表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒトと魔物のキューピッド  作者:
一年生
2/300

元気少女とブルーダック



 彼女の話をしよう。

 元気で、無邪気で、天真爛漫な。

 これは、そんな彼女の物語。





 異世界の知識が自分にINしてから早数年、自分は十歳になり、学園へと入学した。

 ちなみに兄だが、自分の入学と共に卒業なので見事なまでに擦れ違った。兵士になる予定らしいので是非頑張って欲しい。


 ……最初は不安もありましたけど、意外と平気ですわね。


 寧ろ学園を全力でエンジョイしている。

 この学園は初等部で三年、中等部で三年、高等部で三年過ごすというシステムであり、初等部一年は一年生、中等部一年は四年生という感じで呼ばれている。

 ちなみに初等部、中等部、高等部で制服のデザインが違い、スカートやズボンの色などは学年ごとに違う。

 一年生である自分が着ているのは、白いブラウスにサスペンダー付きの赤いキュロットスカートという初等部の制服。襟のリボンも赤色である。

 男子の場合は、サスペンダー付きのキュロットスカートがサスペンダー付きの短パンになる。


 ……それにしても本当、充実してますわね、この図書室。


 今自分が居るのは、学園内の図書室だ。

 教員用の建物に併設されている施設であり、いっそ図書館と言った方が正確かもしれない。

 それ程にしっかりした造りの上、外観から見たら二階分くらいしかない建物に見えるというのに、中に入ると何階建てかわからない程に高く、そして広い。

 ()る限り、やはり魔法が掛けられているらしい。


 ……まあわたくし、アレから本の虫状態なので、ありがたい事でしかありませんが。


 異世界知識がINしてからというもの、自分は本に夢中になった。

 本というより、知識。

 魔物や魔道具、特性や性質、生態などに興味を持った。

 この学園に通う生徒は自分のような混血も多く、それぞれ特性を有している。

 そんな彼ら彼女らと接するのであれば、知識があって損はすまいという事だ。あと単純に本を読むのが好き、というのもある。

 何せ自分のこのリスのような茶色の目は、魔眼では無いものの特殊な視界を有している。

 具体的には透視とか鳥瞰とかが可能であり、更に口パクを()るだけで視界にそれが何と言っているかが字幕で出る。

 自動で読み取っているのか、読めないはずの外国語も、フリガナが振られているかのようにルビが見える。

 異世界知識がINしてソレに気付いてからというもの、自分は片っ端から本を読破しているのだった。


 ……学園自体に魔法が掛けられているので違う言語でも会話可能ですが、文字はそうもいきませんものね。


 そう、会話は出来る。しかし文字は負担が大きいのか、授業中のみ共有化されるカタチだ。

 だからなのか図書室には世界各地の本があり、つまりわたくしウハウハで大勝利ですの。

 そんな事を考えながら読む予定の本の山よりも読み終わった山の方が大きくなったのを視界の端で()つつ、次の本のページを捲り、まず「はじめに」の部分と「目次」を読む。



「ジョゼーーーー!」



 と、思ったが急な大声により、それはキャンセルされた。

 死角に入っているわけでも無いので振り向かずとも見えたのは、先週授業で隣になったリゼットだ。

 薄い緑色の髪を揺らしながら、彼女は静かにすべきな図書室にドタバタと走って来た。



「ジョゼジョゼジョゼ!見て!可愛い!居た!」



 満面の笑みを浮かべたリゼットが差し出してきたその両手には、青いアヒルがいた。

 全体的に青一色で、目の色も青く、クチバシと水掻きのある足は特に真っ青だ。

 アヒルが濡れているのか、リゼットの手から青いしずくがポタリポタリと落ちている。



「……リゼット」


「しっとりフワフワで凄く可愛くない!?」


「確かに可愛いですけれど、まさか誘拐したんじゃありませんわよね?」



 興奮気味のリゼットにそう言うと、リゼットはソッコで首を五時の方向に回した。斜め右後ろである。


 ……首痛そうですわねー。


 他人事のようにそう思いつつ、自分は小さめの声を意識しつつ言う。



「リゼット、それよりも重大な事実が一つ、ありますわ」


「え、ナニ?」



 気付いていないのか声のトーンを落とさないリゼットに、自分は言う。



「ここ、静かにすべきな図書室ですの」



 周囲を確認するようジェスチャーすると、やっと理解したらしいリゼットは周囲を見渡し、やっべという表情になった。


 ……ランヴァルド司書もすぐ近くに居ますものね……。


 ランヴァルド司書は()た限り、怒るような性格では無い。

 しかし兄や姉から散々に注意するように言われた人物でもあり、つまり困ったように微笑んでいる今の内に事を終わらせないと危険だ。

 やっべという表情をしたリゼットは、両手に青いアヒルを抱いたまま、腰を曲げて頭を下げる。



「騒がしくしてごめんなさいでした!」



 そして叫んだ。


 ……謝罪で叫んじゃ意味ありませんわー!


 つられて自分も脳内で叫びつつ、視界の端でランヴァルド司書が口を開いたのを見て、警戒を高める。



「ふふ」



 吐息のような、しかし確かな微笑みの声に、自分はグンっと椅子に座っている下半身に力を込める。

 周囲の先輩達も同じ様に下半身に力を入れたのが、筋肉の動きから()えた。

 その動きをしていないのは同級生である一年生だけだ。このタイミングに居合わせるとは可哀想に。



「構わないけれど、もう少し静かにね」


「アゥウッ!?」


「……っ!」



 グ、と下半身でふんばり、どうにか耐えた。上半身が机に頼れたのも勝因の一つだろう。

 知らなかったらしいリゼットと不幸な同級生達は、ランヴァルド司書の声に耐えられず、腰を抜かしている。

 そう、ランヴァルド司書はヤバイ。

 本人は至ってマトモで優しくて親身になってくれる良いヒトなのだが、声がやばいのだ。


 ……声、(ひっく)いんですのよね、ランヴァルド司書。


 凄まじく低いその声は、聞いたヒトの腰を砕く。

 自分でさえ知っていて警戒したというのに、初対面の時は思いっきり腰を砕かれたのだ。アレはヤバイ。

 腹の奥に何かが刺さったような気がして、思わずピョンピョン飛び跳ねて戻そうとしてしまったくらいだ。

 きっとアレは男性器を蹴られた時の痛み無しバージョン。そのレベルで何かが腹の方に埋まったと錯覚した。



「それじゃあエメラルド、彼女のコトはよろしくね」


「っ……は、い……!」


「ああ、それと掃除もね。魔物の立ち入りは禁止してないけど、ソレはソレだから」



 どうにか耐えたと思ったらまさかの追撃に、本能的に額を机に打ち付けるコトで腰への衝撃を相殺させる。



「……ランヴァルド司書、ワザとやってますわね?」



 その言葉にランヴァルド司書は笑みだけを返し、去って行った。


 ……あのヒト、声がヤバイ自覚がありながら喋るの自制しない辺り、愉快犯ですわよね……。


 もしくはSだ。

 さておき、地面に突っ伏し、片手で青いアヒルを持ちながら、もう片手で腰をトントンやっているリゼットに近寄る。



「……あら」



 ふと視界の端に、本棚にもたれかかりながら腰を抑えている姉を()つけた。

 顔が向いておらずとも()られた事に気付いたのだろう姉はこっちを見ながら、声を出さずに口を動かす。



「この状況で話しかけられても気まずいだけだから見ない振りヨロシク」



 まったくもって同意見過ぎたので、視線は向けずに頷いて返しておいた。

 今はリゼットの方が優先だ。





 回復したリゼットが立ち上がったので、気になっていたコトを問い掛ける。



「……それで、リゼット、その青いアヒルがどうしたんですの?」


「あ、うん、可愛いから見せよって思って」



 ……それだけであのテロをやらかしたんですのね。


 正確には声テロしたのはランヴァルド司書なのだが、爆弾に火打石やったのはリゼットなので間違いでもない。



「あとパートナーにしたいなって思ったんだけど種族わかんないからジョゼなら知ってるかなーって思って聞きに来た」


「本魔に聞きなさいな」



 このアンノウンワールドは魔物との会話が普通に可能な世界である。



「あ、そっか」



 その発想が無かったのか、リゼットはその手があったと言うように頷いた。



「というか、わたくしだってソコまで詳しくは……」



 そこまで言ってから、自分は机の上にある読み終わった方の本の山の上から五冊目の本を引っこ抜く。

 ペラペラとページを捲り、お目当てのページを見つけ、硬直した。



「え、ナニ?」



 きょとんとしているリゼットに、青いアヒルが載っているページの説明を口にする。



「種族名、ブルーダック。唾液と、足から分泌される液体はかなりの猛毒。青色カラーも理由の一つだが、毒にヤられると真っ青になる事からブルーダックと名付けられた。ブルーダックの毒は触れるだけでヤバイので注意」



 ちなみに青いアヒルことブルーダックが載っていたのは、有毒魔物の図鑑である。



「……えっ」



 リゼットは自分の手の中に居るブルーダックを見た。

 思いっきり素手で抱き上げており、足から分泌されているのだろう毒液が手に掛かっている。

 ソコから垂れたしずくが床に水溜りを作っていた。


 ……酸性では無いみたいですわねー。


 そんな風に自分が現実逃避をしている間に、リゼットは手の中のブルーダックとこちらを交互に見て、叫んだ。



「きゃーーーー!」



 手放すという選択肢が無いのか、リゼットはブルーダックを手に抱えたまますぐ近くの本棚の周りをぐるぐる回りだした。


 ……学園内、基本走るの禁止なんですけど……。


 叫び声に加えてダッシュだ。コレはまた低音が来るかもしれない。先輩方がいそいそと図書室を立ち去っていくのが()える。



「きゃーーーー♪」



 そちらを見ていたら、いつの間にかリゼットは自分が叫んで走り出した理由を忘れたのか、叫んで走るのを楽しみ始めていた。


 ……ここ、図書室ですの。


 ぐるぐる回って満足したのか、というか疲れたのか、息を切らせてリゼットは止まった。



「……で、何だっけ?」


「温かそうに頬がピンクに染まってるのは良いコトですが、本題を忘れないで欲しいですわね」



 ……というか。



「そもそもリゼット、平気なんですの?」


「何が?」



 ……本気で忘れてますわね!?



「だから、ブルーダックの毒ですわ!思いっきり触れている上に、ああも走り回ったら普通毒が回りますわよ」



 しかし、リゼットにその様子は無い。完全にいつも通りだ。

 リゼットもブルーダックと自分の手を見ながら、驚いたように言う。



「ホントだ!私全然平気!」


「遺伝でしょうか……」



 理由はわからないが、恐らく遺伝だろう。毒親……では無く、親が毒系魔物だったりした場合、耐性があるコトは多い。

 何せマムシの子が毒にヤラれるとか、普通にありえないことだからだ。

 すると、今まで黙っていたブルーダックが口を開いた。



「……大丈夫、なのか」


「喋った!?」


「そんな当然のコトで驚かれても困る」



 驚いたリゼットに低い声で正論を言いつつ、ブルーダックは疲れたような溜め息を吐いた。



「あの、どうして今まで喋らなかったんですの?」



 疑問からのその質問に、ブルーダックは遠い目で答える。



「視線を感じたと思ったらいきなり抱え上げられての誘拐。毒の被害者が出てしまうという心配の余り混乱し硬直するしか出来ず、更にこの図書室に来てから怒涛の展開で口を挟む隙が無かった」


「ぐうの音も出ませんわ」



 正論オブ正論。



「何より、俺は唾液にも毒が含まれているからな。万が一を考えて、口を開けなかった」


「成る程……」


「かと思えば私に毒が効かないとか、まるで運命みたいだね!」


「随分と力技で来る運命だな……」



 年齢通りに子供っぽいリゼットに対し、ブルーダックは大人の対応だった。



「リゼット、アナタちゃんとブルーダックに謝りなさいな。誘拐したのは事実ですのよ?」


「う……」



 確かにと思ったのか、気まずそうに視線を逸らしてから、リゼットは頭を下げた。



「ごめんなさい」


「……ああ、構わない。謝罪してくれてありがとう」



 ……紳士ですわね、このブルーダック。


 九割以上被害者だろうに謝罪に対してお礼が言えるとは、良い魔物が過ぎる。



「えーと……話は終わったかい?」


「グゥッ!」


「ヴゥッ!」


「グォ……ッ!」



 ランヴァルド司書による低音口撃により、自分とリゼットとブルーダックが床に倒れ込んだ。

 ()えていたので存在に気付いてこそ居たものの、まさかまた喋るとは思わなかった。

 綺麗に三タテを決められてしまった。

 幸いだったのは、床に作られている水溜りならぬ毒溜りに倒れ込まなかったコトだ。リゼットは思いっきり膝が毒溜りに浸かっているが、まあ大丈夫だろう。



「まったく……また叫んだね?しかも走ったりまでして……もうやっちゃ駄目だよ」


「ぁぃ……」



 蚊の鳴くような声でリゼットは返事をした。


 ……二回目だからか、返事は出来たようですわね。


 これが初回ダメージだったら返事も出来ず呻くだけだ。返事が出来ただけ良い事だろう。



「ソレと、話は聞いてたけどその液体がブルーダックの毒なら、他の生徒達も危険だ。保険室に行けば解毒出来るとはいえ、被害に遭わないに越した事は無い」



 まったくもって正論だ。

 様々な生徒が居て、更に魔物も敷地内に多数生息している為、保険室の頼れるレベルはかなり高レベルとはいえ、頼らない方が良い場所であるコトもまた事実。



「私は図書室の毒を無毒化しておくから、君達は廊下や、そのブルーダックが居た場所までに垂れてるだろう毒を無毒化してね」



 低音のせいで腰が抜けて動けない自分達の首根っこを掴み、ランヴァルド司書は図書室の外へと追い出す。



「さ、早く回復して実行するように。騒いだ罰みたいなモノだからしっかりとね。無毒化の方法はブルーダックに聞けばわかるだろうし、簡単だから大丈夫」



 ランヴァルド司書がそう言って図書室の扉を閉めると同時に、周囲に居た不幸な生徒達の腰が抜けた。


 ……コレ、ほぼテロですわよね。





 どうにか、ブルーダックが居たという中庭の端にある池までのルートに垂れていた毒の無毒化が終わった。

 無毒化と言っても結構簡単で、水によって無毒化出来るというものだった。

 なので魔法で水を出し、足跡のように残っているその毒に水を掛けて無毒化する簡単な作業。

 途中で誰かが触れていたらどうしようとも思ったが、ソコはこの学園の生徒。ちゃんと避けていた。



「毒が無毒化するからこそ、俺はこの池に居たんだが……まさか誘拐されるとは思わなかった」


「本当にごめんなさいでした」



 ペコー、とリゼットはブルーダックに頭を下げる。



「いや……もう謝らなくても良い。それじゃあな」



 そう言って池に入ろうとするブルーダックに、リゼットは言う。



「あ!ちょっと待ってパートナーになって!」



 リゼットのその言葉と共に、ドボンとそれなりの音がした。



「あら、水柱」



 跳ねたその水を見ていたら、びしょ濡れになったブルーダックが池から上がり、ブルブルッと体を震わせて水分を跳ばす。



「……何だって?」


「や、パートナーになって欲しいなーと」


「俺達は自己紹介すらしていない仲なんだが」


「あ、私リゼット。ヨロシク」


「……ああ、ヨロシク……」



 疲れたように溜め息を吐きながら、ブルーダックは差し出されたリゼットの手に翼を差し出し、握手していた。



「それで、何故俺をパートナーにしたいと?」



 ブルーダックはかなりマジなトーンの声で言う。


 ……無理もありませんわね。


 パートナーになってほしいと言うのは、プロポーズの言葉のようなものだ。

 パートナーを解消すればバツ一と言われるレベルで、つまり本気で夫婦関係に近い。

 中には恋人っぽい意味だったりする場合もあるが、愛し合い協力し合うもの同士、という意味に変化は無い。

 そしてリゼットの興奮からするとブルーダックを見たのは今日が始めてであり、つまり展開が急過ぎますの。

 しかし、リゼットはいつも通りのテンションで言う。



「好きだなーって思って、相性が良かったから、コレは運命だ!って思って!」


「君はまだ若いからだ」



 対するブルーダックは、大人の意見を言う。



「君にはこれからまだまだ出会いがあり、もっと良いパートナー候補に出会えるだろう」



 ……完全に子供のプロポーズに対する大人の模範解答ですわね。



「私が毒持ちで、君が毒に耐性があって……これは確かに運命的だが、そのくらい、広い目で見れば幾らでも居る」



 確かにそうだろう。

 実際、地球で言う毒を持つ動物だけで図鑑が出来る程存在していたように、こちらの世界にも毒を有する魔物は沢山居る。

 動物型どころか、植物型まで存在しているのだ。その数は凄まじく、そして同時にそんな魔物と子を生した結果、毒に耐性を持つヒトも今の時代なら一定数居るコトだろう。



「だから……」



 そこまで言って、ブルーダックは言葉を止めた。

 リゼットを見たからだ。

 リゼットは、耳を塞いでいた。



「……コラ、聞きなさい」


「ヤダ!お母さん言ってたもん!自分が告白した時に断られても、ヤダって態度で耳塞いでゴリ押しすれば押し切れるって!」


「それリゼットのお母様の実体験ですの?」



 リゼットの父は押し切られたのだろうか。

 そんなリゼットの態度にブルーダックは溜め息を吐く。



「わかった」



 そう言い、ブルーダックはリゼットの目を見た。



「パートナーを拒否するのはやめよう」


「じゃあ!」


「だがパートナーになるわけではない」



 リゼットの期待キラキラな視線を、ブルーダックはスパッと切る。



「俺が断っている理由は、君を後悔させたくないからだ。そして俺が君を好きになっても、その時に君の気持ちが他の誰かに移っていたら、俺が凄まじいショックを受けるからでもある」


「しないもん」


「口だけならどうとでも言えるだろう」



 ムッと頬を膨らませたリゼットに、ブルーダックは言う。



「だから、約束というカタチにしよう」


「約束?」


「ああ」



 ……何か良い雰囲気になってますけど、コレわたくしの存在凄く邪魔ですわよね。


 存在を無視されているから別に良いが、凄く居心地が悪い。ソワソワする。



「君が卒業するまで、俺が君のパートナーになるコトは無い。……が、卒業まで俺が一番だと君が言ってくれるのであれば、俺も君に答えよう、リゼット」



 ブルーダックのイケメンな言葉に、リゼットは弾けるような笑みを浮かべた。



「やったー!」


「うおっ!?」



 勢いのままリゼットはブルーダックを抱き上げ、抱き締める。



「毎日会いに来るからね、ブルーダック!」


「余裕がある時だけに来てくれ!君は病気でも来る気がする!」



 保留になったはずなのにラブラブしている一人と一羽を見て、コレは完全に忘れ去られているなと思い、そっとその場を離れる。


 ……良いですわね、パートナー。


 まだ入学したてだし、リゼットとブルーダックの場合は保留だ。

 けれどやはり、良いなと思うくらいには憧れる関係でもある。


 ……卒業までにパートナーを作るって目標でも作っちゃいましょうか。


 だがそんな目標を作って駄目だったら精神的ダメージも大きそうなので、やめておくコトにした。





 コレはその後の話になるが、リゼットとブルーダックは、あれからちょくちょく会っては仲を深めているらしい。

 とは言っても池で話したり、リゼットがブルーダックを抱きかかえて、落ちる毒を魔法で無毒化しつつデートしたり、というものだが。

 けれど順調に距離は縮まっているようだし、この世界ではパートナーと別れるヒトはそう居ない。

 この人口の多い学園内ですらパートナーと別れたコトがあるヒトはたった一人しか居ないのだ。


 ……つまり、余裕でゴールインになるのでしょうね。


 視線を向けると、中庭の端にある池の近くに居るリゼットとブルーダックは、お互いの好物の話をしながら、実に楽しそうに笑っていた。




リゼット

元気いっぱいの少女でゴーイングマイウェイ。

彼女がブルーダックを抱えてキャーキャー走り回っていて、そして主人公と思われる少女がソレを「うわあ……」って引きながら見てる夢を見たのを元に設定を考え、シリーズ作成。

つまりある意味このシリーズの生みの親。いや寧ろ生みの夢。


ブルーダック

見た目はキュートだが声は低い毒持ち紳士。

こちらも生みの夢。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ