偶然少年とストーンウッド
彼の話をしよう。
騎士の家系で、鍛えていて、偶然良いコトが起きやすい。
これは、そんな彼の物語。
・
ベルント語学教師に新しく出た本の翻訳を頼まれ、分厚いその本を持って自室までの移動中、声を掛けられた。
「ジョゼフィーヌ、少し聞きたいコトが……あっ、今は忙しかったかな」
「あら、ビトじゃありませんの」
こちらの手の中を見て、ビトは気まずそうに血のように暗い赤色の髪をワシワシと掻いている。
「別にソッコでやれとは言われてませんから、構いませんわ。どうしましたの?」
「この子、なんだけど」
そう言ってビトは片手で抱えていた植木鉢を見せた。
どうやら観葉植物のようだが、まだ幼い苗のようだ。
ソコでふと違和感を覚え、よくよく目を凝らして視てみる。
「……魔物ですわね」
よく視てみると、ソレは魔物だった。
「うん、ストーンウッド」
「ああ、成る程。通りで見覚えがあると」
ストーンウッドは植物系の魔物であり、観葉植物でもある。
その名の通り石を実として生らす植物なのだが、その石の中の果汁はちょっとした軟膏代わりになるので人気は高い。
そして植物系の魔物の中でも大人しい個体が多く、植物系魔物を取り扱う花屋で売られているコトも多い。
実際自分がストーンウッドに見覚えがあったのも、実家の方にある花屋で見たコトがあったからだ。
……まあ、観葉植物が魔物化して生まれた魔物ですものね。
だからなのか、ストーンウッドはヒトの手が無くては育つコトが出来ない。
まあ育てて貰う為の策なのか実から採れる果汁はヒトの役に立つので、絶滅が危惧されていたりはしない。
……果汁にもランダム性があって、軟膏から熱冷ましまで結構幅ありますのよね。
「ちょっと用事があってケイト先生の温室に行ったら、貰い物だけど植物系魔物は酒木しか取り扱ってないからって渡されたんだ」
「わあ」
ソレはたらい回しと言うんじゃないかと一瞬思ったが、言わないでおく。
「……あの方、結構ポンポン誰かにプレゼントしますわよね」
「うん、特に魔物系。研究対象じゃないからって言ってよく誰かに渡してるのを見るよね」
ふふふ、と二人で笑い合う。
「ソレで、わたくしに話しかけた理由は……ストーンウッドの育て方辺り、ですの?」
「うん」
ビトは笑みを浮かべながら頷いた。
「それとストーンウッドについての知識も欲しいなって」
「ああ、授業で出ましたけど、簡単な説明だけでしたものね」
例えるなら色んな犬種の写真を見せて、その犬種達の名前を覚える、というような感じだった。
まだ一年なのでまず種類を覚えた方が良いのはわかるが、いざ育てるとなるとしっかりとした知識が欲しいと思ったのだろう。
……良いコトですわ。
犬を飼いたいと言っても世話の仕方や生態を知らないのでは許可出来るハズも無い。
ナンらかの偶然で犬猫が手に入っても、生態を知らなかったらチョコやタマネギなどのタブーをうっかり破ってしまい、命の危険に晒すかも知れないのだから。
だからこそ、偶然手に入ったとはいえ、キチンと理解した上で世話をしようとしているビトは良いヒトだ。
「最近は魔物の生態について詳しく書かれた本も読み始めたから、ストーンウッドの生態などにも答えられますわ。良ければ部屋でお話しますけれど」
「ああ、本か」
ついでに本を置きたいというのを敏感に察知したのか、ビトは頷いた。
「お願いしても良いかな?」
「ええ、モチロンですわ!ただし初心者向けの情報しか知りませんので、キチンと世話をする気なら本屋で本格的な本を買った方が良いと思いますけれど……確かビトは実家通いでしたわよね?」
ビトの家は代々騎士になる家系らしい。
騎士は兵士とは少し違い、地球で言うなら騎士は自衛官、兵士は警察。
まあつまり、家が王都にあるというコトなのだが。
こちらの意図を理解したのか、ビトは頷く。
「うん、じゃあ帰りにでも本屋に寄って探そうかな」
「ソレが良いと思いますわ」
百聞よりも一見した方が情報の確実性が高いコトは多い。
・
その後、ビトは毎日ストーンウッドの世話をするようになった。
出来るだけヒトの近くの方が成長を促すからと、学園にも毎日連れてくるくらいにはしっかりとお世話をしている。
そして苗だった為まだ会話も出来ない程幼かったストーンウッドは無事実を付け、会話が出来るくらいに大きくなった。
「ホント、植物系魔物の成長って早いですわよね」
「そうでしょうか……?」
そう蔦をくねらせて答えたのは、ストーンウッドだ。
「私はそこまで早くも無いと思いますよ?ホラ、私の場合は種から苗になるまでが長いので……」
「ああ、ストーンウッドだと確かにソコが少々長いんでしたわね」
ストーンウッドの実は外側が石、内側が果汁となっており、中々種を残さない。
まあストーンウッド自身が残そうとすれば種となる実が生るのだが、石であるコトには変わりないので芽吹くまでが長いのだ。
……そう考えると、ケイト植物教師はよくそんな苗を貰えましたわね。
花屋で買うなら結構なお値段でもあるのがストーンウッドだ。
ソレをポンと生徒にあげる辺り、本当にあのヒトは研究者タイプなんだなと実感する。
そんな風に会話をしていると、少し席を外していたビトが談話室へと戻って来た。
「待たせてしまってすまない、ストーンウッド。そしてジョゼフィーヌ、彼女の話し相手をしてくれてありがとう」
「いいえ、構いませんわ。可愛らしい子とお話するのは好きですもの」
「はわわ……そ、そんな、可愛らしいだなんて……」
照れたように蔦をくねらすストーンウッドに、ビトはニッコリと笑みを浮かべてストーンウッドをよしよしと撫でた。
「ストーンウッドは可愛らしいよ」
「はうう……」
……見せつけますわねー。
まだパートナーでは無いっぽいが、カンからするとあともう一歩くらいでパートナーだろうなという感じだ。
察しが良くて思ったコトは賛辞含めてハッキリ言うビトと、控えめな性格をしているストーンウッド。
相性としてはかなり良いだろう。
独り身としてはクるものがあるが、しかし同時に微笑ましくあるので、思わずこちらも笑みが漏れてしまう。
「ふふ、それにこんな素敵な実を生らせる珍しいストーンウッドを一鉢で置いておけませんもの」
そう、ストーンウッドが生らしている実は紫色に輝く宝石だ。
本来ストーンウッドが生らすのは石であり、つまりかなりレアなパターンではあるが、個体によっては宝石を生らすコトもある。
流石というかナンというか、ビトはくじ引きでは必ず当たりを出す男だ。
当たるのが何等かはランダムとはいえ、引きが強い。
ちなみに宝石が生った場合、その中から出る果汁は酷い火傷痕を治せる軟膏だったり、重病でも治療するコトが出来る薬だったりする。
……その上、宝石のレア度によって中身の効能の凄さも変化するんですのよね。
宝石の実を生らすストーンウッドはそれなりに存在しており、研究結果もそれなりにあるのだ。
そしてわかっているコトは、宝石を生らすのはレアであり、宝石自体の珍しさによってまた中身の効能も変化する、というコト。
中身を取り出して空になった実も実と言えるだけの量があるので、レアなストーンウッドは狙われるコトがある。
……ただ宝石というだけなら狙われもしないでしょうが、レアな宝石だと……。
だからこそ、彼女を一鉢で放置するわけには行かないのだ。
生徒達にそんな不届き者が居るとは思えないが、ビトの身内を騙った盗人に騙された生徒が一鉢で居るストーンウッドを引き渡すというコトはあるかもしれない。
そういうコトが無いよう、彼女は出来るだけ知り合いが近くに居るべきだと自分は思う。
「確かにね」
自分の言葉にビトはうんうんと頷き、ストーンウッドに生っているゴルフボールのように球状かつ少しデコボコした紫色の実を指で撫でる。
「通学の時も、凄い視線を感じるし」
「……私、あの視線、あまり好きじゃありません……」
「そうだね、私もだ。こんなにも可愛いストーンウッドだというのに、ただの宝石を見るかのような目……ソレも盗賊が宝石店の宝石を見るような視線なんだから」
「ん?」
……え、通学の時?
「あの、ビト?ちょっとお聞きしたいんですけれど……」
「うん、ナンだい?」
「えーと……宝石を生らすストーンウッドがレアなのは知ってますわよね?」
「モチロン。実を生らしたストーンウッドをケイト先生に見せたらそう教えてくれたよ」
「ですわよね」
魔物は研究範囲外とはいえ、そのくらいの知識は当然あるだろう。
そして注意をするくらいにはまともな思考回路もあるハズだ。
「なら当然危険を回避する為に、通学中などの移動の最中はちゃんとストーンウッドにヒトの目を逸らす魔法とか、ストーンウッドからは見えるけど外からは見えない魔道具の布とかを被せてるんですわよね?」
「してないよ?」
「ハイ……してませんね」
……あーーー……!
キョトンと首を傾げたビトと蔦でわかりませんというジェスチャーをしたストーンウッドに、思わず頭を抱えそうになる。
というか既に抱えている。
「え、そんなにマズかったかな」
「ですが、私はビトと一緒に居たいですし、共に授業を受けるのも楽しいので……出来れば学園には通いたいです」
「それにケイト先生もソコまで言わなかったし」
……ナンで言ってないんですのケイト植物教師……!
「あのですね、別にストーンウッドがビトと一緒に通学してるのは問題無いんですの。授業を受けるのも、魔物に関しては基本オールパスな学園なので授業の妨害さえしなければ好きにどうぞタイプですし」
パートナーが居る生徒も多いし、執着が強い魔物の場合は少し離れるだけで大変なコトになる場合も多い。
それにアドヴィッグ保険医助手とカラーパンサーのように、教師側にもパートナーと協力しているヒトは居る。
なのでソコは問題無いのだ。ソコは。
「……ストーンウッド、宝石を生らしてますわよね」
「ハイ」
「生ってるね」
「レア度の高い宝石だと悪人に狙われるという説明はされました?」
「されたけど……え?」
心底不思議そうに、ビトは言う。
「でもこの宝石、ソコまでのレア度じゃないから大丈夫だって言われたよ?」
「ハ!?誰が言ったんですのそんな適当な鑑定結果!」
「うわわわ」
「はわわ」
思わず詰め寄ると、ビトはストーンウッドを抱き締めて二歩分程椅子ごと下がった。
「……すみません、取り乱しましたわ。で、誰が?」
「え、えっと……」
カッとなったと反省して椅子に座り直すと、まだ多少戸惑いながらもビトは答える。
「ケイト先生が……紫なら多分アメジスト辺りだろうから狙われないだろう、良かったね……と」
「あーーーー……!」
……植物関係の知識は豊富でも、宝石関係がアレだったんですのねー!
確かに研究者は専門のコトに関しての知識しか無く、専門外についてはまったく知らないコトが多いが……ソコはレナーテ地学教師か、次に宝石に詳しいローザリンデ魔眼教師に確認を取っておいて欲しかった。
わからないヒトからすれば確かに紫の宝石イコールアメジストになるのかもしれないが、わかるヒトにはわかるモノだ。
例えば自分のように貴族出身で宝石を見る機会が多いヒトなら何人かは気付くだろうし、そうで無くても成分などを見抜ける魔眼を有していればすぐにわかる。
……というか、ある程度宝石の知識があったら喉から手がマジに出るレベルですわよ……。
カモがネギを背負っているどころか、カモがネギと他の具材持って鍋の準備して野菜切って最後に自分を出来るトコロまで処理して目の前でサヨナラするレベル。
いや、まだセーフのハズだ。多分。
まだギリギリ自分で自分の処理まではしていないレベル……の、ハズ、だと思いたい。
「……ストーンウッドの宝石、ソレ、バイオレットサファイアですのよ……」
「えーっと……」
宝石の本当の種類を聞いたビトは、困ったような笑みを浮かべた。
「ソレ、レアなヤツかい?」
「レアなヤツですわ」
その上、サイズが大きい。
「中の果汁部分があるので桃のように中心部がくり貫かれていますが、その分なのか宝石部分の密度も高いんですのよね……」
つまりカラット数が高い。
「果汁を取り出す為に割っても相当なサイズなのでお値段も高いでしょうし、もし中身入りのままとなるとこの密度と重さとサイズで……100カラットはあると思われるバイオレットサファイアに加えてかなりの効果があるだろう果汁、総合でヤベェ金額になると思いますわ」
「ヤベェ金額、になるのか……」
「なるのですか……」
ビトとストーンウッドはいまいちその辺の価値がわかっていないのか、ぼんやりした声でそう復唱した。
……いや、どんな宝石だろうとポケットにモンスターをINする為の例のボールサイズもあったら相当なお値段だと思いますわ。
つまりは野球ボールサイズに近い。
中身部分がくり貫かれ状態とはいえ、価格を付ければ相当な値段になるだろう。
「ううん……ソレだと通学が問題かな」
「あの視線、私の実を狙ったモノだったのですね……」
ストーンウッドは怯えたようにブルリ、と蔦を振るわせた。
「ですが、納得も出来てしまいます……」
「そうだね」
ビトは怯えるストーンウッドを撫でて落ち着かせつつ、さて、と言う。
「さて、どうしよう。ストーンウッドを留守番させた方が良いのかな」
「いえ、通学の様子を見られていたのなら家は把握されている可能性が高いですわ」
「私の家は騎士家系だけど、ジョゼフィーヌはソレでも狙うと思うかい?」
「金に目が眩んだヤツは馬鹿になりますわ」
「成る程」
自分の言葉に納得したのか、ビトは真顔で頷いた。
「ふむ……迎撃は可能だと思うけれど、下手に彼女を危険な目に遭わせたくはないからね。けれど通学が危険、家で留守番をさせるのも危険となると……いっそ寮に移るか」
「ええ、良いと思いますわ」
学園なら不審者は侵入不可能だ。
「あの、ですけど、外出時はどうしましょう……」
ポツリ、とストーンウッドが言う。
「私を連れていなくても、顔を把握されている可能性が……」
「ならもう今日帰る時に隠れる系魔法使わずに帰って、誘き出して迎撃して周囲にもよくわかるように捕まえてもらって、手を出されないようにするとか……」
結構な力押しの策だが、ソッコでケリを付けるならアリだろう。
「なら、ルーラントと翡翠ウサギに一緒に帰ってもらうのをオススメしますわ」
「どうして?」
ビトの問いに、自分はニッコリと笑みを浮かべる。
「ルーラント狙ってる悪人がルーラントと翡翠ウサギに迎撃されまくってるので、そういう輩達の中で手を出しちゃいけない枠に入る一歩手前らしいんですのよね」
コッソリ情報屋をやっている武器屋店主が教えてくれたので、確かな情報だ。
「だから彼らと一緒に動いて迎撃すれば、一緒に手を出しちゃ駄目枠に入れると思うんですのよね」
「逆に狙われたら?」
「情報屋もやってる武器屋店主が居るんですけれど、ホラあのバンダナ頭に付けてる店主。情報屋やってるので情報操作もしてくれるらしいですわ、お金次第で」
「あ、じゃあ……!」
気付いたようにストーンウッドが嬉しそうな声を上げる。
「私の実を渡せば……!」
「ええ、手を出しちゃ駄目枠だという情報を広めてくれるハズですわ。あの方、情報屋は情報の真偽はともかく、情報屋自身は信頼が第一だからと言っていたので裏切る心配はありませんし」
というかあのヒトは結構子供に甘いトコロがあるし、この学園の生徒や卒業生に対してはお得意様も多いからと言って特に甘い。
対価があろうが無かろうが、子供達の安全に関わるとなれば情報を使って守ってくれるコトだろう。
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コレはその後の話になるが、ビトとストーンウッドは結局武器屋店主のトコロへと行って情報操作を頼んだらしい。
体術特化のルーラントに戦闘力高い翡翠ウサギ、そして騎士家系として英才教育を受けているビトなので迎撃自体は問題無く出来たらしいのだが、確実性の高い安心を買いたかった、とのコトだ。
……まあ、金で安心が買えるなら買いますわよね。
だが武器屋店主は思った通りというか、無償で情報操作をしてくれたらしい。
ビト曰く、あと一歩くらいなら片手間で余裕だから、と言っていたとか。
ちなみに問題こそ解決したが、安全なのは事実だしとビトは親に事情を話し寮に入った。
騎士家系の家も安全だろうが、学園内にある寮の方が安全率は高いので、良い判断だと思う。
「あの……」
実の中の果汁を適正価格で保険室に提供し終わった後、ストーンウッドが小さく声を上げた。
「ナンだ?」
提供された果汁を入れた入れ物にラベルを貼りながら、カルラ第一保険医はそう返した。
ストーンウッドは生り過ぎた実をそのままにしておくと不調になる為、定期的に実を取る必要がある。
しかしその辺に放置するワケにもいかないから、と色々交渉があり、その実は保険室に提供されるコトになったのだ。
「ああ、ビトなら帰ってくるまでもう少し掛かると思うぞ」
「レナーテのトコまで果汁抜き終わった実ぃ届けに行ったからな!」
「い、いえ、そうではなく……」
オロオロした動きを蔦でしつつ、ストーンウッドは言う。
「その、ジョゼ様の助言を実行したお陰で変な視線は殆ど無くなったのですけれど……」
「けれど?」
カルラ第一保険医が出してくれたお茶とお茶菓子を楽しみつつ、自分はストーンウッドに続きを促す。
頼まれていた古い本の翻訳が終わったから渡しに来たものの、アドヴィッグ保険医助手が丁度出ていた為、自分はこうして定期診断でも無いのに保険室でアドヴィッグ保険医助手を待っているのだ。
ちなみにお茶菓子の箱には思いっきりアドヴィッグと書かれていたが、折角カルラ第一保険医が出してくれたのでという言い訳でありがたくいただいている。
「……まだ微妙に浸透していないのか、下っ端、というのでしょうか。あまり強くないヒトが時々襲ってくるのです。ビト自身強いので余裕で迎撃が可能なのですが、私を抱えているせいで掠り傷を負うコトも多くて……」
だから、とストーンウッドは続ける。
「だから、その、代金もありがたいのですけれど、怪我に効くような軟膏をいただけないでしょうか、と……」
「ナンだ、そんなコトか。別に構わんぞ」
そう言ってカルラ第一保険医は椅子から立ち上がり、棚から取り出した軟膏入りの入れ物をストーンウッドの鉢植えの上に置いた。
「お前達のお陰で色々なトコロに恩を売れているし、コネも増えたからな。そのくらいはオマケとしてくれてやる」
「あ、ありがとうございます……!」
「ああ、だから」
カルラ第一保険医はニッコリと裏がありそうな笑みを浮かべた。
「コレからも提供はウチに頼むぞ」
「ま、適正価格での取り引きだしな」
ニッコリとしたレアな笑みを浮かべるカルラ第一保険医の頬で、カースタトゥーは仕方が無いとでも言うような溜め息を吐いた。
「すみません、ただいま戻りましー……ナンだいこの空気」
裏があるようにしか見えないカルラ第一保険医の笑みで保険室内の空気が緊張している中、ビトが戻って来た。
彼は偶然良いコトが起こるコトが多いと思っていたが、意外と偶然良くないコトに鉢合わせるコトも多いのかもしれない。
ビト
偶然に愛されている為、良いコトも悪いコトも起きる確率が高い。
でも騎士やってる兄に鍛えられたお陰で偶然起きた悪いコトの大半は物理で解決してる。
ストーンウッド
割合としては二次元世界のオスの三毛猫くらい(つまりそれなり)にレア度が高いので狙われた。
ビトと一緒に出かける時間が結構好きなので、邪魔されるのは嫌い。