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ヒトと魔物のキューピッド  作者:
二年生
62/300

吸血少女とテレポートホーク



 彼女の話をしよう。

 主食が血液と果汁で、心配症で、手当てが得意。

 これは、そんな彼女の物語。





 食堂でおやつのイチゴタルトを食べつつ、正面でジュースを飲んでいるマーヤに視線を向ける。



「そういえば、マーヤっていつも果汁飲んでますわよね」


「え?ソレはまあ、コレが主食ですので」



 マーヤはそう答えつつ、不思議そうに首を傾げていた。

 その動きでマーヤの濃い金髪が揺れる。



「でも確か人血も飲んでませんでした?」


「ああ、ソレも飲んでますよ」


「もしかして、わたくしがそばに居ると飲みにくいとか?」


「……ふふ」



 自分の質問に、マーヤはクスクスと楽しげに笑う。



「ソレを心配してたんですか?ふふ、違いますよ。気遣いではなく、同じ主食ではあっても基本的には果汁、というだけです」


「あ、そうなんですの?」


「ええ」



 マーヤは微笑みながら頷いた。



「ホラ、私は親の遺伝で固形物が食べられないので、基本的に主食は液体なんです。なので人血とかも飲みますが、基本的に血液は果汁よりも栄養価が高い為、ソレばかり飲んでいたら太ってしまいます」


「あー、ソレは乙女として避けたいですわね」


「でしょう?なので血液は疲れた日とかに飲む……んー、固形物食べるヒトからすると、頑張った日の特別メニュー、のような感じでしょうか」


「成る程」



 ハンバーグとかステーキとか具沢山カレーみたいなモノだろう。

 というか今のは異世界の自分のチョイスだが、異世界とはいえ我ながら好みが子供過ぎやしないだろうか。

 自分自身まだ子供だが、異世界の自分は成人済みだったハズ……とまで考えて思考を止める。


 ……ソコを深く考えても意味なんてありませんし、カロリー高めなコトに変わりありませんものね。



「……ですが時々、料理の血抜きとして先端が注射器の針のようになったストローでお肉の血を吸わせてもらったりもしますが」



 照れ照れと恥ずかしそうにしながら、マーヤはそう言った。



「ソレ、結構な量じゃありませんこと?」


「そうですが、ジョゼもお菓子あげると言われたら受け取ってしまいませんか?」


「……受け取りますわね」


「でしょう!?」



 知らないヒトが相手なら普通にノーセンキューだが、ラザールパティシエが相手だったら受け取る可能性が高い。

 というか実際頻繁に試作品のお菓子を受け取っている。



「ソレに少しですがお給料も出るので、どうしても頷いてしまいますね……」


「もしかして、ソレで最近森に行くようになったんですの?」


「ハイ、歩いておかないと太りそうで……」



 マーヤは恥ずかしそうに頬を染めながら、自分を抱き締めるような動きでお腹を隠す。

 もっとも透視が可能な自分の目からするとその程度では隠せていないのだが、マーヤのお腹を見る限りは特に太っていなさそうだ。

 筋肉や脂肪の割合まで細かく()えてしまうこの目で()たのだから間違い無い。


 ……まあ、言いませんけれど。


 デリカシーは大事にしなくては、友情にヒビが入りかねない。

 特に乙女のお腹周りはデリケートだ。



「ただ、歩いてるとどうしても血の匂いがする時があり、ついついそっちに引き寄せられていくと怪我をしたヒトが居たりしまして……」


「ああ、よく保険室に付き添ってますわね」



 この学園内、そして裏手の森に部外者は入って来れない。

 つまり怪我をしているのは学園の生徒なのだが、森の中には自然が作り上げたトラップがあるので慣れていても怪我をする生徒は少なくない。

 まあ大体は掠り傷が殆どだが。



「殆どのヒトは掠り傷だから大丈夫と言って保険室に行こうとしてくれませんが、では血を吸っても良いのですね?とこちらの特性を説明すると、皆さん素直に保険室へと向かってくれます」


「うん、脅しですわねソレ」



 マーヤには鋭い牙があり、ソレで対象から吸血するコトが出来る。

 ただしソレだと吸う時に痛みが伴う為マーヤの唾液には麻酔作用があるらしいが、副作用として凄く痒い。

 要するにマーヤの親は吸血鬼系と言うよりも蚊系の魔物なので、マーヤもそういう系統なのである。


 ……蚊って、基本的な主食は花の蜜や果汁だったりしますものね……。


 素直に保険室に向かった怪我人達は、痒くなるのがイヤだったのだろう。

 自分もイヤなので気持ちはわかる。



「ま、掠り傷であっても怪我の手当ては大事ですわよね。友人の中には無謀な行動をするヒトも居ますから、最終的には自主的に手当てしてもらいに行ってくれるとありがたいのですけれど」


「確かに、そうですね。自分だけで保険室に行くと言っても大半は行かないので、付き添いの必要がありますし……そもそも枝や石は仕方ないにしても、自分から怪我をするような行動をしなければ怪我の確率は低くなると思うのですが」



 マーヤのその言葉に、自分から怪我をするような行動をしがちな友人達の顔が脳裏に浮かんだ。

 また脳裏に浮かんだ全員が全員爽やかな笑顔を浮かべていて、理不尽だとは思うが少しイラッとしてしまう。

 爽やかな笑みを浮かべる友人達の背後に、疲労が篭もった溜め息を吐くパートナー達が見えるようだ。





 図書室から本を借り、読むのは明日にして今日は翻訳の作業でも進めようかと思いつつ教員用の建物内を歩いていると、カルラ第一保険医に肩を掴まれた。



「おい、エメラルド」


「……ハイ」



 ナンだか面倒事を押し付けられそうな気配がしたので無視したかったのだが、肩を掴まれては逃げられない。

 そう思って返事をすると、カルラ第一保険医によってぐるんの体の向きを変えられた。



「私は少し一服してくるから第一保険室に行ってくれ。あと種族説明を頼む」


「ハ?」


「おま……カルラ、んな説明の仕方じゃ伝わるモンも伝わらねえだろうが!」


「知るか。私は今すぐ自室に戻って一服したいんだ。その辺でしないだけありがたいと思え」


「お前仮にも教員の一人だって自覚はあるか!?つか生徒の前!」


「ナニをまともなコトを言っている、海賊船船長の怨念のクセに。まあそういうコトだエメラルド、友人の為にも行ってやれ」


「ハ?」



 よくわからないままカルラ第一保険医に背中を押された。

 方向的に恐らく第一保険室に行けというコトなのだろうが、まったく意味がわからない。

 聞こうとしてもカルラ第一保険医はスタスタと自室の方へ言ってしまったので聞けもしない。


 ……流石この学園の濃い生徒達を相手に出来るだけあって、我が強いヒトですわよね……。


 一周回ってそのメンタルに感動しつつ、第一保険室へと視線を集中させて中を見る。

 どうやらアドヴィッグ保険医助手は不在のようだが、中には心配そうな表情のマーヤと、怪我をしたタカが居た。





 ガラリと音を立てて第一保険室の扉を開け、中のマーヤへ軽く手を振る。



「ハァイ、マーヤ」


「ジョゼ?もしかして怪我でもしたのですか?」


「違いますわ」


「では、目の診断?残念ですが現在カルラ先生は席を外しておりまして」


「いやうん、知ってますわ。というかそのカルラ第一保険医にここ来るよう言われたんですのよ」


「?」



 椅子に座りながら手当てされたタカを膝に乗せて撫でているマーヤの向かいに座り、じっとタカを()る。



「カルラ先生に言われて、とは?」


「ソコのタカの魔物の説明ヨロシクって丸投げされましたわ」


「ああ……」



 マーヤは納得したように頷いた。

 事実とはいえこの説明で生徒に納得される保険医というのはどうなんだろうか。



「というかわたくし本気で丸投げだったのでその魔物にナニがあってマーヤにナニがあったのかもまったくわかっていないんですけれど……」


「そうですね……私から話しますか?」


「いえ、わたくしの方が早く済むでしょうから、こちらから」



 そう言い、改めてタカの魔物をジックリと観察する。

 タカの魔物は怪我をしている分気性が荒くなっているハズだが、マーヤが膝の上に乗せて撫でているからか、意外にも大人しくしていた。


 ……というかめっちゃ静かな目で見定めるようにこっち見てきますわね……。


 まあこちらも相手を凝視しているので仕方が無い。



「……ふむ、見た目が白いというのは珍しいですが……特徴からすると、恐らくテレポートホークですわね」


「ハイ、カルラ先生もそう言ってました」


「ソレ先に言って欲しかったですわ」


「そのくらいは聞いているものかと……」



 確かにソレは説明しなかった自分に非があるし、一番非があるのは本気でナニも説明せずに丸投げしたカルラ第一保険医であり、つまりわたくしあんまり悪くありませんの。

 ソレに前情報無しで珍しい色に惑わされもせずに種族を特定出来ただけ良いと思おう。


 ……ちゃんと図鑑読んだり魔物の授業で積極的に学んでるのが実を結んでますわ!



「ええと、ではテレポートホークについてですけれど……鳴き声の振動で空間に穴を開け、記憶している空間まで貫通させるコトでテレポートを可能にする魔物ですの」


「……?」


「鳴き声でワープする為の穴を発生させてそこを通るコトで知っている場所へテレポートするコトが可能というコトですわ」


「成る程……え、ソレはとても凄いコトでは?」


「ええ、とても。まあテレポートホークが発生させる穴はテレポートホークでないと適応出来ないので、ソレ以外の種族がソコを通ると、ええ、結果だけ言うと空気入れすぎた袋みたいにパァンしますわ」


「パァンするのですか……」



 鳴き声の振動で穴を開ける為か、内側はどうも特殊な振動で満ちているらしいのだ。

 つまり全身が水風船のようにパァンする。



「では、次は私の方ですね」



 テレポートホークの喉を指先でくすぐるように撫でながら、マーヤは話し始める。



「最初は血の匂いがしたので、その匂いがする方へと向かったんです。そしたら彼が居て……最初は警戒されましたが、血の匂いからすると怪我が結構深そうだったので、どうにか説得してここへ」


「お前は俺を知らなかったからな」



 目を細めてマーヤの指に頬を擦り付けるようにしていたテレポートホークが、低い声でそう言った。



「さっきソコの銀髪が」


「ジョゼフィーヌですわ」


「……ジョゼフィーヌが言ったように、テレポートホークの羽が白いコトは珍しい。それゆえに俺は、俺を売り物にしようとする悪人から逃げていた」


「ちょっと後でその悪人の特徴とか教えていただけます?」


「もう少し黙れんのか貴様」



 ごもっともだったので口を噤む。

 銀髪と呼ばれたのを訂正するのはともかく、悪人に過剰反応をし過ぎてしまった。


 ……特徴を聞けばお兄様に、そして兵士の方に伝えるコトが出来るとはいえ……少々前のめりでしたわね。



「その悪人は中々にしつこくてな……今回は深手を追わされた。このままでは逃げ切れないと思い、咄嗟にあの森にテレポートして体を休めていたのだが、ソコでマーヤに見つかった」


「血の匂いがしていたので……」



 血液がカロリー高めなご馳走という認識のマーヤからすれば、森からご馳走の匂いが漂ってきているようなものだろう。

 ヘンゼルとグレーテルだって森の中で迷っていたが甘い匂いで魔女の住むお菓子の家に引き寄せられてしまったみたいなストーリーだった気がするので、誘われるのは仕方が無い。


 ……まあ、アリだってお菓子とかに誘われて団体で来たりしますしね。



「正直言って俺の色を見て商品扱いしてくる人間が多かったからな。なので警戒していたが、あまりにも心配をしてくるから俺の種族を知っているかと聞いたんだ」


「で、返答は?」


「……ふ、不勉強なもので、存じていませんと……」


「俺はその時の表情から本当だと判断した」


「まあ確かに、まだ授業で出てませんものね」



 自分のように魔物に興味がある生徒なら授業に出ていない魔物も知っていたりするが、普通は授業に出てきた魔物くらいしか知らない。

 知っていたとしても近所に居るような魔物や、読んだ作品に登場するような魔物くらいだ。



「なので一応信じてみるコトにしたが、ここに連れ込まれて種族を見破られた時はテレポートして逃げようかと本気で思った」


「ちなみに逃げなかった理由は?」


「あのカルラとか言う女は本気でこちらに興味が無さそうだった」


「あー……」



 興味が無いというより、患者としてしか見てなかったのだろう。

 あと種族を特定したのは確実に治療の為だと思われる。



「そしてお前はお前で巻き込まれた側のようだったからな。信じたかと言われると信じてはいないが、マーヤのコトは信じている。そのマーヤが信頼しているようだったから逃げようと思わなかっただけだ」



 テレポートホークの中ではマーヤの株がめちゃくちゃ高くなっているらしい。



「……成る程、大体は事情を理解しましたわ。では悪人についてはある程度テレポートホークが元気になってから聞くとして、その怪我だとしばらく安静でしょう?」


「ハイ、薬を塗ったりしてもメンタルの回復も考えてしばらく飛び回ったりしないようにと、カルラ先生は言っていました」



 ……あのヒト、適当なように見えて処置とかはしっかりやるんですのよねー……。


 ソレ以外が適当過ぎるせいで八割方適当なヒトにしか見えないが、前に見た彼女の自室の汚部屋っぷりを思い返すと間違いというワケでも無いので、まあ妥当なのかもしれない。

 そもそもこの学園の教師の殆どは一点特化タイプが多いのでそういうものなのだろう、多分。



「この学園では入院みたいのありませんし、保険室で寝泊りも……カルラ第一保険医が面倒臭がるのと、寝ている間にアドヴィッグ保険医助手によって羽の数枚拝借されかねないのでオススメはしませんわね」


「おい後半」



 テレポートホークによるツッコミがあった気がするが無視しておく。



「ここでは基本的に怪我した魔物を拾って連れてきたヒトが世話するコトになってますけれど、マーヤとしては?」


「保護したのは私ですから、モチロン完全に怪我が治るまで私の部屋で……と思っていましたが、テレポートホークの意見はどうですか?」


「そうだな……」



 一瞬だけこちらに他人事だからってさっきのツッコミをよくも無視しやがったなというような視線を送りつつ、テレポートホークは言う。



「……まあ、他の人間に面倒を見てもらうのは無理だ。反射的に警戒してしまう。面倒を掛けさせるが、世話になっても良いだろうか」


「ええ、モチロン」



 マーヤはニコニコと微笑みながら、テレポートホークの頬を指先で撫でる。



「自分の巣だと思って、回復に専念してください」


「……ああ、世話になる」



 ……ナンだか一人と一羽の間にピンクで甘い感じの雰囲気が漂っているように見えますけれど、気のせいであって欲しいですわねー。





 コレはその後の話になるが、テレポートホークは完治した後もマーヤのそばに居るコトになった。

 テレポートホークからの情報で悪人は無事捕らえられたものの、テレポートホークはマーヤのコトが気に入ったらしく、そのまま居付いたのである。



「正直言って、あのまま去られてたら寂しかったと思うので……残ってくれたのは、嬉しいですね」



 まあマーヤ本人はそう言っていたので、良いのだろう。



「おいジョゼフィーヌ」


「ちょっと、声を掛けるならもうちょっと普通に掛けてくださいな。コレ図書室からの借り物ですのよ?」


「そうか、ソレはすまん」



 そんなコトを考えていたらテレポートホークが自分の読んでいた本の上に降りてきたので、本を閉じる動きをしてテレポートホークが留まれないようにする。

 流石に急過ぎる角度は無理なのか、思惑通りテレポートホークは隣に移動してくれた。



「で、ナニか用事ですの?」


「ああ、マーヤには世話になっているからな。ナニか礼をしようと思ったのだが……マーヤはどの魔物の血液が好みか知っているか?」


「……まずナンでその思考になったんですの?」


「好きな相手にはオスが食事を運ぶものだろう?」


「ああ、成る程……」



 そういえばタカの生態ではそういう求愛行動があると読んだコトがある気がする。



「だがマーヤの好みが人血というコトもあるから、その時は血を分けてくれるか?」


「普通にイヤですわよ。というかナンでそんな発想になったんですの?」


「人間に害を為したら害魔になってしまうだろう。だが相手の望むエサを確保するのもオスの甲斐性だからな」


「ああそう……」



 ソレでそれなりに交友のある自分に血を提供してくれとなったワケか。

 しかし正確には自分は混血なので人間の血とはまた違うのだが、まあ人血として提供されている血液の殆どは混血の血液なので、まあ間違いでも無いだろう。


 ……ただ大前提として、マーヤからすると血液って高カロリー食なんですのよね。



「一応言っときますけど、彼女は血の匂いに惹かれこそしますけど食欲よりも心配が勝るくらいに優しい子ですから、魔物を狩ってプレゼントしても困るだけだと思いますわ」


「そうなのか!?ううむ……困ったな」



 テレポートホークは本気で困ったように首を傾げた。



「……まあ、彼女の場合は果汁が七割主食みたいな感じですから、果実でもとってきてプレゼントすれば良いと思いますけれど」


「だが血液を飲んでいる時の方が愛らしい笑みを浮かべているぞ?」


「そりゃ本人からすると血液の方が美味しいらしいですし、笑顔にもなりますわよ。ただ血液は高カロリーなので体重増加が怖いと言ってましたし、果汁の方が純粋に喜んでもらえると思いますわ」



 そう、マーヤに血液をプレゼントというのは正解のようで微妙に外れだ。

 ソレはお菓子が好きだがダイエットしているという子にお菓子をプレゼントするようなモノ。

 めちゃくちゃ嬉しいし好みド真ん中だけどソレはソレとしてこっちの事情的には複雑ででも確かに好きなヤツ……と内心凄く荒ぶる結果になってしまう。


 ……異世界のわたくしも、そういうのを体験したコトがあるようですしね。


 ただ異世界の自分の場合はお菓子ではなく、アニメ好きなのを知った知り合いがくれたアニメグッズが絶妙に知らない作品で反応に困ったという感じらしいが。

 ちなみに知っているジャンルでも好きじゃないキャラや苦手なキャラの時は本気で困るらしいが、正直よくわからない。


 ……こういう時だけ主張するんですのよね、異世界のわたくし……。



「カロリーか……そんなにも気にするモノか?」


「乙女にとってのカロリーは倒しても倒しても復活してくる魔王みたいなレベルで嫌悪し、かつ倒さなければならない対象ですわ」


「そ、ソコまでか……」



 テレポートホークは怯えたように一歩引いたが、コレが事実である。



「だが別に空を飛ぶワケでは無いのだから、太るコトで脂肪を蓄えるのは良いコトじゃないか?俺はそっちの方が俺の甲斐性があるんだと嬉しくなるが」


「相手は人間なんだから、人間の価値観ですのよ?ソコ考えなさいな」


「ふむ、確かに」



 動物的感性と人間的感性は違うのだ。

 もっともマーヤは人間枠ではあるが生粋の人間では無く混血なのだが、まあ感性は人間寄りなので人間で良いだろう。

 混血も人間扱いされているし。



「ま、そもそもその辺に関してはキチンとパートナーになってからですわね。求愛行動、頑張りなさいな」


「ああ、そうする。ではな」


「その前に」


「?」



 飛び去ろうとするテレポートホークを止め、伝える。



「マーヤは柑橘系は得意じゃありませんわ。で、好みはベリー系ですの。なので渡すならベリー系をオススメしますわ」


「……ああ、そうしよう。感謝する」



 そう言い、今度こそテレポートホークは飛び去った。

 マーヤとテレポートホークはまだパートナーにはなっていないらしいが、この調子ならパートナーになるのもすぐだろう。

 まったく、独り身とは寂しいものだ。




マーヤ

蚊タイプの魔物との混血であり、主食は果汁と人血で固形物は飲食出来ない。

自制心強めなのでドカ食いならぬガブ飲みはしない。


テレポートホーク

レアなカラーなので狙われていたがマーヤによって保護された。

思考が大分野生だが狂人よりもずっとまともなので、魔物の血よりも果汁の方が良いと言われたら素直に果実をプレゼントするようになる。


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