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ヒトと魔物のキューピッド  作者:
二年生
53/300

母と戦闘系天使



 彼女の話をしよう。

 自分の母であり、優しくて、急に雑な返しをしたりする。

 これは、そんな彼女の物語。





 今回の長期休暇は母の手により、久々に家族全員が揃った。

 王都で顔を合わせるコトはあったものの、こうして実家で顔を合わせたのはとても久しぶりな気がする。


 ……特にお姉様、帰って来ませんものね。


 そんな姉は今回も手紙を無視して旅行に行こうとしていたらしいが、母が派遣していたアルムデナによって連行されてきた。

 毎回旅行先で事件に巻き込まれながらよく行くなとは思っていたが、今回に関しては無視して旅行に行こうとした姉に非がある為、飛んで逃げようとする姉とそんな姉を捕まえようとするアルムデナによって発生したちょっとしたバトルには手を貸さなかった。


 ……というか、手を貸してと言われてもどう貸せば良いのやら、って感じでしたしね。


 護衛でもある為強いアルムデナと、旅行先での事件で巻き込まれて実戦で色々学んでいる姉のバトルにどう入れと?としか返せない。

 こちらはあくまで対悪に特化した戦闘しか出来ないので、そういうのには適応していないのだ。



「うふふ」


「ご機嫌ですわね、お母様」


「当然ですわ」



 母と娘によるティータイムの準備を自らしながら、母はクセの強いウェーブ封じの為にと下の方で二つに結った紫の髪を揺らしてクスクスと微笑む。



「ジョゼとは年に四回会えるとはいえ、やはり寂しいものですから。サミュエルは学園を卒業して兵士になったら中々長期間帰って来れませんし」


「お姉様は?」


「アリエルは入学したばかりの頃から滅多に帰らなくなりましたわね……」



 母は疲れたようにそう言って溜め息を吐いた。

 実年齢に比べて若い見た目だというのに、その折角の見た目に反して疲れが篭もった溜め息だった。


 ……いえ、現在のアンノウンワールドのヒトは性行為による出産をしないので、異世界である地球に比べれば大体のヒトが若い見た目ですけれどね。


 異世界の自分の知識曰く、知り合いの子沢山な母親は大分やつれていたらしいので、やはり性行為による出産というのは相当にリスクが高いのだろう。

 保健体育でもソレがどれだけ大変か、そしてどれだけリスクが高いかを教わっている為、性行為による出産をした女性はどうしても害魔の群れを素手で倒したヒトに向けるような目で見てしまう。


 ……現代の価値観からすると、国を救った英雄に等しい所業ですものね。



「でも、ジョゼが五年生になる頃にはオーレリアンも入学でしょう?卒業後のアリエルが我が家に顔を出すハズが無いという確信もあるので、今の内に全員で集まりたくって」



 信頼レベルで卒業後は帰ってくるハズが無いと思われている姉が凄い。

 ナニが凄いかと言えば、自分もソレに十割賛成なのが凄い。



「ちなみにお母様、今の言葉には卒業したらお姉様を確保するのが困難だ、という意味で合ってます?」


「合ってますわ」



 ……やっぱそういう意味ですのねー……。


 姉は旅行好きなので、卒業後はドコに居るかを特定するのすら困難になるだろう。

 だからこそ、まだ学生として学園に留まっている内を狙ったのか。



「ジョゼ」


「ハイ?」



 母はテーブルに紅茶とスイーツを置きながら、楽しげに微笑む。



「もし良かったら、色々と聞かせてくださいな。学園での生活のコトとか、友人とか」



 ふふ、と母はとても楽しげに笑みを深めた。



「ふふ、娘とこういう話をするの、夢だったんですのよね」


「お姉様は?」


「あの子は全然帰って来ませんし、今は強制連行にふてくされて部屋に篭もってますもの」



 逃亡せずに部屋に篭もっているだけあの姉にしては大人しいと思ってしまうのは、慣れだろうか。





 こうしてしっかりと話す機会も無かったので、話し始めるとついつい気分が弾んでしまう。

 母が楽しそうに聞いてくれているのがわかる為、尚のコト。



「ソレでですね?ララはギャンブルファイアフライが発生させたキッカケで歌手になって、今とっても頑張ってるんですの!」


「ああ、その子なら聞いたコトありますわ。結構人気が高いみたいで、時々耳にしますもの」


「そうなんです!ただ、ちょっとオーバーワークしがちなのが心配なんですのよね。その辺りはそばに居るギャンブルファイアフライが休ませたりしているみたいなので、前よりは安心出来るんですけれど」


「良いコトですわね」


「ええ!あ、あとよく保険室に目の診断の為にって第一保険室に行くんですけれど、カルラ第一保険医がよくお茶菓子を出してくれるんですのよ!」


「あら、良いですわね。わたくしが学生の時は貰えませんでしたわ」


「そうなんですの?ああ、保険医が違いますものね。ただカルラ第一保険医が出してくれるお茶菓子って、基本的にアドヴィッグ保険医助手が隠してるお茶菓子なんですけれど」


「ソレ、わかって食べてるんですの?」


「アドヴィッグ保険医助手も諦めてるみたいですし、折角食べれるのなら、と」


「まあ確かに、出されたなら食べるのが礼儀ですわよね。ソレがヒトのモノであれ」



 うんうん、と母は頷く。



「……ソレにしても、とってもエンジョイしてるんですのね」


「うーん、自分だとよくわかりませんわね。エンジョイしてる感じでした?」


「ええ、とっても」



 微笑ましいと前面に出ている微笑みを浮かべながら、母は紅茶を口にした。



「ただ……お友達が多いのは良いコトですが、プレゼントのし過ぎや頼られ過ぎはいけませんわよ?彼……お父様もよく町のヒトの手伝いをして稼いだお金でプレゼントをしてくれましたけれど、下手したらわたくしが駄目女になるレベルでしたわ」


「……ソレ、わたくしが駄目人間を製造しかねないって意味で言ってますわよね?」


「言ってますわ」



 ……サラリと笑顔で言いますわねー。



「……一応、プレゼントは頑張っている友人にだけあげるようには頑張ってますわ。頼られるのに関しては出来るだけ断ろうとはしていますけれど……」



 色々と思い出し、思わずハァと溜め息が出る。



「……いまいち断れないんですのよね」


「ふふ、彼にソックリですわね、ジョゼ」


「親子ですもの」



 しかし誕生の館で作られる子は親の良い部分をピックアップした感じで生まれるハズなのだが、何故そんな欠点が似てしまったのだろうか。

 いや、兄弟にもソレが大なり小なりあるコトを考えると、ソレは天使の美点、とされているのかもしれないが。



「あ、そういえばあのヒトは現役ですの?」


「あのヒト?」


「過去視の魔眼で、不死身で、わたくしが学生だった頃は歴史の教師をしていたモイセスという名の」


「ああ、そのヒトならまだ歴史教師やってますわ」


「そうなんですの?流石不死身」



 母は目を一瞬パチクリさせてから、ふふ、と微笑んだ。



「でもあのヒト、死んで復活する度に見た目の年齢が変わるでしょう?戻る時に調整するのが面倒だから、って。今も死んで幼い姿で復活した時、ズボンの裾とか引き摺ってたりしますの?」


「当時はそうだったんですの?今はシャルル制服作成者が居ますから、彼女が作った服着てますわ。ロールアップシャツのように袖や裾に留め具が付いてるので、子供の姿になったらソレ使ってますのよ」


「あら、そういえばわたくしが通っていた時は制服もありませんでしたわね。成る程、教員の服も……ちなみにソレ、ズボンずり落ちたりしませんの?」


「ベルトがありますもの。子供になった時用に目が多めになってるんですのよ」


「成る程、時代ですわね。歳を取ったのを感じますわ」



 少し苦笑し、母はお茶菓子であるラズベリーパイの最後の一口をパクリと食べた。



「……ソレにしても、ジョゼはお友達のパートナー成立率、高いんですのね」


「ただの偶然のハズ、ですわ、よ……?」


「自分でも否定し切れてないじゃありませんの。シワ、出来てますわよ」



 クスクスと笑った母が手を伸ばし、向かいに座る自分の眉間に出来たシワを指で軽くグリグリと擦った。



「でも、良いコトですわね」


「え?ええ、確かに友人のハッピーな姿は良いコトですわ」



 もっとも、正直に言うとノロケは少し勘弁して欲しいのだが。

 そう思いながらの返答だったのだが、母は違うとでも言うような笑みを浮かべた。



「違いますわ」



 言うようなというか、普通に言われた。



「時々お友達の後押しとかをしてあげたのでしょう?ソレはとても良いコトですわ。そんな良いコトをしたんですから、きっとジョゼにも素敵なパートナーが見つかりますわよ」


「ソレなら嬉しいんですけれど……」



 しかし今のトコロ、パートナーの影もカタチも見当たらない。

 友人達を見ている感じだと運命を感じるかどうかっぽいので、出会って即プロポーズもワリと多いが、ソレはソレだ。



「ちなみに参考までに聞きたいんですけれど、お母様とお父様の出会いはいつ頃だったんですの?」


「学園を卒業した後に見合い話とかに辟易して別荘に避難してた頃ですわね」


「……つまり、在学中にパートナーが出来ない可能性もある、というコトですわよね、ソレ」


「うふふ、確かにまだパートナーが居ないと焦りますわよね」



 思わずテーブルに頭を預けると、母はクスクス笑って自分の頭をよしよしと撫でた。

 髪型が崩れないように配慮された、優しい撫で方だった。



「でも、いざ惚れた相手が居たら、そんなの気になりませんわ。パートナーになったら後はもう勝手に溢れてくる好きの気持ちで、思い出もいっぱいになりますし」


「……そういうモノですの?」


「そういうモノですわ」



 ……まあ、確かにまだ二年生ですものね、わたくし。


 周囲のパートナー率の高さに焦ってしまったが、まだまだ先の長い話だった。

 そう思ってだらしのない体勢から戻り、ふと思う。



「そういえば、お母様とお父様の馴れ初めってどんな感じだったんですの?」


「あら、話したコトありませんでした?」


「多分、詳しい話は聞いたコトありませんわね」



 そう返すと、母は恋バナにはしゃぐ少女のように、楽しげに笑みを深くした。



「うふふ、ソレなら折角だしお話しましょうか。アレは……」



 母が話し始めたタイミングで、部屋の扉が開いた。

 ここは母と父の自室なので、ノックも無しに開けるのは一人だけ。



「ただいま帰ったよ、ナタリー!おや、ジョゼも居たのか。ただいま、ジョゼ。二人でティータイムかい?」



 父は母の頬にキスをしてから自分の頬にもキスを落とし、テーブルの上を見てそう言った。

 相変わらず羨ましいくらいにサラサラの長い銀髪と、ソレをより美しく魅せる輝く光輪、そして動く度に背中の翼からヒラヒラと舞う白い羽が美しい。


 ……異世界の自分的にはイケメンだけどゲームのアバターキャラなら動作が重くなりそうだ、という感じみたいですけれどね。


 まあ異世界である地球基準でもやはり父の顔は良いっぽいので問題は無い。

 ちなみにナタリーというのは母の名前である。

 もっとも自分はお母様と呼ぶし、使用人達は奥様と呼ぶので、名前で呼ぶのは父くらいしか居ないが。



「もしかして邪魔だったかな?」


「ふふ、まさか。アナタが邪魔だなんてコトはありませんわ」



 心配そうに眉を下げて首を傾げた父に微笑みながら、母は言う。



「今からわたくし達の馴れ初めを語るトコロでしたから、ナイスなタイミングでしたわよ」



 確かにそう考えると、コレ以上無いくらいにナイスタイミングな登場だ。





 母が新しく淹れた紅茶を飲みながら話を聞き、自分ソックリの目を細めて父は頷く。



「成る程、ソレで馴れ初めか。うん、僕は構わないよ」



 言ってから、父は憂うような目で視線を逸らした。



「……ちょっと恥ずかしいけどね」


「負けたワケでは無いのですから、恥ずかしがる必要は無いと思いますわよ?」


「どういうコトですの?」



 聞くと、父は恥ずかしそうに頬を掻いた。



「ううん……まず、ナタリーとの出会いは別荘でってコトは知ってるだろう?」


「ええ」


「どういう出会いだったかは?」


「ソコで出会った、としか聞いてませんわ」


「うーん……」



 父は言いにくそうに唸ってから、諦めたように口を開いた。



「僕が戦闘系天使……つまりは神の命令によって悪を滅するタイプの、戦う天使ってコトは知ってるよね」


「ええ、戦闘に関する部分が多めに遺伝してますし」


「うん……だからわかると思うけど、要するに悪と戦ってたんだよ、当時の僕は。そしてちょっと手強い悪と戦って、辛くも勝ちはしたけど満身創痍で行き倒れてた」


「あらまあ」



 成る程、ソレで恥ずかしがっていたのか。



「ソコで通りがかったナタリーが助けてくれてね、治るまで看病をしてくれたんだ」


「わたくしもいつまで別荘に隠れていれば良いのかわからなくて、しかも隠れる用だから人里離れた場所で、出来るコトが散歩くらいしかありませんでしたもの。なので見つけた時は驚きましたけれど、看病に夢中になれたのでこちらとしても良かったですわ」



 母が微笑み、父は照れた。



「で、ええと……続きだけど、完全に治るまで看病してくれたお礼にナニかをしようと思ってね。基本的に悪を見かけたら自動でスイッチが入って結果仕事になるだけで、普段は相当な悪が居ない限りは神からの催促も来ないから、ボディーガードをするって申し出たんだ」



 知ってはいたが、やはり悪に対してのあのスイッチは戦闘系天使の性質なのか。

 そう思っていると、母が懐かしげに微笑みながら言う。



「ふふ、懐かしいですわね……アナタったらあの時、「礼として出来るコトは少ないが、良ければボディーガードとしてそばに置いてはもらえないかい?悪が相手ならば役に立てるし、君は善いヒトだ。悪を滅して善を助けるのは僕の役目で、つまり、もしよければ、の話だけど」って」


「ナンでそんな詳しく覚えているんだい!?」


「あら、大事な思い出ですもの。当然このくらいは覚えてますわ」



 ふふふと笑う母に、父は顔を赤くした。

 恥ずかしいのか、その顔を手で覆って隠そうとしている。



「ソレで、わたくしが別荘に隠れていた原因である嫌なお見合いや変なストーカーを「いけないな」って言って軽く捻ってくれて、とっても格好良かったんですのよ」


「……うん、まあ、うん……」



 父は赤かった顔をスンッと元の顔色に戻し、遠い目で言う。



「……ただちょっと、相手が悪だったせいでうっかりやり過ぎて、普通の縁談すら来なくなってね。超怖いボディーガードが居る、みたいな感じで」


「ソレを凄く申し訳無さそうに謝る姿がまた母性をくすぐるんですのよ!直前までバーサーカーのような、寧ろ戦争機械のような雰囲気だったのに!」



 母は赤くなった頬を両手で押さえながら、ノッてきたのかテンション高めにそう言った。



「そのギャップにもキュンキュンして、思わず「わたくしはアナタが良いですわ」とプロポーズしたんですのよね」


「最初は断ったんだけどね」


「断ったんですの!?」


「正確には「僕は天使だから、ヒトとパートナーになれるかがわからない」という返答でしたわね」



 驚いて声を上げたら、ソッコで母から補足が来た。



「……天使だから、というのは?」


「天使は神の使いで、神に作られたモノだからね。所有者が神なんだ。つまり上の許可が要る」


「あー」


「あと天使がヒトと結ばれると堕天するんじゃないだろうかっていう不安とかもあった」


「?」



 どういうコトだろうかと首を傾げると、父は察したように口を開く。



「天使が神に背いて離反したりすると、堕天使という種族に変化するんだ。けれど僕達……特に天使はエネルギー体であって物理的な肉体を有してはいないからね」



 ソレは時々聞くのでよく知っている。

 現在も父の背にある真っ白い翼からヒラヒラと舞っている羽は、一定時間が経過すると空気に溶けるように消えている。

 タイプとしては、魔力の残留が花に見えるアルセーヌに近いのだろう。



「だから種族が変化すると、ソレに引っ張られて思考や感性に変化が出やすい」


「ああ、成る程」



 青髭がモデルになっている為に情緒が不安定なバルブブルーのようなモノか。

 他にもストーンスタチューも元は悪魔だったらしいが、現在はストーンスタチューという種族になっているお陰か悪要素は皆無と言って差し支え無い状態になっている。


 ……確かにこうして色々思い返すと、納得しますわね。



「……つまり、お母様のパートナーになる為に堕天すれば、お母様が好きになってくれたお父様じゃ無くなる、またはお父様の中からお母様への想いが消えるという可能性があったワケですのね?」


「そういうコト」



 ……自分と違う存在になるというコトは、そういうコトですものね。


 前世に分類されるだろう異世界の自分と、今世に分類されるだろう今の自分では別人でしかないようなモノだろう。

 同一人物だったとしても、イコールで同じというワケでは無い。



「そういう意味もあって駆け落ちで堕天をする気は無かったから、神に直談判してきたんだ」



 駆け落ちは堕天なのかとか神に直談判とか父の直属の神とは一体誰なのかとか色々聞きたいコトはあったが、別に必要性が高いワケでは無いので口を噤む。

 そもそもアンノウンワールドは多神系なのでいざ直属の上司である神の名前を言われてもわからない可能性が高い。



「で、許可を貰った」


「あっさりですわね!?」


「うん、アレは僕もビックリしたよ」



 思い出しているのか、父は遠い目で乾いた笑みを浮かべている。



「神曰く、天使は沢山居るから別にそのくらいは良いんだって。ただ肉体を持っていないから、うん、えっと、途中飛ばすけどまあ結果だけ言うと誕生の館があるからヒトと家庭を持っても問題無いって」


「途中が気になるんですけれど」



 大胆に飛ばしすぎている。

 すると、母が微笑みながら教えてくれた。



「うふふ、要するにですね?肉体を持っていないから子作りの為に性行為をすると天使じゃ無くなる可能性がある、という危険性があったんですのよ」


「超危険じゃありませんのソレ!?」


「ですわよね。ただ既に授業で知っていると思うのでダイレクトに言いますけれど、性行為での子作りは女の穴に男の棒をINして女の卵に男の種を植えるワケでしょう?」


「ですわね」



 異世界である地球基準で言うと相当アレな感じかもしれないが、こちらではそういう教育はキチンとされている。

 というか変に隠し立てすると興味を持ってしまい、わからないまま危険な行為を実行してしまうからこそ、最初から全てを学ばせてどれだけのリスクがあるかを周知されているのだが。



「で、お父様の場合は天使だから、男の種の部分も要するにお父様のエネルギーの一部として繋がってるワケですの。

そうすると絶頂してエネルギー的に影響を受けやすい状態の中、女の卵に接触して受精云々になる為、下手するとエネルギー部分が変質して天使という種族からも変化してしまう可能性がある、というコトなんですのよ。

というか最悪天使という存在としては消滅してエネルギー的にそのまま女の卵の中にINして子供として生まれる可能性すらあるといいますか……」


「ああ、だから昔の本ではヒトと夫婦になった天使が堕天使という扱いになっていたりするんですのね」


「………………確かに、説明ならわかりやすく言うのが大事だと思うけど、ね……?」



 母の説明に頷いていたら、父は耳まで真っ赤にして俯いていた。

 その顔は手で覆われていて見えないようにされているが、自分の目からすると普通にその真っ赤な顔が()えている。

 だがわざわざソコを指摘して刺激する必要性も無いので、言わないでおこう。


 ……こういうのを武士の情けと言うのでしたっけ?



「まあ、うん、そういうワケでね」



 どうにか復活したのか父は軽く頭を振り、話を再開した。



「姿を保てないとか種族が変化とかの危険性があるとは言われたけど、現代には誕生の館があるだろう?そして僕は天使だから元々性欲は無いに等しいし、ナタリーもそういうのとは遠い世代だからね。特に問題らしい問題も起こらず、こうしてジョゼを含んだ四人の子供に恵まれたワケさ」


「その頃にはパートナーである魔物と子供を作るヒトも増えて、混血も普通になり始めてたんですのよね。なので領地のヒト達にも普通に受け入れられて、万々歳ですわ」



 母のその言葉の後に、紅茶を一口飲んだ父が多少照れの残った、しかし優しい笑みを浮かべながら言う。



「まあ、僕達の馴れ初めはこんな感じかな。途中、アソコまで語るとは思わなかったけど」


「濃厚な内容でしたわ」



 コレは腰を据えて話すぞ!という時じゃないと聞けないだろうレベルで濃厚だった。

 主に天使の生態と性行為に関する部分が。





 コレはその後の話になるが、父と母は毎日ラブラブだ。



「そういえば昔、お父様の帰りが遅い時なんか、お母様はお父様が帰ってくるまで起きて待ってましたわよね」



 母と二人きりでぼんやりしていたら、何となくソレを思い出した。



「あら、ソレは今もですけれど……昔トイレに起きて間違えてわたくしの部屋に来た時のコトですの?」


「ソレは正直覚えてませんわ」


「……ああ、ジョゼは目が良いから、ですわね。ソレで()えたんですの?」


「ええ」


「成る程」



 寝る前や寝惚けて起きた時などにこの目で透視して()たのだろうと納得したのか、母はニコニコした笑みを浮かべた。



「……というか、今もなんですの?」


「ええ、だってわたくし、彼の翼に包まれてないと眠れませんもの」



 今、母から物凄いノロケを聞いた気がする。



「ソレがわかっているからこそ彼も早めに帰ってこようとしてくれますし、問題はありませんわ」


「そりゃ問題は無いと思いますけれど……」



 一泊以上ドコかへ行く時は必ず一緒に行く二人なのでソレに関しての心配はまったくしていない。



「……うふふ、ジョゼもパートナーが出来たらわかりますわ」



 そう言って微笑んだ母に、軽く頭を撫でられる。

 髪型を崩さないようにという気遣いが感じられる、優しい撫で方だ。



「大好きな相手の気配と、大好きな相手の香りと、大好きな相手の体温と、大好きな相手の感触と、大好きな相手に包まれているというのは……とってもとっても、素晴らしいモノですもの。きっとジョゼも虜になりますわよ?」


「……そうですわね」



 微笑む母の目に疑いなど微塵も無く、思わずこちらも笑みが零れる。



「そんな素敵なパートナーに、早く出会いたいですわ」


「うふふ」



 母の微笑む声を聞きながら目を伏せ、今は母の手によって撫でられる感覚を満喫するコトにした。




ナタリー

ほんわかした雰囲気だが押しは強いし結構あけすけにモノを言うタイプ。

夫が大好きだというオーラを全身から放ってるレベルで夫大好き。


戦闘系天使

キリッとした雰囲気だが悪以外に対しては優しいし押しに弱いし気遣うタイプ。

どうしても本能的にヒト助けをしてしまうが、最優先は妻と子供達。


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