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ヒトと魔物のキューピッド  作者:
三年生
76/300

バリア少女とボムサンフラワー

オリジナル歌詞が作中で出ます。



 彼女の話をしよう。

 手を翳すだけでバリアが張れる混血で、楽しいコトが大好きで、よくバトルをしている。

 これは、そんな彼女の物語。





 この学園は、部外者は立ち入り禁止になっている。

 というか伝説の魔法使いであるゲープハルトの魔法によって、部外者は入れないようになっているのだ。

 けれどソレは人間に対してのみであり、魔物は完全にオールスルー。

 だからこういった自体も、無いワケでは無い。



「ッシャオラァ!今日こそ覚悟決めろやルイース!」


「ふっふーん残念!ルイースちゃんはそう簡単にはやられないんだからねー!ていうかボムサンフラワー、そっちこそ負けを認めろー!」



 片や魔力で動く車輪が付いた鉢植えに植わっているヒマワリの魔物、片や柔らかい黄緑色の髪を揺らす少女。

 だが爆発する種を銃弾のように発射してくるボムサンフラワーという魔物と、その攻撃を手を翳すコトによって現れるバリアで防御するルイースによるバトル、というのが現状だ。


 ……またいきなりなんですものね……。


 一年生の頃から時々あるので慣れているが、彼女達はどうも昔からの顔見知りらしい。

 大体はボムサンフラワーがバトルを挑む形なのだが、今のトコはルイースの防御勝ちだ。


 ……というか、ヒトが喋ってる時に襲撃ってどうなんですの?


 今日の授業についての質問をされていたので答えていただけなのだが、突然ボムサンフラワーが現れての攻撃、を防ぐルイース、に攻撃するボムサンフラワー、だが防ぐルイース、という感じで気付けばバトル状態になっていた。

 そもそもボムサンフラワーは外敵にのみ攻撃する温厚な性格のハズなのだが、あのボムサンフラワーは何故ああも好戦的なのだろうか。



「ウラウラウラウラァ!」


「甘い甘い!そんなんじゃルイースちゃんは倒せないもんねー!」


「今日こそテメェをブッ倒す!」


「いい加減負けを認めてくれないかなー!?」


「断る!」



 喧嘩する程仲が良いというタイプのようだが、この現状は勘弁してほしい。

 この学園は基本的に建物と建物を繋ぐように渡り廊下があるのだが、ソコでの襲撃だ。

 外なのでまだマシなものの、今日は風が少ないせいでボムサンフラワーが放つ種が爆発した際の煙が周囲に蔓延してしまっている。


 ……いえまあ、視界は問題ありませんけれど。


 自分はこの程度の煙幕なんてスルーして()れるし、ルイースとボムサンフラワーも慣れているのか普通にバトルを続けている。

 だが煙はいただけない。



「ケホッ」



 ボムサンフラワーは距離があるし、ルイースはバリアで自分の周囲を守っているし、そもそも慣れているので気にならないのだろう。

 だがこちらは違う。

 バトルのルールがちゃんとあるのかボムサンフラワーはルイース以外に攻撃をしないのは既にわかっているが、だからといって煙まみれにされて良いというワケでは無い。

 というかこちらは思いっきり話し中だったのだ。



「……お二方ー?」


「ヒェッ!?」


「ウォッ!?」



 出来るだけ優しい声で語りかけたつもりなのだが、怒りが漏れていたのだろうか。

 何故だかとても怯えられた。


 ……でも動きが止まったのは好都合ですわ。



「あのですね、別にバトルは良いんですけれど、話しの途中で割り込むのはどうかと思いますわ」


「わ、悪かった」


「ハイ、素直でよろしい」



 ゴネたら長い説教でもカマしてやろうかと思っていたので、ここでちゃんと謝るという正解を選べたボムサンフラワーは長生きする思考をしている。



「で、ヒトが近くに居る時はもうちょっと気遣いなさいな。流れ弾がこっちにこないよう気をつけて戦ってるのはわかりますが、ケホッ」


「……あ」



 まだ残留している煙に思わず噎せると、ルイースが気付いたように声を漏らした。



「…………正直、この煙で噎せますわ。もうちょっと周囲を気にして戦いなさいな」


「……すまん、煙幕作戦も兼ねて煙多めのシードボムを放ってたから、その、悪い」


「ルイースちゃんもジョゼをもうちょっと気にするべきだったよ……ごめん」



 どちらも素直でありがたい。



「いえ、こちらも距離を取るなりすれば良いのに残っていた結果勝手に巻き込まれたようなので、今のはこちらにも非はありましたわ。でもコレからは気をつけてくださいまし」


「ハァイ……」


「気をつける……」



 まずい、ルイースとボムサンフラワーをかなりへこませてしまった。





 古今東西、機嫌を直すには甘いモノだ。

 そう判断し、丁度持っていたお菓子をルイースに、ケイト植物教師に何故か貰った植物栄養剤をボムサンフラワーに渡し、中庭で休憩タイムになった。



「わー、コレ美味しい!」


「この栄養剤も良いな、ドコのだ?」


「ルイースちゃん植物の授業取ってないから知らなーい」


「ハァ?ナンで取ってねえんだよ。取れよソコは。俺と戦うには万全を期しろよ」


「そんなコト言われても、ルイースちゃんバリアでボムサンフラワーに勝てるもん。いい加減負けを認めてよねー」


「誰が負けだ誰が!俺が負けてねえっつってんだからまだ俺は負けてねえんだよ!」


「もー、そんなコト言ってわざと負けたら怒るじゃん!」


「当たり前だろうが舐めんな!」


「舐めてないし!」


「あんまりヒートアップするようなら冷水頭からぶっかけますわよー」



 ルイースとボムサンフラワーはソッコで大人しくなった。

 下手にヒートアップした結果第二戦目に突入するのは勘弁だったので、素直な反応はありがたい。

 彼女達に対して我ながら正直、他に比べて対応が酷くはないかとも思う、が。


 ……何度かヒートアップからの第二戦に巻き込まれれば、イヤでも対応が冷たくなりますわ。


 四回目で流石にキレて説教した結果、ルイースもボムサンフラワーも聞き分けが良くなった。

 元々悪い子では無いのが幸いだった。


 ……もし悪だったら、説教ドコロじゃありませんものねー。


 まあ悪であれば初対面の時点でバーサーカースイッチ入るのでまたちょっと違う気もするが。



「……そういえば、一年生の頃からボムサンフラワーがルイースに強襲掛けてたしルイースも普通に応戦してたからスルーしてましたけれど、ルイースとボムサンフラワーってどういう出会い方してそうなったんですの?」


「どういう出会い方してそうなったって……」


「別に普通だっつの」


「じゃあ言い方変えますわね?どういう出会い方すればそんな風に毎回バトルするような感じの関係になるんですの?」


「あ、うん、そう言われると確かに気になるというか、気になる以前に開示しておくべき情報だったって気がしてくるような」


「というかしておいてくれないと外野がどう反応すれば良いのかわかんなくて困るんですのよね」


「今更じゃねえか?んなモン……ヒッ」



 誰のせいだと思ってるんだという思いを込めた笑みを向けると、ボムサンフラワーは怯えたようにヒマワリそっくりの体を縮こませ、ルイースに隠れるような位置へと移動した。


 ……そこまで怖くした覚えは無いんですけれど……。



「えっと、出会いだけど……まずルイースちゃん、昔ちょっと風邪こじらせて入院したコトがあってね?その時の病院の中庭が立ち入り禁止で、まあ好奇心旺盛な幼少期ルイースちゃんだったからこっそり侵入したんだぁ」



 柔らかい口調で誤魔化しつつルール破った話をしてくるなと思ってしまうが、しかし自分も何度かルール破りをしているのでツッコめない。

 夜に抜け出したりとかの前科が結構あるのだ。


 ……アンセルム生活指導が結構判定緩くしてくれているお陰で見逃されてるようなものですわね。



「ソレで立ち入り禁止になってた理由なんだけど、ソレってボムサンフラワーが居たからなんだよね」


「俺は普通に種がソコに運ばれたから芽吹いたってだけなんだが、外敵と判断したら攻撃するっつー特性があるだろ?」


「ありますわね」



 ルイースの影から恐る恐る顔を出してこちらを見るボムサンフラワーに普通にそう返すと、怒っていないと判断したのか、安堵したように溜め息を吐きながらルイースの影から出てきた。

 彼はキャラクター化された花みたいな感じで顔があるので結構表情がわかりやすいのだが、今回は少々大人げなかったこちらも悪かったので見ない振りだ。


 ……ルイースで本日放課後になってから三回目の引き止めだったのと、ソコからバトルが発生したせいでストレス溜まってたのかもしれませんわねー……。


 自覚はいまいち無いのだが、八つ当たりしてしまったかもしれないと考えると申し訳ない。



「その病院はどうも、患者を守る為に俺らを植えたらしいんだが……まあ、患者が俺を摘もうとしたら、俺は患者を外敵を認識するワケで」


「あー……」


「そっから俺が超好戦的な性格になっちまった結果、中庭は立ち入り禁止の場所になった」


「あらー……」



 誰が悪いと聞かれたらボムサンフラワーを摘もうとした患者だとしか答えられないが、一概にその患者が悪いと決め付けるコトも出来ないので複雑だ。



「でもルイースちゃんはソレを知らないから普通に好奇心のまま侵入して、ボムサンフラワーと顔を合わせちゃってね?」


「当然のように俺がシードボムを放ったら、コイツ防御しやがったんだよ。バリアで。しかも初見かつ不意打ちだったのに」


「ルイースちゃんは反射神経に自身があるからね!えっへん!」



 そう言ってルイースはわかりやすく胸を張った。

 その可愛らしい仕草に、ついつい頭を撫でてしまう。


 ……こういう時に甘やかすクセ、直さないとですわねー……。



「で、その日は朝になるまでバトルして、朝に見回りしてた医者に怒られたんだが、その日の夜に懲りもせずルイースがリベンジに来てよ」


「負けては無いけど勝てても無かったんだもん」


「俺も勝ててないからってモヤモヤしてたからそのまま毎晩数時間バトルするってのが恒例になって、時々ルイースがバトルする気が起きないくらい寂しがってる時はバトル止めてとりあえず話し相手になったり」



 普段は顔合わせる度に喧嘩するものの、相手が落ち込んでたら静かに話を聞いてあげるとかドコの少女漫画だろうか。



「ただまあ、そんなのはルイースが入院してる間だけだろ?」


「ああ、そういや入院してのお話でしたわね」


「うん、その時は夜にバトルしてたせいもあってか完治するのが遅くって結構楽しめたんだけど、結局治っちゃってさ」



 ルイースはハァ、と溜め息混じりにそう言った。

 確かに病院で出来た友達を離れるコトになるのは寂しいだろうが、完治が長引くレベルでバトったりしていたのかとツッコミたい。



「でも退院したらルイースちゃんからは会いに行けないでしょ?小さかったし。だからボムサンフラワーに、この魔力を流すコトで意思通りに動く車輪付きの鉢植えをプレゼントしたの!」


「アッ、ソレってルイースからのプレゼントだったんですの!?」


「うん!」


「おう」


「え、でも魔道具ですわよね?」


「パパが魔道具作るの好きで、よくオモチャ作ってくれてたんだー。だからお見舞い来たパパに頼んだらソッコで作ってくれたんだよ!」


「ワーオ……」



 結構良い出来の魔道具なのだが、コレをポンと作ったとは中々凄いパパさんだな。



「退院日に、「コレで遊びに来てね」って住所書いた地図と一緒に渡したの。今思うと結構めちゃくちゃな地図だったんだけど、ソコまで遠くも無かったからって数日後にボムサンフラワーが会いに来てくれてね!」


「その辺の温厚な魔物に聞きつつどうにか、な。で、顔見てソッコで俺はコイツにシードボムを放った」


「あ、開幕攻撃なんですのね?」


「入院生活の間に、ソレがルイースちゃんとボムサンフラワーの挨拶って感じになってたからね!」



 ナンと言うか、どういう出会いをすればこういう関係になるのかと思っていたのだが。



「……どういう出会い以前に、そういう出会いでそのまんま変化無しの関係なんですのねぇ……」



 まあ、仲が良さそうなのはなによりだが。





 コレはその後の話になるが、ルイースが言うには、ボムサンフラワーがルイースを負かしたら告白をしてくれるんだそうだ。

 どうもお互いパートナーになりたいというタイプの好意を抱いているのは同じらしいのだが、ボムサンフラワーの方がプライド的に、まだ勝っていないのにパートナーにはなれない!と主張しているらしい。

 そしてルイースも遊びもバトルも全部全力なタイプなので、相変わらずの膠着状態だ。


 ……だからああも、お互いが負けを認めろ云々のやり取りをしてたんですのね。


 ボムサンフラワーからすれば、ルイースが負けてくれれば告白出来る。

 ルイースからすれば、ボムサンフラワーが負けを認めてくれれば自分から告白出来る。

 正直言って律儀に待たずにルイースから告白すれば良いんじゃないかとも思うが、まあ告白されたい乙女心があるのかもしれない。


 ……未だにわたくし完全フリーなせいで、その辺の感情がよくわかんなくなってきましたわねー……。


 異世界の自分も液晶の向こうにしか相手が居なかったらしいので、年季の入った無縁さだ。

 卒業前に相手が現れてくれると良いのだが。



「暗闇広がる夜空の向こう

 夜空をまるでキャンバスのよに

 月と星が彩っている」


「カーテンのよに広がる夜空

 散りばめられた星の中

 一つキラリと空から落ちた」



 ふと歌声がした方を見れば、中庭でルイースとボムサンフラワーが交互に歌っていた。



「子供が指差す あれはなに?」


「大人は答える あれは流星」


「子供が指差す それはなに?」


「大人は答える 願いを叶えてくれるんだ」



 楽しげに笑いながらルイースが歌い、続くようにボムサンフラワーも楽しげに歌う。



「太陽沈んだ夜の時間」


「暗闇照らすは月と星」


「眠る僕達見守っている」



 コレは結構昔からある曲で、子供の頃に流行っていた覚えがある。



「子供は願った また見たい」


「大人は笑う すぐに見れるさ」


「子供は驚く どうしてわかるの」


「大人は笑う 流星群が来るからさ」



 恐らく、入院している時、バトルをしない日とかに歌ったのだろう。



「夜空彩る流れ星

 絶えず落ちるはお星様」



 そう思えるくらいに、双方歌い慣れている歌声だ。



「皆の願いを叶える為に

 天からここまで来てくれた」



 いきなりボムサンフラワーがバトルを仕掛ける日もあれば、ああして一緒に日向ぼっこをしながら歌う日もある。

 ちなみにまだルイースのパートナーではないハズのボムサンフラワーだが、雨ざらしはアレだからという理由でルイースの部屋で寝泊りをしていたりする。

 現在のままの関係では形容しがたいせいでパートナー未満としか表現出来ないので、正直さっさとパートナーという関係に落ち着いて欲しいものだ。




ルイース

自分の特性であるバリアを張れるし楽しいしでボムサンフラワーとのバトルは結構楽しんでる。

いつもの騒がしいボムサンフラワーも寄り添ってくれたり一緒に歌ったりする時の大人しいボムサンフラワーも大好き。


ボムサンフラワー

最初はただの敵と認識していたが初撃防いだしその後も防ぎ切ったので、少年漫画の河原バトル終了後みたいな感じの認め方をした。

現在はソレに少女漫画フレーバーが混ざった感じの関係。


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