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ヒトと魔物のキューピッド  作者:
一年生
24/300

岩腕少年とウィズダムスケアクロウ



 彼の話をしよう。

 両腕が岩で、不器用で、純粋な。

 これは、そんな彼の物語。





 この学園にはケイト植物教師が研究室として使用している温室がある。

 そこでは様々な植物が育っているのだが、ソレとは別に、生徒が育てる畑などもある。

 野菜と花はどう違うのかを学ぶ為だったり、野菜の育て方を学ぶ為だったり、実家でやってたからやらないと落ち着かない生徒の為だったり、土いじりをしたい生徒の為だったり。

 そんな様々な理由で、学園内には畑が存在している。

 ちなみに収穫した野菜は食堂で使用されるので、その分の代金はキチンと支払われる。


 ……場所や水、育て方や種を提供してるのは学園側ですけれど……。


 しかしちょっとしたお小遣いになるのはありがたいので、畑の世話をして野菜を育てる生徒は多い。

 モチロン学園側も色々と考えているのか、払われる代金も場所代や水代を抜いた手間賃分なので、皆気楽に畑の世話をしている。

 要するに毎日水あげて草抜きをしていれば、収穫の際にその分だけのお小遣いが貰えるというコトだ。

 本職のヒトに比べれば賃金は少ないが、場所の提供などを考えれば当然の金額なので、諍いは起きない。

 下手に甘やかさず、その辺りをキッチリ教える辺り、この学園は真っ当で良い学園だと思う。


 ……下手に甘やかしたり贔屓したりは、駄目な人間を育成する場になりかねませんものね。


 しかし教師は研究者タイプが多い為、貧乏だろうが平均だろうが貴族だろうが姫だろうが平等に扱う。

 ソレを見習って殆どの生徒達もお互いを平等に扱うので、良い環境だ。



「……ジョゼフィーヌ、少し話を聞いてもらいたいのだが、良いだろうか」


「あら、スタンリー」



 今日はどうしてもソッコで劇団へ行かなくてはいけないから、とララに頼まれ、自分はララの畑の草抜きをしていた。

 ララはいつも頑張っているし、劇団の仕事があってもキチンと畑の管理はしている。

 サボりがちなら断るところだが、ララは毎日忙しい中でもそれらをキチンと行っているのだ。

 なので喜んでオッケーを出し、ララの畑の草抜きを終わらせたタイミングで、スタンリーに声を掛けられた。



「話って、わたくしにですの?」


「ああ」



 混血ゆえに両腕が岩で出来ているスタンリーは、コクリと頷いた。



「……その」



 赤茶色の髪を揺らし、同級生より少し背が高いスタンリーは、チラリと背後を見る。

 ソコには畑があり、女性型に作られたカカシの魔物が立っていた。



「…………彼女ともっと話をしたいんだが、女性の好む話がわからなくて……どういうのが良いかを、相談しようと」



 岩を削って腕の形にしたかのような大きな手で、スタンリーは少し恥ずかしそうに頭を掻く。



「成る程。でも、ナンでわたくしなんですの?」



 スタンリーとは多少会話した程度で、恋愛相談を持ちかけられる程の仲では無いと思うのだが。



「……お前は魔物に詳しいし、成績も良いから……彼女の好みがわかるかもしれないと思って」


「ああ……彼女、ウィズダムスケアクロウですものね」



 納得し、頷いた。





 学園内にある畑には、女性型のカカシが立っている。

 最初はただのカカシだったらしいのだが、学園という空間内には多種多様な魔力を有した生徒達が沢山居た。

 入れ替わり立ち代わり、カカシは沢山の魔力に触れた。

 そして無機物系の魔物に多いのは、長い年月を経たコトにより付喪神になるように、長い年月により魔物化したパターンが多い。

 付喪神は長い年月を経て、そして大事に扱われるという優しい念、または粗雑に扱われて怨念を溜め込むコトで魔物と化す。


 ……まあ要するに、念とか魔力とかの影響で魔物化するというコトなのですけれど。


 地球では霊感が強いヒトの近くに居るとソレにつられて霊感が強くなると言うらしい。

 ソレと似たようなモノだろうが、もっとわかりやすくいうならお風呂場の鏡のように、湯気という影響を受けて曇ったり結露したりする、というコトだ。

 沢山の生徒が居る空間で、生徒達が丹精込めて野菜を作るのを見守っていたカカシ。

 ゆえに当然のように、そのカカシは魔物と化した。



「ウィズダムスケアクロウと話をしたい……というのが、スタンリーの相談ゴトなんですのよね?」



 土いじりをしていたからと一旦部屋に戻って汗を流してから、食堂へと移動した。

 スタンリーの正面に座りながら、今日は沢山仕入れたからと貰ったザクロをプチプチ摘まむ。


 ……ホントはケーキでも食べようかと思ってましたけど、たまにはフルーツをそのまま、というのもアリですわね。



「ああ」



 スタンリーは岩で出来ている為指が太く、不器用だ。

 なので加工済みのザクロジュースを飲みながら、頷いた。



「俺は見ての通りの指だから細かい作業が苦手で……畑も、水遣りは出来るが草抜きなんかに時間が掛かってな」


「あー」



 太い腕と同様、スタンリーの指は成人男性の手にグローブを複数装備させたかのように太い。

 確かにその指では、草を抜くという行為だけでも箸で小豆を移動させる並みに難易度が高いコトだろう。



「だが、彼女はそんな俺を見て、色々と教えてくれたんだ。道具は持てるのだから、スコップなどで少しだけ雑草の根元を掘れば良い、とかな」


「流石ウィズダムスケアクロウですわね」



 ウィズダムスケアクロウとは、つまり叡智のカカシという意味だ。

 わかりやすく言うならめっちゃ頭が良いカカシ。

 脳みそは無いし目だってボタンで出来ているのだが、そういうのは関係無いのがアンノウンワールド。

 世界は広いのだから、脳を持たないカカシの中にも賢いカカシは居る。

 そしてそんなウィズダムスケアクロウは、畑作業に慣れていない生徒達によく助言をくれたりするのだ。


 ……腕も下半身も木の棒なので動くコトは出来ませんが、知恵がありますものね。


 そんな彼女は動けなくともその知恵と喋れるという特徴を活かし、畑が荒らされるコトが無いよう常に見張っている。

 無機物ゆえに睡眠を必要としていないのも強みだろう。



「ソレで、困った時によく相談をしていたんだが……もう少し、色々と話をしたい、と思ってな」



 スタンリーは照れ臭そうに太い指で頬を掻いた。



「……つまり、相談じゃなくてもうちょっとプライベートな感じで会話をして交流を深めたい、と?」


「そういうコトになるな」


「うーん……」



 ザクロを摘まんで口の中に入れると、プチプチした食感と共に甘酸っぱい味が口内に広がった。



「でも彼女、無機物系ですわよ?」


「ソコだよな」



 うん、とスタンリーが頷いた。


 ……どうやら、その辺はわかってるみたいですわね。


 無機物系というか魔物全体に言えるコトだが、ヒトとは常識が違うコトは多々ある。

 例えばウィズダムスケアクロウはカカシとして作られている純度百パーのカカシだ。

 なので畑に立ち続けるコトに違和感を抱かないし、畑以外に居る方が負担になる、という考え方を有している。


 ……まあ、住めなくはなくてもヒトがわざわざ荒地で生活しよう!とはならない感じのアレですわよね。


 必要性が無い場所にわざわざ行く気は無い、というコトだ。



「喋るコトは出来ても、食べる口は無いワケですからね……食事から話を広げるワケにもいきませんわ」


「ああ、俺が好きな食べ物を語って終わった」



 やはりそうか。

 無機物系の魔物は口が無いコトが多い。

 なので会話に関しては「声」とはまた違うというか、「声帯」を用いない。

 まあ端的に言うなら犬飼ってるヒトが犬の言いたいコトを察するアレとか、犬側からの訴える視線やら行動とか、そういうのをめっちゃレベルアップした感じだと思うと早い。

 要するに口での会話では無いので、口が無かろうと会話が出来る、というコトだ。


 ……だからこそ、食べるという前提が無いから話を膨らませるコトも出来ないんですのよねー。



「ならもう、質問を投げ掛けまくってはどうですの?」


「質問は今でもしてるが……」


「ああいや、そういう「困っているコトに対する質問」では無く、「知りたいコトに対する質問」ですわ」


「知りたいコトに関する……?」



 意図がいまいちわからないのか、ナニが違うんだという表情でスタンリーは眉をひそめた。



「ま、要するに今まではコレが出来ないから教えて欲しい、みたいなコトだったワケですわよね?」


「そうなるな」



 ザクロジュースを飲みながらスタンリーは頷いた。



「なのでこれからはソレに加え、ウィズダムスケアクロウのコトを知りたいから教えて欲しい、と言えば良いだけですわ」



 常識が違って価値観も違うなら、教えてもらえば良い話だ。

 地球では別の種族とは会話が通じないから調べる必要があり、とても時間が掛かるが、幸いここは言葉が通じるアンノウンワールド。

 相手の好みを相手に聞けば、答えてくれるハズ。



「例えば好きなモノ。食べ物としての好物は無理でも、今まで見た中でどんな野菜が好みか、くらいは聞けると思いますわ」


「……成る程」



 意味を察したのか、理解したようにスタンリーが頷いた。



「味の好みは無理でも、見た目で好ましかったり、楽しい思い出があるモノなどを聞けば良い、と」


「そうなりますわね」



 食べるコトは無くても、あの野菜のツヤツヤ感が好きだとかはあるだろう。

 ウィズダムスケアクロウから見える位置には花壇もあるので、好きな花だってあるだろう。

 ならソレを知っていけば良いだけだ。



「だが、あまりしつこく質問をしたら、不快な気持ちにさせてしまわないだろうか」


「大丈夫だと思いますわよ?」



 前に話しをした時、本魔が言っていたのだ。



「前に聞いたら、「あら、別に構わないわ。質問は私が誰かと話せるから嬉しいし、私の知識が相手の役にも立つのだから、どんな質問だって大歓迎よ」って言ってましたもの」


「そうか……」



 そう呟いて少し考え込んでから、スタンリーはジュースに視線を固定したままで言う。



「……両腕が岩みたいな男でも、彼女のパートナーに立候補出来ると思うか?」


「カンからすると彼女にパートナーは居ませんし、ウィズダムスケアクロウ自身からもアナタを含めて気になる殿方が居るとは聞いたコトありませんから……距離さえ縮めたら、ワンチャンあると思いますわ」


「………………」



 スタンリーは俯いているが、自分からはその顔が少し赤くなっているのがよく()えた。



「……頑張って、みようと思う」


「応援しますわ」



 友人の恋路は、微笑ましく見守りつつ応援するとも。





 スタンリーはあれからウィズダムスケアクロウへの質問アタックを実践したらしく、よく一緒に居るのを見掛けるようになった。

 端から見た限りは仲良くしているようだったし、よく()て確認しても問題無く接しているようなので良かった。


 ……まあ、スタンリーは良いヒトですものね。


 真っ当なタイプの人間だ。狂人じゃない。

 長ったらしくて舌を噛むからと魔法は得意では無いが、誰かに対する気遣いなどはちゃんと出来るタイプだ。

 相性も良いのだろうと思って見守っていたら、再びララに畑の草抜きを頼まれた。



「そう泣きそうにならなくても、別に構いませんわ。ララはホントにどうしようも無い時しか頼みませんし」


「ありがとうございます……!」


「ホンマあんがとな!」



 お礼を言うララとギャンブルファイアフライに笑みを返しつつ見送ってから、畑に移動して草を抜く。

 貴族の娘が草抜きをしていると考えると中々面白いが、自分には土を踏む両足があり、草を抜ける両手もあるのだ。

 面白くはあってもナニもおかしくはないなと思い、黙々と草を抜く。



「ねぇ、アナタ」



 抜く。



「ちょっと、そこの一年生」



 抜く。



「ジョゼフィーヌ・エメラルド、聞こえてる?」


「え、あ、わたくしですの?」


「そうよ、もう……。今他にヒトが居ないのに無視するんだもの」



 確かに丁度時間が被らなかったらしく、畑に他の生徒は居ない。


 ……無視する気は無かったんですけれど……。


 まさかウィズダムスケアクロウに話し掛けられると思わなかったので、気付けなかった。

 彼女の場合は笑みのカタチに描かれた口があるだけなので動かないし。


 ……だから()えててもわかりにくいんですのよね。



「もしかしてわたくし、ナニか間違えてましたの?」



 それなりに野菜が育っているし、この目がある。

 なので雑草のみを抜いていたハズだが、ウィズダムスケアクロウが質問されたワケでもないのに自ら話し掛けてきたというコトは、ナニか間違えていたのだろう。



「ああ、ごめんなさいね。確かに私はそうでもないと自分から話しかけるコトは滅多に無いけど、別にナニか間違えてたとかではないのよ」


「あら、では滅多に無い方ですの?」


「ええ、そう」



 彼女は帽子を被っているが、太陽の光でか、左右に目として縫い付けられているオレンジのボタンと青のボタンがキラリと光った。



「スタンリーって、知ってる?」


「ええ、同級生ですし」


「そう、良かったわ」



 その声は笑っているような柔らかい声だった。



「まあアナタなら知っているとは思っていたのだけれど……。私が話しかけた理由はね、そのスタンリーに関するコトなの」


「絡まれててウザい、とかですの?」


「まさか」



 口が動くコトは無いものの、クスクスという笑い声が響く。



「寧ろ逆ね。彼はとても真面目だし、質問に答えたらキチンと実行するしで好ましいわ」



 ……脈アリではあるっぽいですわね。


 まだ好意が無いワケではないレベルだが、無いよりは良い。

 好ましいというコトはそこから上り詰めるコトも可能だろう。



「ただ、その……」



 少し悩むように言いよどんでから、ウィズダムスケアクロウは言う。



「彼、最近やたらと私の好みを知りたがるというか……よく、ナニが好きかを質問してくるの。あまり受けたコトの無い質問だから嬉しいけれど、その……どう思う?」


「どう思うって……」



 どういう意味での「どう思う」なのかがわからずそう返すと、ウィズダムスケアクロウは少し照れたような声色で言った。



「だから、その……パートナーとか、恋愛とか……()()()()()()での質問なのか、よ」


「そう思うならソレで正解と思いますわよ?」



 実際その通りなのだし。



「アナタ頭も察しも良いんですから、アナタがそう思うなら間違いじゃ無いと思いますわ」


「でも、ただの自惚れというコトもあるでしょう?だって私、カカシよ?」


「彼の場合混血ですし、腕が岩だと考えると親の片方は岩系の魔物のハズなので……普通に恋愛対象に入ると思いますわ」



 というか今の世代、誕生の館での子作りが前提なので、性行為で子孫を残せない問題とかが無いのだ。

 つまり虫だろうがカカシだろうが花瓶だろうがオール恋愛対象である。


 ……恋愛ゲームだったら攻略対象アホみたいに多そうですわね。



「というか言ってしまうと、前に相談を受けたんですのよね、彼に」


「相談?」


「ええ」



 言おうかどうしようか迷ったが、彼の恋路を応援する為にも言った方が展開が速そうだ。



「ウィズダムスケアクロウともうちょっとプライベートな会話をしたいが、好きな食べ物の話では盛り上がれないから、どうしたら良いのか、って」


「あ……」



 叡智のカカシだけあって記憶力が良いからか、すぐにその時のコトを思い出したらしい。



「で、わたくしが「別に食べ物以外にも好きなモノはあるでしょうから、花とか色とか、そういう好きなモノを聞いて仲を深めては?」と助言しましたの」


「……つまり」


「スタンリーからの質問は、()()()()()()での質問というコトですわ。あとついでに言うと岩が両腕の男でもパートナーに立候補出来るだろうか、とか言ってましたわね」



 少し赤裸々に言い過ぎた気もするが、ウィズダムスケアクロウから嫌そうな雰囲気は()えないので大丈夫だろう。



「……もう少し一緒に居たいとか、そういう積極的なコトを言っても、嫌がられないかしら」


「好きな相手にそう言われて嫌なヒトは居ないと思いますわよ、わたくしは」



 その返答に、ウィズダムスケアクロウは小さな笑い声を漏らした。





 コレはその後の話だが、スタンリーとウィズダムスケアクロウは順調にお互い距離を縮め、晴れてパートナーになった。

 パートナーになる前は、スタンリーが不器用ながらもカティヤ手芸教師に教わってウィズダムスケアクロウの好きな色で服を作り、不恰好ながらもその服にウィズダムスケアクロウの好きな花の刺繍を施し、プレゼントしたりもしていた。

 どうして知っているのかと言えば、スタンリーに相談されたし、プレゼント後にウィズダムスケアクロウから教えてもらったりをしたからだ。



「うふふ、スタンリーがね、素人の出来だがって言いながらプレゼントしてくれたのよ。自他共に認めるくらい不器用だから、お裁縫なんて特に苦手でしょうに……」



 ウィズダムスケアクロウはそう嬉しそうな声で言っていた。

 他にも雨の日など、一緒に居るのを見るようになった。



「私、腕や足が木の棒でしょう?だから雨に降られ続けると腐って折れちゃうから、新しいのに交換してもらわないといけなくなるのよね」



 そんなウィズダムスケアクロウの言葉を聞き、スタンリーは魔法を使うのが苦手だというのに、わざわざ雨除けの魔法を教えてくれと頼んできた。

 そしてどうにか雨除けを覚えてからは、ウィズダムスケアクロウにその魔法を掛け、雨が止むまでそばに居るようになった。

 モチロン授業があったり夜中だったりは一緒に居れないが、ソレ以外はそばに居た。


 ……まあ、遠距離で魔法使用は難しいですものね。


 そして雨の間中一緒に居て、会話をして、より一層仲を深め、パートナーになったのだ。

 何故か両方からやたらと相談されたりノロケられたりもしたが、実に幸せそうで、こちらも応援した甲斐があった。



「あ、ソコは掘り返しちゃ駄目よ。ソコには畑に不要なモノを食べて、良い土にしてくれる土壌ミミズがいるから」


「そうか……ではコレで草抜きは終わりだが、他にナニかした方が良いコトはあるか?」


「そうねぇ……あ、それじゃあソコの影にあるイーターロカストの卵を処分してくれる?野菜とかを食い荒らすし、時々私の服を齧ってくるコトもあるのよね、そのバッタ」



 ハァ、とウィズダムスケアクロウは溜め息を吐いた。



「今着てるのはスタンリーがくれた大事な服だから、食べられたくは無いわ。害魔でもあるし、お願い出来る?」


「ああ、処分する」



 そう言うスタンリーの顔は殺意が滲んでいて、どうやら好きな相手の服が齧られたコトがあるというのが許せないらしい。

 そんなスタンリーはこないだ、ウィズダムスケアクロウがこの学園に愛着を持っているから離れなくても良いように教職を目指す、と言っていた。

 確かにパートナーと離れるのは辛いだろうし、パートナーに愛着ある場所を離れろというのも酷だろう。



「まだ将来は決まってなかったし、教職でも警備員でも、学園に居れる職業を目指そうかと思ってな」



 そう言うスタンリーは、楽しそうな笑みを浮かべていた。




スタンリー

魔法は苦手だが、ウィズダムスケアクロウの為に雨除けの魔法は使えるようになった。

実は全体的に痛覚が鈍く、特に腕の痛覚はめっちゃ鈍いので怪我に気付けないコトが多い。


ウィズダムスケアクロウ

学園内に畑が作られた頃から修復を繰り返しながらも立ち続けているカカシの魔物。

スタンリーが自分の為に学園関係の仕事を目指し始めたのが嬉しい。


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