表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒトと魔物のキューピッド  作者:
二年生
63/300

ポジティブ少年とネガティブスモーク

オリジナル歌詞が作中で出ます。



 彼の話をしよう。

 ポジティブで、元気で、いつだってご機嫌な。

 これは、そんな彼の物語。





 森を歩いていたら、迷子になっていたらしいミーケルを見つけた。



「いや、悪いな!どうしたもんかと思ってたが助かったぜ!」


「困ってるようには見えませんでしたわよ?」


「まあどうにかなるだろ!とも思ってたからな!」



 親指を立てて良い笑顔でそう言うミーケルに風が吹き、彼の鶯色の髪が揺れた。

 流石爽やかタイプというか、何故爽やかな性格のヒトは風を良いタイミングで吹かせるコトが出来るのだろうか。


 ……まあ万物には神が宿ると言いますし、神が沢山実在している世界ですものね。


 神は演出するのが好きなんだろう、と思っておこう。

 神話を読む限りだと裏方よりも主役になる方が好きそうだが、楽しむの優先みたいなトコもあるので多分合ってる。



「最初はやばいなとは思ってたが、でも管理人が見回りするだろうし、運が良ければ見回りの前に誰かが見つけてくれるだろうとも思ってとりあえず岩に座って待つコトにしたんだ!」


「実際わたくしが見つけたワケですけれど……正直見つけた瞬間、座禅かナニかでもしてるのかと思いましたわよ?寝ていましたし」


「大人しくしてると眠くなるからな!」



 相変わらずミーケルは声が大きめで元気な性格だ。

 異世界の自分なら絶対に友人になれないタイプだが、異世界の自分と現在の自分は別人格状態なので普通に友人である。

 寧ろ友人になれないタイプがいるというのがよくわからないのだが、異世界の自分は気難しい性格だったのだろうか。



「というか何でこんな森の奥まで来たんですの?」


「いや、今日は授業中にペン先が折れてな。最初は今日の運勢が良くないのだろうかと思ったんだが、寧ろコレは今日は勉強よりも外を歩けというコトでは?と思って、外に行けば良いコトがある予兆だなとなって普段来ない奥まで歩いて、迷った!」


「ああそう……」



 良いコトどころか迷っているのでは最初の運勢良くないというのが当たっているのではと思ったが、ミーケルはとにかくポジティブに物事を受け止める性格だ。

 つまりナニを言っても無駄だし、他人を巻き込んだりもしていないから良いとしよう。


 ……というか、あまり巻き込む性格でも無いんですのよね。


 ミーケルは無茶をする時はあるが、無謀はしないタイプなのでまだ安心出来る。

 無謀をするタイプは他人を巻き込むコトも多いから安心出来ないが、そう考えると彼はずっとマシだろう。



「……暇だな!」


「ナンですの、急に」



 学園の方へと歩きつつ、時々枝を退けたり草を踏んだりして移動を短縮したりしていたら、背後のミーケルが急にそう叫んだ。



「いや、だが暇なんだ。俺が前を歩いてソレをやっては駄目なのか?」


「道わかりますの?」


「わからん!」


「なら却下ですわ」



 迷子に先頭を任せるような危険は冒したくない。



「だがこうして歩いているだけというのは暇だぜ。会話でもしないか?」


「あの、わたくし体力削りながらこんな動きして道作ってるのでんな余裕ありませんわ。歌でも歌ったらどうですの?」


「歌?」


「ホラ、前にララが作詞するからって皆に色々聞いて、アナタのを採用したとかで一時期やたらと歌ってたじゃありませんの」


「ああ、アレか!そうだな!アレはテンポも良いからテンションが上がるんだ!そうしよう!」



 ミーケルはそう言って頷き、太陽のように明るい笑みを浮かべた。



「ハピハピ ラッキラッキー イェイ

 ラキラキ ハッピハッピー イェイ

 スパスパ ラッキハッピー デイ

 幸せ 楽しい 時間」



 流れるようにミーケルが歌い始めたその歌は、ララが自分の曲で初めて作詞をした歌だ。



「楽しい 夢見た ハッピースタート

 カーテン 開ければ 快晴だ

 寝癖 凄くて ちょっと笑う

 直らないけど 話題になるね」



 最初は難航していたようだが、参考として友人達に聞いた結果、ミーケルの日常が歌詞として採用された。



「朝食 美味しい ハピモーニング

 昨日 勉強 教えた子から

 おかず ちょっぴり お裾分け

 朝から ラッキー ラキモーニング」



 どうやら日常を元にすると歌詞が作りやすかったらしく、更にミーケルの場合は思考がポジティブなのもあってすらすらと書けたらしい。



「授業 何度か 当てられたけど

 全部 正解 ハッピーデイ

 調子 良いぞと 思っていたら

 体術授業で 投げられた」



 ……まあ、ネガティブ系だとソレに引っ張られて筆の進みが遅くなるのはわたくしも翻訳作業で知っていますから、気持ちはわかりますわ。



「けれども 見上げた 青空が

 真っ青 広々 ハッピースカイ」



 そしてミーケルとしては自分の日常を元に歌が作られたのが嬉しかったのか、この曲が発表されてからよくこの曲を口ずさんでいた。



「ハピハピ ラッキラッキー イェイ

 ラキラキ ハッピハッピー イェイ

 スパスパ ラッキハッピー デイ

 楽しい 素晴らしい デイ」



 ミーケル本人曰く自分のテーマソングらしく、実際ミーケルの日常をモデルに作られた歌なので聞いてる側としてもそう聞こえてくる。



「放課後 タッタ 王都巡ろう

 カフェで 友達 バッタリ遭遇

 偶然 驚き スマイルハイタッチ」



 アンノウンワールドにはどちらかと言うとブラックな感じの曲が多いので、自分としてもこういう曲は好きだ。



「一緒に 座って 相席ティータイム

 お互い オススメ 伝えるタイム」



 今のトコロはブラックな曲七割、明るい曲三割という割合なので、明るい曲が増えてくれるのはとても嬉しい。



「寝る前 お風呂 大浴場

 石鹸 泡立ち バトルして

 拳骨 食らって 引き分けだ」



 評判も聞いた限り、そして()えた限りは好印象のようなので、ララの友人としても安心だ。



「けれど お風呂で 水鉄砲

 全員 巻き込み 大バトル

 勝って 勝者の ハッピースマイル」



 欲を言えば異世界である地球のようにCDのようなモノがあればと思うが、似たような魔物は居ても似たような機械が無いのが残念である。



「ハピハピ ラッキラッキー イェイ

 ラキラキ ハッピハッピー イェイ

 スパスパ ラッキハッピー デイ」



 ……まあ、生音だからこそ、というのもありますしね。



「今日も 楽しい ハッピーデイ

 明日も 素敵な ラッキーデイ

 ずっと 最高 スーパーデイズ」



 そんなコトを考えつつ、背後からの歌声が四周した辺りで、自分達はようやく森を抜けた。





 ゲープハルトに頼まれた翻訳作業を終え、その本の貴重さにグッタリしていると、自室の扉がノックされた。



「ハァイ?」



 ルームメイトであるジェネヴィーヴはストーンスタチューとデートに行っている為、無視して一眠りしたいのを我慢して仕方なくそう答えると、扉の向こうから聞き覚えのある声がした。



「すまんジョゼフィーヌ!説得を手伝ってくれ!」



 ……面倒事の気配がしますわ……。



「……説得、ですの?」


「ああ!って、あ、ちょ、待ってくれ!大丈夫!大丈夫だから!」


「大丈夫なハズありません!イヤです!他の方にご迷惑を掛けるのも、アナタに嫌われるのも!面倒でしょう!?面倒だって思いますよね!?なら引き止めないでください!」


「ぐ、確かに面倒だとは……いや、だがソレでもキミを説得したいという気持ちはある!つまりコレは面倒というよりも、キミが俺を拒絶するコトによりダメージを負った感覚だ!そしてキミが俺のそばに居てくれるならナンの問題も無い!」


「そ、そんな、そんなコトを言われたって……きっと、きっとミーケルは私を嫌うんです!」



 ()える扉の向こう側では、ミーケルと魔物が痴話喧嘩をしていた。

 扉の前で騒がれては困るので、溜め息を吐きつつ部屋の扉をゆっくりと開ける。



「……あの、ヒトの部屋の前で大声出さないでいただけます?苦情言われるのこっちですのよ」


「そうだな、すまん!」



 相変わらず返事だけは良いが、笑顔で言うのを止めて欲しい。





 とりあえずミーケルと、その隣に居た煙の魔物を中へと引き入れた。



「……で、どういうナニですの?」


「俺は彼女にパートナーになって欲しいのに断られた上に俺の前には二度と現れないとか言ってきたから説得を手伝ってくれ!」


「こんなにも会話するコトが出来たヒトは初めてなんです……だからこそ彼に嫌われたら私はもう生きていけません!どうか、どうか嫌われる前に去らせてください!」



 ……説明になってませんわー。


 というか何故ここに来たのだろうか。

 そんな痴話喧嘩をこちらに言われても困るし、巻き込まないで欲しい。

 天使の娘だからやたらと頼まれがちで巻き込まれやすいのには慣れているが、しかしこんな痴話喧嘩にまで巻き込まれるのは勘弁だ。

 そしてこちらは独り身で寂しい思いをしているというのがわからないのだろうか。

 見せ付けられるようなこの現状に、気分がずぶずぶと沈んでいく。


 ……いや、でもいつものコトですわよね?


 ふとこの現状が日常であるコトに気付いた。

 そもそも自分は友人達にも魔物達にも安全牌扱いされているというか、そのせい……そのお陰で比較的相談もされやすい。

 なのに何故こうも落ち込んでしまったのか。

 そう考え、煙の魔物の言動と見た目から、とある魔物に関する知識が脳内を巡る。



「……ミーケル」


「ナンだ?」


「そちらの魔物、もしやネガティブスモークですの?」


「ああ、そうだぜ!言う前に気付くとは、流石ジョゼフィーヌだ!」


「天誅!」


「いっだ!?」



 ミーケルの頭にチョップを食らわせてから、深呼吸。



「ナニをするんだいきなり!?」


「こちらのセリフですわ!ネガティブスモークは居るだけで周辺の生き物の思考をネガティブな方へと向かわせてしまう魔物!」



 そう、つまり思考がマイナスへと向かってしまうという魔物だ。



「予めソレがわかっていれば思考をネガティブな方へ行かないようにという心構えが出来ますし、その状態であれば短時間ならセーフ!けれど心構えも無しに近くに居たら普通に影響受けますわ!種族知ってたのであれば、キチンと先に伝えなさいな!」


「いや、だが彼女は知られるのを嫌がっていたから」


「ネガティブによる不快さから彼女への敵意に変化したらどうしますの!?その結果敵意を向けられて彼女がショックを受けるよりも、予め彼女のコトをそういうのから守れるように事前説明くらいしなさいな!ナンなら彼女本魔に事前説明をする許可くらい取れたでしょう!」


「ソレもそうだな!すまん!」


「まったくですわ……」



 まだ少しネガティブスモークの影響が出ているのか、頭は痛いし思ったよりも怒ってしまった。

 頭を押さえつつ、ネガティブスモークへと頭を下げる。



「……色々好き勝手言いましたわ、ごめんなさいね」


「い、いえ!心配してくださったのがわかったので大丈夫です!」


「ソレなら良いんですけれど……」



 チラリとミーケルを見るが、ミーケルはいつも通りに明るい笑顔だ。

 さっきの説教にダメージを受けていないのかと一瞬イラッとするが、まあ引き摺られてネチネチされるよりは受け流した結果だとしてもサッパリしている方が良いだろうと自分を納得させる。



「で、どういうナニがあったんですの?まずミーケル」


「パートナーになってくれと」


「出会いから」


「少し前に森で出会ってな!最初はネガティブスモークに警戒されていたのだが、俺はこの通りの性格なのですぐに思考がいつも通りに戻る!

なので不思議な感覚で楽しいなと思い会話をして、その後もよく会うようになって、ここまで意識してしまうというコトは好きというコトでは!?と思って告白した!ら断られたぜ!」


「成る程」



 わかりやすい。



「ソレではネガティブスモークの方は?」


「私は、最初はまた不愉快な思いにさせてしまうのではと思ったのですが、呼び止められて……すぐに機嫌が悪くなって去るだろうと思っていたら、全然そうはならなくて、また会う約束をして……ソレを繰り返して好きになり掛けてたら、「俺はお前と友達になれて嬉しいぜ」と言われて」



 そう言い、ネガティブスモークは本体である煙をぎゅっと縮こませた。

 恐らく照れているのだろう。



「そんなコトを、というか、一定以上の会話をしてそんな好意を向けられたコトが無かったので、嬉しくて……どんどん好きになっていたけど、でもきっとこの恋は駄目になるんだろうなとも思ってて、そしたらミーケルに告白されて……」


「断ったんですのね?」


「だ、だって、パートナーになるってコトは今よりもずっと一緒に居るというコトで、すっごく素敵で憧れるけど、ソレはもっと私の影響を受けるというコトでもあって、好きと好きが重なってパートナーになれたら幸せですけど、でもパートナーになった後に嫌われたら、私、私……!」



 そう苦しげに言うネガティブスモークの声は、泣いているかのような鼻声だった。

 鼻があろうが無かろうが、魔物の声は魂からの声であり、感情そのままの声だ。

 つまり、顔があれば泣いていたのだろう。



「……要するに、ネガティブスモークはミーケルに嫌われたく無いから幸せな気持ちのまま去ろうとして、ミーケルはネガティブスモークと離れ離れになるのは嫌だからとわたくしに説得を協力して欲しいと……」


「そうだ!両思いなのはわかっているのだからここで引いて手放す気は無い!」


「圧が強い」



 背後にメラメラと燃え盛る太陽が見えそうだ。

 まあこのアンノウンワールドの太陽が異世界である地球と同じような太陽かは知らないが。


 ……でも、両思いなのは事実なんですのよね。


 どちらも自分からの気持ちを隠していないし、引く気も無い。

 だからこそ面倒なのだが。



「…………ええと、とりあえず」


「説得してくれるか!」


「ミーケルは一旦わたくしがよしと言うまでシャラップ」


「むぐ」



 ミーケルは素直に口を手で塞いだので良いとしよう。

 彼は少々騒がしいがこういう素直な点は扱いやすく……いや、うん、扱いやすくて助かる。


 ……訂正しようかと思いましたが、事実なんですのよね……。



「で、ネガティブスモーク。アナタの場合の懸念は彼が自分の特性のせいで自分を嫌うのではないかというモノですわね?」


「ハイ……長くそばに居るのは、やっぱり……」


「ならパートナーになる前に、お試しとして一緒に生活してみるというのはいかがですの?」


「エ!?」


「今のアナタは食わず嫌いをしているようなモノでしょう?今まで大丈夫ならコレからだって大丈夫かもしれないのですから、少し試して、大丈夫かどうかを確認した方が良いと思いますわ」



 ミーケルのポジティブさは実際信頼出来るし、捻じ曲がるコトも出来ないくらいに真っ直ぐな性格なので平気だろう。

 ネガティブスモークの特性はあくまで思考をマイナスの方へと向かわせてしまうだけであって、自力で方向修正するのは普通に可能なのだから。

 そしてソレは普通にネガティブなコトも考えるヒトの場合であり、そんなヒトでも修正が可能。

 つまり根っからネガティブ思考と縁が無いミーケルなら、碌に影響も受けないと思われる。



「で、でも……」


「じゃあネガティブスモークはミーケルとパートナーになれる可能性を棒に振るんですのね?」


「ソレはイヤです!」


「即答ですわねー」



 正直、まあわたくしには関係が無いコトですのでその結果ミーケルが他の魔物とパートナーになる可能性が生まれても気になりませんが、と追い討ちを掛けようとしていたのだが、必要無いくらいに即答だった。



「ちなみにミーケル」


「?」


「あ、もう喋って構いませんわ。そして聞きますけれど、アナタはネガティブスモークとパートナーになりたいんですのよね?」


「モチロンだ!」


「だ、そうですわよ」



 そう言ってネガティブスモークに視線を向けると、ネガティブスモークは少しおろおろとした動きの後、本体である煙をミーケルの腕に絡ませた。



「…………い、一緒に居たいのは、パートナーになりたいのは、私だって同じ気持ちですから……」



 ぎゅ、とネガティブスモークの本体である煙が縮こまる。

 アレはきっと、緊張で身を縮こませるのと同じ動きだろう。



「……嫌わないで、くださいね」


「俺がネガティブスモークを嫌うコトがあるハズ無いだろう!キミが安心出来るまで、そして安心した後も!俺はキミを好きで居続けるとも!」



 ……このラブストーリー、ナンでわたくしの部屋で、わたくしの目の前で行われてるんですの……?





 コレはその後の話になるが、ミーケルとネガティブスモークは晴れてパートナーになった。

 流石ポジティブ代表のようなメンタルのミーケルと言うべきか、まったくネガティブにならなかったのだ。



「いや、一瞬ネガティブにはなるぞ?なるんだが、「こんな思考になるのはネガティブスモークが居るせいだ」「でもネガティブスモーク自身に悪気は無いし、本魔はとても好ましい」「俺はそんなネガティブスモークと出会えてとてもハッピーだからナニも問題は無い」という感じになる」



 ミーケル曰く、そんな感じらしい。

 大体三段階でネガティブも無くなるらしく、相変わらずポジティブの擬人化のような男だ。



「で、こちらがパートナー成立祝いですわ」


「わあ、綺麗……ほ、ホントに良いんですか!?」


「俺たちの今後にも必要なモノだし、ちゃんと払うぜ?」


「要りませんわよ別に」



 自分がミーケルとネガティブスモークに渡したのは、小さい香炉だ。

 シンプルだがデザインが凝っていて素敵な一品。

 何故香炉をプレゼントなのかと言うと、ネガティブスモークは煙なので、突風に弱いのだ。

 あまりに強い風だと煙が散ってしまい、人間で言うところの腕欠損や足欠損のような状態になってしまう。

 なのでソレを避ける為、避難場所としての香炉である。


 ……このサイズなら邪魔にもなりませんし、蓋を接着剤で閉じればチェーンやヒモを通して腰に提げれますしね。


 香炉は中に固形の香料を入れる為に蓋を開けなくてはいけないが、彼女の場合は煙だし、あくまで避難所でしかないので蓋は接着しても問題無い。

 一応吊り下げたり出来るタイプの香炉もあったのだが、一般的なのはこちらだったので、女子でもあるネガティブスモークの為を思うとこちらの方が良いだろう。



「わたくしに代金渡すよりも、時々デートで香炉でも見て、ネガティブスモークの好きな香炉でも買って差し上げなさい。ネガティブスモークは女の子なんですから、そういうオシャレをさせてあげるべきですわ」


「成る程!確かにそうだ!」



 そう、ネガティブスモークに性別など無いが、どちらかと言うと女のハズだ。

 基本的に声と口調と性格で判断するので性別が無いタイプの魔物の男女判定はガバガバだが、まあ普通に成立しているので問題は無いと思う。

 そしてさっきの話だが、一般的な香炉はこちらなので、こちらのタイプを渡した方が新しい香炉を見る時に困らなくて済むだろう。


 ……蓋を接着したり、チェーン通したり、ですわね。


 身を隠す用とはいえ、本体が煙なネガティブスモークからしたらこの香炉が服代わりだ。

 今は風が怖いからと風の強い日は外に出れないネガティブスモークだから、綺麗な香炉は外に出る後押しにもなるだろう。


 ……あと単純に、急な突風が吹いた時の保険として身につけておくのも大事ですしね。



「……ちなみにジョゼフィーヌ、この香炉っていうのはドコで買えるんだ?」


「ミーケル用のパートナー成立祝いとして既にメモに書いておきましたわ」


「流石ジョゼフィーヌ!助かるぜ!」


「あの、色々……ありがとうございます!」


「どういたしまして」



 ネガティブスモークの特性にオンオフは利かないが、範囲を設定は出来るらしい。

 現在はネガティブにならないミーケルに範囲が設定されている為、他のヒトにネガティブが作用するコトは無い。

 そのお陰で、自分はネガティブになるのを警戒するコト無く、本心からの笑みで答えれた。




ミーケル

ナニがあっても良いコトに繋げれるくらいポジティブ。

太陽系の混血かと思われるコトが多いが、生粋の人間。


ネガティブスモーク

周辺の生き物の思考をネガティブにするし、自身もネガティブ思考。

ただしポジティブ思考であればソレを跳ね除けるコトが出来るしネガティブスモーク自身のネガティブも跳ね除けてくれるので、相性は良い。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ