょっとの間にある怯えるような表情も、眠っている間の魘されている表情も、そして起きた時の慌てた表情、安堵した表情!全てが全て、私が惹かれる理由ですとも!」



 しかし安堵した直後、ナイトメアイートフロッグは怒涛の勢いでそう捲くし立てた。



「あ、あと美味しそうな悪夢だなっていう食欲もフレーバー程度にちょっぴり」


「わーお」



 少し驚いたようなリアクションを取ったスヴェトラーナだが、その表情は照れる少女そのものだった。



「……え、えっと、つまり、アナタ……ナイトメア、えっと」


「ナイトメアイートフロッグですわ」



 さっと助け舟を出すと、スヴェトラーナはホッとしたような笑みを浮かべてから、続ける。



「ナイトメアイートフロッグさんは、私のコトが好きだから、パートナーになりたい、ってコト……?」



 後半につれ照れながらそう言ったスヴェトラーナに、ナイトメアイートフロッグは全力で首を、というか頭を縦に振る。



「そう!そうです!今なら悪夢を食べる特典付き!しかも好感度はブッ壊れてるのか級に高いですよ!」



 ……自覚、一応あるんですのね。



「でも、毎回悪夢を食べてもらったら、負担にならないかな……?」


「生態的に悪夢が主食ですから、問題は無いと思いますわ。寧ろ食堂では提供出来ない食事を提供出来る、と考えた方が正解ですの」



 これは事実だ。

 人肉や毒の料理を出せる食堂であろうと、流石に悪夢までは用意出来ない。

 ナイトメアイートフロッグは食わずとも二年くらいは生存可能だが、キチンと主食である悪夢を食べ続けるコトが出来れば、その分長生きするという実例もある。

 ナイトメアイートフロッグのわかりやすい好意と言葉、そして友人である自分の言葉もあってか、スヴェトラーナはナイトメアイートフロッグに手を差し出す。



「じゃあ、その……コレから、ヨロシクね」



 ふにゃりとした笑みと共にそう言われたナイトメアイートフロッグは一瞬天を仰いだが、すぐに意識を取り戻し、スヴェトラーナの手へと跳び移った。



「ええ、ええ!コレからというか今晩から、しっかりと悪夢を食べさせていただきますとも!愛していますよ、スヴェトラーナ!」


「……えへ」



 好意全開のナイトメアイートフロッグに、スヴェトラーナもまた、花が咲くような笑顔を見せた。



「素敵で、私のコトを凄く、すっごく愛してくれるパートナーと学園生活するっていうの、夢だったから……こんなに早く叶って、嬉しいな」


「え、こんなに可愛い笑顔で可愛いコト言うとか花の妖精かナニかでは……?」



 心ここに在らずといった声でそう言ったナイトメアイートフロッグの言葉に内心同意するくらい、本当に可愛らしい笑顔だった。





 コレはその後の話になるが、ナイトメアイートフロッグが毎日食べれる程毎日悪夢を見るというコトで、スヴェトラーナは念の為と第一保険室で診察するコトになった。

 悪夢を見がちなのは知られていたが、まさかソコまでの頻度とまでは聞いていなかったらしい。

 結果としては、子供に遺伝する、家系的な呪いだというコトが判明した。

 どうも昔に、その家系のヒトが寝る時、必ず悪夢を見るように、という呪いを掛けられたらしい。

 当然スヴェトラーナはソッコで親に手紙を出したが、どうやらソレは家族全員知っていたコトらしい。

 寧ろちゃんと、幼少期に解呪するかどうかも聞いていたとか。

 スヴェトラーナの親もまた、悪夢が結んでくれたパートナー関係らしく、呪いはそのままにするという選択肢もある、という考えだったそうだ。

 なので、幼少期によくわからず拒否ったスヴェトラーナに対し、そっかーと受け入れてしまったとのコト。


 ……話聞いてたらかなり幼い時みたいですし、その時に言われてもよくわかりませんわよねー。


 一応親の方は、学園の長期休暇で帰って来た時くらいにもう一度聞くつもりではあったらしく、特に親子間での問題は発生しなかったので、一安心だ。

 そして呪いの方だが、第一保険室の保険医助手であるアドヴィッグ保険医助手は呪い関係を得意としている。

 なので解呪も出来ると言われたそうだが、スヴェトラーナは断ったらしい。



「ナイトメアイートフロッグが居れば、悪夢は見ませんし……この呪いがあれば、私の見る悪夢を食べて、一緒に長生き出来ますから」



 まるでノロケるかのように、照れながらそう言ったスヴェトラーナの言葉に、ナイトメアイートフロッグは胸のトキメキで、定位置になっていたスヴェトラーナの肩から落ち掛けたらしい。

 まったく、随分とラブラブで、実に羨ましい限りである。




スヴェトラーナ

ふわふわした雰囲気の美少女だが、常に寝不足気味。

しかしストーkパートナーのお陰で改善された。


ナイトメアイートフロッグ

ちょい変態混じってるけど純情系でもあるカエルの魔物。

変態的言動はスヴェトラーナにはスルーされるが、ジョゼフィーヌのように理解出来るヒトに聞かれると高確率で投げられる。


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