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ヒトと魔物のキューピッド  作者:
七年生
225/300

学園長とイモータルチョコレート



 彼の話をしよう。

 ヴェアリアスレイス学園の学園長で、不老不死で、フレンドリー。

 これは、そんな彼の物語。





 学園長室で、頼まれていた本の翻訳したモノをアダーモ学園長へと手渡す。



「コレが今回のヤツですわ」


「おう、サンキュー……」



 翻訳元である本を見た瞬間、アダーモ学園長はピクリとその眉を顰めた。



「……ゲープハルトのヤツまた古いの頼んだな」


「エッ」


「気付かなかったか?」


「前にやるコトになったヤツよりは状態が良いからまあ良いでしょう、と……」


「いや、うん、ナンかごめんな、アイツが色々無茶振りして」



 アダーモ学園長にめちゃくちゃ同情の目で見つめられた。

 アレは「コレが古いという認識も出来ない程古いヤツを何度もやらされてたもんな」という目。


 ……実際この程度の古さならまあ良いかってなりましたものね……!


 ゲープハルトから頼まれるのは大体そんなモンなので我ながら感覚がバカになっていた気がする。

 他の一般の依頼の場合、大体百年前くらいまでの本ばかりだし。


 ……ゲープハルトからの依頼だと、余裕で五世紀以上昔とかあるんですのよね……!


 ほぼ風化してたり石板だったりするコトもあるのでもう諦めよう。

 報酬は適正価格だし、中々お目に掛かれないモノを見るコトが出来るし、翻訳するコトで新しい……いや、古い知識を得るコトも出来るのだから。


 ……お陰で懐ぬっくぬくですわ!


 ぬくぬくになり過ぎて取り扱いや消費に困っているが、まあまあまあ。

 己にこの視力をくれた神の加護の一端らしいのでありがたいと思おう。


 ……ソレがわかってても、やっぱり過ぎたお金が身に余りますけれど、ね。



「……うん、まあ、今更ですわよね。わたくしとしてもこう、禁書レベルにヤバいヤツで無ければもう良いかな、と思ってるので、ええ、問題はありませんわ」


「すまん、ゲープハルトには一応言っとく。ただいつものコトだが、アイツが俺の話聞いてくれるかはわかんねーけど」



 ハァ、とアダーモ学園長が溜め息を吐き、その茶髪が軽く揺れた。

 心底疲れましたという溜め息だったが、相変わらずその見た目は老いを感じさせない若々しさだ。


 ……見た目、二十代ですわよね。


 実年齢は不明というレベルで結構いっているらしいが。

 まあ時代によって年齢のカウント法も変化していくので、数えるのも面倒臭いとなったんだろう、多分。



「……ちょっと気になったんですけれど」


「うん?」


「あ、大したコトじゃないので後で構いませんわ」


「いや別に話してくれても良いぜ?もう翻訳されたヤツの確認終わったし」


「エッ早くありませんこと?」


「あー、エメラルドはいつも渡したらそのまま帰ってるもんな。俺速読出来るから大体こんなモンだぞ」


「成る程速読……わたくし本はゆっくり読みこんで楽しみたい派だから習得してないんですのよね」


「や、書く側の負担とか色々を考えたらそっちの方が正解。俺だって小説とか読む時はゆっくり読みたいしよ。

ただこういう仕事関係なんかは速読で終わらせた方が効率良いんだ。時間短縮になるし、空いた時間で本読んだりとか出来るし、見回ったりも出来るし」


「……アダーモ学園長って、ちゃんと休んでますわよね?」


「エ、俺そんなに働いてるように見えるか?」


「ワリと」


「確かに、常に働いていると言っても過言ではないな」



 アダーモ学園長の隣に佇んでいたイモータルチョコレートが頷きながら肯定した。

 彼女はアダーモ学園長のパートナーであり、秘書的立ち位置の魔物である。


 ……今日はフェミニン系のワンピースなんですのね。


 イモータルチョコレートはヒト型であり、常に閉じている目を縁取っている睫毛、そして髪の毛はホワイトチョコレートで出来ている。

 肌は言わずもがな茶色いミルクチョコレートで、唇はストロベリーチョコレートだ。


 ……服もチョコレートですけれど、オシャレ好きなのか日替わりなんですのよね。


 基本的にイモータルチョコレートは不定形に固形と好きなようにフォルムチェンジするようだが、彼女は基本的に固形状態だ。

 書類とかを汚さない為らしい。


 ……本魔に溶ける気無ければ溶けないから、書類持っても汚れたりしませんし。



「というワケで少し休め、アダーモ。幸いエメラルドが居るから、少し話でもしろ」


「話って」


「お前は不老不死だからといって働き過ぎるきらいがある。疲労は感じれどソレで命に害があるワケではないから、と自分の力で他の人間の分もやろうとしているのだろうが」



 イモータルチョコレートの言葉に、アダーモ学園長は気まずそうに視線を逸らした。

 居心地悪そうに泳ぐその目と引き攣った笑みを浮かべている口元を見るに、自覚はあるらしい。



「ソレでお前に過度な負担が掛かっていては意味が無い」


「や、でも昔パーティに所属してた時もこういうちまちましたの俺の仕事だったし。別に嫌いじゃないし。疲れるだけで」


「疲れるから問題なのだろうが。お前は不老不死であり色々経験して多少思考が麻痺しているとはいえ、生粋のいかれポンチ共とは違う、常識を有した人間。

そのネジは大事にすべきだというのに、疲労でその大事なネジがぶっ壊れてイカれてしまったらどうするつもりだ」


「生粋のいかれポンチて」


「モイセスとゲープハルト」


「う、ううん、否定が出来ねえんだよなーアイツらなー……」



 腕を組み、アダーモ学園長は背もたれに身を預けながら乾いた笑みを浮かべる。

 遠い目になっている辺り、かつての色々を思い出しているのだろう。



「実際アイツらが常識とか無かったからこそ、常識とか良識とかが必要な場面で俺が前に出て、気付いたらまとめ役のリーダーやらされてて、気付いたら交渉やらその他諸々俺の仕事になってたし……」


「ああ、ゲープハルトが前にそんなコト言ってましたわね」


「エ、マジで?」


「ええ。確か、「このゲープハルトは言われたコトにはお答え出来るけど、スケールがヒトとは違うからね。このゲープハルト流にやると上手く行きすぎてアウトになるんだ。

だから丁度良いレベルを教えて指示してくれるアーちゃんには助けられたよ!指示であって命令じゃなかったからこのゲープハルトも不愉快じゃなかったし!」と」


「お前声似てないのに喋り方だけ似てて凄ぇな」


「内容完全スルーですの?」


「いやそういうつもりはねーけど……まあ、確かに指示は出してた。つってもあっちにデカイのこっちに小さいの!とか、殺さない程度に心を折れ!とか、そういう雑な指示だったぞ?」


「んー、具体的過ぎると拘束されているような感覚になるからこそ、ある程度自由度がある雑な命令の方が良かったのかもしれませんわね」


「うわー、アイツならあり得そ」



 引いたようにそう言っているし、声色だって引いている。

 けれどアダーモ学園長のその顔は笑っていて、懐かしいやり取りを思い出し、あの時は楽しかったと言っているようだった。


 ……顔って結構、言葉よりも雄弁というか、正直だったりしますわよね。



「……ま、イモータルチョコレートにあんま心配させるもんでも無いしな。少し休憩するか。エメラルド、十分くらい付き合え」


「イモータルチョコレート、わたくし特に時間制限ありませんわ」


「よし、では一時間程休憩だな」


「待って俺の申告どこ行った?」


「捨てた」


「ナンでだよ!?」


「お前は書類整理を可能な限り短縮し完璧にやり遂げるのは良いが、その分疲労が溜まっているだろう。

その上少しでも時間があれば学園内を歩いて生徒達の様子を直に確認したり、魔法で遠距離移動して元生徒だった卒業生達がどうしているかを見に行ったり……」


「や、だって俺の学園の生徒だった以上気になるじゃん。元気にやってるかとか、問題は起きていないかとか、真面目にやってるかとか」


「ちなみに真面目にやってなかったらどうすんですの?」


「ん?俺からの支援受けておいてサボってるようなら支援を止めるかな。その分真面目にやってるヤツに回すし」


「その辺結構切り捨て早いですわよね」


「切り捨て言うなっての。取捨選択が上手なんだよ俺は。長生きして色んな人間見てきて、そして接してきたからこそ、見込みのあるなしはわかる。

将来性が無いヤツに多い金を渡しても使うだけで生み出さない。将来性があるヤツは多い金から色々なモノを生み出してくれる」


「で、またアダーモ学園長の金が増えると」


「ソコなんだよなあ~!」



 アダーモ学園長はぐだりと机に上半身を預けた。



「お金正直もういらねえってのに、卒業生達が学園に寄付してくんだよなあ~……」


「まあ、卒業生の方々も在学時お世話になったんでしょうし、進行形でお世話になってる方も居るようですし」


「そうだけどさ、俺が支援してるのは未来の為なんだよ。わかるか?」


「……先行投資するコトで、未来で役立つだろうモノの開発などに協力したい?」


「そゆコト。今を生きている子達も大事だが、俺からすれば皆、かつて俺がずっと先の未来だと思っていた時代の子。未来なんてすぐに来る。その時の子供達が笑顔で居られるかどうかを決めるコトが出来るのは、進行形で存在している今だけだ」


「昔に、未来の為に整えたモノが今という未来で役立っている。ならば今という過去で開発すれば、いずれ今となる未来の子達が、苦しまずに済む、と」


「そーそー。流石エメラルド、理解が早い」


「ふふふ、お陰様で」



 理解出来るようになったのは、この学園があるからこそと言えるだろう。

 真面目に学べばその分だけ身につくから素晴らしい。


 ……教師も皆、教科書通りとはいきませんしね。


 研究者気質が多いからこそ、雑談部分で凄まじい知識量を披露してくれる。

 ただ内容を詰め込もうとするのではなく、コレはこうだから面白いとか、コレはこうすると不思議だとか、そういう興味の部分からやってくれるのだ。


 ……そう考えると、皆教師に向いてるっちゃ向いてるのかもしれませんわ。


 生徒の出自や体質を良い意味で気にしない。

 まあ悪い意味で気にしない時もあるが、指摘すればきちんと良い意味で気にしてくれるようになるからモーマンタイだ。


 ……差別しないし、差別しなさ過ぎてその子にソレはキッツイ!っていう時は、指摘して説明すれば納得してくれますし、ね。


 まあちょっとどころじゃなく我が強過ぎるのはアレだが。

 今更だし、アダーモ学園長曰くアレでもそこまで個性強くないらしいから良いとしよう。


 ……ええ、本当、今までどんな教師が在籍してたのかと思うと大分ゾッとしますけれど!



「……そういやエメラルド、気になるコトがあるって言ってなかったか?」


「ああ、そういえば」



 雑談に満開の花が咲き過ぎて忘れていた。



「でもそう大したコトじゃありませんわ。アダーモ学園長とイモータルチョコレートの馴れ初めが気になるだけで」


「エメラルド良い子!」


「エッ突然ナンですの?」


「だって今まで俺にそういうコト聞いてくれる子居なかったんだもん!」



 そう言いながらアダーモ学園長は泣き真似をしていた。

 泣いてはいない。

 ()ればわかる。


 ……というか本当、反応とかが若いんですのよねー……。



「ナンかなー、皆さ、最初俺に対して対応が固いんだよな」


「そりゃまあアナタ学園長ですし。トップですし」


「でも話し掛けてたら気安くはなれるけど、授業についてとか将来についてとかの相談が多くて個人的な俺への質問とかはない」


「アダーモ学園長と親しくしてるゲープハルトがアレだと考えると、聞きにくいんですのよねー……」


「あー、成る程」



 アダーモ学園長は納得したように頷いた。

 実際納得するしかないだろう。


 ……ゲープハルト、詮索を嫌いますものね。


 フレンドリーに見えてあのヒトは他人から距離を詰められるのを嫌うタイプ。

 だからこそ下手に掘り下げるような問いをすると、そんな質問をした相手の前には二度と現れなくなる。


 ……とはいえ、昔はそういう質問された瞬間ソッコでキルってたそうですし。


 そう考えると、姿を見せなくなる程度で済ませてくれている今は大分優しい対応なのだろう。

 まあ結局のところ、必要以上に知ろうとしなければ普通にフレンドリーに接してくれるのだが。


 ……ええ、さらっととんでもなく古い書物の翻訳を頼んでくるレベルで!


 それだけ接していても、ゲープハルトからしたら心を許せるヒトは居なさそうだが。

 あのヒトの心の壁はとんでもねえ。


 ……壁があろうと問題無いだけの実力もありますし、ね。



「ま、さておきイモータルチョコレートとの出会いか。アレは確かまだパーティで行動してた頃……クラリッサが時間の女神の八つ当たりかナンかで時間という概念の外側に飛ばされた辺りの時期」


「いやもうスタートから展開ハード過ぎますわ」


「エメラルドその辺聞いて知ってんじゃなかったか?」


「知ってますけれど」



 いきなり聞くにはパワーワードが多過ぎる。



「まあとにかくクラリッサは離脱して姿を眩ませた。で、不老不死二人を引きつれながら動いていたワケだが、普通に限界が来た。俺その時不老不死じゃない一般人だし」


「というか一般人でよくそのメンバーと組めましたわね」


「ホントにな!」



 それな、と言わんばかりに頷かれた。



「ゲープハルトは全てがチートで、モイセスは過去視の魔眼持ちな上に不老不死で、クラリッサは当時ただの人間だったが過去視現在視未来視が可能という魔眼持ち」


「うーん設定過多」


「しかしその中に混ざる俺は一般人。その辺の町で生まれて育った、ヒトよりちょっとコミュ力は高めかな?程度の若者なワケよ」


「わお」


「ソレがナンの因果か一緒のパーティになって、俺が率いるコトになって。でも正直クラリッサ離脱した時点で俺のハートはボロッボロなのよ」


「……唯一の不老不死じゃない仲間だったから、ですわね?」


「そう!」



 全力で肯定された。



「はー俺だけ怪我しても治り遅いし痛覚あるし年は取るし死ぬときゃ死ぬし、あーもう俺も不老不死になりてーーー!!アイツらが俺に全部寄越しやがった金で色々やりたいコトあるけど絶対時間掛かるじゃんもういやーーー!!って」


「相当参ってますわね」


「相当参ってたんですのよ」



 ふぅ、とアダーモ学園長は疲れたように溜め息を吐く。

 その目は当時を思い出しているのか酷く遠い目だった。



「当時からさ、こういう学園作りたいって思ってたんだよ、俺。学園じゃなくても良いから保護出来る施設的なの。まあ若い内に保護した方が良いとか、将来働けるようにとか色々考えて学園にしたけど」


「成る程」


「……当時、魔眼への偏見というか、嫌悪っていうか、そういうのがホントに酷かったからさ。

不老不死すら化け物扱いなんてザラ。特にアイツら自分に向けられるそういう悪意とか気にしないし、害があれば叩き潰すだけだっつー思考だし」


「あー、敵が多そう」


「そゆコト。だから俺が色んなヒトと接触して依頼として受けてクリアして報告時にアイツらの良いトコ説明して、英雄に、ってな。俺まで英雄扱いされたのは想定外だったけど」


「あの英雄譚ってそういう感じで出来たんですの?」


「うん。じゃないとあの性格のアイツらが英雄とか言われるワケ無いじゃん」


「ああ、うん、まあ、そうですわね」



 頷くしかない。



「だがそういう場所を作るには、金はあれど、場所もあれど、時間が足りない。設備とか色々もな。俺が死ぬまでにどうにか出来るかどうか、ってレベル。当時ただの人間だったし」


「……成る程。もし完成前に死ねば、その分のお金が違うモノに使われるかもしれない。その場所はまったく別のモノになるかもしれない。まったく違う考え方が掲げられるかもしれない、という」


「そう、懸念があった。だから出来なかった。ゲープハルトとモイセスなら不老不死だけど、アイツら上に立つの向いてねーし。絶対あくどいヤツに嵌められて化け物扱いの指名手配されて逃げ回るコトになる」


「目に浮かびますわ」



 コミュニケーションを得意としていないからこそあり得そう。



「で、色々参っちゃった俺は二人を置いて森ん中走って行って、色々愚痴を叫びまくった。崖の上から」


「ソコでアダーモが、「俺だって不老不死になりてーわアホーーーーー!」と叫んでいてな」


「止めろ具体的に言うな恥ずかしくなるだろ」


「私が出現したワケだ」


「…………ん?出現?」


「エメラルド、私についてはドコまで知っている?」


「イモータルチョコレートについては……食べると不老不死になれるチョコ、ですわよね。ただし定期的かつ永続的に摂取する必要がある、という。書籍にもいまいち記述が無いのでそのくらいしかわかってませんけれど」


「ふむ、では教えてやろう」



 イモータルチョコレートはホワイトチョコの睫毛に縁取られた目を伏せたまま、薄く微笑みながら言う。



「不老不死に足る功績があり、不老不死を望むモノ。その二つの条件をクリアした存在の前に私は現れ、不老不死を授けるんだ」


「成る程」



 確かに不老不死を望んでいたし、それだけの功績はあっただろう。

 何せ化け物扱いされるかもしれないチート系不老不死二名を英雄として名を轟かせさせているし、その二名をある程度コントロール出来ている。



「ソレで食べさせて、不老不死になり、パートナーに……って感じなんですのね?」


「ああ」



 イモータルチョコレートはニッコリと笑っていて、アダーモ学園長は対照的に少し引き攣った笑みを浮かべていた。

 その目はとても遠くを見ていた。





 コレはその後の話になるが、そのまま己は学園長室でだらだらと駄弁っていた。



「そういや薔薇って本数でも意味あるじゃん」


「ありますわね」


「俺さ、アレの101本の時の意味が好きなんだよな。あと365本」


「これ以上ない程愛しています、とアナタが毎日恋しい、ですわよね、確か」


「詳しいな」


「そりゃまあ、ケイト植物教師にパシられる時に教えてもらったりしましたもの」



 あと本を読むのが好きなので、自然と覚えてしまった。



「でも意外ですわね。999本とか1000本辺りかと」


「何度生まれ変わっても愛するヒトはアナタ、に一万年の愛を誓います、ってか?」



 アハハ、とアダーモ学園長は笑う。



「一万年程度じゃ少ないだろ。何せ俺はイモータルチョコレートのお陰で不老不死。何度生まれ変わる以前に、生まれ変わったりしないままでも永遠に一緒なんだから」


「まあ確かに。なら1001本?」


「永遠に、ってか。でもソレ死んでも永遠に、っていう感じのイメージなんだよな。死なねーんだって俺達は」


「なら99本の永遠の愛?」


「そうだな、その辺が……」



 そう話していると、学園長室にある時計がゴーンゴーンと鐘を鳴らした。

 瞬間、アダーモ学園長は顔を青褪めさせ、イモータルチョコレートは動き出す。



「さあ、チョコの時間だぞアダーモ」


「いや待てイモータルチョコレート!」


「暴れるな」



 抵抗するアダーモ学園長の腕をガッシリと掴み、イモータルチョコレートは笑う。



「下手に暴れると、むせてしまうかもしれない。大人しくしていればすぐに済む。安心しろ、いつも通りに私は美味い」


「生徒が居る前で」


「そう、安心して」


「まっ」


「永遠を続けよう」


「んむぐぅううぅぅぅううう!」



 ……わー、相変わらず凄いですわねー……。


 アダーモ学園長はイモータルチョコレートに口付けをされ、口移しで大量のチョコを飲まされていた。

 そう、イモータルチョコレートもまた食用系魔物。


 ……だからこそ、条件クリアしている相手にはナンとしても自分を食べさせるっていう本能があるんですのよ、ね。


 実際は一週間置きくらいでも充分不老不死を維持出来るらしいし、口にするのも小粒で充分だそうだ。

 けれど食べてもらいたい本能がある為、毎日決まった時間に、大量のチョコレートを口移しで流し込む。


 ……結果胃がもたれるからか、アダーモ学園長が食事する時、大体胃に優しいモンばっかなんですのよねー。


 最近頻度が高いのはお粥。

 雑炊の味の濃さすらもちょっとキツくなってきたらしい。


 ……んー、流石にこの状況でここに居るの、お茶の間でちょいセクシーなシーンが流れたみたいな気まずさがありますのよね。


 異世界の自分の例えだが、わからんでもない。

 そう思い、帰りますねと書いたメモを置いて学園長室を後にした。

 いやあ、アダーモ学園長も不老不死の為、毎日毎日大変だ。




アダーモ

見た目は二十代だが相当に年食ってる学園長。

気さくな性格でコミュ力が高く、生徒とも卒業生とも仲が良く、友人のように軽く接されているが尊敬されてもいるというソコまで普通じゃない男。


イモータルチョコレート

永続的に摂取する必要があるも、対象に不老不死を授けるコトが出来るチョコレートの魔物。

移動やら秘書的な仕事やらを考えヒト型だが、折角というコトで毎日服チョコレートを変えて(変形させて)いる。


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